星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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ついにお気に入りが減り始めてしまった…
どうも、ローグのアーツに見惚れている作者です。

シュウジ「よお、ここだけじゃなく本編でようやくハジメと再会したシュウジだ。で、こっちが……」

ユエ「ん。ユエ。ハジメの嫁二号。よろしく」

ハジメ「…いつの間に恋人から嫁に昇格した」

ユエ「…ダメ?」

ハジメ「いや、別に悪いとは…」

ウサギ「キュ〜っ!キュキュゥ!(うう〜っ!ハジメのばかぁ!)」てしてし

ハジメ「ちょっなんだよ、蹴るなよウサギ」

ルイネ「マスター、私も…ダメか?」

シュウジ「いやあなた最近ユエに便乗してそうことするのやめましょうね?可愛いけど」

ルイネ「♪」

エボルト「ケッ、空気が甘ぇぜ。で、今回はついに最後の戦いに突入だ。それじゃあせーの…」

五人&一匹「「「「「「さてさてどうなる迷宮編!(キュキュッ!)」」」」」」

先に言います、これまでのオリジナル魔物をよく思い出してください。


最悪の覚醒

  ハジメたちと再会し、螺旋階段から真のオルクス大迷宮に入ってから早一週間と数日が経過した。

 

  そして共に戦う中で、変貌したハジメの尋常でない強さ、そして言った通りユエのガチートな強さを目の当たりにすることとなる。

 

  ぶっちゃけここの魔物は、勇者(笑)くんでも相当レベルを上げないと最初の十階層すら攻略できないレベルの化け物ぞろいだ。

 

  それをいとも簡単に撃ち殺す、あるいは蹴り殺すハジメと、ハジメの血をチューチュー吸って回復しながら最上級魔法を連発するユエ。こいつぁ驚いたぜ(脱帽

 

  また、逆にハジメたちはルイネの実力を見て驚いていた。ユエの生きてた三百年前もこれほどの実力のある暗殺者はいなかったらしい。

 

  まあ、当然だな。何せ俺が長い時間をかけて育て上げたのだから。さすが我が弟子、さすが俺である(自画自賛)

 

  んで、今は何をしてるかというと、ついにたどり着いた百階層、〝隠れ家〟のある階層の一歩手前で色々準備を整えていた。

 

「シュウジ、そこの取ってくれ」

「あいよー」

 

  手元であるものを作りながら、近くにあった鉱物を投げ渡す。ハジメはそれを()()()()()()()()、消費した弾を錬成していた。

 

  その横顔は非常に真剣なものであり、集中しているのがよくわかる。なので、脇腹をちょんちょんと突いた。

 

「おふっ」

「ぷっ、おふってw」

「何しやがる」

「あだっ」

 

  お返しにパンチが飛んできた。痛む頬を抑えながら、土魔法で生成した台の上に乗っているもの……()()()()()()()の開発を続けた。

 

  さて。なぜハジメがこんなことをしているかというと、次の百階層目にはとんでもない魔物が待ち構えている…と、女神様の知識にあったのだ。

 

  そいつはこれまで迷宮にいた魔物より、そして俺が戦ってきたあの三体の強力な魔物よりさらに強い、まさしく最強の魔物。〝隠れ家〟を守る、最奥のガーディアン。

 

  そんな相手だ、より一層警戒して相手せねばなるまい。だから用心に用心を重ねて、装備の調整と補充をしているわけだ。

 

  ちなみに俺は待ってる間暇だから色々作ってるだけだ。作って遊ぼうってやつである。隣でエボルトが某番組のクマに擬態してた。

 

「に、しても……」

「………♪」

 

  手を動かしながら、もう一度ハジメの方を振り返る。真剣な面持ちのハジメを、ユエが熱っぽい視線で凝視していた。

 

  最近、ユエのハジメへの好意はさらにエスカレートしている。それはもう美空がハサミ持って追いかけてくる夢見るくらいにはイチャイチャしてる。

 

  寝てる時も座ってる時も抱きついたままで、吸血するときは正面から抱き合う形になるのだが、終わった後もセミみたいにひたすらくっついてる。

 

