星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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感想があまり来ないでござる…(・ω・`)
どうも、現在チクチクと心を修復中の作者です。

シュウジ「どうやらなんとか立ち直ってきたみたいだな、作者」

エボルト「何かやってないと気が紛れないから書く意欲が上がってるとからしいぞ」

ハジメ「それはそれでどうなんだ……で、前回はシュウジたちがついにエボルになったな」

ルイネ「ああ、とても格好良かったぞ」

シュウジ「よせやい、照れるだろ」

エボルト「はいはいリア充リア充。で、今回は前回の続きだ。それじゃあせーの……」


四人「「「「さてさてどうなる迷宮編!」」」」


エボル フェーズ2

  魔物を倒したあの後、俺たちは衝撃波やフルボトルによる攻撃によって瓦礫を除去し、部屋の中に大量にあった例の鏡のような壁だったものを回収した。

 

  そうすると今度こそあの場所を後にし、またいつ終わるともわからない階段を降り続ける。幸いエボルトたちがいるから退屈ではなかった。

 

  で、一週間ほど経った今。俺たちはこれまでと同じく階段の途中にあった部屋で小休憩を取っている。

 

  部屋といっても、特に何かがあるわけじゃない。最初に目覚めた時と同じ、岩と壁があるだけの殺風景な穴ぐらだ。

 

  そこで異空間の中にしまっていた風呂敷や道具、食料を広げて料理を作り、栄養をとると数時間眠って体力を回復する。これがここ最近の日常である。

 

  ちなみに料理担当はルイネだ。俺もエボルトも飯を作れるが、あいつが作った料理は一味違う。聞けば〝捕食者〟の店に時々助っ人に入っていたらしい。

 

  エボルトは足を組んで、クッションを間に挟んで壁に背中を預けて寝ている。

 

「Zz……」

「んー、ここをこうしてっと」

 

  その横で俺が何をしているかというと、異空間の中にあった鉱石や素材を用いて武器を作っていた。

 

  知っての通り、俺は雫たちの武器やエボルドライバーの複製品を作れるくらいには物理ができる。そのための道具も全部自作だ。

 

  もちろん、ビルドに登場した武器も全て作った。先週の戦いで使ったカイゾクハッシャーがいい例だ。先週の戦いっていうと特撮っぽい。

 

  モチーフは盾であり、アイディアの元はあの鏡の壁から作った〝ミラーフルボトル〟。ベストマッチはまだわかってない。

 

  ビルドを見ていた人間ならわかるだろうが、キャップのマークを見ればいいのに。同じマークの使えばベストマッチじゃんというのは、言ってはいけないお約束だ。

 

  それはともかく、素材の一つとして使っている鏡の壁は、予想通り特殊な性質を秘めた鉱石だった。

 

 

=====================================

 鏡界石

 淡く輝く水色の鉱石。魔力を流すことによって取り込んだ物体、あるいは生物を他の鏡界石から放出する特性を持つ。入れられる物量は純度の高さに比例する。

=====================================

 

 

  鑑定魔法で探ったこれが、その性質だ。どうやらあの部屋にあったのは限りなく純度の高い混じりっけなしのもののようで、かなりの容量を誇る。

 

 例えば……

 

「ほいっと」

「ぬわっ!?」

 

  寝こけてるエボルトの足に魔力を込めて平らにした〝鏡界石〟を当てると、某会社のランプの魔人みたいに中に吸い込まれる。

 

  そして他の〝鏡界石〟を手に取り、魔力を流してかざしてみると、エボルトが逆さまに出てきた。犬◯家モドキになってる。

 

「よし、実験は成功と」

「シュウジィ!」

 

  怒りの声を上げるエボルトをスルーして、作業を再開する。ほとんど出来上がっており、あとは外装を取り付けるのみになっていた。

 

「よし、できた」

「マスター、食事の用意ができたぞ」

 

  そしてその武器が完成したのと、ルイネから声がかかったのは同時だった。それに了承の声を返し、散らばった道具や素材を異空間の中にしまう。

 

