星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、めちゃくちゃ傷心中の作者です。

シュウジ「なんか大変だったらしいな、作者。フラれたんだってよ」

ハジメ「それは…災難だったな。自分がそうだと思うとゾッとする」

シュウジ「不安にさせちまったのが悲しかったんだとよ。俺も気をつけねえとな」

エボルト「お前ら自分の彼女大好きだもんなぁ。で、前回は美空やカオリンたちの話だったな。思った通り、あの女只者じゃねえ」

シュウジ「性格的に、多分あいつだろうな。こいつは次にあったときおっかないぜ」

ルイネ「実際、私たちの中で一番静かに怒っていたのは彼女だ。マスター、頑張れ」

シュウジ「丸投げかい!」

エボルト「まあせいぜい頑張れ。んで、今回は俺たちの話だ。それじゃあせーの…」


四人「「「「さてさてどうなる迷宮編!」」」」


エボル フェーズ1

 

 奈落の底に落ちてから数日。

 

 

  俺たちは今、迷宮の中をひたすら歩き続けている。眼前に広がるのは、下に向かって緩やかなカーブを描く石階段と淡く光る緑光石の壁のみ。

 

  なぜハジメを探さずにこんなところにいるかというと、まずここは女神様からもらった知識にない裏道のような場所だからだ。

 

  どうやら落ちてる時に壁に激突しまくった結果、ちょうどこの道に繋がる場所に落ちてしまったようなのだ。最初に目覚めたのは階段の入り口のあった部屋だ。

 

  壁をぶち抜いて正規の迷宮に戻ろうとしたが、ある程度は壊せるものの何かの作用が働いてるのか、一定以上進むと何をやっても壊せなかった。

 

  結果、たまにある小部屋で休憩しながらこうやってひたすら階段を降りてるわけだ。もう一週間と何日歩いただろう。

 

  次にハジメのことだが、何かの妨害効果によって迷宮内での瞬間移動が使用不可になっていたので、地上に戻ることすら不可能になった。

 

  実はこの瞬間移動という技能、チートかと思ったらそうでもない。事前に設定した座標……例えば場所や人……にしか飛べないのだ。それも一度見たことや接したことのある対象じゃないと使えない。

 

  それ以前に、数日前に突然ハジメの座標が消失した。まさか死んだのかと思ったが、それは違った。全くの別物になっていたのだ。

 

  どうやら何かが起こったらしいハジメは、しばらく一階層で動き回った後、何度か変異を繰り返すとどんどん下に向かい始めた。

 

  ならばと、こちらもそれを追いかけるようにこの階段を降り始めたというわけだ。あまりにも代わり映えしないからそろそろ飽きてきた。

 

  この螺旋状の階段が隠し通路なのか裏道なのかは知らんが、流石に〝隠れ家〟、あるいは正規の迷宮のどこかに出口が繋がってるだろう。

 

 

 閑話休題。

 

 

  進む順番は俺を先頭に、真ん中にルイネを挟んでしんがりにエボルト、という具合である。この中で一番戦闘能力がないのは彼女だ。

 

  というのも、女神さまのいう通り、ルイネは力の一部を失っていたのだ。記憶は全て回収したらしいのだが、特殊能力と呼べるものをいくつかなくしている。

 

  おまけに身体能力も全盛期と比べてセーブされているらしく、自分では解けない状態。それでも半分程度の力はあるようだが。

 

  ちなみに、あのコブラ状態の時に使っていた能力のいくつかもルイネの力だ。幸いそっちは残ってたらしい。

 

「タコ」

「コーヒー」

「ヒーター」

「タコ」

「ココナツ」

「蔦」

「タコ」

「……コンフィ」

「板」

「タコ」

「おいお前ら、俺がタコ嫌いなのわかってて誘導してんだろ」

「何言ってんだそんなわけないだろ、おらエボルトあくしろよ」

「シュウジテメェ……」

 

  ぐぬぬ状態のエボルトを俺は愉悦顔でほらほらあくしろよ、と促す。ルイネがそっぽを向いてプルプル笑いをこらえてた。

 

  そういや前になんでタコ嫌いなのか聞いたら、どうやら火星人が俺たち地球人のイメージ通りタコっぽい見た目で、ベル様に倒されたかららしい。

 

  なので、地球では週に一回必ずタコ焼きを食いに行くことにしていた(ゲスの極み)。エボルトはもはや諦めの境地に達しているようだ。

 

