星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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挿絵管理にちょっとした落書きをあげてみました。

エボルト「よお、皆おなじみエボルトさんだ。で、こっちが」

ハジメ「ハジメだ。こうして出るのは初めてだな。で、なんでシュウジは隅の方でしょぼくれてんだ?」

エボルト「ああ、なんかお前がグレたって言ってしょげてんだよ。ほっといてやれ」

シュウジ「うう、ハジメ……」

ハジメ「ふーん……まあどうでもいいわ。それで、今回は俺がついに爪熊と対決する話だな。それじゃあせーの……」


二人「「さてさてどうなる迷宮編!」」

シュウジ「始まりまーす……」



復讐

  ドンナーを完成させてから早数日。俺はついに今日、爪熊を殺しにいく。そのために今狩ってきた二尾狼を食っていた。

 

「むぐ、むぐ……相変わらずまじいなオイ」

 

  ライターと苦手な火魔法を使って焼いてなお、二尾狼の肉は筋の多い最悪のものだった。だが腹の足しにはなる。

 

  ちなみに蹴りウサギは、同じ魔物を食ってもステータスが上がるかどうか実験で食って以来、そこまで食べてない。

 

  食うたびにあの蹴りウサギの姿がフラッシュバックして、嫌な気分になるからだ。自分の罪から逃げるわけじゃないが、あまり思い出したいものでもなかった。

 

  なので、ここ最近の大体の食料は二尾狼一択だ。ぶっちゃけ言って味は下の下だが、仕方がないだろう。

 

「んぐ……ごくん。ごちそうさまっと。さて、準備したものの確認でもするか」

 

  二尾狼を食い終えた俺は、持ち物の点検をする。奴は強敵だ、用心に用心を重ねてかからないと死ぬ確率の方が高い。

 

  保有している持ち物はドンナー、ボトル装填装置を抜いたブレード、緑光石を使ったとある武器、ラビットエボルボトル。それと蹴りウサギの魔石と例の白エボルボトルのネックレス。

 

 そして……

 

「……案外あったかいな」

 

  首元に巻いている、赤と白の入り混じったフワフワとした毛のマフラーに触れる。これは蹴りウサギの毛皮のマフラーだ。

 

  自分の手で作った墓を少し掘り返して骨を取り出し、〝錬成〟で針にするとブレードを併用して片腕で苦労しながら作った。

 

  これをつけていると、蹴りウサギが側にいるように感じる。当然錯覚だが、多少の勇気づけにはなった。

 

  しばらくマフラーをモフモフした後、ステータスプレートを確認する。この数日でまた、爪熊討伐のために随分と鍛え上げた。

 

 

 =============================

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:10(HL:4.7)

 天職:錬成師

 筋力:900

 体力:1700

 耐性:800

 敏捷:1500

 魔力:1100

 魔耐:1900

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・魔力操作・胃酸強化・闘術[+獣術][+鬼術]・脚術[+死脚]・空歩[+空力][+縮地]・乱撃[+迅撃]・加速[+超速]・言語理解

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  こんな感じだ。〝錬成〟はドンナーを作る過程において、どんどん派生技能が開花していった。今や五つもある。

 

  [+精密錬成]は文字通り錬成の精度が上がり、[+鉱物系探査]は一定範囲内の鉱物を魔力を使って見つけ出す技能。

 

  [+鉱物分離]は不純物と鉱物を分ける技能で、[+鉱物融合]はその逆に鉱物同士を合体させることによって合金を作れる。

 

  闘術の派生技能、[+獣術]と[+鬼術]はどちらとも消費魔力が莫大になるが、ステータスを一時的に5倍、8倍に高めることができた。主に短期決戦用だ。

 

  [+死脚]は、完全に足による攻撃が決まったとき、一定確率で相手を殺すことのできる派生技能。今のところ、百回に一回成功するかどうかだ。

 

  後の派生技能も、だいたいは元の技能の強化版といった具合だ。特に蹴りウサギからもらった技能は使い勝手が良いからよく使う。

 

  ただ、ハザードレベルはほとんど上がらなかった。一度蹴りウサギので大きく肉体が変化したからか、それ以降は二尾狼を食った時に0.1上昇したのみ。

 

  まあ、それで特に問題があるわけでもない。武器も技も相当鍛えた。今の自分なら必ず爪熊を殺せるという自信を持つ。

 

「それじゃあ、行くか」

 

