ユエ「幾ら何でも、予想外すぎる……」
エボルト「本編の展開的にここに今いないが、あいつ愉悦顔だったぞ」
ハジメ「だろうな!」
雫「まったく、いつも驚かせてくれるわね。さて、今回は龍太郎のお話しみたい。それじゃあせーの、」
四人「「「「さてさてどうなる終末編!」」」」
龍太郎 SIDE
「……だーっ! 暇だぁ!」
南雲達は資材の調達に行っちまうし、雫と鈴も上で魔物相手に修行してるしよぉ。
光輝はクラスの奴らや、先生を守るために王都に行っちまった。
それなのに俺だけこんなとこで留守番とか、そりゃねえだろ。
いや、わかっちゃいる。
この隠れ家は南雲達の大切な作業場だし、海人族の親娘とか北野の恋人を守らなきゃならねえ。
それに、自分のハザードレベルがこれ以上強化されると
そういや未来から来た方の南雲にボトルを解析してもらった時、なんか言ってたな。
確か……あの洞窟の偽物の俺の魔力と、俺のネビュラの成分が混ざり合って生まれた、だったか?
何が起こるのかわからない未知のボトルだから、絶対に使うなとか言われてたな。
それでも、こんなふうに叫んじまうくらいには暇なんだよなぁ。
こんな何もしないでゴロゴロしてるとか、性に合わねえ。
「釣りでもすっかなぁ……」
「んしょ、んしょ」
「ん?」
声がして、そちらを振り返る。
すると、海人族のガキが飯が乗ったお盆を持ってリビングに入ってきてた。
どっかにそれを運ぼうとしてるのか、声を出しながら歩く姿は、なんか見てて和む。
南雲が溺愛してる上、母親も惚れてるっつーんだから、あいつドン・◯ァンだよなぁ……
「おい、どうした? どっか行くのか? 母ちゃんはどうした?」
思わず声をかけると、ぴたりと立ち止まったガキはこっちを見る。
「……ママはパパ達のご飯作ってるの。ミュウ、まだちっちゃいからあんまりお手伝いできないの」
「あー、そういうことか」
確かにちっちゃいもんなこいつ。
まだ四歳とか言ってたか? それなのにあんな経験して、大変だな……
小さいって言えば、鈴のやつ大丈夫だろうな。雫が一緒だし、平気だとは思うが……
「うぐぐぐ、心配すぎる……!」
「ゴリラのお兄ちゃん、変な顔してどうしたの?」
「いやゴリラじゃねえ!?」
「ぴゃっ!」
飛び跳ねたミュウが涙目になる。やべっ、いつも鈴に言われるノリで反応しちまった!
一瞬で南雲にミサイルぶち込まれる予想ができた。あいつ超親バカなんだよなぁ!
