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去年に引き続き、オリキャラルイネさん。何回かアップデートしてるけど、大人っぽさは増しています。
シュウジ「俺だ。前回はなくてもいい回だったな」
光輝「ちょ、流石にそれは酷いだろ!」
ハジメ「まあそうだな。で、天之河。お前は前回の間どこでサボってたんだ?」
光輝「ちゃんと俺が戦ってたよ! まったく……で、今回はその続き、合流してからみたいだな。それじゃあ、」
二人「「さてさてどうなる洞窟編!」」
光輝「最後まで言わせてくれよ!」
はい、今年もこんなで始まります。
シュウジ SIDE
どーもみなさん、北野シュウジです。
俺は今、一歩も動けずに冷たい地面と熱いキスを交わしています。
いや冗談じゃなく本当に。
「ま、マジで指の一本も動かねぇ……」
『当たり前だ。どれだけの力を消費したと思ってる』
「ざっと体力と魔力と気力を根こそぎ持ってかれたよ……」
いや、今回の試練ばかりは心の底から死ぬかと思った。
地面から吹き出る白い炎に降り注ぐ血濡れの剣や槍、真っ黒な炎と氷壁にバスケットボール大の穴を開ける雷。
無慈悲に心臓やら肺やら狙ってくる悪魔も真っ青な戦士に全方位から殺しにかかってくる百足型の尾。
極め付けに遠距離からノータイムで剣の雨が落ちてくるわ、アホほどデバフにトラップ、不意打ち騙し討ち仕掛けてくるわ。
なんなのあいつら、一人一人が強すぎでしょ。そこはスペックが六等分とかされてねえのかよ。
それどころか全員カスみたいな記憶に残ってる全盛期レベル、しかも連携してきたんですけど。
『これは俺の実在をかけた戦いだ(キリッ)』
んなこと言ってる場合じゃありませんでしたよ、ええ。
エボルに変身したね。なんなら開始10秒で速攻変身したね。
それでも平然と押され、ブラックホールの超スペックと俺が泣いた。
それでも持てる限りの力を絞り尽くし、可愛い百鬼夜行たちを全滅させ、カマキリ達も9割死滅し。
それでようやく、なんとかギリギリ、地獄への入り口に小指一本引っかかって生き残れた。
え、実際のそのシーンはどこだって?
いやだって自問自答と醜さの克服とか愛ちゃん先生の時にやったし、展開的に無駄でしょ(メタい)
まあ一言で片付けるとこれだ……一体いつから、主役のバトルシーンがちゃんと描写されると思っていた?
『ここまで追い詰められたのは初めてじゃないか?』
「かもなー……何もかも枯渇して動けん。エボルト頼む」
『はいよ。まったく、世話のかかる相棒だ』
俺の体から赤黒いオーラが飛び出して、白髪赤眼の俺の姿を取る。
一度伸びをしてから、口を除いた全身が麻痺したみたいに動かせない俺を見下ろしてきた。
「まるで陸に打ち上げられた魚だな」
「麻酔銃で撃たれたクリプラの気持ちがわかったよ。とにかくほれ、はよしろ」
「りょーかい。そら、腕を肩に回すぞ」
なされるがままにエボルトに肩を貸してもらい、ちょっとだけ力の入る足で立つ。
そのまますぐ前方にあった通路の方に、ノロノロと入っていった。
「いやー、もう二度とやりたくねえわこの試練」
「その割には清々しい顔だな?」
「ん、そう見えるか?」
本当に、今更なんでもない試練だった。
虚像が放つ言葉は王都での愛ちゃんに似通ったもので、とうに受け入れたもの。
独善も傲慢も欺瞞も虚偽も、それら全て俺のものとして受け入れ、肯定してきたのだ。
それならきっと、胸の中に感じるこの気持ちは
魔女も獣も人喰いも守護者も、兵器のヒーローも打ち倒した末に、最後に相対したカインの虚像。
狡猾で嫌らしく、厄介な……俺が他の誰より向き合わなくてはいけない実像。
部屋が丸ごと吹っ飛ぶような戦いの後、アレは消えていきながら俺にある言葉を言ったのだ。
それは……
「〝弱きに救いを、強きに終わりを。正しきに報いを、悪しきに罰を〟……か。
「お前にとっては当たり前すぎて気が付かなかった、だろう?」
「そうかもな」
モノとしちゃ既に経験した展開だったが、それでも得るものはあった。
そう内心満足していると、溶けていった前方の通路に出口が見えてきた。
さて、女神ペディアによれば誰かこの先にいるはずだが。
あのアホ勇者だけは勘弁してくれと思いながら通路を抜けると──
「むぅいいいぃ、ユエのおたんこにゃすぅううう!!」
「……うるひゃい。むっちゅりしゅけべぇ」
「ああもう! 二人ともいい加減にしてくださいよぉ~!」
なんか、ワケワカメなことになってた。
ユエと白っちゃんが取っ組み合いして、その側でシアさんが狼狽えてる。
いつものじゃれあいなんだろうけど、あの試練の後に普通やる?
