宿命、運命、あるいはもっとおぞましい縁で繋がれた男女の命のやり取りが幕を開ける。
一方その頃、地上では……
楽しんでいただけると嬉しいです。
三人称 SIDE
ハジメ達が【神域】に入ってから、しばらく。
地上ではファウスト・各国連合軍と神軍との戦争が混沌化の一途を辿っていた。
ハジメ達という最大の、彼らからすれば文字通り〝女神の剣〟がいなくなったことで魔物の勢いが激化。
止めるものを失ったのは使徒とコクレンらも同じであり、空は半分以上が銀と黒に覆われている。
愛子に託されたヴァールがある程度迎撃できているとはいえ、尋常ではない数だ。
そんな戦場の一角。
そこにいる兵士達が神の軍勢と拮抗していられているのは、何十万という重火器の恩恵に他ならない。
当初こそ、ファウストに実質支配された国々の兵士達は、おかしな形の金属棒にしか見えないそれに懐疑的であった。
だが、今この瞬間ほど訓練していたことに感謝しない時はない。
なにせ剣や槍で直接攻撃したり、長ったらしい詠唱を必要とする魔法より遥かに高火力だ。
敵はフリードに強化されたと思しき、元の数倍、下手をすれば十数倍の力を持つ化け物。
それが何千万といるのだ、剣と魔法では瞬く間に蹂躙されていたことだろう。
そこに数万のハードガーディアンによる援護射撃なども加わり、なんとか地上を飲み込む神の荒波を抑えている。
恐るべし、現代兵器の力。
だがしかし、何も魔物達とて全てが馬鹿正直に突っ込んでくるわけではない。
魔法を想定して飛行型なども大量に飛んでおり、地上だけでなく空からも襲ってくる。
そして……
『ガハルド殿、空から一斉に固有魔法が飛んでくるぞ』
「ああ、こっちからも見えてる! 総員、避難せよ!」
一斉に嘴を開き、そこから何かしらの魔法を吐こうとするプテラノドンのような魔物達。
ガハルドの号令に兵士達は後退を始めるが、しかし詠唱を必要としない固有魔法の方が速い。
おまけに殲滅を主として支給されたガトリング砲やミサイルランチャーは、非常に重い。
当然ハードガーディアン達もマシンガンを空に向け乱射するが、全てを撃ち落とせるわけではない。
むしろ、魔物達の中で出の早かった固有魔法……降り注ぐ火球によって次々と破壊されていく。
無論、走りながら反動の強い重火器を自在に操るようなハジメのような技術を持ってはいない。
「チッ、間に合わんか! リリアーナ姫!」
「はいっ! すぐに〝聖絶〟を!!」
その為に、すぐにリリアーナをリーダーとした結界師の部隊に対応を切り替えた。
彼女達はすぐに詠唱を始めるが、しかしファウストから支給されたローブでも量産型詠唱の短縮が限界。
魔法の構築が終わり切る前に、まるで空爆のように数発の火球が降り注いだ。
ドガガガッ!
だが、それは顔を青ざめさせた兵士達に届くことはなく。
十数発の火球は、どこからともなく飛んできた無数のエネルギー弾によって相殺された。
そして一拍遅れて完成した大規模な聖絶によって、続けて降り注いだ流星群のような火球から兵士達は守られた。
一体誰が、とエネルギー弾が飛んできた方向を兵士達が見ると──
「フライングスマッシュ部隊、そのまま相手を撹乱させろ!」
『『『了解!!』』』
彼らの頭上を、色とりどりの異形が飛んでいく。
人型の、両腕を翼のような形にした彼らはその羽先から先程のようにエネルギー弾を飛ばした。
それによって火球の一部を相殺、あるいは魔物そのものを撃ち落としながら陣形を崩してゆく。
おおっ、と兵士達が歓声を上げた。
「こいつらは……」
『ガハルド皇帝、こちらハイリヒ王国騎士団司令代理のセントレアだ。援護する』
「天閃の白騎士か。助かる! お前達、引き腰はここまでだ! 射撃体制に入れ!」
ガハルドの号令で再び重火器を構え出す兵士達。
『こちら
「そうか、ハァッ!」
〝念話石〟を通じてそれを聞いたセントレアは、飛びかかってきたコクレンを切り捨てながら答えた。
そんな彼女の周りでは、ストロングスマッシュやプレススマッシュ、トレッチスマッシュ部隊が同様にコクレンに応戦していた。
文字通り異形の力を備えた彼らは、神が紅煉の記憶を元に使徒のように製造したコクレンに引けを取らない。
「「「ガァアアアァアッッ!!!」」」
「「「おおぉおおおおっ!!!」」」
それだけではない。