  そうすると設置してあったテーブルの方に向かった。すでに仏頂面のエボルトが座っており、その隣に腰を下ろす。

 

  俺たちが座ったのを確認すると、エプロン(俺作)を着て長い赤髪をポニテールにまとめたルイネは皿を持ってきた。

 

「今日のメニューは野菜ハンバーグだ」

「おっ、俺の好物か。よく覚えてたな?」

 

  野菜ハンバーグってのは文字通り、肉の中に様々な野菜を細かく刻んで練りこんだハンバーグだ。

 

  これがタンパク質と同時に他の栄養も摂取できるので、前世でもよく食べていた。他の弟子二人もお気に入りだったはずである。

 

「当たり前だ、私がマスターのことについて忘れていることなど一つとしてない。なんならマスターと出会ってからどれだけ経ったかも言えるぞ?」

「それはそれでどうなんすかね」

「エボルトは……これだ」

 

  そう言ってエボルトの前に置かれたのは……………たこ焼きだった。どっからどう見てもたこ焼きだった。

 

  タコ足のかけらを内包した茶色く丸い外見、香ばしい匂いを漂わせるソースゆらゆらと立ち上る湯気。誰がどう見てもたこ焼きだ。

 

「……おい、ワザとだな?ワザとなんだよな?流石の俺もキレるぞ?ムカチャッカファイヤーだぞ?」

「タコに特別な思い入れがあるとマスターが言っていたのでな、作ってみた」

「シュウジテメェコラァ!」

「ブフッ」

 

  掴みかかってくるエボルトの腕をかわしながら、してやったりと吹き出す。そんな俺たちを見てルイネは苦笑した。

 

  まあそんなこんなでしばらくじゃれあい(片方殺気全開)をした後、食事を始める。ちなみにルイネはステーキだった。

 

「ちくしょう、美味ぇ……」

「相変わらずの出来だ。ルイネはあいつの次に料理上手かったからなぁ」

「口にあったようでなによりだ」

 

  わいわいと騒ぎながら食事をする。それはさながら、前世でルイネたちと、あるいはあの世界でハジメたちと共に食事をする雰囲気と似ていた。

 

  手を動かすことしばらく。食事を終えた俺たちは、だらだらと駄弁っていた。

 

「それにしても、この階段はいつまで続くのかねえ」

「最初に私たちが目覚めてから、三週間弱。あの時の部屋以来目立った変化は現れていないな」

「あー、それについて俺から一つ考察がある」

 

  考察?と首をかしげる二人に、異空間から大きな紙を取り出して机の上に広げる。それはこの迷宮の見取り図だった。

 

  俺たちがいるのは、百階層からなるオルクス大迷宮の、さらに下に存在する〝真のオルクス大迷宮〟。その周りを螺旋状に取り巻く階段。

 

「いいか、俺たちがあの魔物と戦ったのがここだ」

 

  そう言って、これまで休憩に使った部屋の描かれている見取り図の一際大きな印を指し示す。その位置にはちょうど、真のオルクス大迷宮の二十五階層が。

 

「一階層分の広さから推測すると、先日俺たちが戦った魔物がいたこの部屋は、ちょうど二十五階層らへん。そして今いるのは……ここだ」

 

  指を下に滑らせて、四十九階層の高さにある階段の一部分を示す。そしてその一階層分下には……魔物な部屋と同じ、大きな印。

 

「なるほどな……つまり次の階層のあたりで、同じような部屋があると?」

「ああ、百階層分ある中で魔物がいたのは4分の1のポイント……偶然ではなく規則性がある可能性が高い」

「もしあったら、また戦うのか?」

「ああ。なるべくエボルの力に慣れておきたいし、何よりお前の力を取り戻してやりたいからな」

「マスター……」

「まあそういうわけで、一応心構えはしといてくれ」

「おうよ」

「ああ、わかった」

 

  俺の言葉に、しっかりと頷く二人。それに俺も不敵な笑みを浮かべて頷く。

 

