星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

237 / 354
ハジメ「俺だ。前回はユエの件に進展があった。ついでに間接的に紹介されてたな」

ユエ「幾ら何でも、予想外すぎる……」

エボルト「本編の展開的にここに今いないが、あいつ愉悦顔だったぞ」

ハジメ「だろうな!」

雫「まったく、いつも驚かせてくれるわね。さて、今回は龍太郎のお話しみたい。それじゃあせーの、」


四人「「「「さてさてどうなる終末編!」」」」


小さな約束

 

 龍太郎 SIDE

 

 

 

「……だーっ! 暇だぁ!」

 

 

 

 南雲達は資材の調達に行っちまうし、雫と鈴も上で魔物相手に修行してるしよぉ。

 

 光輝はクラスの奴らや、先生を守るために王都に行っちまった。

 

 それなのに俺だけこんなとこで留守番とか、そりゃねえだろ。

 

 

 

 いや、わかっちゃいる。

 

 この隠れ家は南雲達の大切な作業場だし、海人族の親娘とか北野の恋人を守らなきゃならねえ。

 

 それに、自分のハザードレベルがこれ以上強化されると()()()ってのもわかる。

 

 

 

 そういや未来から来た方の南雲にボトルを解析してもらった時、なんか言ってたな。

 

 確か……あの洞窟の偽物の俺の魔力と、俺のネビュラの成分が混ざり合って生まれた、だったか? 

 

 何が起こるのかわからない未知のボトルだから、絶対に使うなとか言われてたな。

 

 

 

 それでも、こんなふうに叫んじまうくらいには暇なんだよなぁ。

 

 こんな何もしないでゴロゴロしてるとか、性に合わねえ。

 

「釣りでもすっかなぁ……」

「んしょ、んしょ」

「ん?」

 

 声がして、そちらを振り返る。

 

 すると、海人族のガキが飯が乗ったお盆を持ってリビングに入ってきてた。

 

 どっかにそれを運ぼうとしてるのか、声を出しながら歩く姿は、なんか見てて和む。

 

 

 

 南雲が溺愛してる上、母親も惚れてるっつーんだから、あいつドン・◯ァンだよなぁ……

 

「おい、どうした? どっか行くのか? 母ちゃんはどうした?」

 

 思わず声をかけると、ぴたりと立ち止まったガキはこっちを見る。

 

「……ママはパパ達のご飯作ってるの。ミュウ、まだちっちゃいからあんまりお手伝いできないの」

「あー、そういうことか」

 

 確かにちっちゃいもんなこいつ。

 

 まだ四歳とか言ってたか? それなのにあんな経験して、大変だな……

 

 小さいって言えば、鈴のやつ大丈夫だろうな。雫が一緒だし、平気だとは思うが……

 

「うぐぐぐ、心配すぎる……!」

「ゴリラのお兄ちゃん、変な顔してどうしたの?」

「いやゴリラじゃねえ!?」

「ぴゃっ!」

 

 飛び跳ねたミュウが涙目になる。やべっ、いつも鈴に言われるノリで反応しちまった! 

 

 一瞬で南雲にミサイルぶち込まれる予想ができた。あいつ超親バカなんだよなぁ! 

 

「すまん! でかい声出したらびっくりするよな!」

「……怒ってる?」

「いやいや、怒ってねえよ。だからほら、そんな隠れないで、な?」

 

 元々ガキの相手は苦手だが、そうも怯えられると流石に傷つく。

 

 

 

 プルプル震えるミュウに色々話しかけていると、徐々に怯えなくなった。

 

 上手くいったかと思っていると、ふとその手にある飯に目がいった。

 

「それ、どこに持ってくんだ?」

「リベルちゃんのとこなの。リベルちゃん、朝から何も食べてないから」

「ああ……」

 

 そういや北野の娘、あのルイネっていう女にずっとひっついたままだな。

 

 南雲もなんとか休ませようしてたみてえだが、頑として動かねえらしい。

 

 ホムンなんたらだか知らねえが、この世界のガキはどいつも強えなあ。

 

「そんなら俺もついてくぜ。ちょうど暇してたからな」

「? 一緒にお見舞いするの?」

「まあ、そんなとこだな。ほれ、それ貸せ」

 

 立って手を出すと、俺と飯を交互に見る。

 

 やがて、おずおずと差し出された飯を受け取った。

 

