ハジメ「俺だ。前回は茶番を見せられたな」
鈴「龍っちのバカバカバカ! 超恥ずかしかったんだから!」
龍太郎「お、俺が悪いかぁ!?」
エボルト「騙される方も悪いってな。今回はどうやら到着したみたいだぞ。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる洞窟編!」」」」
シュウジ SIDE
しばらくすると、不意にフィーラーが降下を始めた。
「ん、大迷宮の存在を嗅ぎつけたか。そろそろ中に戻ろう」
「ええ」
諸々の家具を片付け、雫と一緒にコテージの方に戻る。
中にはソファーに腰掛けてイチャついてるハジメとシアさん、それを微笑ましく見守る女性陣。
他にも床に転がる変態、互いに赤い顔してるカップルもどき、勇者(失笑)などなど。
「よう、戻ってきたか」
「うーっす。坂みんは上手くいったみたいだな?」
「どこがだこの野郎……」
おっと睨まれたぞ。だが私は謝らない。
オオオォオオオオ…………
「っと、フィーラーが雲を突き抜けたみたいだな」
「うお、すごい吹雪だな」
ハジメの言葉に、全員がコテージの窓の方を見る。
外は猛吹雪であり、エ・リヒトで広場ごと隔離しているから問題ないが、今にもコテージが揺れだしそうだ。
「ティオは平気かい? 変温動物だったりする?」
「確かに寒いのは苦手じゃが、トカゲと同じ扱いとは……ご主人様程ではないが、良い弄りじゃ」
「グリューエンじゃこいつに乗ったまま行けたが、洞窟だとそうもいかなそうだからな。ちゃんと防寒用アーティファクトを用意してよかった」
「ん、ハジメのお手製」
「素敵、だね」
「だよね〜、雪の結晶がモチーフだなんて」
「おしゃれですよねっ!」
「えへへ、ハジメくんからの贈り物のうえ、美空とお揃い……」
きゃっきゃとはしゃぐ女性陣。〝特別〟の四人のアーティファクトは特に作りが凝っている。
ちなみにティオだけ雪だるま型で明らかに区別されてた。まあハァハァしてるから問題ないよネ!
「ねえ南雲くん、なんで鈴達のはこんな形なのかなぁ?」
「いや、まあ可愛いんだけどよ。恥ずかしいっつうか……」
「互いの顔を模したアップリケ型とは、ハジメもわかってるねぇ」
ピンで服に固定されたそれにニヤリと笑うと、二人が顔を真っ赤にする。
ンンン愉悦ッ!
『麻婆豆腐食いたくなってきた』
ちょうど寒いし、今日の晩飯はとびきり辛いのにするか。
「それなら安心だろ。色々な意味で」
「ううー! 南雲くんと北野っちがいじめるよぉ!」
「っとと。ま、まあ機能はちゃんとしてるし……」
「……シズシズはいいよね。そのブローチに付与されてるんだから」
ジト目で谷ちゃんが雫を見上げる。
雫に関しては俺があのブローチに付与して、魔力を流すと起動する仕組みとした。
ちなみに発動時は雪結晶のように半透明の水色に変わるオシャレ仕様(自画自賛)
「ふふ、まあね」
「うあー!」
「雫、その表情で言っても鈴がもっと怒るだけだぞ……」
両手を振り上げる谷ちゃん、呆れるアホ之河(こいつのアーティファクトの元はカムさんの尿路◯石)。
そうこうするうちに、フィーラーはいよいよ目的地へとたどり着く。
大きな大地の割れ目が幾筋にも広がったそこは、【氷雪洞窟】に続く氷の迷路、【氷雪の峡谷】である。
悠々とフィーラーで迷宮の大部分はカットし、最深部近くまで短縮できた。
しかしながら、ある程度のところまで止まる。
そして広場を固定する鎖に取り付けたカメラから、下の様子を見た。
「ん、ここからは峡谷の幅が狭くなってる」
「下に降りて、地上から行くしかなさそうだな」
「一キロちょいってとこか。よーし全員降りるぞー」
フィーラーに指示を出し、峡谷にその極太の四肢でまたがる形で着地させる。
揺れが完全に収まるまで待ち、全員一応厚手のコートを着込んで広場に出た。
「うわぁ! これが雪ですか! すごいですねぇ!」
お、シアさんが目を輝かせている。まるで電車の外の風景に目が釘付けになった子供みたいだ。
『そりゃあ当たり前だろう。あんな鬱蒼とした樹海の中で生きてたんだからな』
生まれは樹海、育ちはハジメ(バグ化)ってとこか。
「…………」
「シアさんを抱きしめたいの我慢してる?」
「……わかってんだったら言うんじゃねえよ」
ガリガリと頭をかいて照れ隠しするハジメ。まるで反応の仕方が違うなぁ。
しかしながら、視線はエ・リヒトの外に広がる銀世界に目を輝かせるシアさんから動かない。
ユエ達も微笑ましく、またほっこりとした目でいた。
そんなリアクションもそこそこに、コテージを異空間に仕舞ってエ・リヒトを解除する。
途端に吹雪が吹き付けて、全員慌てて目深にフードを被った。
それから広場のギミックを発動し、フィーラーの背中の上から下まで続く階段を展開させる。
降りてみれば、広がっているのは一面の雪景色。
厳しい吹雪があるとはいえ、それでも滅多に見られないほどの光景にシアさんが飛び出した。
「ヒャッホウですぅ! これが雪なんですねぇ! シャクシャクしますぅ! なのにフワッフワですぅ!」
おーおー、全力ではしゃいでいる。
ハジメと美空も昔あんな感じだったなぁ。雪合戦とか楽しかっなんか後頭部に当たった。
「ちべたい……やったなハジメ」
後ろを振り向くと、両手に雪玉を持ったハジメが不敵に笑っていた。
「ふっ、雪があるなら当たり前だろ?」
「ならば俺にも考えがあるぞ」
ステッキを取り出し、トンと足元の雪に当てる。
重力魔法が起動し、ひとりでにいくつかの雪玉が作り出されて宙に浮かび上がる。
それを見たハジメはニヤリと笑い、半身を引いて両腕を構えた。
「やるか?」
「ああ、やるね」
「よろしい、ならば聖戦だ!」
「望むところ!」
かくして唐突な雪合戦が始まった。
脈絡? そんなものこの作品に最初からないわ間抜けめ!