  要するに、めちゃくちゃ露骨だった。思わず動画と写真撮りまくってハジメにぶん殴られるくらいには甘えてた。

 

「ん〜♪」

「………」

 

  しかも、それをハジメも拒否しないってんだからブレーキがない。現に今も、スリスリと腕に頬を擦り付けてんのに微動だにしない。

 

  俺の見解では、もうハジメはユエのことを受け入れかけていると見てる。美空にどう説明すんのか楽しみだが、まあそん時は俺もフォローするか。

 

「ハジメとユエのイチャイチャフォルダを見せることでな……!」

「それ逆に煽るだけじゃね?」

 

 そうですが何か?(真顔)

 

「おい、聞こえてんぞ」

「おっと、こいつぁいけねえ」

「無駄にいい声で言ってんじゃねえよ」

 

  そんなやりとりをしながら作業することしばらく、ついにそのトリガーは完成した。透明のカバーをつけ、「うし」と頷く。

 

  そのトリガーは、エボルトリガーと似たような形状をしていた。中央に円形のメーターが付いており、上部に警戒色とカバーに守られて青いスイッチが鎮座している。

 

  それは紛れもなく、ビルドやクローズが終盤まで使用した禁断のトリガー、ハザードトリガーであった。

 

「迷宮攻略のかたわらちまちま作ってたが、ようやく完成したな。使わないくせに」

「おう、ようやくだぜ。使わないけどな」

 

  作ったはいいけど、ビルドドライバーないから使う機会ナッシング。代わりにルインドライバーというドライバーは開発したが。

 

  性能はエボルドライバーの下位互換であり、ビルドドライバーの上位互換という中途半端な代物だ。音とかは全てビルドドライバーと同じにしてある。

 

  試作品と完成品の二つずつあるが、こいつも使う機会はないだろう。そもそも試験運転すらしてない、興味本位で作ったもんだし。

 

  ちなみにまだエボルトリガーは復活してない。自分で攻撃すればいんじゃね?と思ったが、どうやら外部からの力じゃないと受け付けないらしい。

 

「皆、食事ができたぞ」

 

  ハザードトリガーをいじってると、ルイネから召集がかかる。すぐに答えて食卓に向かった。ハジメも作業を中断し、ユエを連れて来る。

 

「さあ、今日は少し豪華にしてみた。存分に食べてくれ」

「おー、ほんとに豪華だな」

 

  俺たちの好みの食べ物をいつくも出しつつ、栄養バランスを完璧に考えたメニュー。完全に主婦である。

 

「ま、腹が減ってはなんとやらだ。お言葉に甘えて腹一杯食わせてもらうぞ」

「お、やる気だねハジメ〜。んじゃあ俺もいただきますっと」

 

  用意されていた皿に豆腐ハンバーグと野菜をいくらか取り、一口箸で割って口に入れる。うん、相変わらずすげえうまい。

 

「ルイネはいいお嫁さんになるなぁ」

「そんな、マスターの良いお嫁さんになるなんて……事実だが、恥ずかしいじゃないか」

「あっれーなんか微妙に違う」

「もはや定番化してきたな」

 

  いやんいやんと体をくねらせるルイネにエボルトと苦笑しながらも、食事を続行する。しばらくするとルイネも座った。エボルトを押しのけて俺の隣に。

 

「俺のこの扱いの雑さは一体……」

「まあ、昔の所業の罰ってことで」

「それならあの女神の教育……改造……調教で十分チャラになんだろ……」

「いや調教て」

「……………」

 

  ガタガタと某ホラゲーのキャラみたいに震えるエボルトとは正反対に、向かいの席に座るハジメは黙々とハイペースで食っていた。

 

  どうやら今のハジメは、食事をするという行為をとても重要に感じているらしい。ウサギの話は聞いたが、他者の命を食うという意味をよく理解してるようだ。

 

  ユエさんはそんなハジメをじーっと見てる。もう穴が開くんじゃないかってくらい見てる。大好きだなぁ。

 

「そういやハジメ、()()()()の調子はどうだ?」

「ごくっ……ああ、いい感じだな。使いやすい」

 

