ハジメ「俺だ。前回は雪合戦してたな」
エボルト「この作品に本来、シリアスなんてないはずだからな」
シュウジ「最近シリアス路線に乗せてる作者が悪い。さて、今回はライダーVSライダーだ。それじゃあせーの、」
三人「「「さてさてどうなる洞窟編!」」」
シュウジ SIDE
吹雪の中に佇む、一人の偉丈夫。
鎧の上から黒衣を纏い、巌のように表情は固く。
メルド・ロギンス。かつて王国の騎士団長だった彼は、迷宮の入り口の前に立ち塞がっていた。
「メルドさん……!?」
「あんたがどうしてここに……」
バカと坂みんが驚いたように言う。
……ははあ。どうやらあっちの〝アイツ〟が最終準備に取り掛かったらしい。
俺は何も言わずに、硬い表情をする雫の手を握りながら静観することに決めた。
「……どうやら一人みたいだな」
隣でハジメが探知系の技能を使ったのか、小さく呟く。
そうだろうとも。メルさんの目的が
「……いや、どうしてなんて言うのは今更だよな。あんたは魔人族についた。なら、ここにいるのもおかしくねえ」
「……ここを通りたくば、俺を倒してみせろ」
最初に正気に戻ったのは坂みん。
ドンナーを抜きかけていたハジメの肩に手を置き、メルさんの前に立つ。
「龍太郎!」
「下がってろ光輝! この人とは俺が戦う!」
こちらに振り向き、ギロリと睨み付ける目が怖いこと怖いこと。
アホ勇者は足踏みをし、ハジメも覚悟の程を悟ったか、ホルスターにドンナーを戻して腕組みをした。
その意味を察した坂みんは笑い、メルドさんに向き直る。
「あん時のリベンジマッチといこうぜ、メルドさん」
「……最後に勝ったのはお前だ。だが、今回は負けん」
メルさんがスクラッシュドライバーを取り出し、腰に装着した。
鉄面皮のメルさんに、坂みんも若干複雑そうな顔をしながらもドライバーを腰に巻く。
「悪いなメルドさん、俺にも負けられねえ〝理由〟があるんだ」
「っ!」
後ろで谷ちゃんが息を呑むのが聞こえる。
全員の視線がそっちにいきかけたところで、ふっとメルさんが笑った。
「……なるほど、理由か」
「てことでもう一回、あんたをぶん殴らせてもらう!」
「──やってみろ」
《 ロボット・ゼリー! 》
《 クロコダイルッ! 》
「変身」
「変身っ!」
同時に叫び、レバーを下ろす。
雪原に二つのビーカーが出現し、それぞれヴァリアブルゼリーで満たされていき。
《 ロボットィイングリスゥ! ブゥラァッ! 》
《 クロコダイルインローグ! オォラァッ! 》
「心火を燃やして、ぶっ潰す!」
「──大義のための犠牲となれ」
変身を完了し、グリスがツインブレイカーを両手に突進していった。
「くっ……!」
「光輝、あれは……」
「わかってる、雫。邪魔をしちゃいけない……よな」
「……さて。どっちが勝つと思う?」
「ん、まあ引き分けだな」
即答すると、ハジメ達が訝しげに見てきた。
「どういうことだ?」
「前に聞いた話じゃ、この前の王国の時に坂みんは強制的にハザードレベルを引き上げてる。おまけに、これまでの戦いの中での感情の高ぶりでさらに上がってるんだ」
「それがいけないことなのか?」
「なんにだって限度があるって話さ。もし変身した状態で致命的なダメージを負ったら──そのまま消滅する。多分メルさんもな」
それを聞いて、雫達坂みんの幼馴染組が絶望的な表情になった。
谷ちゃんに至っては顔色が青を通り越して真っ白になっており、今に倒れてもおかしくはない。
さしものハジメ達も驚いたのか、若干瞠目しているが……
「ほれ、見てみろ」
激しく戦っている二人を指差す。
『オラァッ!』
『ぐぅっ!』
大きな一撃が入るたびに、互いの体から舞う黄金と紫の光。
それは命の粒子。
すなわち──今この瞬間でさえも、ハザードレベルが上昇していることを示している。
「と、止めないとっ!」
「止めるさ」
「え?」
「言ったろ、引き分けって。二人とも負けりゃ死ぬのがわかってるんだ、限界間近で止めるさ」
「そんなのわからないじゃないかっ!」
あーハイハイうるさいのが出てきたよ。俺が対策してないはずもないだろうに。
「もしもの時は俺が止める。だから大人しくしとけ、猪突猛進勇者」
「っ……わかった。信じるからな、その言葉」
「この世で一番信用しちゃいけねえのは笑顔の悪党だよ、正義の味方クン」
悔しげに歯噛みしながらも引き下がった勇者を遠回しに拒否り、それから俺は二人を見た。
事情を知ってる俺からすれば、所詮これは茶番劇に過ぎない。
熱くなってる本人達には悪いが、筋書きの決められた、結末が確定されている戦いだ。
だがしかし、俺にだって人情くらいはある。まだかろうじて。
坂みんは友人だし、メルさんにも色々とやっているが、エヒト殺しが終われば解放する。
だからあの二人が下手に死なないよう、ドライバーにある程度の数値が出たら変身が解除される小細工を施してある。
『それ大分ギリギリのやつの表現だぞ』
え、ギリギリチャンバラ?