彼らの他にも、セントレアを筆頭に王国騎士団が負けず劣らずの奮闘を見せている。
その所以は彼らの纏う、ブラッドスタークの赤一色に揃えられた鎧にある。
生成魔法によって付与された〝限界突破〟の技能で、彼らは常に自らの限界以上の力を発揮していた。
しかし、彼らが魔力枯渇を起こす様子はない。それどころか常に力が満ち溢れていた。
その秘密は、ファウストがシュウジ主導で精製を試みていた〝魔吸石〟である。
女神の知識によって神代魔法の根本を理解していたシュウジは、ふと重力魔法に目をつけた。
星のエネルギーに干渉する概念であるこの魔法を応用すれば、魔力も自在に操れるのでは? と。
その思想の下に開発されたのが、大地や大気から魔力を吸い取り、装着者に供給するこの鎧。
彼らがその足で大地を踏み締める限り、そして呼吸をする限り、自然から魔力を取り込み続ける。
果ては殺した相手の魔力すらも奪い取って、〝限界突破〟の力を維持し続ける。
ある種のゾンビ装備に身を包んだ騎士達と、突出した力を持つスマッシュ部隊。
それらを率いているのは、指示を出しているセントレア……ではなく。
《 クラックアップフィニッシュ! 》
『ハァアアアアアッ!!!』
騎士団が担当していた一角、その最先端で大きな爆炎が発生する。
その炎を引き連れながら、ワニの頭の形をした紫色のエネルギーがコクレンの群れの中を突き進んでいった。
やがて一際大きな大爆発を引き起こし、霧散したエネルギーのワニ……必殺技を決めたローグが着地する。
「「「ガァアアアァア!!!」」」
『フッ! ハッ!』
すぐさま四方八方から飛びかかってきたコクレン達を、ネビュラスチームガンで的確に射殺。
「グガァッ!」
『シッ!』
しかし、撃ち漏らした個体が凄まじいスピードで接近する。
瞬時にスチームブレードを逆手に握った左手を使い、その勢いを利用して地面に叩きつけた。
CQCの如き体術を使って受け流したコクレンのバイザーにブレードを深く突き刺し、刺殺した。
「「ギェァアアアッ!」」
『ッ!』
その背後から、更に二体のコクレンが迫る。
振り返り、ネビュラスチームガンを構えたローグにコクレンが覆い被さろうとした。
ドギュッ!
その時、聞き慣れた銃声が響く。
どこからともなく飛来したエネルギー弾が一体の頭を貫通し、体制を崩させてもう一体の動きを阻害する。
次の瞬間、倒れてきた仲間の死体にブレたコクレンの首が、地を這うように迫った影によって宙を舞った。
『ほい、これでいっちょあがりや』
『大丈夫ですかいな?』
『お前達……』
ローグの背後を守るように立つ、青と白の戦士。
この世界ではややズレたエセ関西弁で陽気に語りかけたのは、ブロス兄妹だった。
『お前達も参加していたのか』
『ま、これでも仮面ライダー。ファウストの一級戦力ですやん?』
『うちら復讐は終わって、もうやることないねん。せやかてこの力をもらった恩、あの人に返さな……最後の人としての義が廃ってまう』
ネビュラスチームガンとスチームブレード、それぞれの得物を構えて不敵に笑う二人。
互いにマスクを被っていて見えないが、メルドも同じ顔で獰猛に笑うと全方位を取り囲むコクレンを睨んだ。
『ならば、共に戦うぞ!』
『おう!』
『勿論やで! さぁ、思いっきり暴れたるわ!!』
「「「グォアアアアアアアアア!!!」」」
裂帛の気合がこもった宣言と同時に、コクレン達が飛びかかる。
視界を埋め尽くすほどの黒獣達に、ローグは素早くドライバーを操作。
クラックボトルを引き抜き、代わりにフェニックスボトルを装填するとレバーを叩き下ろした。
《チャージボトル! 潰れな〜い!》
『フンッ!』
「「ギャガァ!!?」」
繰り出した拳の炎に焼かれ、一瞬ひるんだコクレンの一部。
そこへリモコンブロスから的確な射撃が入り、数体ほど撃ち落とすと突破する。
『ハクは援護を! 私とソウで切り開く!』
『『了解!』』
そして、仮面ライダー達の進撃が始まった。
長い冒険者生活で培った経験、そしてこの戦いの為に数ヶ月積んできた絶技とも呼べるエンジンブロスのナイフ術。
数々の神業を持つハジメには及ばないものの、命中精度ならば抜群の正確さを持つリモコンブロスの援護射撃。
そして、三人の中で随一のハザードレベルを誇り、生きる戦車の如き戦闘力を秘めたローグ。
ここにいるのは三人の戦士。心技体全てを見込まれ、仮面ライダーの力を手にした者達。