  唐揚げを飲み込んだハジメは、皿を持つ自分の〝左腕〟を見てそう言う。つい最近まで肘までしかなかったハジメの腕は、確かにそこにあった。

 

  もちろん、ニョキニョキ生えてきたわけではない。あれは俺の自己再生の新たな派生技能、[+複製体寄生]で擬態したエボルトの元一部だ。

 

  右腕と全く同じ性能の疑似腕を、ハジメは完璧に使いこなしている。ちなみに擬態解くと怪人態みたいなものになる。不思議。

 

「俺が身を割いた甲斐があるな」

「もう回復してるけどな」

「あ、それ言っちゃう?ありがたみ薄れるだろ?」

「恩着せようとすんな」

「ステータスの方は?」

「ほらよ」

 

  ハジメから差し出されたステータスプレートを見る。さてさて、どんな具合に……

 

 

 =============================

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル:68(HL:4.98)

 天職:錬成師

 筋力:4000

 体力:5000

 耐性:4000

 敏捷:5200

 魔力:3900

 魔耐:4700

 技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纒雷・闘術[+獣術][+鬼術][+魔術]・脚術[+死脚][+重撃]・空歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・乱撃[+迅撃][+破撃]・加速[+超速][+豪速]・言語理解

 =============================

 

 

  ……うん、すごいわ。さすがは数々の修羅場をくぐり抜けて生き残ってきただけある。

 

「ま、これなら心配ねえな。最後の戦いだ、頑張ろうぜ」

「おう」

「ん!」

「当たり前だ」

「うむ!」

 

  その後腹ごしらえをすませると、俺たちは出発したのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  足を踏み入れた百階層は、それまでの無骨な迷宮と違って非常に綺麗な作りとなっていた。見た目はギリシャにある神殿に近い。

 

  蔦が巻きついたような装飾の彫り込まれた無数の柱に、三十メートルはあろうかという縦幅。高すぎて天井がよく見えない。

 

  地面には柱と同じ純白の石が敷き詰められ、綺麗に整備されている。そんな空間には、どこか荘厳な雰囲気が流れていた。

 

「記念撮影しようぜ。俺の分身撮影役な」

「ほら並べ、あくしろよ」

「一瞬前までの緊張感を返せ……」

 

  ハイチーズ、と五人で写真を撮ると、いよいよ足を踏み入れる。その瞬間、全ての柱が淡く輝き始めた。警戒する俺とエボルト以外の三人。

 

「ああ、これなんの意味もないただの演出だから気にしなくていいぞ」

「マスター、それはネタバレというものだぞ」

「気にしない気にしなーい」

「まったく……ん?」

「どうした?」

「……いや、なんでもない」

(今少し、体に違和感が……?)

 

  いつも通り和気藹々とした、しかしそれとは裏腹に最大限の警戒をしながら進んでいく。二百メートルも進んだところで、行き止まりになった。

 

  いや、正確には大きな扉のついた壁が見えた、と言ったほうが良いか。全長十メートルはある巨大な両開きで、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が目立っていた。

 

「これが〝隠れ家〟か」

「ああ、間違いない。女神様の知識とも合致してる。これこそが、〝反逆者〟の住処だ」

 

  反逆者。それは神代と呼ばれる時代、神に抗った七人の眷属の総称。歴史では大罪人とされているが、真実は違う。

 

  反逆者……いや、解放者と呼ぼうか……はあの創w世w神w様の眷属じゃないし、今ある歴史はエヒトの手によって都合の良いように改竄されたものだ。

 

  世界をクソッタレな神から救い、変革せんと戦った彼らは、しかし無念にも敗れ世界の果てに散り散りに逃げた。

 

  その世界の果てが、【七大迷宮】。解放者たちが残した、神を倒すための試練。このオルクス大迷宮もその一つになる。

 

「こっから先はヤバイって、本能が言ってやがる」

「奇遇だなハジメ、そいつは俺もだ。んじゃ、これ持っとけ」

 

  異空間からあるものを取り出して、ハジメに手渡す。受け取ったハジメはそれを見て、首を傾げた。

 