  それにしても、ルイネもこの数日で随分と打ち解けたものだ。俺はもとより、エボルトともうまくやっている。よきかなよきかな。

 

「………ん?」

 

  そんな風に歩いていると、不意に前方に少し開けた踊り場が見えた。これまでの部屋と違い、石畳が引かれている。

 

  振り返って二人と目配せをして、足を早める。程なくしてたどり着いたその踊り場は、遠目で見た通りそれまでとは一風変わっていた。

 

  遠目で見た通り規則的に石畳が敷き詰められており、壁には等間隔に松明が設置されている。魔法によるものなのか、絶えず燃え続けていた。

 

 そして何より……

 

「……でけえな」

「黒いな」

「硬そうだな……ってやめなさいよ。つーか、いかにも重要ですって感じだな」

 

  降ってきた階段を後ろに見て、左側。正規の迷宮のある方向の壁には、五メートルにもなる両開きの巨大な扉が鎮座していた。

 

  縁の部分には細かな装飾がなされており、大部分のほうには全身から刃を生やしたプテラノドンのような魔物が刃の嵐の中で飛ぶ姿が描かれている。

 

  試しに探知魔法を使って、中の様子を調べてみる。瞬間移動など一部の技能は封じられたが、前世やこの世界で習得した魔法は全て使えた。

 

  すると、やはりいた。詳しくは見えなかったが、扉の向こうの部屋の中央に、巨大な何かが待ち構えている。

 

「どうするシュウジ、無視して進むか?」

「……いや、行こう。もしかしたらルイネの力を取り戻せるかもしれん」

「私の?」

 

  自分の顔を指差してキョトンとするルイネに、「ああ」と頷いた。

 

「お前はこの世界において、【真のオルクス大迷宮】の一部として俺の前に姿を現した。ならば、失った力を取り戻す方法もこの迷宮の中にあるはず。そこにこんなあからさまな場所だ、十分に可能性はあるだろう?」

「なるほど……さすがはマスター、ふざけてばかりかと思ったが、洞察力は健在か」

「お前最初の頃、めちゃくちゃ戸惑ってたもんなぁ」

 

  まあ前世と比べたら全く真反対の性格に見えるから、それも仕方がないか。中身はあまり変わってないんだけどね。

 

  ちなみに当のルイネさんは全くお変わりなく、人を寝てる間に食って(意味深)くれた。それも三回も。わざと静観していたエボルトは絶版だ(某社長感

 

「……わかった。私は行くのに賛成だ」

「ま、俺はお前らについてくだけだ。やるなら徹底的にやってやろうじゃないか」

「オーケー、それじゃあいこうか」

 

  二人の了承を得た俺は、両手で扉を押す。するとゴゴゴゴゴゴ……という音を立てて、ゆっくりと扉が開いていった。

 

「気張って行くぞー、えいえい」

「「おー」」

「声が小さいっ!もっと熱くなれよ!」

「「おぉおおおおおおおおっ!」」

「よろしい!」

 

  満足げに頷いた俺は、二人を伴い完全に開いた扉の向こうに足を踏み入れるのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  その部屋は、一言で言えば〝鏡〟だった。右を見ても左を見ても、俺たち三人の姿が歪んで写り込んでいる。

 

  形状はドーム状になっており、横も縦もでかい。十字形に壁に張り付くように柱が立って支えており、中央なんか八メートル以上はあるだろう。

 

  その中央には、一つの台座があった。細かな彫刻の施されたものであり、その上に巨大な魔物の彫像がでんと乗っかってる。

 

  その彫像は、扉に描かれていた魔物によく似ていた。全身から刃の生えている、鎧じみた皮膚を持つプテラノドンのような姿をした魔物だ。

 

「あれ、近づいたら生身になるやつだよな?」

「トラップあるあるだな。ルイネはここにいろ、万全じゃない状態で正体不明の相手に戦うのはリスキーだ」

「了解した。マスター、ご武運を」

 

  そう言ったルイネは、なぜか、なぜか(大事なことだから二回言った)俺の頬にキスをすると一歩下がった。隣のエボルトからのニヤニヤ顔がウザい。

 

  とりあえずエボルトにハイパークリティカルスパーキング(黄金の左手)を食らわすと、スタスタと彫像に近づいていく。

 

 

 

 バンッ !