 

  それから俺たちは、もし次の階層に魔物の部屋があった際の対策について会議を始めたのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

 そして次の日。

 

「………あった」

「……あったな」

「予想的中、か」

 

  目の前にある扉に、俺たちは三者三様の反応をする。やはり俺の予想通り、五十階層にあたる部分にはあの魔物がいたのと同じような部屋があった。

 

  二十五階層にあたる部分同様整備された踊り場と絶えず燃える篝火、迷宮側の壁に佇む巨大な両開きの扉。

 

  扉には、オーラのようなものをまとって縦横無尽に駆け回る角ばった縞々の外殻をまとった馬の魔物が描かれている。

 

  先の魔物のことからして、扉の絵は中にいる魔物を表していると見て間違いないだろう。事前に教えてくれるとは、案外親切である。

 

  二人とアイコンタクトを交わすと、頷きあって扉に近づく。そしてあの時と同じように、俺が両手で扉を押し開いた。

 

  重厚な音を立てて開いた扉の先にあったのは、一見闘技場のような円形の舞台だった。といっても観客席などは存在しない。

 

  黒や白、金色の装飾が取り付けられたそこに足を踏み入れた途端、またしても背後で大きな音を立て、扉が閉まった。

 

 

 カタカタカタカタ………

 

 

  振り返って退路が断たれたことを確認していると、不意に壁の装飾が震え始める。かと思えば、ゴウッ!とステージの中央に赤黒い火柱が上がった。

 

  凄まじい勢いのそれはやがて馬のような形を成していき、そしてそこに壁から装飾が外れて集まっていく。

 

 

 ブルルルルルルルルッ!

 

 

  そして出来上がったのは、案の定扉に描かれていたものと同じ魔物だった。言うなれば、角ばったシマシマの鎧を着た馬といったところだろうか。ある意味シマウマだな。

 

「凝った演出だな」

「だな。まあ何にせよ、倒すとするか」

「おう。ルイネ、下がってろ」

「承知した」

 

  力は戻れども、未だ身体能力を制限されているルイネはまた俺の頬にキスをすると下がる。もう二回目ともなると慣れた(慣れてない)

 

  パン、とハイタッチをしてエボルトを取り込み融合すると、異空間からエボルドライバーを取り出してヘソのあたりに押し付ける。

 

 

《エボルドライバー!》

 

 

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!》

 

 

  エボルボトルをスロットに装填し、レバーを回す。チューブが出現し、黄金の輪と煌めく鎧が出現した。レバーから手を離し胸の前で両手をクロスする。

 

《ARE YOU READY?》

「『変身』」

《エボルコブラァ!》

 

  両腕をゆっくりと広げ、鎧を装着。靄が吹き飛び、再びエボルコブラフォームへと変身を果たした。

 

《フッハッハッハッハッハッハッ!》

『ていうか自動で省略されたんだがそれは……』

〈気にするとこそこかよ〉

 

 

 ブルルルルルルルルッ!!

 

 

  二回目以降おきまりの変身音省略をちょっと悲しんでいると、俺を脅威と認識したのか魔物が嘶いて蹄を鳴らす。

 

『まあいいか……さあ、絶望のカウントダウンを始めようか』

 

  気だるげに人差し指を向けると、魔物は血のような赤黒いオーラをまとって突進してきた。血気盛んだなおい。

 

  半身を引き、一歩ずれることでわずか数センチの場所で回避する。そして回し蹴りを胴体に叩き込んだ。

 

 

 ガインッ!

 

 

『ぬっ』

 

  が、しかしオーラに回し蹴りは受け止められる。衝撃は通ったようで、縞々の装甲が波打つように震えた。どうやらあの装甲は衝撃を分散させる力を持つらしい。

 

  俺の攻撃を無力化した魔物はそのまま壁に向かって直進していき、壁を蹴ると一回転して俺のところへ落ちてきた。

 

  瞬間移動で回避すると、一瞬前まで俺がいた場所に体高六メートルはある魔物の巨体が轟音を立てて着地した。並みの防御力ならあれでペチャンコだろう。

 

『危ねえ危ねえ。さて、今度はこっちがお返しする番だ』

 

 

 ブルルルルッ!ヒヒィーーーーッ!!

