星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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これ書いたの、実は十一月中……当時の自分ほとんど執筆に時間割いてたな。

エボルト「よう、俺だ。前回はシュウジが死刑確定したな」

シュウジ「してねえから。ちゃんと説明したから!」

ハジメ「とりあえず心配させた分はキッチリ反省してもらうぞ」

雫「そろそろ実行するべきかしら…」

シュウジ「ヒィッ!」

エボルト「お、ようやくか……さて。今回はその後、隠れ家での話だ。それじゃあせーの、」


四人「「「「さてさてどうなる洞窟編!」」」」



7つの力を揃えた、◯龍を呼ぼう

 

 ハジメ SIDE

 

 

 

「……なるほど、事情はわかった。エボルトの説明もあるし、八重樫の腕輪も反応してないから無罪としよう」

「うへー、助かったぁ……」

 

 ガックリと頭を落とすシュウジ。

 

 冗談の一つでも言わないあたり、どうやら極限の疲労状態というのは本当のようだ。

 

 他のメンバーもほっと安堵し、単なる戦闘でのバックファイヤなら仕方なしと判断する。

 

「もう、心配するじゃない」

「ごめんなー雫。俺だけ難易度おかしかったんだよ」

「まあ、ご苦労さんとしか言えんが……それにしても、ユエの記憶か」

「……ん」

 

 シュウジの尋問の傍ら、復活した本人から聞いた試練の内容。

 

 それはどうやら俺が今見た以上に深刻な問題のようで、ユエは眉を下げている。

 

 だが……

 

「なんていうか、今更感のある話だな」

「……ん?」

 

 俺の言葉に首を傾げ、数秒の後にハッとするユエ。

 

「ハジメ、気がついてた?」

「まあな。ユエの不死性が技能、ひいては魔力由来のものじゃなかったら気がつかなかっただろうが……現にこいつも自分の体を回復できてないし」

「なははー」

 

 普段はギャグ漫画のように復活するシュウジも、魔力が枯渇して自己再生が使えていない。

 

 同じように〝再生〟の技能にその不死性を頼るユエは、同じ原理で攻撃し続ければ殺せてしまう。

 

 その話を最初に出会った時に聞いてから、俺はずっとユエの過去の記憶について疑問視していた。

 

「魔力枯渇の方法なんていくらでもある。なのに封印するだけってのは、どうも不自然だ。だがユエはそれを覚えてなかった、突然裏切られて呆然としてて、気がついた時には暗闇の中だったって」

「……ん」

 

 頷くユエ。出会った頃の話の内容と矛盾していない。

 

 であるとするならば、その記憶の空白の部分には必ず何か秘密があるはずだ。

 

「なんで覚えてないのか、なぜ封印されたのか……そこの辺りは、無理やりほじくり返すより俺がなんとかしようと思ったんだ」

「……ハジメ」

「お、ハジメイケメンだね〜」

「それに、結局はユエがどんな存在だろうと俺の答えは変わらないからな。ユエは誰にも渡さない、その為なら誰だろうが、なんだろうがブチ壊す。それが俺の結論だ」

 

 もしユエの他にその叔父や、他の生き残りの連中でも出てきてユエを害そうとしたなら殺す。

 

 その他のエヒトや魔人族が手を出してきても殺す。ユエをこの手から離したりするものか。

 

 

 

 そういう決意を込めてユエを見ると、とても熱を孕んだ眼差しが返ってきた。

 

 火傷しそうなほどの潤んだ瞳は何を欲しているのかが明白で、俺も熱を込めた目で見る。

 

 ユエは微笑み、俺にキスをしようとジャンプしてきて……

 

「はいストップ」

「……美空、どういうつもり?」

 

 それを止めたのは美空だった。

 

 俺とユエの間に差し込まれた手に、両手を俺の首に回してぶら下がったユエと一緒に美空を見る。

 

 すると、少し前に別の部屋で合流してからというもの、ずっと俺の腕を離さない美空は不敵に笑う。

 

「私、もう一歩も引かないし。そう簡単に許すと思わないでよね」

「……上等」

「わわ、また喧嘩始めるのはやめてくださいよぉ!?」

 

 シアが慌てた声を出すが、二人の目に戦意がないことはわかっている。

 

 不敵な笑みを二人は浮かべ、ユエが俺から離れていく。視界の端でシアがホッとした。

 

 

 

 それから美空は俺を見上げ、ウィンクしてくる。

 

 俺は苦笑しながら、相変わらず強い恋人の頭を撫でた。

 

「うう、波乱の予感ですぅ……」

「大丈夫。みんな仲良し」

「美空が本気ってことは、私もこれからはもっと本気に……! 雫ちゃん、ちょっと相談乗って!」

「ごめんなさい香織、今シューの成分を摂取してるところだから無理」

「雫ちゃん!?」

 