 

 

 

  あと三メートルというところで、後ろから大きな音がした。振り返って見れば、扉が閉まっており、ルイネがふるふると首を横に振っていた。

 

  それに頷いて視線を戻すと、ちょうど彫像にヒビが入り、中から鈍色に輝く皮膚が見え隠れしているところだった。ある意味ポロリだな(錯乱

 

  数分ほどで全身が露わになり、魔物の目が血のような赤色に光る。そして雄々しく翼を広げ、大きく咆哮を上げた。

 

 

 

 ギョォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

 

「……もうちょい他の鳴き声なかったん?」

「そんなゲームの見た目と鳴き声がミスマッチなモンスターみたいなこといっても仕方がないだろ」

「様にそれだけどな……まあいいや、そんじゃ初公開といこうか、パラド」

「おう……って確かに目が赤く光るけど作品が違うわ馬鹿野郎」

 

  そう言いながらも、エボルトは俺の差し出した拳に自分の拳を当て、スライム状に戻って俺の中に戻ってきた。目が赤くなるのがなんとなくわかる。

 

  エボルトが入ってきたのを確認すると、俺は不敵な笑みを浮かべて異空間に手を入れる。そしてそこからエボルドライバーを取り出した。

 

  自作ではなく、正真正銘メイドイン女神様のエボルドライバーを腰に押し当てる。するとベルトが飛び出して装着された。

 

 

《エボルドライバー!》

 

 

  エコーのかかったエボルトの声を聞きながら、エボルドライバーと一緒に取り出していたコブラエボルボトルとライダーエボルボトルの蓋をセット。

 

  そうすると逆さまにし、エボルドライバーのスロットに装填した。

 

 

《コブラ! ライダーシステム!》

 

 

《エボリューション!》

 

 

  ボトルの前面に歯車とブラッドスタークのマスクの重なったシンボルとビルドマークが出現、融合して惑星のシンボルとなる。

 

  続いて、変身待機音声が流れ始めたので右手でレバーを握り回し始めた。部屋に響くのは、ベートーベン交響曲第9番に似た荘厳な音楽。

 

  それに合わせるようにドライバーからチューブが出現し、コンテナ状に広がってエボルボトルの成分で鎧を作り上げていく。

 

  やがて、音が止まった。靄のかかった半分の人型を囲む黄金の輪を見ながら、俺は両手を胸の前でクロスした。その瞬間、世界から音が消えたような錯覚を覚える。

 

 

《ARE YOU READY?》

 

 

  さあ覚悟はいいか、そう問いかける言葉に俺は、静かに呟いた。かつて数多の惑星を滅ぼし、喰らい尽くした星狩りを生み出す言葉を。

 

 

 

「『変身』」

 

 

 

 あっエボルト被せてきやがった。

 

  両手をゆっくりと広げた俺に正面と背後から人型が迫り、そして一つになる。その瞬間、自分が別の何かに変わる感覚を覚えた。

 

  自分を保ったまま、エボルトと完全に一つの生命体となり、新たな存在へと生まれ変わる、そんな不思議な感覚。

 

 

《コブラ……コブラァ……エボルコブラァ!》

 

 

  程なくして、視界を覆っていた無数の星が煌めく靄が吹き飛び、同時に視界が開けて外界が見れるようになった。

 

 

《フッハッハッハッハッハッハッ!》

 

 

  悪どい高笑いが響く中、鏡の壁の中で肩の円盤が回転を止め、黄金の輪で封じられた胸のアーミラリアクターが怪しく光る。

 

『エボル 、フェーズ1』

 

  それに俺は、エボルトのものになった声で一言呟いた。その瞬間、牙を剥いた蛇が向かい合ったような赤い複眼が輝く。

 

  変身した俺は、赤と青、そして黄金で彩られた非常に豪奢な姿をしていた。全身に星座や惑星を模した鎧を身につけ、額には星座早見盤がある。

 

  それはまさしく、仮面ライダーエボルフェーズ1、コブラフォームそのもの。中のやつはともかく、ビルド系ライダーの中でも随一のお気に入りであった存在に、俺はなっていた。

 

〈おいコラ、どういう意味だ〉

 

  そのままの意味だ。ていうかこの状態でも会話できんのな。

 

 

 

『さあ……絶望のカウントダウンを始めようか』

 

 

 

  エボルに変身した時のために考えていた決めセリフを言いながら、気だるげな動きで金色の人差し指を向けた。

 

 

 さあ……戦いを始めようか。

 

 

 ●◯●

 

 

 ギュォオオオオオオオオオオォォオオオッ!

 

 

  俺の言葉に答えるように咆哮した魔物は、翼をはためかせ高く飛翔する。それを追いかけて見上げると、ドームの天井まで魔物は上昇していった。

 

 

 ギュォアアアッ!