  俺がハジメに渡したのは、回転する持ち手とフルボトルのスロットのついた、角ばった楕円形のツール。規格はクローズマグマナックルやブリザードナックルと同じくらいだ。

 

「これは?」

「俺のミラーリフレクターは知ってんだろ?それの改良版みたいなもんだ」

 

  名前はプレデーションシールド。エネルギーの縦型バリアを張り、外部からの攻撃を吸収し、その数値によって三段階の威力で反射するというものだ。

 

  反射するときにフルボトルを装填することで、そのボトルの成分に応じた攻撃を繰り出すこともできる。

 

「前はできなかったが、今は両腕があんだろ?防ぎながら撃つもよし、それ単体で武器にするもよしだ」

「……なるほどな。サンキューシュウジ」

「いいってことよ。それよりエボルト、エボルを使うから合体しといてくれ」

「合体っていうとなんかエロく感じるよな」

「やかましいわ」

 

  言いながらハイタッチをして、エボルトと合体する。あっほんとだなんか合体するっていうとそこはかとなくエロ(ry

 

  エボルトと融合すると、残りの三人と顔を見合わせ、頷いて最後の柱の向こうへ足を踏み出した。

 

 

 

「ーーぐっ!?」

 

 

 

 その瞬間、突如ルイネが声をあげた。

 

  即座に反応してそちらを振り返れば、ルイネは自分の胸を両手で抑えていた。顔には苦悶の表情が浮かんでいる。

 

「ルイネ!」

『おいおい、一体何事だ!』

「なんだ、これはっ……力の、制御が……っ!」

 

  苦しむルイネに状態異常を治す魔法の構築を開始すると、突如彼女の足元に血のような赤い輝きを放つ魔法陣が現れた。

 

「これは……転移の魔法!?」

「マスター、助け……!」

 

  今にも魔法陣の輝きに包み込まれそうなルイネが、涙を目の端に光らせながら手を伸ばす。

 

  俺は反射的にその手を掴んだ。もう二度と、この手からこいつを離したりしない。俺の家族を、誰にも奪わせない。

 

「シュウジ、早くそこからルイネをーー」

 

  背後からのハジメの言葉が終わる前に、ルイネともどもどこかへと転移された。前のめりになっていたので地面に倒れる。

 

  しかしすぐに立ち上がり、周囲を見渡した。召喚された部屋は八角形で、天井は等間隔に並んだ柱に支えられていいる。どこを見ても、出口は見当たらない。

 

「くそっ、ハジメたちと分断された……!」

 

  最後の最後にこういうトラップが仕掛けてあることは十分に予想できた。俺としたことが、油断してしまった。

 

「やっちまったな……!」

『それより、ルイネはどこだ?』

 

  そうだ、それよりも今はあいつのことが優先だ。もう一度探知魔法を使うが、しかしルイネの反応は引っかからなかった。

 

 

 グルルルル……

 

 

  どうしようか頭を悩ませていると、不意に唸り声が聞こえてくる。咄嗟にそちらを振り向き、異空間からネビュラスチームガンを取り出して……

 

「……あれ?」

『どうしたシュウジ?早く取り出せ』

「……ない」

『…は?』

「ネビュラスチームガンが、ない」

『なんだと!?』

 

  異空間の中に、女神様からもらったもの以外のすべてのものが消えていた。いくら探っても、何も見つからない。

 

  どうやらあの魔法陣、転移したのと同時に異空間などの空間にあるものを強制解除させる魔法が付与されていたようだ。

 

「性悪な仕様だなオイ…!」

 

  とりあえず、辛うじて残っていたスチームブレードを取り出して、声のした柱へと切っ先を向けた。

 

  俺の殺気を感じ取った声の主は、ゆっくりと柱の陰から出てくる。姿を現したのは、いつしか倒したプテラノドンのようは魔物だった。

 

『あれは、確か倒したはずじゃ……』

「いや、あいつだけじゃねえ」

 

  その俺の言葉に答えるように、別の柱の陰からシマウマのような魔物、上空からなぜか九本に首が増えているドラゴンが降りてきて、姿を現した。

 