 

 

  スチームブレードを取り出し、まるで挑発するように手招きする。魔物はそれに応え、俺の方へと突撃してきた。

 

  爆進してくる魔物に、俺は居合切りのように腰ためにブレードを構え……しかし次の瞬間、魔物の姿が掻き消えた。

 

『何っ!?』

 

 

 ブルルルルルッ!

 

 

  視覚センサーによってかろうじて姿を捉えると、魔物は今にも俺の右半身に頭をぶつけてくるところだった。

 

  咄嗟にブレードを差し込み、腰を落として耐える。するとその瞬間、エボルをして耐えられぬ凄まじい衝撃が襲ってきた。

 

『ぐっ……!?』

 

 

 ブルルルルルルルルッ!!

 

 

  猛々しく鼻を鳴らした魔物は、ぐっと四本足に力を込めると力をため、一気に頭突きにして解放してくる。吹き飛ばされる俺。

 

  ゴロゴロと地面を転がった俺は、両手を使って停止すると曲芸師のように宙返りして着地した。そしてスーツについた土を払う。

 

〈あの魔物より、明らかに速いぞ〉

『だな。さすがは五十階層相当の魔物だ』

 

  エボルトと会話をしながら、魔物を見据える。蹄を鳴らしている魔物は、今にも再び突撃してきそうな勢いだった。

 

  いや、だったというのは語弊があるか。魔物は俺が自分を見た瞬間、既に突撃するのと同時に姿を消していたのだから。

 

  そしてまた、視覚の外から攻撃を仕掛けてきた。豪風を伴った突進を、センサーと前世から鍛え上げた鋭い五感でなんとかいなす。

 

  他にも反射魔法や瞬間移動を用いて反撃するが、フェーズ1であるコブラフォームのパワーではどうしてもあの装甲は破れなかった。

 

  そうやってしばらく凌いでいたものの、魔物の突撃はどんどん速く、鋭くなっていく。そのうち凌ぎきれずに、攻撃がかすり始めた。

 

  そろそろ限界か、そう思った瞬間足をすくうように突撃され、瞬間移動するも先読みされ後ろ足で蹴られて吹き飛ぶ。

 

『ぐっ……ここら辺が潮時か』

〈まあ完全体の2%しか力が出せないからな。舐めプもここまでだろう〉

 

  着地してエボルトと会話する。そう、俺はエボルの力に慣れておくために、ほとんど前世で培った自分の戦闘技能を使っていない。

 

  その気になれば、全身を粉々に破壊する魔法で終わらせることもできる。他にも暗殺に使うための魔法や技法ならいくらでも持っていた。

 

  それでもエボルを使うのは、切り札の一つとして使えるようにその能力を熟知しておくためと、単純に好きだからである。

 

  だが、それもここまでのようだ。この魔物は、最初の大部屋にいた魔物とは比べ物にならないほど強い。フェーズ1でのパフォーマンスはこれが限界だろう。

 

『なら……第2段階に移行しようじゃないか』

 

  どこからともなく、一つのエボルボトルを取り出す。それは歯車に翼を広げる龍のマークが刻まれた青いエボルボトル……ドラゴンエボルボトルだった。

 

  キャップを親指で弾いてセットし、コブラエボルボトルをスロットから抜く。そして代わりにドラゴンエボルボトルを挿し込んだ。

 

 

《ドラゴン! ライダーシステム! エボリューション!》

 

 

  クローズのマークとビルドマークが浮かび、青い惑星のシンボルとなる。俺はレバーを掴み、回し始めた。

 

  荘厳な音楽が流れ、ドライバーからチューブが出現。変身の時のようにコンテナ状に広がり、青い人形と黄金の輪が形成された。

 

 

《ARE YOU READY?》

 

 

