星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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龍太郎「俺だ。前回はあれだ、野球してたな」

ハジメ「あながち間違っちゃいないな」

シア「我ながらいいピッチングでしたねぇ!」

ウサギ「ん。今回は続き、でも休憩してる。それじゃあせーの、」


四人「「「「さてさてどうなる洞窟編!」」」」


氷のラビリンス 2

 

 

 シュウジ SIDE

 

 

 

 さて、半日ほどトラップと奇襲にまみれた時間を過ごしたわけだが。

 

 

 

 羅針盤のおかげで道中は迷いなく進み、ことごとく障害を乗り越えた。

 

 勇者を氷の槍が振る道に突貫させたり、壁そのものが倒れてくる通路に先に行かせたり、魔物の群れに放り込んだり。

 

 

 そんなこんなで誰一人怪我をすることもなく進むことしばらく。

 

「あっちょっ、お前赤甲羅はずるいだろ」

「ふっふーん、テクニックだよ龍っち」

「はいお先ー」

「「ああっ!?」」

 

 そろそろ代わり映えしない迷路も飽きてきたので、凸凹カップルとマ◯カーやっていた。

 

 寒さも問題なく、魔物も素晴らしい肉盾(勇者)が受け止め、体力は有り余り。

 

 ぶっちゃけ暇すぎてゲームするレベルでつまらない試練である。

 

「ぜぇ、はぁ……」

「どうした勇者(笑)、そんな疲れ果てた顔をして」

「かっこわらいかっことじって口に出して言うな……というか誰のせいだと……」

「ったく、鍛錬が足りないんじゃないの? そんなんで勇者名乗ってて平気?」

「ぐっ、こいつ殴りたい……!」

 

 拳を握ってプルプルしてる勇者はよくわからんので放っておき、ゴリラとノコノコを抜く。

 

 が、その横を颯爽とピンク色の暴食の化身が抜けていった。

 

「ふっ、はやさがたりない」

「くっ、ウサギさんに先を越された……!」

「上手すぎるだろ!」

「まだだ! まだ終わらんよ!」

「……ねえハジメさん、私が言うのもなんですけど緊張感ゼロじゃありません?」

「ほっとけ、いつものことだ」

 

 三周目に入って早々ウサギに競り負けて落とされ、その間に隣のカップルに抜かれた。

 

 結局巻き返せずに最下位にボルテックフィニッシュを決めた所で、ふと周囲の空間が開ける。

 

 

 顔を上げると、そこにはまたご立派な両開きの扉が聳えている。

 

 薔薇と茨の装飾が彫られた見事な氷の門には四つの丸い穴が空いており、何かはまりそうである。

 

「あー、これは……」

「ん、私が幽閉されていた場所と同じ。開けるのに他のものがいる」

「え、ってことはまたあの迷路の中を彷徨わなきゃいけないわけ?」

 

 この中では比較的体力の低い美空が、それは嫌そうに顔を歪ませる。

 

 雫達も15時間以上経過した迷路探索に参っているようで、かなり精神的な疲れの滲んだ表情をしている。

 

 いくらうちの女性陣が精神的に強靭だろうと、長時間変わらない状況というのは摩耗していくものだ。

 

 無論のことハジメがそんな無駄な真似をするはずもなく、かぶりを振ってクロスビットを召喚した。

 

「シュウジ、お前これの鍵の場所の情報知ってるだろ。カマキリ貸してくれ」

「オケ、案内させるのね」

 

 異空間からカマキリを二匹召喚し、俺の頭の中にあるこの扉の〝鍵〟のイメージを伝達する。

 

 それぞれしっかり俺の思念を受け取ったカマキリ達は、鎌を片方あげるとクロスビットに飛び乗った。

 

 

 そいつらは探索用に調整した特別な個体であり、クロスビットに鎌を突き刺して〝共鳴〟を使った。

 

 ハジメはカマキリ達との接続の感覚が来たのか、数度目を瞬かせてからこちらに向けて頷く。

 

「そいつらの指示に従えばすぐに見つかるはずだ」

「助かる。いけ」

 

 カマキリを乗せたクロスビットは、広大な迷宮の中に鍵を求めて飛翔していった。

 

「さて、じゃあ休憩としようか。雫も疲れてるみたいだからな」

「ごめんなさいシュー」

「いやいや、どうせここで時間は取られたんだ。織り込み済みだよ」

 

 こちとら迷宮の内容知ってるんだ、鍵探しに時間を使うことも予定に入ってる。

 

 なので、雫達に無理のない範囲の速度でここまで行進してきた。あ、勇者は対象外です。

 

 

 ハジメが宝物庫から壁なしの天幕を取り出して広い部屋の中央に設置し、起動する。

 

 炬燵まであるその天幕に、皆いそいそと土足(対応済み)で上がり込んでほっと一息つく。

 