  なぜ、倒したはずのこいつらがここに。そう思っていると、不意に三体の魔物の中心に魔法陣が出現した。より一層警戒を強める。

 

 そして、そこから召喚されたのは……

 

「……………」

「……ルイネ?」

 

  魔法陣から出てきたのは、ルイネだった。しかし、先ほどとまったく様子が違う。装いは黒いスーツとロングコートのような上着になり、目は虚ろで何も映していない。

 

  ここでようやく、俺は密かに想像していた一つの予想が当たったことを確信した。すなわち、()()()()()()()()()()()()()()という、最悪の予想が。

 

 

 カチャ……

 

 

  俺が何かを言う前に、ルイネはどこからともなくくすんだ銀色のドライバー……異空間から消えていたルインドライバーを取り出した。

 

  それを腰に巻くと、ドラゴンの一本増えていた首が粒子状に変わり、小さく凝縮され……なんと、グレートクローズドラゴンへと変化する。

 

「どういうことだ……?」

「………」

 

  俺の言葉にルイネはなおも無言で、手元に赤いスイッチ……ハザードトリガーを取りだし、蓋を開けてスイッチを押した。

 

 

《マックスハザードオン!》

 

 

  待機音を発し始めたトリガーをドライバーのソケットに差し込み、体の周りを飛び回っていたグレートクローズドラゴンを捕まえる。

 

  そうすると、突然自分の胸に手を突っ込んだ。そのまま貫通したかと思うと、不気味な光の中から黒と金色のボトル……コブラロストフルボトルを取り出す。

 

「まさか……!」

 

  ルイネはコブラロストフルボトルを数回振るとキャップをセットし、畳んだグレートクローズドラゴンのスロットに差し込むとドライバーにセット。

 

 

《グレートクローズドラゴンッ!》

 

 

「…………………〝変身〟」

 

  そうすると、俺がこの世界の誰よりも知っている、しかし今は最も聞きたくない言葉とともに、レバーを回し始めた。

 

 

《ガタガタゴットン!ズッダンズダン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン!》

 

 

  ハザードトリガーのメーターが光り輝き、不気味な赤黒いチューブが不規則に伸びて三体の魔物に突き刺さる。

 

  その瞬間、魔物たちがドロリと溶けて赤い血のようなボールに変わった。それを吸い込んだチューブは引っ込んで行き、ルイネを赤黒い水晶が包み隠す。

 

 

《ARE YOU READY!?》

 

 

 そして……………

 

 

 

《ウェイクアップブラッドッ!ゲッドディザスタードラゴン!ブラブラブラブラブラァ!〈ヤベーイ!〉》

 

 

 

  水晶が、砕ける。その中から姿を現したのはルイネではなく、よく見覚えのあるその名の通り絶望を体現した、そんな存在だった。

 

  黒いスーツの上からエボルと良く似た装甲を纏い、胸には片角の龍のような装飾。肩アーマーからは先端が炎のように揺らめく、裏地が青色の黒いマントが垂れ下がっている。

 

  黒と緑色で形成された邪龍のような顔の向かい合った複眼と、角のように飛び出た二本のアンテナ。口元には黄金の牙の装飾が浮かんでいる。

 

  両手と両足には黒いラインの走った斜めになった黄金の装甲とブーツをつけ、太ももには尖った装飾が装着されていた。

 

「……………」

 

  それは、かつて人々を操り、万丈龍我を洗脳し、桐生戦兎を陥れジーニアスすらねじ伏せたブラッド族の生き残りの集合体。

 

「……まさか、こんなところで見るとはな」

 

  そこにいたのは……まさしく、仮面ライダーブラッドであった。

 

 

 ●◯●

 

 

  現在、突如魔法陣に飲み込まれたルイネが、ブラッドとなって俺の目の前に立ちはだかっていた。

 

  邪悪さの溢れるその仮面にはなんの感情もなく、少し前まで自分の隣にいたルイネとはまったく別の存在に感じる。

 

「……まったく、本当に性悪な仕様だ」

『まさか本当に予想通りになるとは……』

 

