星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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Twitterで最終決戦のハジメ達の衣装とかアップしてます

始「よう、こんにちは。前回は先生と天之河の話だったな」

先生「みなさん、成長していますね」

始「そうだな、懐かしい顔ぶればかりだ。さて、今回は決戦開始前の話だ。それじゃぁせーの、」


二人「「さてさてどうなる終末編」」



誰も恐れない

 ハジメ SIDE

 

 

 

 ゲートを通り抜け、広場に出る。

 

 

 

「おかえり、ハジメ」

「待ってたよ」

「よう美空、ウサギ。出迎えご苦労さん」

 

 ゲートホールを設置していたその場では、美空が待っていてくれた。

 

 隣には当然のように、ウサギがいる。二人とも顔色は良さそうだ。

 

「その衣装、似合ってるな」

「でしょ? さすがお爺ちゃんでもハジメだし」

「ぶい」

 

 決戦に備え、肉体強化や数々の魔法陣、治癒能力まで備えた戦闘装束に身を包む二人。

 

 それは何もこいつらだけではなく、俺やユエ達、この場の全員が決戦仕様の装いだ。

 

 悔しいが、今の俺一人ではここまで高性能な装備は作れない。

 

 50年という、覆せない圧倒的な経験の差を感じさせる逸品だ。

 

 件の奴は、俺たちが最後の睡眠をとっている間に先に来ている。どこぞでふんぞり返ってるだろう。

 

 

 

 そして、ウサギの隣には白い法衣みたいなのを着た男が立っていた。

 

 俺はもちろん、後ろにいるユエ達もその新顔に自然と視線を向ける。

 

「で、そいつは?」

「最後のホムンクルス。私の弟」

「お初にお目にかかります、南雲ハジメ様。私はハギオスと申します」

 

 優雅な礼を見せるハギオスとやらは名前からしても、いかにも聖人っぽい雰囲気だ。

 

 解放者達のこだわりか、人間型のホムンクルスは軒並み見た目がアホほど良い。

 

 当然こいつも優男風のイケメンだ。まあシュウジの方が優ってるが。

 

「ああ、今私の容姿をご友人と比べましたね」

「っ……魂魄魔法で俺の意識を読んだのか」

「ご容赦を。姉の恋人との挨拶なのだから、しっかり目を見なくてはと思うあまりに」

 

 黄金の瞳を瞼で塞ぎ、ゆるりと笑う。

 

 得体の知れない輩はこれまでごまんと見たが、こいつもまたキワモノだな。

 

「ご安心を。この眼は我らが父母の仇敵、エヒトの犬達にのみ牙を剝くと約束しましょう」

「なるほど。それなりに戦力になりそうだ」

 

 奴がにこりと笑い、不敵に笑みを返す。

 

 ユエ達からまたかみたいな目を向けられてるのがわかるが、これが俺なりの見定め方だ。

 

 

 

 ハギオスとの挨拶も済ませたところで、ふと周囲を見回す。

 

 俺達が今立っているのは、【ハイリヒ王国】王都前の大平原に建てられた要塞。

 

 こちらへ()()()()()()パンドラタワーを中心に、数十万の軍勢の野営地ともなっている。

 

 遠くに見える王都や、その奥ですっぱり半ばから消えた神山が陰影を晒し、なんとも不可思議な雰囲気だ。

 

 

 

 何ヶ月も前から各地で開発を進め、この三日で世界中から集めて組み立てたらしい。

 

 一種の都市とさえ見間違う各所の煌々とした光は、不思議な熱をも感じさせる。

 

 まるでプラモデルのようだが、足を通して感じる規模、構造は一級──いや、それ以上。

 

「ったく、シュウジの野郎。錬成士の俺が自信を無くすレベルのものを用意しやがって」

「あはは、仕方がないよ。だってシューくんだもの」

「ん。なんというか、驚きもしない」

「ですねぇ」

「あいつ、一人でロケットとか作れるんじゃねえのか?」

「冗談……にすら、ならなそうだよね」

 

 いつものやりとりをかわし、プッと吹き出すと皆で笑う。

 

 このくらいの雰囲気の方が、あいつも迎えに来られても気楽だろ。

 

「みんな、そろそろいいかしら?」

 

 などと言ううちに、お呼びがかかった。

 

 美空とウサギ、ハギオスが振り返ると、広場から内部への入り口に八重樫がいる。

 

 背中に大太刀を背負い、蛇があしらわれた戦闘用の着物を履いた彼女は俺達に手招きする。

 