「んじゃ、行くか。隣のベッドルームだろ?」

「うん、そうなの」

 

 ミュウと一緒にリビングを出る。

 

 別にそんな仲がいいわけでもないから、道中会話はなかった。

 

 大した距離じゃねえが、なんかむず痒い。

 

「あー、なんだ」

「? どうしたの?」

「お前、南雲のことは好きか?」

「パパ? うん、大好きっ! あのね、パパはいつも優しく頭を撫でてくれるの! それに甘いお菓子も食べさせてくれるし、それにそれに……」

「お、おう」

 

 ど、怒涛の勢いで喋りだしたな。

 

 キラッキラした目に、もしかしてこいつも? なんて思っちまうのは南雲に失礼か。

 

 ……いや、むしろあいつがこのガキを嫁に出すとは思えねえ。相手のこと絶対ぶっ殺すだろ。

 

 

 

 ミュウの先行きが不安になっているうちに、すぐに到着した。

 

「んん〜!」

「ったく、普通に俺が開けるよ」

 

 両手で扉を押すミュウに、片手に飯を持ち替えながら手助けしてやる。

 

 振り返ったミュウから「ありがと!」という二パーとした笑顔が帰ってきた。普通に可愛いな。

 

「えーと、リベルちゃんは……いた!」

 

 だが俺に視線が向いていたのは一瞬、あっという間に中に入っちまった。

 

 特に何も思わず、後を追いかけて中に入る。

 

 

 

 

 

 どこぞの高級ホテルかという吹き抜けのベッドルームには、一人の女が眠っていた。

 

 

 

 

 

 爽やかな風が吹き抜ける中、静かな寝息を立てながらでかいベッドに横たわっている。

 

 鈴がいる以上惚れたりはしねえが、その寝顔は鈍い俺でも見惚れるほど神秘的だった。

 

「リベルちゃん、起きるの! ご飯持ってきたの!」

「んう……ミュウちゃん?」

 

 っと、目的を忘れるとこだった。

 

 ベッドの横で寝てた北野の娘は、ミュウに起こされて目をこすっていた。

 

 我ながら無駄に図体がでかいのはわかってるので、近づいてなるべく優しい声を心がけた。

 

「ほれ、飯だ。ガキはちゃんと食わねえと成長できねえぞ」

「ありがと、龍おじちゃん」

「ぐふっ……」

 

 お、おじちゃん……まだ17歳なのにおじちゃん……南雲、お前の気持ちがわかったぜ……

 

「はいリベルちゃん、あーんなの」

「あーん!」

 

 ミュウに飯を食わされている北野の娘から、寝ている女に目を向ける。

 

 

 

 香織とエボルトの野郎のおかげで一命は取り留めたらしいが、昨日から起きる気配はない。

 

 香織とみーたんによれば……おそらく決戦までには、目覚めない。

 

 俺から見てもほとんど死にかけだったのはわかるし、不思議なことじゃねえ。

 

「う……ぁ……」

「っ!」

 

 そんなことを思った矢先、唸り声をあげた。

 

 表情が険しくなるが、目は閉じたまま。目覚めたんじゃないらしい。

 

「北野、殿……私、を…………」

「…………」

 

 北野の、夢を見てんのか。

 

 事情を深くは知らねえが、中村や使徒に囲まれてた時の話からなんとなく察している。

 

 南雲も相当だが、北野は北野で随分厄介な男女関係をしてるらしい。

 

 気になんのは、この女が()()()()()()()()()ってとこだが……

 

「私を…………ゆるさ、ないで……」

「っ!」

「責めて、いいから…………」

 

 ……こいつ。

 

「それでも……私は…………あなたのことを…………」

 

 そこで寝言は止まった。

 

 代わりに、涙が頬を伝っていて。

 

「…………」

 

 ……俺は、何も言えなかった。

 

「……ママ、ずっとこうなの」

 

 そんな俺の時間を動かしたのは、北野の娘の一言だった。

 

 ゆっくりとそっちを見ると、北野の娘はひどく暗い顔をしている。

 

「何回もパパに許さないでって、でも好きだって……」

 

 途中で途切れちゃあいたが……まあ、あながち外れってわけでもないだろう。

 

 無意識に潜んだ本心ってやつか? あの時の話じゃ、北野とは別れたっぽい感じだったけどなぁ。

 