「ったく、あの二人は何やってるんだか……」
「えいっ」
「……やったわね香織!」
「きゃー♪」
「せっかくだから、私達も少し楽しみましょうか」
「う、うん」
「っしゃおら、小学校一の実力者と呼ばれた俺の腕前を見せつけてやるぜ!」
「北野がいるとまるで緊張感がないな……」
すぐに雫達も参戦し、全員楽しく遊びましたとさ。
あ、勇者は徹底的に狙った。なんなら倒れたところを、雪を重力魔法で操って前方後円墳にしてやった。
他にもハジメと合作でガ◯ダム作ったり、カマクラ作って餅食ったり、坂みんが雪だるまになったり。
これも大迷宮攻略前に英気を養うためなのだ(棒)。
『徹頭徹尾建前だな』
ひとしきり遊んで満足してから、峡谷に降りることにする。
「それで、どう降りる?」
「俺はメ◯ー・ポピンズ式で行くけど」
ステッキを掲げて見せると、ふむと考えるハジメ。
「何を悩んでるんですか、お二方!」
するとそこで、峡谷の淵にシアさんがガッと足をかけた。
「ここは根性一発! 女は度胸!」
「おい待てシア、お前まさか……」
「これぞ! ウサギのド根性ぉおおおお!」
ハジメが制する暇も無く、まだハイテンション状態だったシアさんは峡谷に飛び込んだ。
バグった身体能力にものを言わせ、女気? 溢れる一言と一緒に奈落の底に落ちていくウサギが一匹。
「ん、いいアイデア」
続けて追いかけるようにウサギが飛び込み、いよいよ顔を見合わせた俺達は苦笑いした。
シアさん逞しくなったわー。ハジメに魔物へ投擲されてた頃が懐かしい。
「じゃ、先行ってるわ」
「おう、俺も後から追いかける」
踵を返したハジメも、躊躇なく数百メートルはありそうな谷底に向かって飛び降りる。
続けてユエも跳躍し、それを見届けた俺は隣にいた雫を横抱きにする。
「それじゃあお前ら、チャオ!」
ステッキの傘モードを展開し、そこに飛行魔法を組み合わせて後ろ向きに飛び降りる。
雫は悲鳴をあげることもなく、ぎゅっと俺の首に両手を回し、顔を見つめてきた。
「◯リー・ポピンズって勇気のある女性だったのね」
「環境が百八十度違うけどな」
「そりゃ、こんな地獄への入り口みたいなとこじゃないでしょ」
横から聞こえた声に二人で振り返ると、翼を生やした白っちゃんに抱えられた美空がいる。
なるほど、そういう手段をとったか。ていうか白っちゃんの表情怪しくない?
『ペロッ……これはっ、百合の香り!?』
なんで今舐めた。
「それじゃお先に〜」
「下で待ってるね、シューくん、雫ちゃん!」
速度を上げて降下していった二人を見下ろし、立て続けに上からまた音がした。
今度は誰だと見上げると、片手にプロペラ生やした
「ひゃああああ! 怖い怖い怖いっ!?」
『暴れるなよ鈴、危ねえから』
「た、頼りにしてるからね龍っち!」
『おう、任せとけ!』
必死な顔でしがみつく谷ちゃんと男気ある坂みんが行き、そしてようやくの沈黙。
さて、これで全員か。俺達もさっさと下に降りることにしよう(棒)
『呼吸をするように存在を消される勇者』
そんなやついたっけ?