「全員お揃いよ。しびれを切らしてるわ」

「おう、行くか」

 

 踵を返した八重樫に追随する形で、俺達も内部へと足を踏み入れた。

 

 等間隔にライトで照らされた廊下の中を、八重樫を先頭に進む。

 

「八重樫、平気か? 疲れた顔をしてるが」

「……やっぱりそうかしら?」

 

 あの背の刀に慣れるため、八重樫はアイツと一緒に先に王都に戻っていた。

 

 その横顔は……なんというか、少しぐったりしてるように見える。

 

「皇帝陛下が、ちょっと鬱陶しくて。あの人がいない隙にって魂胆でしょうけど、あしらうので少し、ね」

「はぁ……あのオッサンもバカだな。あとでシュウジに言いつけるか」

「ぜひそうして頂戴」

 

 多分死ぬだろうけど、うん、まあ。プレデターどものこともあるし、瀕死程度に留めると願おう。

 

 皇帝の再起不能を予期しつつ、俺達を見て行き交う兵士などが向ける畏敬の視線をスルーして歩く。

 

 

 

 やがて、大きな広間へと到着した。

 

 大きなテーブルが置かれ、エボルトを筆頭に上座には天之河やベルナージュ王女、ガハルド、アルフレリックやカム。

 

 クラスの奴らを代表してか遠藤と清水、他にもアンカジのランズィやらフューレンのイルワやらが揃っていた。

 

 そして遠藤達の隣には、素知らぬ顔をして先生が座っている。

 

「おい先生、休んでなくていいのか?」

「ええ、当然。生徒を助けるための戦いに赴かない教師がどこにいるのでしょう」

「ご◯せんかよ」

「それに私は、〝豊穣の女神〟としての影響力もありますからね。いた方が何かと便利ですよ」

 

 淡々と述べる先生に、遠藤と清水を見る。

 

 二人とも肩を竦め、首を横に振った。どうやら頑として動かないらしい。

 

 まあ大丈夫かと受け流しつつ、さっきからこちらをニヤニヤと面白そうに見ている皇帝に目を向けた。

 

「……ご愁傷様」

「おいおい、いきなり失礼なことをほざきやがるな」

「あそこが再起不能になるのは確定だろうから、今のうちにお別れしとけよ」

「……あの小僧か」

「あらあらん♡ ハジメちゃんたら、また同胞を増やしてくれるのん? もうっ、私への贈り物を欠かさないなんてぇ! 愛してるわん!」

 

 いきなり化け物が声を荒げた。くねくね体を捩る様が非常に気持ち悪い。

 

 途端にガハルドが盛大に引きつった顔になる。その方がお似合いだ。というかザマァ。

 

「はぁ。一応、この世界の人類の存亡をかけた戦いでもあるのだが。お前達はいつも変わらないな」

『クク、そういう方が周りも力を発揮するのさ。お前も俺に火星を滅ぼされる前、兵どもをそうやって鼓舞しただろう?』

「……貴様はいつも私の神経を逆撫でするな」

『おっと、今は同じ星を救う仲間だ。仲良くやろうぜ、王妃様』

「減らず口を……」

 

 最後にエボルトとベルナージュのやりとりで、いい具合に空気が弛緩した。

 

「さて。待たせていたみたいだが、早速始めようか?」

 

 俺達も着席したところで、いよいよ決戦に向けての最終会議を始めた。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 会議の議題は主に、装備・兵器の配置や分配、取り扱いの習得率、戦闘開始後の行動指針や指揮系統など。

 

 はっきり言って無駄な会議だと思う。

 

 

 

 なにせ最初から、エボルトが全て統率しているのだから。

 

 ファウスト独自の戦力(スマッシュやハードガーディアン)、王国軍、帝国軍、冒険者ギルドに傭兵、他諸々。

 

 合わせて数十万の軍勢は一様に訓練され、ギリギリまで改良が進められた現代兵器を使いこなす。

 

 唯一支配しているわけではない亜人族の連中は、カム達とフェアベルゲンを筆頭に支援や遊撃に回る。

 

 あとは現在進行形で、フィールド形成をクラスの奴らが行ってるらしい。塹壕掘りとかだな。

 

『とまあ、こんなところだ。お前ら覚悟はできてるな?』

「無論。この世界に生まれたその時に、我が民と家族を今度こそ守ると誓った」

「せいぜい暴れてやるかね。にしても、まあよくぞここまでまとめ上げたもんだな。最初にテメェが執務室に入ってきて、ファウストの傘下に入れと脅しをかけられた時も驚いたが、一体いつから準備してやがる」

