星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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ゴールデンタイム、久々に全話見返して後期opのフル聴いたら泣きそうになったぜ……
 
ついに辿り着いた、二人の《獣》が待つ都市。

散々破壊の限りを尽くしたハジメ達は、彼女達と相対する。




楽しんでいただけると嬉しいです。


狂宴にて踊りましょう

 光輝 SIDE

 

 

 

「ごきげんよう、皆様。この終末の舞台へ、ようこそおいでくださいましたわ」

 

 

 

 両腕を広げ、大仰に言う御堂。

 

 変わらない。堂々としているところも、美しい容姿も、どこか妖しげな笑い方も。

 

 やはり綺麗だと、この期に及んでそんな感想を抱いてしまうのは、やっぱり俺が馬鹿だからなのかな。

 

 そんなことを思っていると、雫が一歩時計塔の方へ踏み出した。

 

「御堂さん、久しぶりね」

「ええ、お久しぶりです雫さん。その瞳にその剣気。やはり貴女は素晴らしい才能を秘めていましたわね」

「もっと別の状況で聞きたかったわ。友達として……私の技を指摘した、あの時みたいに」

「悲しいですわ。今の私達はお友達ではございませんの?」

「さて。それはどうかしら……ね」

「っ!」

 

 こちらに向けられた雫の目線。

 

 そこから感じ取ったのは、北野にすぐにでも会いに行きたいだろうに、その時間を俺にくれる優しさ。

 

 

 

 ずっと迷惑をかけてきた。

 

 もし北野がいてくれなかったら、雫は俺のせいで……潰れてたかもしれない。

 

 でも彼女は、俺みたいな世話のかかりすぎる弟分を、今この瞬間まで見捨てないでくれた。

 

 そのことがたまらなく嬉しくて。

 

「ありがとう、雫」

 

 自然と溢れ出た言葉に、雫は仕方がないとでも言うように笑ってくれた。

 

 その好意に甘えて、同じように頷いて許してくれた南雲達に頷き返して。

 

 俺は、雫よりも前に立ち──彼女達を見上げた。

 

「──来たぞ。御堂、恵里」

「──ここまで来ましたのね、天之河光輝」

「やっほー、会いたかったよぉ光輝くぅん」

 

 優雅に笑う彼女と、こちらに手を振る恵里。

 

 彼女は変わらないけれど、恵里は……なんというか、その、かなり扇情的な格好をしている。

 

 胸とか下半身の深いスリットとか、あれもしかして背中も開いてるんじゃないか? 

 

 ……っと。そんなことを気にするためにここに立った訳じゃあないはずだ。

 

「今度は、話してくれるみたいだな」

「折角ですもの。最後の余興に、言葉を交わすのもよろしくってよ?」

 

 ああ良かった。

 

 俺は、幸運だ。

 

「御堂」

「何かしら?」

「──君を、助けに来た」

 

 思い切って、そう告げる。

 

 彼女の目をまっすぐに見て。

 

 けれど、深い輝きを持つその瞳に魅入られてはしまわないように。

 

「何から?」

「君が煩わしいと思うもの、全てから」

 

 呆れてもいい。嘲笑ってくれたっていい。

 

 それでもこれが、俺の選んだ道なんだ。

 

「貴方にそれが理解できていて?」

「少なくとも、君は自らその歪みを誇りはすれど、操られることは許さないはずだ」

「ふむ。私の狂気、少しは理解できたようですわね?」

 

 深く、ぞっとするほど妖艶に笑う。

 

 君は今、どんな感情を抱いてそんな顔を俺に向けているのだろう。愉しさか? 可笑しさか? 

 

 どうあれ。それが俺に向けられたものだという、ただそれだけで……覚悟を決められる。

 

「では、私をこの楔から解き放つと?」

「それが望むことならば」

「たとえそれを為したとて、我が美しき悪道を歩むことを止めるとでも?」

「君は、そうして笑っているのが一番美しい。少なくとも俺はそう思う」

 

 思うがままにそう言った途端、後ろの南雲達から呆れやら気持ち悪さやらの悪感情を感じた。

 

 確かに、昔から無自覚にこういった……い、痛いセリフを吐く癖があるのは自分でもわかってる。

 

 でもそう感じてしまったんだから、仕方がないじゃないか。

 

「……ふふ。最後の戯れにはちょうど良い言葉を聞きました」

「みんなには、不評らしいけどな」

「ええ、ですが今の貴方ならば以前よりは似合っていてよ?」

「それは……ありがとう?」

 

 不思議な気分だった。

 

 彼女は敵で、今こうして向き合っているのは殺し合いをするためで、それ以外は意味なんてなくて。

 

 でも、それなのに、なんだか。

 

 

 

 

 