「すまん! でかい声出したらびっくりするよな!」
「……怒ってる?」
「いやいや、怒ってねえよ。だからほら、そんな隠れないで、な?」
元々ガキの相手は苦手だが、そうも怯えられると流石に傷つく。
プルプル震えるミュウに色々話しかけていると、徐々に怯えなくなった。
上手くいったかと思っていると、ふとその手にある飯に目がいった。
「それ、どこに持ってくんだ?」
「リベルちゃんのとこなの。リベルちゃん、朝から何も食べてないから」
「ああ……」
そういや北野の娘、あのルイネっていう女にずっとひっついたままだな。
南雲もなんとか休ませようしてたみてえだが、頑として動かねえらしい。
ホムンなんたらだか知らねえが、この世界のガキはどいつも強えなあ。
「そんなら俺もついてくぜ。ちょうど暇してたからな」
「? 一緒にお見舞いするの?」
「まあ、そんなとこだな。ほれ、それ貸せ」
立って手を出すと、俺と飯を交互に見る。
やがて、おずおずと差し出された飯を受け取った。
「んじゃ、行くか。隣のベッドルームだろ?」
「うん、そうなの」
ミュウと一緒にリビングを出る。
別にそんな仲がいいわけでもないから、道中会話はなかった。
大した距離じゃねえが、なんかむず痒い。
「あー、なんだ」
「? どうしたの?」
「お前、南雲のことは好きか?」
「パパ? うん、大好きっ! あのね、パパはいつも優しく頭を撫でてくれるの! それに甘いお菓子も食べさせてくれるし、それにそれに……」
「お、おう」
ど、怒涛の勢いで喋りだしたな。
キラッキラした目に、もしかしてこいつも? なんて思っちまうのは南雲に失礼か。
……いや、むしろあいつがこのガキを嫁に出すとは思えねえ。相手のこと絶対ぶっ殺すだろ。
ミュウの先行きが不安になっているうちに、すぐに到着した。
「んん〜!」
「ったく、普通に俺が開けるよ」
両手で扉を押すミュウに、片手に飯を持ち替えながら手助けしてやる。
振り返ったミュウから「ありがと!」という二パーとした笑顔が帰ってきた。普通に可愛いな。
「えーと、リベルちゃんは……いた!」
だが俺に視線が向いていたのは一瞬、あっという間に中に入っちまった。
特に何も思わず、後を追いかけて中に入る。
どこぞの高級ホテルかという吹き抜けのベッドルームには、一人の女が眠っていた。
爽やかな風が吹き抜ける中、静かな寝息を立てながらでかいベッドに横たわっている。
鈴がいる以上惚れたりはしねえが、その寝顔は鈍い俺でも見惚れるほど神秘的だった。
「リベルちゃん、起きるの! ご飯持ってきたの!」
「んう……ミュウちゃん?」
っと、目的を忘れるとこだった。
ベッドの横で寝てた北野の娘は、ミュウに起こされて目をこすっていた。
我ながら無駄に図体がでかいのはわかってるので、近づいてなるべく優しい声を心がけた。
「ほれ、飯だ。ガキはちゃんと食わねえと成長できねえぞ」
「ありがと、龍おじちゃん」
「ぐふっ……」
お、おじちゃん……まだ17歳なのにおじちゃん……南雲、お前の気持ちがわかったぜ……
「はいリベルちゃん、あーんなの」
「あーん!」
ミュウに飯を食わされている北野の娘から、寝ている女に目を向ける。
香織とエボルトの野郎のおかげで一命は取り留めたらしいが、昨日から起きる気配はない。
香織とみーたんによれば……おそらく決戦までには、目覚めない。
俺から見てもほとんど死にかけだったのはわかるし、不思議なことじゃねえ。
「う……ぁ……」
「っ!」
そんなことを思った矢先、唸り声をあげた。
表情が険しくなるが、目は閉じたまま。目覚めたんじゃないらしい。
「北野、殿……私、を…………」
「…………」
北野の、夢を見てんのか。
事情を深くは知らねえが、中村や使徒に囲まれてた時の話からなんとなく察している。
南雲も相当だが、北野は北野で随分厄介な男女関係をしてるらしい。
気になんのは、この女が
「私を…………ゆるさ、ないで……」
「っ!」
「責めて、いいから…………」
……こいつ。
「それでも……私は…………あなたのことを…………」
そこで寝言は止まった。
代わりに、涙が頬を伝っていて。
「…………」
……俺は、何も言えなかった。
「……ママ、ずっとこうなの」
そんな俺の時間を動かしたのは、北野の娘の一言だった。