『エヴォルヴ』

 

  ビルドでいうビルドアップに該当する言葉をつぶやき、クロスしていた手を解く。すると青い靄が体を包んだ。

 

  その瞬間、またしても自分が変わる感覚を覚える。まるで生物として一つ上の段階に昇華……否、〝進化〟する感覚。

 

 

《ドラゴン……ドラゴン!エボルドラゴン!》

 

 

  少しすると青い星空は吹き飛び、視界が元に戻った。アーミラリアクターが回転を止め、目の前にいる魔物の装甲に自分の姿が映り込む。

 

  変身を完了した俺は、豪華なコブラフォームとは裏腹に金の装飾がついた青い、さっぱりとした肩部装甲になっていた。

 

  顔も大幅に変わり、ドラゴンが向かい合って、その目の部分に正面から見たドラゴンが覆いかぶさっているようなものになっている。

 

 

 ブルルルルッ!!

 

 

《フッハッハッハッハッハッハッハッ!》

『フェーズ2、完了』

 

  警戒するように鼻を鳴らす魔物に、俺は力の調子を確かめるように拳を握った手を触りながら、静かにそう呟いた。

 

 

 さあ……第2ラウンドを始めようか。

 

 

 ●◯●

 

 

 ヒヒィーーーーッ!!

 

 

  フェーズ2へと移行した俺をみた魔物は、嘶きをあげながら突撃してきた。大方、姿が変わっただけでそう力は変わってないと思ったのだろう。

 

  踏み込みまでは見えたが、こちらに進んできた瞬間また姿が搔き消える。そして現れたのは……完全な死角、背後から。

 

『なるほど、大した速度だ……だが!』

 

 

 ドンッ!

 

 

  半身だけ引いて振り返った俺は、片腕で魔物の突進を受け止めた。衝突点から衝撃波が発生し、空気がビリビリと震える。

 

  ご自慢の突撃を避けるどころか、受け止められたことに魔物は困惑した声をあげた。俺はゆっくりと振り返り、掴んでいる顔にマスクを近づける。

 

『進化した俺の、パワーと反応速度の方が上だ』

〈やれ、シュウジ〉

 

  エボルトの言葉通り、握った拳を魔物の顔に叩き込む。またしても鎧が波打つが、今度はその柔軟な防御力を貫通した。

 

  攻撃をモロに受けた魔物は吹き飛び、それをフェーズ1を遥かにしのぐ速度で追いかけるとアッパーカットをお見舞いする。

 

  宙に浮いた魔物に、さらに跳躍してかかと落としを決めた。地面に叩きつけられた魔物は即座に起き上がり、高速移動してステージの端に逃げる。

 

 

 ブルルルル………!

 

 

『どうした、もう逃げ腰か?』

 

  大したことないなと肩をすくめると、魔物は怒りの声をあげながら赤黒いオーラを纏って一直線に突進してきた。

 

  そのまま頭突きをかましてくる……かと思いきや、目と鼻の先まで来たところで突然くるりと体を反転させ、後ろ足で蹴りを放ってきた。

 

 

《鏡!ライダーシステム!クリエーション!》

 

 

 ガンッ!!

 

 

  しかし、それは硬質な音とともに防がれる。腰を落として魔物の蹴りを受け止めた俺のかざした左腕には、鏡のような長細い六角形の盾が装着されていた。

 

《READY GO!鏡!》

『その程度読めないと思ったか?』

 

 

 ヒヒィーーーッ!

 

 

  苛立たしげに吠える魔物に、俺は一歩下がる。そしてグリップのスイッチを押すと、カタンと盾が傾いた。

 

  端に手をかけ、盾を一回転させる。すると青く発光していた盾が赤色に染まった。それを確認した俺は、盾を体制を立て直している魔物に思い切り叩きつける!

 

『お返しだ!』

《リフレクト!》

 

  魔物の胴体にめり込んだ盾は、〝吸収していた魔物の蹴りのパワー〟をそっくりそのまま吐き出した。粉砕する魔物の鎧。

 

 

 ガァアアアァアァァァアアァッ !?