 なんだ、結局すぐにいつも通りの空気になっちまうじゃねえか。

 

 シュウジに正面から抱きついて動かない八重樫に我ながら苦い笑いを浮かべ、最後にある人物を見る。

 

 最初から最後まで、まるで空気のようにそこにいたやつ……天之河は、また雰囲気が変わっていた。

 

「天之河。どうやらお前も突破できたみたいだが……不正でもやらかしたか?」

「そんなことしないさ南雲。ただ、しっかり向き合って、受け入れて……打ち破っただけだ」

 

 背中を預けていた氷壁から離れ、目を見開く天之河。

 

 そしてこちらに向けられた目には……一瞬身震いするほど、あまりに前とは違うモノが宿っていた。

 

 

 

 こいつ、()()()()()()()()()()()()

 

 八重樫達幼馴染組も面食らったような顔で天之河を見ている。

 

 これじゃあ本当に勇者っぽいじゃねえか。

 

「ハン。それもどこまで続くかねぇ」

「少なくとも、お前との話に決着をつけるまでは。そこから先はまた、その時に考えるよ」

 

 悪態をついたシュウジにさえ、はっきりとした声で告げている。

 

 俺と同じく天之河の目を見たシュウジは、本当にギリギリ気付けるかといった程度に驚き。

 

 それから、もう一度つまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「じゃ、とりあえずしばらくはその聖人面を嗤うとするか」

「ああ、嗤ってみろ……それとエボルトさん、すみませんでした。そしてありがとうございます」

「なんのことだ?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……今ならこの言葉の意味が理解できる。あの時俺達に警告してくれたこと、感謝します」

 

 頭を下げた天之河に、エボルトが鳩がバズーカ砲食らったような表情になった。

 

 だがすぐにシュウジと同じ顔で不気味に笑うと、「勘違いするな」と言ってひらひらと手を振る。

 

 天之河はそれでも満足そうに笑い、シュウジが非常に嫌そうな顔をする。

 

「ね、ねえ雫ちゃん、光輝くんがまた変になってるよ……?」

「香織、貴女ね……でも、ちゃんと成長できてるみたいね」

「シズシズがお母さんみたいな顔になってる……」

「光輝、一皮剥けたな!」

 

 あっちの反応も良好そうだ。正直俺も驚いたけどな。

 

「とにかく、これで全員突破か」

 

 ある意味驚愕の終わり方だが、まあ特に問題はないし良しとしよう。

 

「さて、そろそろ移動するか。シュウジ、この後は?」

「なーんもない。これでこの大迷宮はクリアだ」

 

 あらかた話は結論に達したということで、移動を開始する。

 

 俺達が出てきた後も残っていた通路に入り、たわいもない雑談を交わしながら進む。

 

 

 

 そうして、10分ほど一本道を行った先。

 

 行き止まりになった氷壁には、七角形の頂点に書く迷宮の紋章があしらわれた魔法陣が刻まれていた。

 

 近付くとと一人でに魔法陣が起動して、この試練に入った時のような光のまくに壁が覆われていった。

 

 

 

 振り返ってシュウジを見ると、頷いたので問題なしと判断。

 

 念の為指先で触れると、水面に石を投げ込んだ時のように波紋が広がった。

 

 問題なさそうなのでユエ達にも視線を巡らせ、確認をしてから一気に膜へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光を超え、視界を白が染め上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数秒の後に光が収まった時、そこは広い空間だった。

 

「……お前の言葉を信じなかったわけじゃないが、今度は分断されなかったな」

「おいおい、心外だぜハジメ。さて皆様、ようこそこの迷宮の終着点へ」

 

 相変わらずエボルト、ではなく八重樫(充電中)に支えられたシュウジの言葉に周囲を見る。

 

 

 

 いくつもの太い氷柱に支えられた四角形の空間は、これまでと違い反射性はなく透き通っている。

 

 対する地面は、この迷宮に入ってから初めて凍結していない、そのままの水で満たされていた。

 

 更に外を見れば、広い湖面のあちこちに噴水ができている。あそこから入り、同時に流れ出ているのだろう。

 

「ふむ。これなら防寒アーティファクトも必要ないか?」

「そりゃハジメ、外も自分の家の中も氷点下だったらどうするよ?」

「流石の解放者もそんなことはしねえだろうな」

 

 言われるがまま外したら、多少の冷気はともかく寒くはない。

 

 ユエ達もアーティファクトを外して、ようやく外せたかといった顔をしていた。

 

「さて……あれが目的地か」

「綺麗な神殿ですねぇ」

 

 この湖は、まだゴールじゃない。

 