 最初に俺が迷って、そして生きることの難しさを知った、あの夜を思い出す。

 

 

 

 

 

 でも、悲しいけど。

 

 それは俺の妄想で、ただの幻覚で。

 

 だから俺ばかりが辛いけれど。この時間を終わらせなくてはいけない。

 

「なあ、御堂」

「今度は何かしら?」

「──もう、お腹はいっぱいか?」

 

 そう聞くと、初めて御堂は驚いたように目を見開いた。

 

 息を呑み、形の良い唇を驚きに戦慄かせた。

 

 

 

 もう食べたくないと、あと一度だけ君がそう言ってくれるならば。

 

 いつか君自身で置いてきてしまっただろうあの一言を、まだ覚えているならば。

 

 俺に、君の美しさを()()()()()()()()権利をくれないか。

 

 そんな不遜を、許してくれないか。

 

「……残念ですけれど。まだ、空いて空いて。満たされなくて、たまりませんの」

 

 でも、そんな俺の気持ちの悪い独りよがりは実現しないみたいだ。

 

「……そうか。なら、俺に許されるのは君の誇りを穢す、その呪いを断ち切ることだけみたいだ」

 

 ほんの僅かに寂しそうに、だけど……俺の見間違いでなければ。

 

 少しだけ、嬉しそうに笑った君を、俺は。

 

 

 

 

 

「君を斬るよ、御堂」

「やってごらんなさい。その愚かさで磨いた刃で、ね」

 

 

 

 

 

 ああ、やっぱり。

 

 人と向き合うのは、救おうとするのは、俺みたいなやつには、どうやらすごく難しいらしい。

 

 今更すぎることを思いながら、俺は剣を抜いて。

 

 そして彼女にもらった力で、俺の醜さを曝け出す。

 

「〝悪意変生〟」

 

 羽赫を伸ばし、不恰好な鎧を纏う。

 

 そうして半分が赤く染まった視界で、また見上げ──

 

 

 

「──ねえ、何やってるの?」 

 

 

 

 どろりとした、声が響いた。

 

「なんでその女を見てるの? なんでその女と喋ってるの? なんで僕を最初に見てくれないの?」

「恵里……」

「ねえ、なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで? なんで?」

 

 なんでと、そう繰り返す恵里の瞳はこれ以上ないほどに濁っている。

 

 それは奇しくも、何度も鏡の前で見たことのある、前の自分の目によく似ている。

 

 自分の思う通り、望む通りにいかないことへの果てしない悪意。身に沁みすぎたそれ。

 

「恵里……!」

「くそ、完全にイかれてやがるな……!」

「あらあら、可愛らしいこと。これが貴方の罪でしてよ?」

「わかってる。逃げたりしない」

 

 恵里のことからも、君の前からも。

 

 

 

 

 

 俺は、もう二度と目を逸らさない。

 

 

 

 

 

「みんな、行ってくれ。ここは俺が引き受ける」

「なーに言ってんだ馬鹿野郎。俺も付き合ってやるよ」

「……もちろん鈴もね。あんな恵里、放っておけない」

「二人とも……」

 

 これは、俺一人で背負うべきことだ。俺が向き合わなければいけない業だ。

 

 だというのに、隣に並んだ二人は醜い姿になった俺に、いつものように笑ってくれる。

 

「案外いい仲間じゃねえの、天之河」

「南雲……ああ、そうだな」

 

 俺には勿体なさすぎるくらいだよ……

 

「じゃ、本当に行くが。言っとくが死んでも死体は回収はしねえぞ」

「俺は必要ない。少なくとも二人だけは死んでも守りきる」

「アホか、死ぬわけがないくらい言ってみせろ」

 

 そう言って、南雲は素早くまだ握っていたタクトを振るった。

 

 すると時計塔にどこからともなくミサイルが飛んでくるが、当然御堂と恵里は躱す。

 

 

 

 

 だが、爆炎から逃れたことで出口は開いた。

 

 二人が飛び退いた一瞬で、跳躍した南雲と雫、ユエさん達が時計の文字盤に飛び込んでいく。

 

 最初の空間でそうだったように波紋を放ち、南雲達を受け入れた文字盤は……やがて揺らぎを止めた。

 

「んじゃまあ、いっちょやってやるかぁ」

「死んじゃだめだからね、龍っち。そしたら鈴も後を追うから」

「そりゃ、絶対に死ねねぇなぁ!」

 

 獰猛に笑い、両腕につけていた腕輪をメリケンサックに変形させて構える龍太郎。

 

 鈴も鉄扇を両方とも開き、それらを見た俺は再び時計塔の上に戻った二人を見上げた。

 

「いくぞ、二人とも」

「おう!」

「うん!」

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「チッ、いいさ。すぐに僕が目を覚まさせてあげるからね、光輝くぅん!!」