 

 

  魔物が翼を大きく動かしたかと思えば、無数の刃が雨のように飛来してくる。さらにそれが壁に映り込み、さらに倍に見えた。

 

『なるほど、こりゃ混乱して本物と見分けがつかないって寸法か……だが』

 

  異空間からネビュラスチームガンとトランスチームガンのレプリカを取り出すと、銃口を上に向ける。

 

 

 

 ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

 

 

  そして飛来した刃全てを、エネルギー弾で打ち砕いた。あいにく、この程度の弾幕なら前世で億単位で受けてきたから楽勝だ。

 

  魔物の方もせいぜい小手調べだったのか、盛大に咆哮してドームの中を飛び回る。今度は旋回しながら不規則に刃を放ってきた。

 

『フッ、ハッ!』

 

  トランスチームガンをスチームブレードに持ち替え、刃を冷静に弾き返す。隙を狙うように背後から飛んできたものはジャンプしてかわし、お返しにトランスチームガンを魔物に撃った。

 

  しかし、エボルをして速いと感じるほどの速度で飛び回る魔物にはなかなか当たらない。当たってもせいぜいかすり傷程度だ。

 

『それなら……』

 

  ネビュラスチームガンを脇に挟み、異空間からガトリングフルボトルを取り出してスロットに装填。持ち直して銃口を上に構える。

 

 

《フルボトル!》

 

 

  認識したのを確認して、ネビュラスチームガンの引き金を引いた。すると特大のエネルギー弾が射出、空中で分散して四方八方に飛んでいく。

 

 

《ファンキーアタック!フルボトル!》

 

 

 ギョオォオオォオオオオッ!?

 

 

『エネルギー弾のお味はいかが?なんてな』

 

  挑発するように言うと、エネルギー弾をいくつか避け損なった魔物は苛立ったように声を上げてさらに速く飛び回る。

 

 

 ギュァアッ!

 

 

  魔物はまた、翼を振って刃を飛ばしてくる。しかしそれは俺を狙っておらず、まったくもって見当違いの咆哮だった。

 

  痛みで錯乱したかと思いながらも、警戒しながら刃を目で追いかける。すると刃は壁にあたり……そのまま()()()()()()

 

  激突して突き刺さる、あるいは砕けるかと思えば、まるで鏡面が水のように波打って刃を吸収したのだ。

 

〈シュウジ、後ろだ〉

『わかってらぁ』

 

  そして背後の壁から飛び出てきた刃を、俺は駒のように体を半回転させてブレードで切り裂く。魔物を見れば、悠々自適に飛び回っていた。

 

  今のはあの魔物の能力、あるいはこの部屋の壁に何らかの特殊な効果があるのだろう。鑑定魔法で調べたいところだが、あいつを倒してからだ。

 

  それから魔物は、普通の刃と壁から壁の中を移動する刃を織り交ぜて攻撃を仕掛けてきた。時には壁の中に吸い込まれてそのまま出てこないフェイクも織り交ぜてきやがる。

 

『なかなか知能が高いようだな……が、勝つのは俺だ』

 

  三つ同時に、まったく別の方向から飛んできた刃を全て切り裂くと、瞬間移動で魔物の眼前に移動する。どうやらエボルの時は使えるようだ。

 

  ギョッとする魔物の横っ面に、ブレードを握った手でフックを叩き込んでやる。超人的なパワーが発揮され、魔物は強制的に横移動した。

 

『フンッ!』

 

 

 ギャァッ!?

 

 

  進行方向にある壁にぶつかる前に再び瞬間移動、今度はかかと落としをお見舞いする。また吹き飛ぶ魔物。

 

  同じ動きを繰り返し、殴り、あるいは蹴り飛ばしては瞬間移動で進行方向に出現し、まるでボールのようにポンポンと宙を舞わせた。

 

『どうした、お前の力はそんなものか!』

 

 

 ギュァッ!