故に瞬時に互いの力量を把握し、瞬く間にプロ並みの連携を取り合えるようにもなる。
『『『おおおおぉおおおおッ!!!』』』
そんな三人の突撃は快進撃という他になく、コクレン達を次々となぎ払い、粉砕し、破壊する。
いかに使徒に迫るスペックを持つコクレンとはいえ、所詮は殺す事にしか存在意義を持たない使い捨ての駒。
司令塔の役割をも担っていた紅煉がいない今、連携すらも取らずがむしゃらに襲いかかるのみ。
そんな烏合の衆に、仮面ライダーは止められない。
──そう、ただの脳無し兵器であるコクレン程度では。
ビキリ、と空の大穴が脈動し、次の瞬間に何かを吐き出すように収縮を始める。
数秒の溜めの後に、大口を開けるようにして開いた深淵の穴から──赤い閃光が吐き出された。
その閃光は進路上に滞空していた使徒達を一瞬で焼き焦がし、戦場の一角──メルド達のいる場所へ真っ直ぐに落ちてきた。
閃光は三人のすぐ側に、ミサイルのように豪快な音を立てて着弾する。
凄まじい地震が起こり、思わずローグ達や、更に後方にいたセントレア達もがたたらを踏んだ。
『ぬっ……!』
『くっ!』
『なんや!?』
コクレンを捌いていた三人は、突如として飛来したそれに振り向く。
仮面を通して、三人の目には濛々と立ち込める大きな土煙が見えていた。
バラバラと降り注ぐコクレンの残骸の向こうに、視覚センサーが熱源を捉える。
瞬時に戦闘体制を取る仮面ライダー達の目の前で、少しずつ地鳴りと土煙が消えていき──
『どぉおおおこぉおぉだぁあああぁ、エェエボォルトォオオオオオオ!!!!!』
厄災が現れた。
仮面ライダーキルバス、ブラッド族の王。
破滅の具現にして、《強欲の獣》。
『くっ、ついに出たか……!』
『厄介な奴が現れよったな……!』
『いずれ来るとは思っとったけどな……!』
強敵と言って差し支えない相手の登場に、三人は初めて緊張した言葉を漏らす。
早々に消えた紅煉を含め、キルバスは地上側に投入されるだろう敵戦力に換算されていた。
だが、こうして間近に見るとその威圧感は圧倒的なものだった。
『感じる、感じるぞ! この戦場にいるなぁ、エボルトォオオオッ!!』
周りに転がったコクレンの死骸に目もくれず、キルバスは迫力を増していく。
相当な力を込めているのか、両手に握る曲刀の柄からはミシミシと音が鳴っていた。
『なんか、やけに気張っとるな?』
『確かどっかの大迷宮で、シュウジさんとエボルトさんにぶちのめされたっちゅー話やったか?』
『要するに逆襲、か』
小声で言葉を交わす三人に、しかし耳聡く聞きつけたキルバスがグリンと振り向く。
『お前ら! 特に紫色のお前、見たことがある顔だなぁ!』
『チッ、気づきよったで!』
『奇襲はもうできんな』
『正面からやるしかなさそうだ……!』
狙ってここにきたわけではないようだが、見つかってしまった以上は仕方がない。
武器を構えるローグとブロスらを見て、ふとキルバスはあることを考えついた。
ゆっくりと、その真紅の刃が三人に向けられる。
『ハッ! いいことを思いついたぞ! お前達や人間どもを全員殺せば、エボルトも現れるだろう! そして今度こそ奴からパンドラボックスを奪ってやる!』
『やれるもんならやってみろや、ボケ!』
『目に痛い見た目しよってからに、手足ぶった切ってカニ鍋にしたるわ!』
『油断はするなよ……!』
いよいよ臨戦態勢に入った仮面ライダー達に、キルバスも双剣を構える。
相手の力はエボルトから聞き及んでいるが、後ろにいるセントレア達の元へ行かせられはしない。
キルバスに恐れをなしたか、幸いにもコクレンも空に飛んだ魔物や使徒らも動かない。
ならば、勝機はまだある。
『行くぞ!』
『『応っ!』』
『ハハハハァ! パンドラボックスを奪った後でお前らの死体をエネルギーに変えてやる!』
そうして、三人の戦士と《獣》が奏でる最悪の協奏曲が始まり。
「そろそろ来る頃だと思っていたぞ、アベル」
「…………………………」
要塞のとある場所にもまた、もう一人の《獣》が襲来していた。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回は神域組に戻ります。
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