 

 腕輪に触れ、炎と共に鎧を纏った御堂と、濁った六枚の翼を広げた恵里が飛び降りてくる。

 

 それと同時に、俺たちも全力で彼女達に向かって跳躍し──

 

 

 

 

 

「俺も混ぜやがれ、人間ンン!!」

 

 

 

 

 

「ぐぉあっ!?」

「龍太郎ッ!?」

「龍っち!?」

 

 直後、横から割り込んできた漆黒の影に龍太郎が横から消えた。

 

 その影の行き先を見る間もなく、上から飛んできた凄まじい殺気に本能で剣を振った。

 

 すると、凄まじい轟音を立てて見慣れたチェーンソーとぶつかり、火花を散らす。

 

「ぐっ!」

『さあ、踊り狂いましょう!』

「ああ、望むところ、だッ!」

 

 羽赫の口からエネルギーを噴射し、力の限り剣を振り切る。

 

 かろうじてチェーンソーを跳ね除け、続けて振るった返す刀はひらりと空中で躱された。

 

「あは、〝堕識〟ぃ!」

 

 立て続けに、彼女の背後から入り込むように現れた恵里の手から黒い魔力が──

 

「拒め、〝聖絶・壊〟」

 

 けれどそれは、鈴が放った魔力を崩壊させる聖絶によって霧散した。

 

 チリン、と立て続けに清涼な鈴の音が響き、何枚もの障壁が恵里の眼前に現れ爆発する。

 

「くっ!」

 

 恵里はそれを、分解の力があるのだろう灰翼で防いで後退した。

 

 俺は羽赫で、鈴は下駄の〝空力〟で滞空しながら、時計塔の上に戻った二人を見下ろした。

 

「あぁん、せっかく光輝くんの近くに行けたのに邪魔するなんて。それがし・ん・ゆ・う・のすること? ねぇ、すずぅ?」

「……だからこそ、鈴はここにいるんだよ。それに嫌ってる割には御堂さんと連携取れてるね、恵里?」

「……へえ。言うようになったね」

 

 スッと、恵里が表情を落とす。

 

 隣にいる鈴から発せられるただならぬ雰囲気に、おそらく恵里も油断を消したのだろう。

 

 それを見た鈴は笑っている。ようやく自分に目が向いたと、俺がそう思った時と同じように。

 

「天之河くん、御堂さんをお願い」

「……いいのか?」

「うん。南雲くんも北野っちの為に戦うんだ。鈴も……やらなくちゃ」

 

 そう言われてしまうと、俺に口出しする権利は無くなってしまう。

 

「全力でいこう。龍太郎のことも心配だ」

「そうだね。どこに行ったのかな……」

 

 おそらくは、あの一番それっぽい姿をしている黒い《獣》だろう。

 

 雫の一撃でやられたとばかり思い込んでいたが、考えてみれば南雲すら驚いて生死を確認してなかった。

 

 つまりそれほど雫のアレはすごかったんだが……逃げ果せるあたり、さすがはエヒトの眷属か。

 

「とにかく、終わらせなくちゃ」

「全面的に賛成だ」

『ふむ、ご挨拶は程々に。次は──その首撥ねて差し上げましょう』

「鈴、もう手加減はしないからねぇ?」

 

 刃を構える彼女と、ニタリと笑う恵里。

 

 そんな恵里が不意に指を鳴らすと、そこら中の瓦礫が内側から破壊されていく。

 

 瓦礫の破片と粉塵が舞う中、俺達を取り囲むのは虚ろな顔をした無数の人間や魔人族。

 

「傀儡兵……さっきので死んだんじゃ」

「こいつらの体は特別製でねぇ。あの化け物のミサイルや雫のトンデモ斬撃とかならともかく、建物の倒壊くらいならなんの問題もないよぉ?」

 

 南雲や雫達が先に行ったのが、むしろ都合が良くなってしまったか……! 

 

 しかし、鈴からは驚いただけで、恐怖などの負の感情を感知することはできない。

 

「……そう。なら全部倒すだけだよ」

「あはは、鈴なんかにできるのかなぁ?」

「やれるやれないじゃない、やるんだ」

「……チッ。変に勇気付いちゃって」

 

 ……平気そうだな。

 

「御堂……いいや、あえてこう呼ばせてもらうよ。《傲慢の獣》」

 

 今一度、強く剣を握りしめ。

 

 そして、切先を彼女へと向けて。

 

「──君を、倒す」

『──やってみなさいな』

 

 

 

 

 その言葉を皮切りに、俺達は再びぶつかりあった。

 

 

 

 

 




 
言葉は止める力を持ちはしない。


読んでいただき、ありがとうございます。
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