 

 

  そんなわけあるか!と言わんばかりに鳴いた魔物は、きりもみ回転して強引に翼を叩きつけてきた。まあ瞬間移動で回避するけど。

 

  地面に着地すると、魔物はどうだと言わんばかりに鳴き、見せつけるように部屋の中を飛び回る。ムカつく魔物である。

 

『いいぜ、そっちがその気なら……』

《パイレーツ!ライダーシステム!クリエーション!》

 

  異空間から取り出した海賊フルボトルをコブラエボルボトルと入れ替え、異空間の中にあったカイゾクハッシャーを出現させる。ちなみに直接出せるけどわざと出した。

 

 

《READY GO!パイレーツ!》

 

 

  カイゾクハッシャーを手に持ち、ミニチュアのような電車……ビルドアロー号を引く。すると弓にエネルギーが溜まっていった。

 

《各駅電車〜!急行電車〜!快速電車〜……海賊電車》

『こいつでもくらいな!』

《ハッシャー!》

 

  ビルドアロー号を手放すと、緑色の電車型のエネルギーが飛び出して魔物に飛んでいく。

 

  当然魔物は避けるが、あいにくあのエネルギーは追尾性をもってる。魔物を執拗に追いかけ回し、捉えて爆発した。

 

 

 ギュァ、アア……

 

 

  ボロボロになって落下した魔物に、カイゾクハッシャーを異空間に放り込みながら歩み寄る。そしてしゃがんで話しかけた。

 

『さて、お前との追いかけっこもそろそろ終わりだ。短い時間だったが楽しかったぞ。チャオ!』

 

  言い終えると立ち上がり、エボルドライバーのレバーを回す。すると再び交響曲9番のような音楽が流れた。

 

  右足の下の地面に、星座早見盤のようなフィールドが出現。中腰になって右足に力を込めると、エネルギーが収束していった。

 

 

《READY GO!》

 

 

『ハッ!』

 

  レバーから手を離して、魔物をアッパーカットで打ち上げる。そして落下してきたところに、右足を胸に叩き込む!

 

 

《エボルテックフィニッシュ!Ciao〜♪》

 

 

 ギュ、ラァアアアァアアアアアァアアッ !

 

 

  断末魔の叫び声をあげながら、魔物は爆発した。爆炎が全身を撫でるが、スーツを着ているのでまったく熱くない。

 

  程なくして、炎と煙が散った。視界が晴れた頃には、魔物はもういなかった。魔石すら残さず消し飛んだのだろう。

 

『ふぃ〜、決まったぜ』

〈お疲れさん。初めてにしてはいい動きだ。ていうか俺と同じくらいとかふざけてんの?〉

 

 嫉妬すんなよブラッド族(笑)

 

「マスター!」

 

  ボトルを抜いて変身を解除していると、ルイネが走り寄ってくる。そのまま飛びついてきたので、危なげなくキャッチした。

 

「っとと、平気だったかルイネ?」

「ああ、マスターの勇姿をたっぷり見れて満足だ。私の知らない新たな力をあそこまで使いこなすとは、さすがマスターだ」

「ビミョーに質問に答えてないけど……まあいいか。で、力は戻ったか?」

 

  そう聞くと、ルイネは自分から離れてにんまりと笑う。そして両手を大きく広げた。見覚えのある動作だ。

 

  すると、地面がボコリと隆起して金属のナイフが現れ、彼女の周りを浮遊した。更にどんどんナイフが生成され、最後には十本になる。

 

「ほお、そいつが失っていた力か」

「ああ、〝周囲の自然から金属を集め刃物を創造する力〟。マスターのおかげで取り戻せた」

 

  分離したエボルトが感心したような声をあげ、ルイネは自慢げに胸を張る。それに、前世で最初にその力を見たときの自分が重なった。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

  そうして話していると、突如部屋が激しく揺れ始めた。鏡のような壁から光が失われ、粉々に砕けていく。

 

「おいおい、こりゃ脱出したほうがよさそうだな!」

「同感だ!捕まれルイネ!」

「承知したマスター!」

 

  やけに胸を押しつけるように密着してきたルイネの腰に手を回し、エボルトとともに瞬間移動で外の踊り場まで退避した。

 

  足が踊り場の地面についた瞬間、背後で部屋が崩れ落ちる音がした。振り返れば、荘厳な扉のあったそこには、瓦礫の山があるだけだった。

 

  それを見てほっと安堵の息を吐いた俺たちは、地面に座り込む。そして互いの顔を見あって笑顔を浮かべた。

 

「ギリギリセーフ、ってとこか?」

「だな。まあ俺はスライム状になれば耐えられるけど」

「うっわなにそれズルい」

「何にせよ、全員無事で生還だな」

「だな」

 

  同意しながら、握った拳を突き出す。二人は最初はきょとんとしたものの、すぐにニヤリと笑って自分の拳を打ち合わせてきた。

 

 

 

 

 

  こうして俺たちは、エボルの力を使うのとともにルイネの力を取り戻したのだった。




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