「え、あれどうなってんの?」
「俺に聞くな、本人達に聞け」
「だよねー。ってことで連れてって」
「はいよ」
舞台で使うお飾りの人形のようにエボルトに運ばれ、三人に近づく。
足音で気がついたのか、シアさんがこちらに振り向くとパァ! と顔を輝かせた。まるで助けが来た! と言わんばかりだ。
が、エボルトに引きずられてるのを見てケッ使えねえですぅという表情になる。扱いが酷くて辛い。
「よっ、シアさん。あっちの二人どしたの?」
「あー、説明すると長くなるんですけどね」
「いいよいいよ、どうせすぐ終わんないだろうし、俺今ガス欠だし」
「……まさか、またアレ使ったんじゃないでしょうね?」
「いや、単純に死ぬほど戦って死ぬほど疲れただけ」
「本当ですかぁ?」
シアさんの目は細まるばかりで、まったくもって信用されてないことが一目瞭然である。
チラッと隣のエボルトに視線をやり、こいつが肩を竦めるとようやく納得したように目を戻す。
嘘ならハジメさんに報告しますよ? ん? という威圧に、俺はどうにか苦笑いでやり過ごした。
「んで、これは一体?」
「ええとですね、まず私が自分の試練を突破したところから始まるんですが……」
そこからのシアさんの話を要約すると、こうだ。
俺と同じようにとっくに自分の罪悪を受け入れていたシアさんはあっさり勝利
↓
その後ユエと合流したが、なんかボロボロで表情も暗く、悩んでいた
↓
心配になって聞いてみると、自分に万が一があったらウサギや美空と一緒にハジメを頼むと言う
↓
シアさんブチギレ、これまでで最大の大喧嘩勃発
「で、私もユエさんもボロボロになるまで罵倒と拳を交わしあったんですよ」
「女の友情って拳で深めるものだっけ(真顔)」
「まあハジメの女だからな(不変の理論)」
「なるほどそういうことか(納得)」
ハジメの女だから、このワンフレーズだけで全ての暴力的展開を説明できる便利さよ。
その後、そうなるまで色々ぶちまけて、ユエの不安なんか一緒に乗り越えようとなったらしい。
思い出すなぁ、グリューエンの後ハジメにしこたま殴られて大事なことを言われたあの時のことを。
やっぱり付き合ってると内面も似てくるのかね? ほら、シアさんとか特に最近バグ化が酷いし。
「でも、夢中になってる間に私とユエさんで香織さんの虚像をかなり痛めつけちゃったみたいで、それを倒したはいいけど憤懣やるかたない香織さんが……」
「ユエに実力行使に出たわけね。まあそりゃ怒るか、巻き込み事故だし」
「完全なるとばっちりだな」
白っちゃんも可愛そうに。きっと真面目に試練と向き合ったんだろうなぁ。
しかし、ユエの悩み……か。
以前本人から聞いた過去の話と女神ペディアの内容から、その概要を想像することは可能だ。
恐らく、ユエが虚像に言われたのは
かつて最強と謳われた吸血鬼の国、その王として歳若いながらも君臨した天賦の才を持つ美しき少女。
されど彼女の叔父、そして彼に連なる者共によって国は落とされ、美姫の存在は奈落に葬られた。
その事件の
ユエは、暗闇の中で貯め続けた負の感情によって捻じ曲げてしまった記憶との齟齬に苦悩している。
その苦しみは、自分自身で変えてしまった記憶を修正することでしか解決はできない。
俺はこうしてトータスの歴史☆完全攻略ガイドを持ってるからまだ理解できる。
しかし、シアさんからしたらいきなり頓珍漢をのたまってくれたのだろう。
「ま、お疲れさん。やっぱシアさんはハジメの女としてふさわしいよ」
「な、なんですか突然。というか本当に動けないんですか? 雫さんが心配しますよ?」
「これがホントもホント、冗談抜きに地獄行き一歩手前だったんだわ。難易度設定の変更を要求したい」
「一体どんな試練受けたんですか……」
そんな風に話していると、不意に部屋の中の魔力の変動を感じた。
視線を近くの氷壁に向けると、その部分が溶けて新たな通路が現れる。
「む、あれは……」
「なんじゃありゃ?」
「キャ、キャットファイト?」
通路から出てきたのは、ティオと坂みん、それに谷ちゃん。
三人とも取っ組み合い中の二人を見て、ティオはともかく残りの二人は困惑している。
オロオロとする様は、恋人繋ぎの手もあって非常にお似あ……ンンンンッ!!?