「そ、その布団のような代物はダメじゃ。人をダメにする予感がする……許容範囲を超える心地よさが襲ってくるに違いない……!」

 

 あ、ティオがまたなんか言い始めた。

 

「そう言う甘やかしを享受すると、竜人族はダメになる。ということで妾はこの甘美な堕落に落ちぬためにも自ら苦しみを」

「はよ入れ」

「あふんっ♡」

 

 ハジメによって変態が頭から炬燵の中に叩き込まれたところで、エ・リヒトの点検をしていた俺も中に入る。

 

 

 炬燵は全部で三つ用意されており、それぞれを点に三角形のような配置になっている。

 

 それにハジメとユエ達、俺と雫、勇者(笑)と凸凹カップルという具合に散開した。

 

「はぁ、温まる……でも、こんな感じで攻略していいのかしら」

「ははっ、それを言うのは半日くらい遅かったネ。はい緑茶」

「そうね、貴方達ゲームしてたものね。ありがと」

 

 ズズッと一口。うむ、寒い時に温かいお茶はベストマッチ。

 

 

『あれ、迷宮攻略ってなんだっけ(困惑)』

 

 

 つまりそういうことだよ。

 

「ふぅ……ところで参考までに聞きたいのだけれど、この後にある試練ってどんなものなの?」

「そうさなぁ。あまりネタバレしてもつまらないから、ハルツィナの幻に似てる、とだけ」

「幻……」

 

 少し黙考し、答えに至ったのか苦い顔をする雫。

 

 けれどそれは一瞬で、こちら含みのある笑い方で見上げてきた。

 

「つまり、またダメダメな貴方を甘やかすチャンスがあるのね」

「いやいや、そういうことじゃないから。ていうかそんなにダメだったの俺?」

「うふふ、あそこまで甘やかすのも、あれはあれで楽しかったわ……」

 

 やべ、今ちょっとゾクっとした。

 

「ふわぁー。あったかぁい」

「鈴、顔がとろけてるぞ」

「雪も風も入ってこないし、土足でもすぐに綺麗になる……やっぱり南雲は物作りの才能というか、発想というか、すごいな」

 

 どうやらあちらも寛いでいるようである。

 

「ハジメ、くっついていい?」

「そりゃもちろん」

「で、では妾も……」

「誰がお前はいいといったこの駄竜」

「あはぁんっ♪」

 

 ハジメのいる炬燵を見ると、桃色空間が広がっていて雫と苦笑いをした。

 

 

『劇薬混ざってんだろ』

 

 

 さて、しばらく休憩とするか。

 

 

『無視? 無視なの?』

 

 

「寒いと言ったら炬燵、炬燵と言ったら鍋だよな」

「もうこの非常識さにも慣れてしまったわ」

 

 待ってる間暇なので、腹ごなしに道具を取り出して鍋を作り始める。

 

 主に豚と白菜がメインであり、ついでに各々食べたい時用の具材も用意してある。

 

 ハジメ達や勇者(笑)達の方も、それぞれ別のジャンルで鍋を作っていた。

 

「あ、雫」

「はいはい、これね」

「サンキュ、あ、これいる?」

「あらありがと、ちょうど欲しかったの」

 

 うむ、出汁が効いてて美味い。

 

「ハジメ、あ〜ん」

「んむ……美味いな。やっぱり炬燵といったら鍋に限る」

「ハジメさん、こっちもあ〜んです」

「あむ。ん、美味い。それにしても、お前の料理の腕は日増しに上がっていくな。いい嫁さんになりそうだ」

「もうっ、ハジメさんったらそんな超可愛くてひと時も離したくないくらいのお嫁さんだなんて。照れますぅ」

「ハジメ、私は?」

「ん? そりゃあ世界一のお嫁さんになるさ」

「はいシア、あげる」

「あっ、ウサギさんありがとうございますぅ! あむっ!」

「ぶー。私もハジメにあーんしたかったのに」

「はい美空、あ〜ん♪」

「ん、美味しい」

「うむ、実に快適じゃのぉ」

 

 きゃっきゃうふふ、イチャイチャラブラブ。

 

 そんな擬音が聞こえてきそうな今日この頃です(口の中の豚が甘い)。

 

 あそこだけエ・リヒト以外の桃色結界ができている気がするが、しかし異論が一つ。

 

「ハジメ、世界一のお嫁さんは雫だ。そこは譲れん」

「お嫁さんというか、お前らはもう熟年夫婦だろ」

「おっと、体はまだまだ若々しいぜ?」

「はい、お茶のお代わり」

「ありがと」

 

 ずずっと一口。うむ、美味しい。

 

 

『こいつら(糖度が)正気じゃねぇ!』

 

 

 まあ俺と雫の相性の良さがベストマッチなことは、今更確かめるまでもないだろう。

 

 ハジメとかあのティオでさえ自然とあの中に収まってるし、大ハーレム完成の日も近い。

 