 別れたのに実は愛があった。なんて、ドラマみてえな話だが。

 

「……このことは、南雲達は知ってんのか?」

「ううん。多分、ママは知られたくないと思うの。だからミュウちゃんにも〝しー〟してもらってるんだ」

 

 首を横に振る北野の娘。ミュウが心配そうに見ている。

 

「わかんないよ……どうしてママがママを責めなくちゃいけないの? パパはパパじゃだめなの?」

「リベルちゃん……」

「私にとってのパパとママは、二人だけなのに……!」

 

 ついに泣き出しちまった北野の娘を、ミュウがそっと抱きしめた。

 

 俺は……流石に同じようにはしてやれねえ。バレたら南雲に殺されそうだし。

 

 でも。

 

「安心しな、ガキンチョ」

「……?」

「俺が北野を助けてやる……のは無理だけどよ。でも、お前の母ちゃんを守ることくらいはできると思うぜ」

「おじちゃんがママを……はっ、まさかママをねらって!?」

「いや俺彼女いるから!」

「うん、知ってるよ。てへっ」

「そういうとこは北野の娘だなお前!」

 

 お、思ったより元気じゃねえかこいつ。

 

 なんか空回りしてる気がするが、気を取り直して言葉を続ける。

 

「お前の母ちゃんと北野の関係については、正直よくわかんねえ。俺が口出しする問題じゃないしな」

「…………うん」

「でもな。俺はこの世界に来たばっかの時、北野に世話になった。そのことを忘れてはいねえ」

 

 あいつが訓練してくれなかったら、南雲に助けられる以前に死んでたかもしれねえ。

 

 エボルトの奴から与えられたライダーシステムの力がなけりゃ、鈴を守れなかった。

 

 

 

 誰かを守る力が欲しかった。

 

 ガキの頃から空手で鍛えてきたのも、それが頭の悪い俺にもできる力のつけ方だったからだ。

 

 そしてライダーシステムは、エボルトに言わせれば『顔も知らない誰かの明日を創るための力』らしい。

 

 

 

 それならば。

 

「俺が、お前と母ちゃんの明日を守ってやる。なにせ仮面ライダーってのは、愛と平和を守る戦士だからな」

 

 それが俺が北野にできる、一番の恩返しのやり方だろう。

 

 誰かを守る力をもらった。だったらそれは、こういう泣いてるガキの為に使うもののはずだ。

 

「心火を燃やして、この世界を破壊しようとする奴らをぶっ潰す。そんで守りきって北野が帰ってきた時にゃ、お前が母ちゃんとあいつを繋いでやれ」

「……できるかな。わたし、ママを守れなかったのに」

「できるさ。だってお前の両親だろ? だったらお前しか三人一緒の明日は創れねえだろ」

 

 ニッと元気付ける為に笑いかけて、北野の娘の頭を軽く撫で回す。

 

 南雲よりは寛容だと思うし、これくらいは許されるだろう。うん。

 

「……うん、わかった! わたし、信じて待つよ!」

「おう、任せとけ」

「ありがと、龍おじちゃん!」

「頑張ってなの!」

「ああ、心火を燃やして戦うぜ!」

 

 あんまりガキの相手は得意じゃあねえが、こういうのも悪くねえな。

 

「ミュウー、リベルちゃーん。そろそろパパ達が返ってくるそうよー」

「あ、ママの声だ! 行こうリベルちゃん!」

「あ、うん!」

 

 多少吹っ切れたのか、ミュウに引っ張られる形でベッドルームを出て行った。

 

 俺もついて行こうとして……ふとあるものが目に止まる。

 

 

 

 元の穏やかな顔で眠っている女の手の中に、ドライバーがあったのだ。

 

 確か北野が作ったドライバーとか言ってた。エボルドライバーによく似た形をしている。

 

「……そういや、ブリーザードナックルは南雲がこの迷宮で変身した時のアーティファクトを参考に作ったんだっけか?」

 

 そうだ。

 

 これ以上スクラッシュドライバーのライダーシステムで強くなることが危険なら。

 

 もしかしてこいつを使えば、俺は……

 

「……いや、んなわけないか。そもそも変身機能はついてないって話だったしな」

 

 頭に浮かんだことを打ち消して、俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……妙に何かを引きずった気持ちのままで。

 




読んでいただき、ありがとうございます。

次回はメルドさんです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。