  全身に武器を装備すると、立ち上がって穴ぐらから出ていこうとした。その時、不意に気配を感じてバッと背後を振り返る。

 

  だが、そこにあるのは例の石と馴染んできた穴ぐらだけ。その他には蹴りウサギが眠る、小さな墓標しか存在していない。

 

「……気のせいか」

 

  そういって肩をすくめると、今度こそ穴ぐらを出て爪熊を探しにいくのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 迷宮の通路を、姿を霞ませながら高速で移動する。天歩を十全に使いこなし、縮地で壁や地面、時には空力で空中を蹴って飛び回っていた。

 

  目的は爪熊を探すこと、ただ一つ。脱出口が先ではないのかと言われそうだが、あいにく俺はここから出るつもりはない。

 

  たとえ爪熊を倒したとして、それ以上に強い敵が現れて太刀打ちできず、命を奪われてしまえばそこで終わりだ。

 

  なら俺は、徹底的にこの迷宮を攻略し尽くす。全ての魔物を喰らい、その力を手に入れて誰よりも強くなる。二度と、誰にも奪われないために。

 

  だから爪熊討伐が終わったら、次は下への階段を探す。奴さえ殺せば、じっくりと探索できるだけの力はあるのだから。

 

 

 グルゥア!

 

 

  そう考えていると、不意に二尾狼の群れと遭遇した。そのうち先頭にいた一頭が飛びかかってきたので、ブレードを脛のホルダーから抜く。

 

 

 ズパンッ!

 

 

  そして、すれ違いざまに一刀両断した。すでに二尾狼にドンナーは使うまでもないことは実験済みだ。残りの三匹もさっさと三枚おろしにする。

 

  すたっ、と着地すると、影からさらに一匹雄叫びをあげて二尾狼が出てきた。どうやらもしもの時のための奇襲役がいたようだ。

 

「フンッ!」

 

  それに対して落ち着いた心象で、天歩を使って跳躍して膝を下あごに叩き込んだ。音を立てて破裂する二尾狼の頭。

 

  その肉に目もくれず、また空歩を使って高速で移動して爪熊を探し始める。その途中で、何度も同じように蹴りウサギや二尾狼に遭遇する。

 

 そうして飛び回ること、しばらく。

 

「見つけた……!」

 

  ようやく、宿敵の姿を見つけた。少しひらけた場所にて、蹴りウサギと思しき魔物を咀嚼している。

 

  その姿に、蹴りウサギを食べている自分の姿が重なった。しかしすぐ頭を振ってイメージを振り払うと、悠然と歩み寄る。

 

  変貌し、外に出るようになってからわかったことだが、爪熊はこの階層における最強種だ。むしろ主と言ってもいい。

 

  というのも、蹴りウサギや二尾狼と違って同じ個体が一匹も存在していないのである。影も形も、それどころか骨の一つもなかった。

 

  故に、爪熊はこの階層では最強であり無敵。常に上位者であり、奪う側だ。間違っても奪われるなどとは思っていないだろう。

 

 そんな爪熊から、俺はこれから命を奪う。

 

「よぉ、爪熊。久しぶりだな。俺の腕は美味かったか?」

 

  ごく普通の口調で、まるで世間話をするようにそう語りかける。爪熊がゆっくりと頭をあげ、俺を見て鋭い眼光を細めた。

 

  それは、若干困惑しているように見えた。多分、今までずっと自分を恐れる魔物の姿しか見ていないからだろう。

 

  すでに、俺の爪熊への恐怖はない。あるのはただ、殺して食ってやるという思いだけ。それと……蹴りウサギを傷つけたことへの、怒り。

 

「大いに結構だ。そうして慢心によって無防備な姿を晒してくれている間に、俺はお前を狩らせてもらう」

 

  言いながら、ドンナーを爪熊に向けて構える。自然と口元が釣り上がり、獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 ドパンッ!

 

 

 引き金を引いてドンナーを発砲する。毎秒三・二キロメートルの超速で、タウル鉱石の弾丸が爪熊に飛んでいった。

 

 

 グゥウ!?

 

 

 だが、爪熊は咄嗟に崩れ落ちるように地面に身を投げ出し回避した。あの速度の弾を避けるとは、大した反応速度だ。

 

 しかし完全に避け切れたわけではなく、肩の一部が抉れて白い毛皮を鮮血で汚している。それに、爪熊が唸り声をあげた。

 

「唸ってるだけか?早くかかってこいよ」

 

 

 ガァアアアァッ!!!