ゆっくりとそっちを見ると、北野の娘はひどく暗い顔をしている。
「何回もパパに許さないでって、でも好きだって……」
途中で途切れちゃあいたが……まあ、あながち外れってわけでもないだろう。
無意識に潜んだ本心ってやつか? あの時の話じゃ、北野とは別れたっぽい感じだったけどなぁ。
別れたのに実は愛があった。なんて、ドラマみてえな話だが。
「……このことは、南雲達は知ってんのか?」
「ううん。多分、ママは知られたくないと思うの。だからミュウちゃんにも〝しー〟してもらってるんだ」
首を横に振る北野の娘。ミュウが心配そうに見ている。
「わかんないよ……どうしてママがママを責めなくちゃいけないの? パパはパパじゃだめなの?」
「リベルちゃん……」
「私にとってのパパとママは、二人だけなのに……!」
ついに泣き出しちまった北野の娘を、ミュウがそっと抱きしめた。
俺は……流石に同じようにはしてやれねえ。バレたら南雲に殺されそうだし。
でも。
「安心しな、ガキンチョ」
「……?」
「俺が北野を助けてやる……のは無理だけどよ。でも、お前の母ちゃんを守ることくらいはできると思うぜ」
「おじちゃんがママを……はっ、まさかママをねらって!?」
「いや俺彼女いるから!」
「うん、知ってるよ。てへっ」
「そういうとこは北野の娘だなお前!」
お、思ったより元気じゃねえかこいつ。
なんか空回りしてる気がするが、気を取り直して言葉を続ける。
「お前の母ちゃんと北野の関係については、正直よくわかんねえ。俺が口出しする問題じゃないしな」
「…………うん」
「でもな。俺はこの世界に来たばっかの時、北野に世話になった。そのことを忘れてはいねえ」
あいつが訓練してくれなかったら、南雲に助けられる以前に死んでたかもしれねえ。
エボルトの奴から与えられたライダーシステムの力がなけりゃ、鈴を守れなかった。
誰かを守る力が欲しかった。
ガキの頃から空手で鍛えてきたのも、それが頭の悪い俺にもできる力のつけ方だったからだ。
そしてライダーシステムは、エボルトに言わせれば『顔も知らない誰かの明日を創るための力』らしい。
それならば。
「俺が、お前と母ちゃんの明日を守ってやる。なにせ仮面ライダーってのは、愛と平和を守る戦士だからな」
それが俺が北野にできる、一番の恩返しのやり方だろう。
誰かを守る力をもらった。だったらそれは、こういう泣いてるガキの為に使うもののはずだ。
「心火を燃やして、この世界を破壊しようとする奴らをぶっ潰す。そんで守りきって北野が帰ってきた時にゃ、お前が母ちゃんとあいつを繋いでやれ」
「……できるかな。わたし、ママを守れなかったのに」
「できるさ。だってお前の両親だろ? だったらお前しか三人一緒の明日は創れねえだろ」
ニッと元気付ける為に笑いかけて、北野の娘の頭を軽く撫で回す。
南雲よりは寛容だと思うし、これくらいは許されるだろう。うん。
「……うん、わかった! わたし、信じて待つよ!」
「おう、任せとけ」
「ありがと、龍おじちゃん!」
「頑張ってなの!」
「ああ、心火を燃やして戦うぜ!」
あんまりガキの相手は得意じゃあねえが、こういうのも悪くねえな。
「ミュウー、リベルちゃーん。そろそろパパ達が返ってくるそうよー」
「あ、ママの声だ! 行こうリベルちゃん!」
「あ、うん!」
多少吹っ切れたのか、ミュウに引っ張られる形でベッドルームを出て行った。
俺もついて行こうとして……ふとあるものが目に止まる。
元の穏やかな顔で眠っている女の手の中に、ドライバーがあったのだ。
確か北野が作ったドライバーとか言ってた。エボルドライバーによく似た形をしている。
「……そういや、ブリーザードナックルは南雲がこの迷宮で変身した時のアーティファクトを参考に作ったんだっけか?」
そうだ。
これ以上スクラッシュドライバーのライダーシステムで強くなることが危険なら。
もしかしてこいつを使えば、俺は……
「……いや、んなわけないか。そもそも変身機能はついてないって話だったしな」
頭に浮かんだことを打ち消して、俺は部屋を後にした。
……妙に何かを引きずった気持ちのままで。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回はメルドさんです。