「非常に癪だが、それには同意見だ。これ、先生の影響力やクラスメイトどもの動きも入ってるだろ」

『これぞ面目躍如! ってね』

 

 ガハルドに乗じてそう問えば、既に会議が終わったことで両足をテーブルに乗っけてるエボルトは笑う。

 

 ガハルド達が畏怖したように引き攣った笑いを浮かべる中で、俺はさらにもう一つ問いかけた。

 

「これだけは聞かせろ──いつからあいつは、自分がエヒトに乗っ取られるつもりだった」

()()()()()。少なくとも女神にこの世界の、ユエとエヒトについての知識を与えられたその時に、選択肢の一つとして考えていた』

 

 あっけらかんと、なんでもないことのようにそれは告げられ、俺達は息を呑む。

 

 自分の正体を知らなかった時でさえ、人柱になることを覚悟してたってのか。

 

『あいつは薄々勘づいていた。いくら特別に鍛えたとはいえ、現代人の体に千年もの記憶を持った魂が宿れるということは、少なからず人を超えたモノをも宿せる可能性があると。だからエボルドライバーで肉体を進化させることで、その可能性に備えていたんだよ』

「……エボルアサシンは、その最終段階だったってわけか」

『正解! あれは使えば使うほど魂を蝕むが、その代償に肉体に絶大なエネルギー体への耐性をつける。どこかで聞いた話だと思わないか?』

 

 その言葉にかつての事件が脳裏をよぎり、ユエ達と強張った顔を見合わせる。

 

 

 

 女神マリスは、万物を創造する力を奪うために〝世界の殺意〟に与えられる不死を受け入れた。

 

 肉体や精神を一千年も全盛に保つためのエネルギーは、それは絶大なものだろう。

 

 創造と破壊は表裏一体。大昔の聖書にすら書いてある言葉だ。

 

「自分を捨てた親でさえも、糧にしたのか……」

『抜け目がないだろう?』

「似ている、な」

 

 エボルトとの会話に、ベルナージュ王女が唐突に割り込んでくる。

 

 俺でさえも王女と付けてしまうくらいには覇気のある碧眼で、彼女はこちらを見ている。

 

「かつてお前を倒すため、そして大切な仲間を救うために数々の力を使っていた〝彼ら〟のようだ」

『そこに今度は、完璧に味方な俺が加わるんだ──神如きに負けるはずがないだろう?』

「確かに、な。私はただ、この聖戦の後に控える政務に想いを馳せていることにしよう」

 

 そのジョーク? にガハルドやアルフレリック、イルワなどの顔が苦々しい笑いへと変わる。

 

 事後処理ってのがあるんだろうが、あいにくとそこまで面倒を見てやるつもりはない。

 

 空の上からあのバカを引き摺り下ろしてくるのが俺の、俺達の、一世一代の大仕事なんだからな。

 

「とりあえず、こんな程度の戦いで誰も死なないでくれよ。あいつが帰ってきたら、今度はあんたらの街や国を一通り観光に行きたいからな」

 

 肩をすくめてそう締めくくり、あいつらの顔から緊張が取れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 誰も、エヒトなど恐れない。

 

 

 

 

 

 

 

 恐れてやるものか。

 

 誰一人欠けず、シュウジの能天気な笑顔を取り返すことで幕にしてみせよう。

 

 それが俺の進む道。誰にも邪魔はさせない、もう一人の俺とさえ違う──〝俺の未来〟だ。

 

 

 

 などと決意をしていると、不意に騒がしさを耳に拾った。

 

 要塞の各所に連絡路で繋がっているこの広間に、どこからか喧騒が届いている。

 

 ついに始まったか、とベルナージュ王女達が構える中で、駆け込んできた兵士は慌てた様子で。

 

「ひ、広場の転移陣から多数の竜が出現! 助力に来た竜人族とのことです!」

「──来たか」

 

 最後の頼れる戦力が。

 

 

 

 自分の口の端が釣り上がるのがわかりつつ、立ち上がってユエ達を伴い広間を出る。

 

 後ろからやや騒がしくしつつもベルナージュ王女達が付いてくるのを感じながら、元来た道を戻る。

 

 一度通った道、わずか一時間程度で忘れるはずもなく出口にたどり着き。

 

「ご主人様よ! 愛しの下僕が帰って来たのじゃ! さぁ、愛でてたもう!」

「そうか、じゃあ愛の鞭を喰らえ」

 

 扉を開けた瞬間飛びついてきた変態トカゲに、ドパンッ!! と一発浴びせた。

 