「ほい、到着っと」
安全飛行で降りること数分、谷底にたどり着いてゆっくりと着地する。
傘をステッキに戻して雫を下ろし、正面を見ると全員が揃っている。
「よし、行こうか」
「ストップシュー、お願いだからあと五分だけ待ってあげて」
「え、誰を? 何を?」
即答するとあら不思議、雫が苦笑いするじゃあありませんか。
うーんなんでこんな顔してるんだろうなー全然これっぽっちも理由が思い浮かばないなー。
「……なんちゃってね」
「え?」
グッと雫を抱き寄せ、数歩分その場から後退する。
次の瞬間、ドスン! と音を立てて何かが着地を決め、粉雪が舞った。
『粉ぁああ雪ぃいいいいい!』
言うと思った(笑)
「……ふぅ。思ったより高かったな」
雪が吹雪の中に解け、姿を現したのはあの口の集合体を背中から出したバカ之介。
翼の形に〝それ〟を変形させた奴は、ゆっくりと立ち上がると苦い顔をした。
「……この着地の仕方、膝に悪いことがよくわかった」
「スーパーヒーロー着地は負担が大きいからな。ザマアミロ」
「はは、こんな時も嫌味か」
チッ、余裕そうな顔なのが腹たつ。
「よいしょっと」
「うわっ!」
とりあえず足が痛いらしいバカには、膝カックン(ローキック)を膝裏にかましてすっ転ばせといた。
もんどり打ったアホを放っておき、やれやれって顔で見ているハジメ達のところに行く。
「じゃ、進もうか」
「ああ。方向は……こっちだな」
羅針盤を片手にハジメが歩き始め、俺達もそれについていった。
いくつか枝分かれしている道を、ハジメは時折羅針盤を確認しながら迷いなく進む。
雪に覆われていた上と違い、周囲はむき出しの氷の壁で覆われ、中には凍りついたものが入っている。
常識だが冷たい空気は下に溜まるので気温自体は低く、アーティファクトをつけていても肌寒い。
「うう、これ普通にきたら凍え死んじゃいますね」
「しかも進むほどに強くなってやがるな……ティオ、風を散らしてくれ」
「承知した」
ハジメの頼みでティオが魔力を練り始めるが、それに文字通り「待った!」をかける声。
「ここは鈴にやらせて!」
「ふむ? どうするご主人様?」
「まあ、訓練の成果も見たいところだしな。好きにやれ」
「ありがと南雲くん、クラルスさん!」
両手にハジメの作った鉄扇を持ち、鼻息も荒く前に出る谷ちゃん。
ぶっちゃけエボルになればこの程度の環境変容させられるが、さて。
「お手並み拝見ってとこだな」
「おう、鈴はすごいぜ」
あらやだこの筋肉ダルマ、わざわざ隣に来て惚気てきたわ。
「ん? どうした北野?」
「えっと、祝義いる?」
「は?」
「こら」
雫に怒られたのでからかうのをやめ、黄色いオーラを纏う谷ちゃんの方に目線を戻した。
あの鉄扇にはいくつかの神代魔法や能力、谷ちゃんの血に反応する詠唱省略機能がある。
おまけに谷ちゃん自身が昇華魔法を手に入れたので、その能力を自分自身で向上させられるのだ。
結構な代物なので、扱うために自分も武器の使い方も鍛えていたわけだが。
「いくよ──〝聖絶・散〟!!」
その腕前は、見事の一言に尽きた。
淡い光を放つ半透明の障壁が出現し、それは勢いよく前方に放射状に広がっていく。
結界とエネルギー分散の魔法、二つ同時に発動して、更に昇華魔法でその効果を上昇させている。
それは前からくる暴風と真正面から衝突し、見事に威力を散らして脇へと追いやった。
「……ん、悪くない」
「お、ユエのお墨付きか。良かったな谷口」
「えへへ、ありがと」
振り返った谷ちゃんは笑い、それからこっち……というか隣の彼氏(個人的解釈です)を見る。
そしてグッといい顔でサムズアップした。
坂みんもいい顔でサムズアップし、これはもう付き合ってますね(確信)
「やっぱり今からお金包んでおいたほうが……」
「あ、できればあっちの金で頼むわ」
「さっきの聞こえてたんかい」
坂みんもなかなか強かさを増してきた。
とにかく、谷ちゃんの快挙により断然楽になった道を進んでいった。
暴風を機にすることなくのんびりと進んでいると、先頭のハジメが足を止める。
「……あれか?」
俺達も止まり、ハジメの視線の先を確認。
すると、二等辺三角形のような形に綺麗に氷壁に縦割れがあった。
「ん、間違いない。こっちの情報でもあそこだ」
「そうか……だが、どうやら厄介な客がいるみたいだな」
「え?」
後ろでアホが声を上げる。
それとは違い、ユエ達は既に臨戦態勢をとって、縦割れの前に仁王立ちする影を睨んだ。
恐る恐る、緊迫した表情の谷ちゃんが風を散らすことで、舞い散る雪を消して。
「──待っていたぞ、お前達」
そこに立つメルさんに、息を呑んだ。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回、リベンジマッチ。