 俺達の目の前には湖面に浮く形で床が浮いており、その先には巨大な氷の神殿がそびえていた。

 

「攻略……できたんだね」

「ああ、今度もしっかりとな」

「二人とも、やったね!」

 

 振り返ると、試練の後からなんか付き合い始めていた坂上達が涙ぐんでいる。

 

 まあ、無理やりついてきた大樹の時と違って最初から本気で臨んでたからな。色々込み上げてくるものもあるだろう。

 

 俺としてもようやくこれで最後か、と肩から力が抜けそうだが、それは神代魔法を手に入れてからだ。

 

「さあ、行くぞお前ら。神代魔法を手にするまでが攻略だ」

「ふふ、それだとまるで遠足みたいな言い方だし」

 

 美空の指摘にそれもそうだな、と返して床を踏む。

 

 幸い、此の期に及んで床が落ちるとかそんなベタなことはなく、俺達は神殿へ歩き出した。

 

 

 

 特に何事もなく対岸へと渡りきり、目の前にそびえる氷の城を見上げる。

 

 両開きの巨大な扉には、雪の結晶を模した〝ヴァンドル・シュネー〟の紋章が描かれている。

 

 魔眼石で調べたが、何もなかったので両手で押したら普通に開いた。

 

「中は……住居っぽいな」

「ん、オスカーの隠れ家と似てる」

 

 氷製のシャンデリアが吊るされただけの、邸宅風の玄関。

 

 奥へ続く廊下と二階につながる両サイドの階段を見て、羅針盤を懐から取り出す。

 

 

 

 羅針盤が示したのは目の前の廊下。

 

 それに従って進み、途中いくつかあった扉を開けるが、冷たくない氷製の家具があるだけだった。

 

 それらの素晴らしい造形にシュウジと二人でほうほうと観察しつつ、廊下の最奥へと到達する。

 

「ここか?」

「ああ、ここだ」

 

 役目を終えた羅針盤から目を外し、扉を押し開く。

 

 あっさりと開いた重厚な扉の先には、お目当の魔法陣があった。

 

 

 

 早速全員で魔法陣に乗る。

 

 いつもの脳内を精査される感覚、その後に直接神代魔法が頭の中に刻まれていく。

 

 最後の魔法は……なるほど、【変成魔法】って──

 

「ぐっ!? がぁあああ!?」

「っ、うぅううううっ!!?」

「がっ、ぁああ……!」

 

 自分の口、そしてユエとシュウジの口から苦悶の悲鳴が上がるのが聞こえた。

 

 頭が真っ二つになりそうな激しい痛みとともに、脳内に〝知識〟が入り込んでくる。

 

「ハジメさん!? ユエさん!?」

「シュー! どうしたの、シュー!」

 

 シアと、八重樫の声がかろうじて聞こえる。

 

 だが、それに反応できるほどの思考が残っていない……今は、これを識るのが精一杯で……! 

 

「落ち着かんか二人とも! 香織、美空!」

「っ! す、すぐに治療を!」

「三人とも、すぐに診るから!」

 

 視界がぼやけてきた……シュウジのところに香織が……俺とユエに、美空が駆け寄って……

 

「あ……」

「ぐ、ぅ……」

 

 それを認識した直後、頭の中の〝知識〟について全ての理解が完了した。

 

 頭痛が一瞬にして治まり、その落差に一気に意識が持っていかれてその場で倒れる。

 

「ユ、エ……」

「ハジ、メ……」

 

 朦朧としてはっきりとしない意識の中で、目の前で目を閉じかけた恋人に手を伸ばす。

 

 ユエもこっちに手を伸ばして、いつもとは遥かに比べ物にならない程弱々しく握りあう。

 

 途端に安心して、ギリギリで繋ぎ止めていた意識があっという間に転落を始めた。

 

 

 

「ふた……とも……! すぐ治……か……!」

 

 

 

 ……美空が、俺達に何かを言ってる。でも、よく聞こえない。

 

 ほとんどが瞼によって暗闇に閉ざされた視界の中で、ふとユエ以外にもう一人の姿が映った。

 

「シュー……! ……ダメ、気……ちゃっ……! 元々の……ジが思っ……以上に……!」

 

 ……あちらも、よく見えないし聞こえないが……それでも、なんとかなるだろう。

 

 ここは解放者の迷宮だし……それに、ここにいるのは俺たち三人だけじゃないんだから……

 

 

 

 そんな、よくわからない思考さえも少しずつ暗闇の中に解けていく。

 

 でも、体を揺さぶるいくつもの手の温もりで暗闇への恐れはすぐに紛れた。

 

 

 

 

 

 すまん……少し、ねむ、る………………

 

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

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