 額にゴム弾を受けたティオは空中で華麗に後方三回転宙返りをしながら、床に落ちる。

 

 そしてビクンビクンと(快楽で)震え、その場に静寂が舞い降りた。

 

 

 

 ……全員の視線が集まっている。こいつ鬼畜だという視線が。

 

 それらをガン無視しつつ、恍惚の表情を浮かべている変態に歩み寄った。

 

「おかえりティオ。三日振りだが変わらないな」

「うふ、ふふふふ。ご主人様こそ、三日振りのお仕置きはたまらなかったのじゃ。我慢しすぎて快感がすごいのじゃ」

「そうか良かったな。で、竜の姿で帰還とはいい演出だな。あいつも拍手を送るんじゃあないか?」

「うむ、良い感じに度肝を抜けたようじゃの」

「いえ、それはあなた達のせいだと思うのだけれど」

 

 八重樫のツッコミが聞こえた気がしたが、よく意味がわからん。

 

 周囲を見ると、皆頷く。ティオと顔を見合わせ、首をかしげた。

 

「「別にいつもどおりだろ(じゃろ)?」」

「だめだ、早く治癒しないと……」

「美空、これはもう手遅れだと思うよ。私達の魔法じゃ治せない類のものだから」

「ハジメさんもティオさんも、互いに毒されましたねぇ」

「ドSなハジメも、素敵?」

「南雲、本当に尊敬するよ」

「なんつーか、幅広い趣味だよなぁ……」

「アブノーマルだよねぇ」

「散々な言い草だなお前ら。というか天之河は後で話がある」

 

 ったく、本当に後少しで世界存亡をかけた戦いだってのに。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 ユエ達に呆れたような目で見られていると、立て続けに竜のうち六体が輝く。

 

 

 

 そいつらは着物を着た美丈夫へと姿を変える。それぞれ髪の色が違ってやけにカラフルだな。

 

 そのうちの一人、緋色の髪をした初老の男が俺達のほうへと一歩踏み出てくる。

 

 一応後ろにいるのは国の重鎮なんだが、全く気後しない足取りは、どこか〝王だ〟と思わせた。

 

 

 

 その圧を受け流していると、男は俺に鋭い目を向ける。

 

 警戒というよりは、関心。

 

 しかしそれも一瞬のことで、後ろにいるベルナージュ王女らに目線を戻した。

 

「ハイリヒ王国ベルナージュ・S・A・ハイリヒ殿、及び各国住民の方々──そして異界より現れし、星を狩る者の片割れよ」

 

 ベルナージュ王女、ガハルド、アルフレリック。

 

 地位の高い奴らを一人ずつ見渡し、そして最後にその後ろにひっそりと立つエボルトに目を向ける。

 

「お初にお目にかかる。私は、アドゥル・クラルス、竜人族の長。此度、我ら竜人族もこの決戦に参戦させて頂く。里には未だ同胞が控えており、ゲートを通じていつでも参戦できる。使徒との戦いでは役に立てるだろう。よろしく頼む」

 

 その声は大きくはなく、されど無視できることもなく。

 

 自然と包み込まれるようなその言葉は穏やかであり、どこかあのジジイにも似ていた。

 

「おお……」

「ほお、これが……」

「頼りにしている。アドゥル殿並びに、竜人の方々よ」

 

 伝説の種族の協力、という触れ込みにガハルド達が感動のため息を漏らす中、ベルナージュ王女が告げる。

 

 これが本来の理知的で包容力のある、種族自体が王に相応しいとされた高潔な竜人族、ね……

 

「はうっ!? ご主人様から残念な者を見る視線を感じるのじゃ!」

 

 うん、やっぱあいつだけキワモノだわ。

 

 

 

 鷹揚に頷いたアドゥルと、他のイケメン共はベルナージュ王女達と一緒にさっきの広間に行くことに。

 

「では早速、会議室へ。南雲ハジメ、お前さんらはどうする?」

「俺達はこの場に残って、【神域】攻略の話をする。八重樫と天之河は残ってくれ」

「ええ、わかったわ」

「勿論だ」

 

 さて、これで一旦二手に解散となる。

 

 しかし、さっきから俺にガンつけてやがった藍色の竜人の男がズイとこちらに体を押し出してくる。

 

 自分を主張するようなその行動から、察するにアドゥルの挨拶が終わるのを待ってたんだろうが……

 

「何か用か?」

「……貴様。姫に一体なにをした?」

 

 ……姫? この場に姫さんもアルテナも、ガハルドの娘とかもいないが。

 

「誰のことだ?」

「貴様の目は節穴か! 竜人族の姫と言えばティオ姫以外にいないだろう!?」

 

 ………………………………はい? 