 

 

  初めて絶叫をあげる魔物。血の代わりに赤黒い炎を吐き出し、ドシンと地面に倒れて激しく暴れまわる。おそらく、今まで鎧を破壊されたことなどないが故の未知の痛みなのだろう。

 

  しばらくして立ち上がった魔物は、手を出さなかった俺を怒りに染まった双眸で睨みつけてきた。それに俺は手招きをして挑発する。

 

  案の定怒っている魔物はそれに乗り、再び姿を消すと死角から攻撃してきた。しかし、フェーズ2の俺にはもはやその攻撃は効かない。

 

  神速の頭突きを自動で元に戻っていた盾で防ぐと、また回転させてそのままお返しする。鎧を粉砕しながらひっくり返る魔物。

 

 

 ブルルルル……ヒヒィーーーーッ!

 

 

  またしても立ち上がった魔物は、凄まじい怒りのオーラを纏って咆哮した。すると、その体が変形していく。

 

  胴体はそのままに、首から上が中身ごと変形していき、両手が刃になっている人形へと姿を変えた。面白い特性だ。

 

『なら俺も……』

《ビートクローザー!》

 

  異空間からビートクローザーを呼び出し、空いていた右手に握る。そして某ノーサンキューな外科医のような構えを取った。

 

 

 ウグルァアアアァアアアァァァアアァッ!!

 

 

  おおよそ元は馬だった思えないような奇声を発した魔物は突進してきて、両側から挟み込むように刃を振るってくる。

 

  そのどちらともをビートクローザーで打ちはらうと、体を倒して足の間を通り抜けるように移動しながら腹を切りつけた。

 

  苦悶の声をあげた魔物は振り返りざまに横薙ぎに斬撃を放ってきたので、今度は盾で防いで根元から切り飛ばした。

 

  再生される恐れがあるので、宙を舞う刃の腕を左手から衝撃波を発して粉砕。その隙に振り下ろしてきた刃も受け止める。

 

 

 ギィ……!

 

 

『ほらほら、ボケっとしてる暇があるのか?』

 

  ビートクローザーを切り上げて魔物の腕を打ち上げ、返す刀で胴体を切りつける。傷口からまたしても赤黒い炎が大量に吹き出した。

 

  胸の傷を押さえてよろよろと後ずさった魔物は、怒りとも憎しみとも取れぬ怒声を上げてがむしゃらに切りつけてくる。

 

  当然冷静でない状態での攻撃など無意味に等しく、的確に盾で防いでいく。そして一瞬隙がでた瞬間……

 

『そらっ!』

《リフレクト!》

 

 

 ギィャアアアァアァァァアアァアアァアアッ!?!!?

 

 

  それまで受けた攻撃分全てを一撃で返すと、魔物の馬の部分がバラバラに弾け飛んだ。ドサリと地面に落ちる人型。

 

 

 ギ、ガァアアアァアッ !

 

 

  しかし人型はしぶとく、散らばった胴体の破片を呼び寄せると自分と合体させ、無くした片腕と二本の足を形成して完全な人型へと変化した。

 

『芸達者なやつだな。だが……そろそろ終わりだ』

 

  盾を異空間にしまい、ビートクローザーを腰だめに両手で握る。魔物は奇声をあげながら襲いかかってきた。

 

  あいも変わらず一直線に突撃してくる魔物に、俺は瞬間移動をして自分から近づいてビートクローザーを胸の中心に突き込んだ。

 

『ハッ!』

 

 

 ガッ……!

 

 

  あっさり自分の体を背中まで貫いたビートクローザーに、魔物は苦悶の声をあげて動きを止める。

 

  その隙を逃さず、ドライバーからドラゴンエボルボトルを抜くとビートクローザーのスロットに装填、グリップエンドスターターを引く。

 

《スペシャルチューン!ヒッパーレ!ヒッパーレ!》

『くたばれ!』

《ミリオンスラッシュ!》

 

  突き刺したまま刃を縦にして、両手で下に振り下ろす。エボルボトルの成分で切れ味を増したビートクローザーは、たやすく魔物の体を両断した。

 

 

 

 グ、ギ、ガァアアアァァァァアアァアアァアアアァアアアァァァアアァアアァアアッッッ!!!