『言ってねえよ』
つまり、これは見せ物──ショーなのだ。
ハラハラしている雫達には悪いが、しばらく観戦を楽しませてもらうことにしよう。
『ドラァッ!』
『フンッ!』
グリスとローグの攻防は激化の一途を辿っている。
嵐のような、というか実際に黄金のエネルギーを纏って猛攻を繰り出すグリス。
一方で、その凄まじい勢いの攻撃をスチームブレード一本で的確に防ぎ、もう一方の拳で反撃するローグ。
どちらも変身能力を手に入れた当時より遥かに速く、強い。
スクラッシュドライバーによる変身者のハザードレベルの限界は凡そ5.5。
見るだけでわかる。確実にハザードレベルがどちらも5.0を超えているだろう。
『どうした、そんなものか……!』
『ンなわけねえだろ!』
一歩も引かず、攻撃の余波だけで吹雪を弾き飛ばしながら刃を交える。
「お願い龍っち、勝って……!」
「鈴……」
祈るように両手を重ねる谷ちゃんに、白っちゃんが肩に手を置く。
……これ、自分に告白してもらうためにかい? ってからかったら殴られるかな?
『好奇心は北野シュウジを殺すぞ』
だよnおいなんで俺に限定した。
『ぐ、腕を上げたな……』
『そう言うあんたは剣筋が鈍いぜ? 寝ぼけてんのか?』
『……舐めるな』
ん、あれは……ダイヤモンドフルボトルか。
《ディスチャージボトル! 潰れな〜い!》
『ハッ!』
『くっ!?』
《ディスチャージクラッシュ!》
ローグの光り輝く拳を受け、グリスのツインブレイカーの一つがひしゃげる。
おお、昇華魔法でかなり硬度を強化したつもりだったんだが。思ったよりメルさんのスペックが向上してるな。
『拳を握る理由があるのは、お前だけではない!』
『ぐっ、がはっ!?』
その後はローグのターンとなり、ブレードと併用して、ダイヤモンドフルボトルの力で硬質化した拳を振るう。
グリスもツインブレイカーでなんとかいなしているが、数発痛いのがボディーに入っていた。
明らかに力負けしている。ハザードレベルはローグの方が上か。
『どうした! お前の勝ちたい理由は、この程度か!』
『んなこと……あるかっ!』
《シングル!》
お、反撃に出た。
ハリネズミフルボトルか、鋭角なエネルギーを纏ったツインブレイカーを繰り出すグリス。
ローグはブレードを構えて防ごうとし……しかし、全力で振り切られた攻撃に砕け散った。
その代償としてもう一つのツインブレイカーも壊れ、グリスの手から雪の上に落ちる。
『なにっ!』
『ドラァッ!』
『がっ!?』
からの頭突き。
激しい火花が散り、ローグはよろめいて後退する。
その隙を逃さずグリスが仕掛けようとするも、素早く持ち出したネビュラスチームガンが乱射された。
激しい銃撃によってグリスは引き、両者共に一定の距離を保って互いを睨み合う。
『……本当に強くなったな、龍太郎』
『あんたこそな。今更こんなことを聞くのも変だけどよ、どうしてそっちについた?』
坂みんの質問に、勇者どもが顔を強張らせる。
こいつらからすれば、信頼していたのに裏切られたようなものなのだろう。
……まあ、雫とかハジメはこっちガン見してるんだけどね。
『こいつが黒幕です(暴露)』
おい。
『魔人族についた訳ではない。言っただろう、私は私の大義のために戦うと』
『そうか……あんたの覚悟が変わらねえのはわかった。こっからは俺も本気の本気だ』
そう告げたグリスは、どこからともなくナックル型の武器を取り出し…………
「………………ん?」
『南雲に作ってもらったこの新武器、試させてもらうぜ』
『来い!』
俺が面食らっているうちに、第二ラウンドが始まってしまった。
『はぁあアアア!』