 

「姫?」

 

 ユエを見て確かめる。彼女は首を傾げた。

 

「姫?」

 

 続けてユエがシアとウサギに振り、二人も同じ反応をする。

 

「「姫?」」

 

 二人は美空と香織に聞き、あいつらもきょとんとした。

 

「姫」

 

 香織が八重樫に確かめるような視線を向け、八重樫は困ったように笑う。

 

「「姫??」」

 

 坂上と谷口が、互いに聞き間違いでないことを確かめるように顔を見合わせ。

 

 つられて天之河がティオを三度見くらいしてから、俺になんとも言えない目を向けた。

 

「「「「「「「「「「いやいや、ないわー」」」」」」」」」」

「南雲とのやりとりを見てると……なぁ」

「ぬがーっ! 姫と呼ばれるのがそんなにおかしいか! 族長の孫なのじゃから、そうでもおかしくはなかろうて!」

 

 あの天之河でさえも声をそろえると、恥ずかしそうに赤面したティオが吠えた。

 

「あーうん、まあおかしくはないな。悪かったよティオ姫?」

「ん。可愛らしい、ティオ姫」

「キュートだと思うよ、ティオ姫」

「ごめんなさい、語呂が悪いとは思いますけどこれからはそう呼ばせてもらいますねティオ姫」

「ふぅん、いいんじゃない。茶目っ気のある呼び方じゃんティオ姫」

「私もいいと思うな! ティオ姫!」

「ぬがぁああ、やめてたもう! やめてたもう!」

 

 おお、まるで家族にちゃん付けで呼ばれているのがバレた時のような反応だな。

 

「この羞恥はちっとも気持ち良くないのじゃ! というか物凄く恥ずかしいのじゃ! お願いじゃから今まで通りに呼んでおくれ!」

「何だよ、いいじゃねぇかティオ姫。可愛いじゃないかティオ姫。素晴らしい響きだぞティオ姫。もっと教えてくれよティオ姫。これからもずっとティオ姫」

「止めてたもうぉ~」

 

 ああ、なんだろうな。プルプル震えてるティオを見てるとものすごく弄りたくなってくるのは。

 

 それに、500歳超えて姫とか呼ばれて恥ずかしがってるのなんて、マトモな時は凛としたティオにしては可愛らしいし。

 

「き、貴様! 姫に馴れ馴れしいどころか侮辱しおって! やはり怪しげなアーティファクトで洗脳でもしているのだろうッ!」

「ぶふぅっ!?」

 

 あ、後ろで天之河が吹いた。身に覚えがありすぎるセリフだもんなぁ? 

 

「光輝くん……」

「やめろ、そんな目で見ないでくれ香織……」

「まあ、若気の至りって思っとけよ」

「そうよ、気にしないことが肝心よ」

「ほら、みんなもう気にしてないし! 今の天之河くんは普通だよ!」

「グハッ!?」

「鈴!? なんでトドメ刺した!?」

 

 あいつらがワチャワチャしてるな。なんだかんだで良いチームじゃねえか。

 

「てか、さっきからお前うるせえな。お前はティオのなんだ? 実は婚約者でしたー、的なアレか?」

「私は姫の身を案じてだな……!」

「これ、リスタス。いくら弟分とはいえ、あまりご主人様を悪様に言うのは許さぬぞ。妾が心からご主人様をお慕いしていることは何度も言ったであろう?」

「しかし!」

「む……」

 

 改めて口で言われると、なんとも面映い気持ちになる。

 

 我ながら変態的行動に疑問すら抱かないくせになんでだとは思うが……そういうことなのだろう。

 

 もはやラノベのヒロインばりに仲間への好感度ゲージ上がりやすくなってないか、俺? 

 

「姫、あなたは騙されているのです! どうか目を覚ましてください!」

「むう、強情なやつじゃな。何を根拠にそこまで言う?」

 

 ティオの目が駄々っ子を見るときのそれに変わっている。

 

 モロ困ったときの反応であるそれに、リスタスとかいう竜人族はプルプルと羞恥と怒りに震えた。

 

 そして、あらんかぎりの大声でたまらないと言うように叫んだのだ。

 

 

 

 

 

「竜人族の姫が、あんな変態なわけないでしょうっ!!!」

 

 

 

 

 

 それは確かに、と俺達の声は重なった。

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

次回、聖戦開始。
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