 

 

  言いながら手招きすると、爪熊は咆哮をあげながら突撃してきた。どうやら俺は獲物ではなく、敵と認定されたらしい。

 

 凄まじい速度で、二メートルの巨躯と広げた太く長い豪腕が地響きを立てながら迫る姿は、途轍もない迫力だ。

 

  それを見ながら、俺は深く息を吐き出す。さあ、ここが最後の試練だ。これで惨めに負ければ、結局俺は変われなかったことになる。

 

  ウサギの犠牲も、一時的とはいえ大切な人間たちの思いを捨て変わったことも、全て無駄となる。そんなことは許さない。

 

 今度は、俺がお前から奪う番だ。

 

「さあ……実験を始めようか」

 

 

 ドパンッ!

 

 

 突進してくる爪熊に、今度は眉間めがけてドンナーを発砲する。が、なんと爪熊は突進しながら上半身を下げ回避した。ムカつくくらい早い反応だな。

 

 そのまま接近してきた爪熊は、突進力をそのままに爪腕を振るう。固有魔法が発動しているのか、三本の爪が僅かに歪んで見えた。

 

  脳裏に浮かぶ、片腕とウサギの片耳が吹き飛んだ光景から、爪の長さ以上にバックステップで後退する。

 

 

 ズパッ!

 

 

「なっ!?」

 

  だが、少しだけ固有魔法の範囲から離れそこなったようだ。服が破け、左の脇腹に三本の赤い線が走る。

 

  そのまま風圧で吹き飛ばされるが、逆に利用して空歩で距離を取った。そして試験管型の容器から例の液体……ポーションを飲む。

 

  幸い傷を受けたのは薄皮一枚だったようで、すぐに痛みは消えた。容器を投げ捨てて、爪熊に向き直る。

 

  すると、奴はあと数メートル先まで迫っていた。仕留め損なったことに苛立ちの咆哮をあげながら、腕を振り上げている。

 

「おいおい、そう焦んなよ」

 

  そんな爪熊の眼前に、腰からあるものをとって思い切り投げつけた。そうするとすぐに目を瞑る。

 

  投げたのは、緑光石を利用した〝閃光手榴弾〟だ。現状ドンナー、ブレードに並ぶ俺の主力武器である。

 

  原理は簡単で、まず魔力を限界ギリギリまで流し込み、光が漏れないように表面を薄くコーティングする。

 

  更に中心部に燃焼石を砕いた燃焼粉を圧縮して仕込み、その中心部まで導火線のように燃焼粉を表面まで接続。

 

 後は〝纏雷〟で表に出ている燃焼粉に着火すれば圧縮してない部分がゆっくり燃え上がり、中心部に到達すると爆発。

 

  そして緑光石が砕けて、強烈な光を発するというわけだ。ちなみに、発火から爆発までは三秒に調整してある。苦労した分、自慢の逸品だ。

 

 

 

 グルゥァアアア!?

 

 

  瞼の向こうから光が目を照らした次の瞬間、爪熊の悲鳴のような声が聞こえてきた。どうやらモロに浴びてくれたらしい。

 

  その隙を逃さず、ドンナーをホルスターにしまってブレードを抜刀、縮地で暴れまわる爪熊に接近した。

 

「ウサギの分だ、受け取れッ!」

 

  そして物騒な腕をかいくぐり、片耳を斬り飛ばした。続いて空力で宙返りをすると、背中に乗って左肩に抜いたドンナーの銃口を押し付ける。

 

 

 ドパンッ!

 

 

  そして、ゼロ距離で〝纒雷〟により電磁加速した絶大な威力を誇る弾丸をぶち込んだ。それは毛皮を貫き、肉をえぐり、根元から吹き飛ばす。

 

  それを確認するとすぐに跳躍し、ドンナーを脇に挟んで左腕をキャッチすると、少し離れたところへ着地した。

 

 

 グゥアアアアアアッ!!?