  ふと、疑問に思っていたのだ。なぜああも都合よく、ルイネの力を持った魔物が配置されていたのか。

 

  それはきっと、今この瞬間のためだったのだろう。精神の削られる無限回廊と強力な魔物を倒し、さらに一部とはいえ本来のオルクス大迷宮を攻略させる。

 

  そうして心身ともに限界まで戦った末に、なんとか倒した魔物全ての力を持つ最強の存在が試練として立ちはだかる。これが俺たちの予想。

 

  そしてそれは、見事に的中してしまった。まんまとルイネを奪われ、こうして戦うことになったのだ。

 

「それにしても、ブラッドなのはなんでだろうな?」

『多分お前の記憶から読み取ったんだろ。あの時お前が助けなくても、あの回廊に入った人間の前に姿をあらわすよう仕組まれていたんだろう』

「そして共にいた人間の記憶から強いものをコピーして模倣する、か。ははっ、本当にやられたなこりゃ」

 

  顔を手で隠しながら、自分を嘲るように笑う。予想できていたのに、防ぐことができなかった。そんな自分が滑稽で仕方がない。

 

『それで、どうするシュウジ?』

 

 どうするかって?そんなの決まってる。

 

「あいつを倒して、ルイネを取り戻す」

 

  あの時、コブラを倒したらルイネは解放された。ならば同じように倒してしまえば、取り戻せる可能性は充分にある。

 

  もしそうでなくても、エボルトの遺伝子操作で迷宮から切り離してしまえばいい。まあ、これは上の方法がうまくいっても同じことをするが。

 

『それが終わったら?』

「そうだな……この迷宮をぶっ壊すか?」

 

  たかが迷宮ごときの分際で、俺から家族を……ルイネを奪った。その罪は万死に値する。完膚なきまでに破壊してやろう。

 

「久々にはらわたが煮えくりかえる気分だよ」

『ハハッ、それもいいな』

「協力してくれるか、エボルト?」

『当たり前だ。お前がやることに俺はどこまでもついていく。それだけのことさ』

「サンキュー、相棒」

《エボルドライバー!》

 

  エボルトに感謝の言葉を述べ、ドライバーを装着しながら歩き出す。両手にエボルボトルを召喚し、キャップをセットしてスロットに挿しこんだ。

 

 

《ラビット! ライダーシステム! エボリューション!》

 

 

  レバーを回しながら、ルイネ……いや、ブラッドめがけて歩みを走りへと変えた。そんな俺の体の周りにチューブがコンテナ状に広がる。

 

《ARE YOU READY?》

「『変身』!」

《エボルラビットォ! フッハッハッハッハッハッハッ!》

 

  ハーフボディが体を覆い、赤い靄が弾けラビットフォームへと変身を完了する。その瞬間瞬間移動し、ブラッドの後ろに立つとストレートを繰り出した。

 

 

 ガッ!

 

 

  しかしそれは、いともたやすく掴まれる。こちらをゆっくりと振り返ったブラッドは、拳を離すと前蹴りを放ってきた。

 

『くっ!』

「………」

 

  両腕をクロスして防ぐが、反撃する前にブラッドは瞬間移動でどこかへと消えた。次の瞬間、殺気を感じて頭をひねる。

 

  すると、ゴウッ!と音を立てて赤黒いオーラが顔の横を通り過ぎていった。直進したオーラは壁にあたり、盛大に破壊する。

 

『そんなもん受けたらただじゃすまねえ、なっ!』

「……!」

 

  体を屈ませ、足払いをかける。ブラッドはすぐに反応して躱されるが、本命はそれではない。

 

  後ろに飛び退いたブラッドに念動力を使い拘束すると、瞬間移動で接近して全方位から超高速で拳を叩き込んだ。

 

  動けないのをいいことに、前世から継承した内臓や筋肉を破壊する技を用いて殴り続ける。それを無防備に受けるブラッド。

 

「……っ!」

 

  しかし、ブラッドは力づくで念動力を振りほどき、瞬間移動中の俺を同じく瞬間移動で捕まえると鳩尾に手のひらを押し付けた。

 

『しまっ!』

「………」

 

  ブラッドが僅かに腕を動かした瞬間、手から背中まで衝撃が駆け抜ける。仮面の中で吐血しながら吹き飛ぶ俺。

 

  なんとか空気を蹴って着地すると、瞬間移動とラビットフォームの超速度を活かした高速移動をする。さらに気配を感じさせない技術を使い、ブラッドに悟られないようにした。

 

  動きながらブラッドを見るが、しかし一向に迎撃する気配はなかった。何かを用意しているのかと、警戒を高める。

 

 

 ズッ……!