『っ──!』
グリスはネビュラスチームガンを撃つローグに向かって、白いナックル型ガジェットを構えて走り寄る。
その勢いはさらに増しており、ローグは再び握った拳にダイヤモンドフルボトルのエネルギーを付与。
それをグリスの繰り出したナックルに叩きつけ──砕けなかった。
『ぬぅ……!』
『そう簡単に壊れると思うなよ!』
俺の作ったツインブレイカーより強度のあるらしいナックル片手に、インファイトを始めるグリスだった。
「ハジメさんハジメさん」
「なんだシュウジ」
「なにあの武器。俺聞いてないんだけど」
「ああ、言ってなかったな。昇華魔法で錬成の質が向上したんで、お前に前にもらったアーティファクトを参考に作ってみた。アザンチウム製だ」
「そんな某キャプテンの盾みたいな……」
前に俺がやったっていうと、あれか。オルクスの攻略中に渡したプレデーションシールド。
もはや誰の記憶にも残ってないようなアイテムだったが、どうやらハジメは応用したらしい。
見た所、色以外は例のナックルと見た目が瓜二つなんですが……
「変身能力とかある?」
「いや、そこまで再現できなかった。あれはウサギがいたからこその奇跡だからな、せいぜいフルボトルを使えるくらいだ」
「へー」
内心ちょっと安心したぜ。坂みんがこの場でアーユーレディ? しちゃうかと思った。
『できてるよ(イケボ)』
ヤメロォ!
しかしまあ、あまりに出来過ぎな偶然に驚きはしたが、心配はなかった。
そもそもルイネに渡した一つしかビルド型のドライバーは作ってないのだから、変身しようがない。
「何かまずかったか?」
「いんや何も。ま、引き続き観戦しとこう」
「おう」
さて、展開的な不安もなくなったところで戦況確認に戻ろう。
グリスは言葉通り、完全な本気は出していなかったため、勢いがシャレにならないレベルだ。
ツインブレイカーが壊れたのはちょいと残念だが、あのパワーだとむしろ耐えられなかっただろう。
加減することなく全力でナックルを振り回し、武器の無くなったローグを追い詰めていく。
『激闘! 激動! 激情! こんなもんじゃ止まらねえ!』
『ぐ……だが、ただではやられん!』
《チャージボトル! 潰れな〜い!》
ん……あれはフェニックスのボトルか。
ローグの両腕がこの吹雪の中でも消えない炎に覆われ、グリスのナックルを押し返した。
『ならこっちも!』
《 ボトルキーン! 》
おい音声まで同じじゃねえか。
『オラアアァアア!!!』
ナックルの表面を左手で叩き、ナックルごと右腕がロボットアーム型の氷に覆われる。
冷蔵庫フルボトルか何かか、非常に見づらいが冷気を纏ったそれはローグの熱い拳(物理)と正反対。
相反するエネルギーを纏った二人のライダーは、同時に雪原を蹴って飛び出した。
『喰らえぇえええ!!』
『ハァアア!!』
《チャージクラッシュ!》
《 グレイシャルナックル! 》
速度はほぼ互角。
繰り出された拳はぶつかり合い、激しいエネルギーを発して吹雪をまた消しとばした。
「きゃっ!」
「美空!」
「龍っち!」
バランスを崩した美空を白っちゃんが支え、谷ちゃんが悲痛な声で叫ぶ。
その声を聞いたか、グリスの肩装甲から大量のヴァリアブルゼリーが噴射された。
『お、おおぉおおお……!』
『な、押されて……』
『こいつで……終いだッ!!』
《 ガキガキガキガキガッキーン! 》
競り勝ったのは、グリス。
ローグの炎は消し飛ばされ、衝撃で体制を崩したところにもろに必殺技を叩き込まれた。
『ガァアアアアッ!!』
激しく火花を散らしたローグは後ろに吹き飛び、氷壁に激突して大量の氷塊を撒き散らした。