 

 それよりも……

 

「ほれ鈴、魚食え」

「うん。たくさん食べて英気を養わないとね!」

「頼りにしてるぜ?」

「うん!」

 

 ニコニコ笑顔で和気藹々と鍋をつついている凸凹カップル(仮)。

 

「和むなぁ」

「和むわねぇ」

 

 すぐ隣で勇者が非常にいづらそうにしているのが個人的にさらに面白い。

 

「……お、回収できたのか」

「ん?」

 

 実に和やかな時間に気分を緩ませていると、不意にハジメが視界の隅でゲートキーを取り出していた。

 

 そちらを見ると、ハジメは虚空にキーを突き刺し、そこを中心にゲートを開く。

 

 ゲートの向こう側には、氷壁に囲まれた部屋と、何かが乗せられていそうな台座が写っている。

 

 

 そして、そのすぐそばには細切れになっている氷塊の小山があった。

 

 かろうじて形の残っている塊を見ると、それは半壊した鬼の顔……恐らくは台座の番人か何か。

 

 

 番人だったものを背景に、クロスビットに乗ったカマキリがハジメに何かを差し出す。

 

 ハジメが受け取ったそれは、拳大の宝珠。

 

 間違いなく情報にあったのと同じ、この扉の鍵だ。

 

「おお、案外早かったね」

「お前の魔物のおかげで、戦う必要もなかったな」

 

 ほれ、と投げられた宝珠を危なげなくキャッチする。

 

 黄色の光を放つそれは精巧な球体であり、この扉然り、解放者の技術が窺える。

 

「もう下りもなく中ボスみたいなのが殺されてるのは、ツッコんだら負けなんだよな……」

「どうした光輝、ブツブツ言って。ほれ、豚食え豚。疲労回復にいいぞ」

「ああ、すまない龍太郎……」

 

 ったく勇者の野郎、人の貴重な食料分けてやってんのにあんなしょげた顔して食いやがって。

 

「でもこれ、平気なのかしら? この迷路を彷徨って、ようやく見つけた鍵をあの門番を打ち倒して手に入れる、とかがセオリーじゃないの?」

「ま、全部はまずいけど一つ二つは平気さ。それ言ったら俺、ちょっとミスってミレちゃんとこの迷宮裏の鬼畜ルートに強制招待されたけど攻略認められたし」

 

 

『ああ、ていうか本人と戦ってボコったよな』

 

 

 あれはいい勝負だった。

 

「じゃあ、残り二つくらいは直接取りに行くの?」

「んー、どうするお前ら? 俺がサクッと取ってこようか?」

「ん、私たちが行く」

「そろそろ、暴れたい」

 

 おっと、どうやら女性陣がやる気のようだ。

 

「じゃ、任せますかね」

「待ってくれ。せめて一つくらい俺達に取りに行かせてくれ」

「あん?」

「流石にこのままずっと休んでるのは、ここまで無理言ってついてきた意味がなくなる。頼む」

 

 箸と鍋の具材が入ったお椀を手に、キリッとした顔で力説する勇者。

 

 なんとも締まらない姿だが、まあその提案を飲むのはやぶさかではない。

 

「よし、行ってこい勇者。思い切り奮闘して、そのまま帰ってこなくてもいいぞ」

「ああ、わかった……絶対に帰ってきてやるからな」

「チッ」

 

 そんなことを話しているうちに、もう一つの方のクロスビットとカマキリが鍵を回収してきた。

 

 

 そのタイミングでハジメがゲートを通してクロスビットを回収し、新たにゲートを繋ぎ直す。

 

 新しいゲートの先にあるのは、広々とした空間が目の前にあるどこかの通路……鍵の台座の手前。

 

「よし、じゃあまずはユエ達からだ」

「ん。行ってくる」

「すぐに片付けてきますぅ!」

「いっちょ、暴れる」

 

 さほどの相手でもなし、ユエ、シアさん、ウサギの三人が攻略に送り込まれる。

 

 そこでまたゲートの出口をもう一つの台座前に設定し直し、勇者達と雫が炬燵から出ていった。

 

「よし、行こう」

「おう!」

「気力も十分、やっちゃうよ!」

「それじゃあ、行ってくるわね」

「おう、行ってらっしゃい」

 

 雫に手を振って見送った。

 

 流麗な動きで揺れるポニーテールを見たのを最後にゲートが閉じる。

 

 それからさほど時間を置かず、俺はいそいそと炬燵を出るとハジメ達の方にいった。

 

「うぃー、いったん炬燵に入っちまうとちょっとでも外に出たくないな」

「はは、寂しがり屋め」

「うっせぃ、恋人の温もりがないと寂しいんじゃ」

 

 

 

 からかってきたハジメのみかんを強奪し、皮を剥いて丸ごと頬張った。

 

 

 

 





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