「おいあれ、俺の見間違いか?」
「は? いきなりなんのこと……ほお?」
「お二人とも、どうしたんで……ええっ!」
二人のリアクションを見る限り、どうやら俺の目の錯覚ではないらしい。
そんな俺たちの奇声に、二人を見ていた坂みんと谷ちゃんの視線がこっちに移る。
そして、ニヤニヤしている俺達を見て顔を見合わせ、それから一瞬で赤面した。
「ああああああああにょ、あにょね、これぁね!」
「おい鈴落ち着け、まともに呂律回ってねえじょ!」
「龍っちもじゃん! ていうかこの手! 他の誰かと合流したら外そうって言ったじゃん!」
「だ、だってお前が全然力緩めねえから!」
「そ、そっちだって!」
「……と、このような現状じゃ。祝ってやってくれんかの?」
なんか真っ赤な顔でイチャイチャし出した二人に、ティオがゆるりと手のひらを向ける。
同じように聞いた二人がシンクロした動きでこちらを見てうわリンゴみたいな顔。
まあ、俺達の反応など決まってる。ニッコリ笑顔でこう言うしかなかろう。
「お二人とも、おめでとうございます! 今か今かと心待ちにしてましたが、ついにやったんですねぇ!」
「「あ、ありがとう?」」
「おめっとさん二人とも、結婚式には呼んでくれ」
「いや、むしろ俺達が式を準備してやろう。ほら、あっちの世界でツテがあったろ」
「あー、あったあった」
「「それはまだ気が早いっ!」」
つまりする気はあるんですね本当にごちそうさまでした。
腕もあげられないので心の中で合唱していると、シアさんがまだ喧嘩してる二人に声をかける。
「ほら二人とも、シュウジさん達にティオさん達も合流しましたよ! ほら、ほっぺから手を離して、ポカポカしないで! あ、こら足を出さない! やめ……やめろって言ってんでしょうがぁ!」
鉄拳炸裂。
俺の何重もの対物理結界すらブチ破る鉄拳が二人の脳天に叩き込まれた。
ゴキン! とか鳴っちゃいけない音がして、二人は頭を抑えてうずくまる。
「頭が、頭がぁ〜!」
「……シア、もうちょっと手加減する」
「しません! ウサギの顔も三度までです!」
「うーんこのグダグダ、まるで実家に戻ったような安心感」
「これぞ俺達。だな」
「シアはどんどん強くなるのぉ」
「なんか、毒気が抜かれちゃった……」
「俺もだわ……」
などと言っているうちに、次々と先ほどのように氷壁に穴が空いて通路が開通していく。
まず一番近い通路から、ハジメとウサギ、美空達が。なんか美空がハジメにべったりしている。
次にその隣の通路から雫が出てきて、最後に三つ目の通路からアホタレ勇者がひょっこりと顔を出した。
「お、無事に合流できたな。で……なんでユエと香織は頭抱えてうずくまってんだ?」
「それはなハジメ、海より高く山より深い訳があるんだよ」
俺の言葉に反応して、全員の視線がこちらに向く。
そして次の瞬間から一気に氷点下まで下がっていった。主にハジメと雫が。
あっれーおかしいな、心臓が凍りつきそうな悪寒を感じるぞ?
もしかしてこれ、やばいのでは?
「シュウジ。怒らずに無慈悲に半殺しにしてやるから、今度は何をしたのか言ってみろ」
「シュウジ、このブレスレット南雲くんに言って改良してもらったの。理由は……わかるわね?」
「待って待ってほんと待って、今回ばかりは何もしてない! ただ戦って疲れただけ!」
「「嘘つけこの史上最大の大馬鹿男」」
「辛辣!?」
それからみんなに納得してもらうまで、エボルトに支えられながら必死に弁明した(瀕死)
読んでいただき、ありがとうございます。