 

 

  そしてその警戒は、見事に的中した。突如全ての床が刃に変わり、下からマシンガンのように射出されたのだ。

 

『ルイネの力も使えるのか……!』

 

  一部の隙間もない刃の嵐に、オーラで体を守りながらブラッドに迫る。そして背後から心臓の少し横をめがけて貫手を放った。

 

  だが、ブラッドはそれを回し蹴りで跳ね返すと続けて前蹴りを入れてきた。片足を上げて防ぎ、その足を持ってジャイアントスイングで投げ飛ばす。

 

  宙を舞ったブラッドは、それがまるで当然かのように平然と空間を蹴ると急接近、迎え撃とうと構えるがモロに仮面に拳を叩き込まれた。

 

『ぐっ……!』

〈動きが読まれてるな、あの状態でもお前の記憶はあるんだろう〉

 

  厄介な。ルイネは俺が長年かけて完成させた暗殺術をマスターしている。当然それを教えた俺の動きの癖も掴んでいるだろう。

 

  とすると、そう易々と暗殺術は使えない。あっさり捕まってボコられるのがオチだろう。別の手を使わなくてはいけない。

 

 

  しかし、俺の力はことごとく通用しなかった。ルイネの記憶と能力、ブラッドの力を合わせたブラッドはまさしく最強だったのだ。

 

  剣も体術も、全くもって意味をなさない。全て読まれている。たしかにルイネにゃ四六時中見られてた記憶があるが、ここまで網羅されてるとは。

 

  そもそも、ブラッドとエボル フェーズ3ではスペックが違いすぎる。ジーニアスすら軽く捻ったのだ、完全体でもないのに勝てる道理などない。

 

「……………!」

『ガァッ!』

 

  よって、いずれ負けるのは必然であった。ブラッドに蹴り飛ばされた俺は、壁が壊れるほどの力で全身を打ち付ける。

 

  ズルズルと、瓦礫の中で壁だったものに背中を預けた。仮面の中では警告音が鳴り響き、流血でよく目が見えない。

 

  全身に力が入らず、ただ座り込んでいることしかできなかった。思えば、転生してからこれほどの怪我を負ったのは初めてだ。

 

  前世ではもはや受け慣れたはずの痛みは、まるで鎖のように俺の体を縛って動かさせない。

 

『はぁ、はぁ、こんな姿、雫やハジメたちには見せられんな……』

〈そんなこと言ってる暇があったらさっさと立て!早くしないと死ぬぞ!〉

 

  珍しくエボルトが切羽詰まった声で警告を飛ばす。それに何かあるのかと、思い首を動かしてブラッドの方を見る。

 

 

 

 ゴァァアアアアッ!

 

 

 

  すると、もうすぐ目の前に地面を削りながら赤黒いオーラが迫っているところだった。あと数センチで直撃する。

 

 しかし、認識した時にはもう遅く……

 

 

 

 

 

 ドッガァァァァァアアァァアァンッッ!!!

 

 

 

 

 

 俺の視界は赤一色に染まった。




やっとブラッド出せた……使い回しなのが惜しかったのでオリジナルの変身音にしました。
最初の魔物はシザーロストスマッシュを、次の魔物はゼブラロストスマッシュを、最後の魔物はクローズマグマをモチーフにしました。気づいていましたでしょうか?
攻撃を受けたシュウジの運命やいかに!?
お腹入りと感想をお願いします。
あと、誰なのか知りませんが他の方の感想に毎回のようにBadをつけていくのやめてください。不愉快です。
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