 

 

  片耳と片腕、どちらとも同時に失った爪熊は耳を塞ぎたくなるほど大きな声で絶叫を上げた。そして血が噴水のように吹き出す傷口を抑えてうずくまる。

 

「痛いか?俺も痛かったさ」

 

 俺だけじゃなく、きっとウサギも。

 

  多少視界が回復したのか、こちらを怒りのこもった目で睨みつけてくる爪熊に、挑発するように左腕を揺らす。

 

 そして、おもむろに噛み付いた。魔物を喰うようになってから、やたらと強くなった顎の力で肉を引き千切り咀嚼する。やられたらやり返す。それが俺の流儀だ。

 

「相変わらずマズイな……だが、ウサギの肉よりは美味いのはどうしてだか」

 

  言いながら、くるであろう苦痛に備えてポーションを服用する。すると、すぐに体のいたるところが壊れ始めた。

 

  蹴りウサギや二尾狼とは別格の力を持つからだろうかウサギを食った時ほどでないにせよ、それなりに激しい痛みに顔をしかめる。

 

  そんな中でも、ドンナーの銃口だけは爪熊から逸らさなかった。腕を吹き飛ばされたのがこれのせいだとわかっているのか、爪熊は動かない。

 

  やがて、痛みが消えてゆく。また一つ、強くなったことを実感しながら、爪熊にゆっくりと近づいた。

 

 

 ルグァアアアアッ!

 

 

  あと三歩というところで、いきなり立ち上がった爪熊は最後の抵抗と言わんばかりに襲いかかってきた。

 

 だが……

 

「残念だったな」

 

 

 ……ズルリ。

 

 

  俺がそう言うのと同時に、爪熊の残っていた右腕が根元からずれ、地面に落ちた。それだけでなく、両足もずれて胴体から離れる。

 

  わけがわからないという顔の、ダルマ状態の爪熊。それに思わずニヤリと裂けるように口を歪める俺。

 

「勝ちを確信して油断したと思ったろ?」

 

  あいにく、こちとら十年以上シュウジの訓練を受けてるうえ、あんな思いまでしたんだ。そうそう戦いの中で気を緩めない。

 

  俺がやったのは簡単なことだ。加速の派生技能、[+超速]。これは数秒間残像が持続するほどの、文字通り超越的な速度で動くことのできる技能。

 

  これを使い、痛みをこらえている残像を残してそれに爪熊の注意が向いてる隙に、気づかれることなく残る四肢を切り落としたのだ。

 

  そしてまた元の場所に戻って同じポーズをとった、と言うわけである。勝利した瞬間が最高の油断する瞬間、狙われないわけがないからな。罠を張らせてもらった。

 

  今度こそ完全に戦闘不能になった、爪熊の額にドンナーの銃口を押し付ける。

 

 そして爪熊の目を見つめ、

 

「死ね」

 

 

 ドパンッ!

 

 

 空間に、銃声が木霊する。打ち出された弾丸は、たしかに爪熊の頭を粉砕していた。残るのは、ただの骸。

 

 爪熊は、最後まで俺から眼を逸らさなかった。最後の最後まで、己が強者である誇りを持っていたのだろう。

 

「……………ふう」

 

  腕を下ろすと、ため息をつく。特に達成感も、爽快感もなかった。ただやるべきことをやり遂げたと、そう思う。

 

  ウサギに命をもらって、絶望して、それまでの自分を捨てて強くなって。ようやく、ここまでこぎつけた。

 

「同時に、今この瞬間が新しいスタートだ」

 

  俺はこれからも、こうやって生き続ける。俺から奪うもの……敵を容赦なく殺し、この世界で生き残ってみせる。

 

  そうやって生きて……いつか、故郷へと帰る。一度捨ててしまった、心から大切なやつら……美空や、シュウジとともに。

 

「……必要だったとはいえ、一時的に綺麗さっぱり忘れたなんて言ったら刻まれそうだな」

 

 まあ、それはともかく。

 

  邪魔するものには、一切の容赦をしない。たとえそれが魔物だろうと神だろうと……クラスメイトだろうと、俺の道を阻むものはすべからく敵として殺す。

 

  それが俺の生きる道。誰にも口出しはさせない。俺は俺のやり方で、俺の望む〝生〟を全うする。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーおめでとう

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

  不意に、声が聞こえた気がした。けれど、振り返っても何もいない。ただ、血の海の中に沈んだ、爪熊の耳があるだけ。

 

「……今日はよく変なものを感じるな」

 

  幻聴だったのだろうと納得した俺は、一度魔石と白エボルボトルを触ったあと、爪熊の肉をある程度切り取ると、その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  そうして……俺の復讐は終わりを迎えたのだった。

 

 




次回は雫や美空たちの話です。
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