「や、やった! 龍っちが勝った!」
「でも、メルドさんが!」
「喚くなアホ勇者」
「あだっ!」
うるさいアホにゲンコツ(本気)を入れ、バラバラと氷が剥がれ落ちる氷壁を見る。
ほどなくしてローグが地面に向かって落ちてきて、氷壁にはその姿の跡だけが残っていた。
『ぐ……!』
「っ! メルドさん!」
「か、体が!?」
倒れ伏したローグの体からは、尋常ならざる量の紫電と……光の粒子が溢れている。
このままでは死ぬ。
本人も分かっているのだろう、俺の予測通りにドライバーに手を伸ばし、ボトルを引き抜いた。
変身が解除され、装甲が消える。後には満身創痍のメルさんだけが地面に這いつくばっているのみ。
『ハァ、ハァ……俺の、勝ちだ、コラ……!』
「ああ、そのよう、だっ……」
緩慢な動きで、メルさんが立ち上がる。
スーツ越しとはいえ、激しい殴り合いをしてたのでその足取りは怪しい。
「だが……俺の目的は、達成された」
『あん? 何を言って──!?』
息を飲むグリス。
それもそうだろう。
なぜならメルさんは──壊れた胸の鎧に添えた手に、真っ黒なボトルを握っているのだから。
「……感謝するぞ、龍太郎」
『あんた、もしかして最初から──!』
「さらばだ」
「メルドさん!」
また叫んだユウシャの声も虚しく、ネビュラスチームガンから発せられた黒煙に隠れるメルさん。
黒煙が吹雪にかき消された時、そこにはもう誰もいなかった。
「くっ、何故……!」
「最初からアレを精製するために戦ってたんだろうな。まあ、なんとなく勝つ気がなさそうなのは伝わってきたが」
おっと、ハジメが相変わらず鋭い。
白っちゃんや美空の表情も暗く、そして「やはり俺は……」とか悔やんでる勇者がウザったい。
『あ、ぐ……』
そうこうしているうちに、グリスの方も限界に達したのか倒れていく。
「龍っち!」
「おっと、あっちも限界か」
「もう終わったし、治療くらいしてもいいだろう」
「龍太郎くん!」
「ああもう、無茶する男ばっか!」
ハジメの発言に待ちきれない、と言わんばかりに治癒師コンビが飛び出していった。
遅れて谷ちゃんも走り出して、俺たちも後を追うように坂みんの様子を見にいく。
坂みんはちゃんと細工が発動し、変身が自動で解除されていた。
服装こそボロボロであるものの、優秀な二人の治癒師によって外傷はほぼ完治している。
「龍っち! 龍っちってば!」
「んー、こりゃ過労で気絶してるな」
体を揺さぶる谷ちゃんの隣から手を伸ばし、首筋に触れた。
……ハザードレベル5.3。ギリギリだったな。少し体内のネビュラガスを取り込んでおくか。
説明しよう!
ネビュラガスは元はパンドラボックス由来の成分であるため、エボルトの力で吸収できるのだ!
ほらあれ。万丈乗っ取ってた時に、進化するためにビルドの力を奪おうとしたやつの応用ね。
というわけで今回の戦闘で上がったハザードレベルを下げるために処置を施す。
戦力にならなくても困るので、ハザードレベルが5.0を切るギリギリのところでやめておいた。
「んー、調べてみたが体の方は大丈夫だ。しばらくすれば起きる」
「よ、よかった……」
「とりあえず運ぼう。ここじゃ龍太郎が風邪を引いてしまう」
「頑張れユウシャクン(笑)」
余裕がないらしい勇者は俺を一瞥しただけで、坂みんを背負って洞窟の方に歩き出した。
谷ちゃんがハラハラとしながら隣に行き、ハジメ達も動き始めた。
「……これで八本」
全てが揃う日は近い。
「何やってんだシュウジ、置いてくぞ」
「ほいほい」
さて、迷宮攻略といこうか。
読んでいただき、ありがとうございます。
この迷宮も楽しいんだよなぁ(愉悦)