 

 

 

  そして爆散する魔物。例のごとく炎が舞い踊るが、フェーズ1よりも炎への耐性が高いのか、わずかな暖かさすら感じなかった。

 

  炎が散り、煙が晴れたところで振り下ろした体制から元に戻る。ドラゴンエボルボトルを抜き、血振りするようにビートクローザーを振った。

 

  ドライバーからライダーエボルボトルを抜くと、変身が解除される。ふぅ、と息を吐くと、ドライバーを外して異空間に放り込んだ。

 

「ちょっと疲れたな」

「むしろ人間じゃ使えない、俺用にリミッターを全解除したドライバーでフェーズ2を使って、ちょっとで済むお前は化け物だからな」

「まあそこは、訓練の賜物ってことで」

 

  分離したエボルトと会話しながら、ルイネの元へと戻る。あ、そういえばあの魔物の鎧の破片残ってたから回収しとこうっと。

 

「お疲れ様だ、マスター」

「おーう」

「あれ、俺には何もなし?」

「やはりマスターの強さは凄まじいな」

「あっるぇー無視ー?まさかの無視ー?」

 

  シカトされているエボルトを放置して、キラキラとした目を俺に向けているルイネに能力の方は?と聞く。

 

  俺の問いに、ルイネは片腕を上げた。するとあの時と同じように地面や壁から金属が集まり、魔物と同じような縞々の籠手が生成される。

 

「〝周囲の自然から鎧を作り出す力〟、たしかに返ってきた。マスター、心から感謝する」

「いいってことよ。それより……ちょっとそのまま動かないでくれ」

「ん?別に良いが……」

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

  許可を得たので、異空間からエンプティボトルを出してキャップを籠手に向ける。すると籠手が粒子になって吸い込まれていった。

 

  最後の一粒まで吸収すると、ボトルが発光して変化する。 変化した鈍色のボトルには、剣を持つ騎士の姿が描かれていた。

 

  そしてキャップには『K/M』と書かれている。ミラーフルボトルを取り出して見ると、こちらも『K/M』だ。

 

「これで、パンドラボックスのパネルを使えば……」

「何気に登場するの初めてじゃね?」

「メタいよ」

 

  パネルのスロットにセットすると、ベストマッチマークが出現する。うし、やっぱりベストマッチだったか。

 

「まさかこんなに早く見つかるなんてな」

「幸運だったな。で、ルイネは能力がまた使えなくなったりしてないか?」

 

  宝生永夢ゥ!は葛城ビルドにエグゼイドの成分を抜かれた後、変身できなくなっていた。もし同じ場合、成分を返さなくてはいけない。

 

「……どうやら問題ないようだ」

 

  が、その心配は杞憂だった。また籠手が生成される。よかったよかった、せっかく取り戻した力を俺が奪ってたら本末転倒だ。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ………

 

 

「っと、どうやらおしゃべりもここまでのようだな」

「そうみたいだな。って事で退散するぞ」

 

  ルイネをお姫様抱っこして、崩壊する部屋から瞬間移動で脱出する。程なくして、部屋は崩れ落ちた。

 

「ふぃー、セーフ」

「今回も無事生還できたな」

「ああ、ヒヤヒヤしたぜ」

 

  俺たちは、また拳をぶつけて勝利したことに笑い合う。

 

 

 

 

 

  こうしてフェーズ2の力を確かめるのとともに、また一つルイネの力を取り戻し、さらにベストマッチというオマケまで手に入れたのだった。

 




次回はフェーズ3…ですが、オリジナル魔物と戦わせるか、ハジメたちと合流させるか迷っています。どっちがいいと思います?
ツイッターにルイネの新しいイラストをあげました。
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