星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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地上へと。

今回から怒涛の展開が始まりますよ〜

楽しんでいただけると嬉しいです。


そして、未来が希望を知らしめす 1

 三人称 SIDE

 

 

 

 

 

 人類はよく足掻いていた。

 

 

 

 

 

 それは数多くの要素があってこそだ。

 

 

 

 人が使用するものにあたっては最強の兵器である、ファウストの吸魔石の鎧を着た王国騎士団。

 

 

 

 無限に湧いて出るコクレン達を片っ端から殲滅していく、スマッシュ部隊とハードガーディアン部隊。

 

 

 

 戦場全体を俯瞰するヴァール達を用いて、魔物の大群を空から滅ぼしていく愛子。 

 

 

 

 定期的に通信で人類軍を鼓舞する彼女を守護する、最強の堕天使たる香織と彼女を無限に癒し続ける美空。

 

 

 

 ハジメから託された武器を手に、超精密射撃で援護するパル達狙撃部隊。

 

 

 

 同様にハジメが作った武装を着て戦うバケモ……クリスタベル率いる漢女軍団や、竜人族。

 

 

 

 そもそもが強力な力を持ってこの世界に召喚され、この三日の訓練で実力と強力な装備を得た地球組。

 

 

 

 生体ゴーレムを従え、戦場の各地で暴れまくるミュウ。

 

 

 

 空間魔法で敵を消し、あるいは敵陣に味方を送ったりと、万能に支援するハッター。

 

 

 

 あちらこちらに飛び回り、魔物もコクレンも使徒も平らげるカエル。

 

 

 

 使徒達をその瞳で魂魄から支配し、味方につけて操るハギオス。

 

 

 

 最悪にして最恐の戦力たるキルバスを、三人でどうにか押さえ込んだメルド達仮面ライダー。

 

 

 

 そして各地から集まった、ハジメの用意した装備で武装した数十万の戦士達。

 

 

 

 特に、時間が経つにつれてその動きが顕著になったのは人間の兵士達だった。

 

 数を総戦力分は揃えることのできなかった吸魔鎧ほどでなくとも、彼らの装備には特別な仕掛けが施されている。

 

 彼らが纏う黒い戦闘装束の名は、〝血濡れ吸血鬼(アルモラ・ヴラド)〟。

 

 第一の効果は、攻撃を受けた瞬間発動する〝金剛〟と〝衝撃変換〟。

 

 第二の効果は、〝限界突破〟による人類総戦力の大強化と、それに慣れた頃に発動する〝覇潰〟。

 

 そして、第三の効果。

 

 

 

 

 

 それは──殺した敵の返り血を分解して魔力に変換し、使用者に補填する力。

 

 

 

 

 

 変成魔法と重力魔法のエネルギー操作を用いて作られた、文字通りの吸血鬼となる魔神の衣。

 

 シュウジ達の考案した吸魔鎧や、自分達の決戦装備を揃えた始に対抗心を燃やしたハジメが、鍛錬の合間に作り出した逸品である。

 

 ありとあらゆる魔力を吸い尽くす吸魔鎧に比べて限定的であるし、変換効率も25%程度と非常にしょっぱい。

 

 しかし、諸刃の刃である〝覇潰〟を発動している戦士達にしてみれば、敵を倒せば倒すだけ力を維持できるのだ。

 

 特に、桁違いの力を保有している使徒は変換効率が悪くても、元の量的に大幅な魔力の回復が可能。

 

 それにより、まず膨大な数だったはずの魔物達が魔力補給に刈りつくされた。

 

 そして、愚かにも歯向かう人類の命を使徒が刈り取るどころか、逆に積極的な使徒狩りが行われた。

 

 空を埋め尽くすほど穴から溢れ出る彼女達に自ら食らいつき、やがて凌駕し、見事に撃破していく。

 

 そんな光景がそこかしこで見られたのだ。

 

 

 

 

 更にその勢いを助長したのは、リリアーナとベルナージュ、そして何よりも──プレデターハウリア達。

 

 まず、シュウジがこの戦いに備えて選別し、隔離していた純粋な聖教の信者達による聖歌隊が歌う〝覇堕の聖歌〟。

 

 これが使徒達の動きを阻害し、衰弱させることで6割近くのスペックを奪い去った。

 

 次に、ある程度戦況が拮抗したところでベルナージュが発動した、ハジメから預かっていたアーティファクト。

 

 それは全ての人間に配られ、あるいは兵器に搭載された〝キー〟を認証し、能力を強化する大結界を起動させるもの。

 

 いわば外付けの限界突破付与装置である。

 

 ヴァールに同期して戦場全体を包み込むその結界が、吸血戦士達を更に一段階上のレベルに引き上げた。

 

 ダメ押しに、オーバーテクノロジーな兵器に身を包んだプレデターどもが戦場のそこかしこに出没する。

 

 対して満足に動けない使徒達。どうなるのかは、説明せずとも明白だろう。

 

 そう、終わりが見えない神の軍勢を相手に善戦していたのだ。

 

 

 

 

 

 ──その戦場に、理不尽が現れるまでは。

 

 

 

 

 

「ギェエエアァアアアアアアア!!!」

「う、うわああああああっ!?」

「なんなんだこいつはぁ!?」

 

 次々と戦士達を屠っていく、得体の知れない怪物。

 

 皮を剥いで筋肉を剥き出しにしたようなその青い生命体は、突如として戦場に出現した。

 

 そして人類軍も神軍も区別なく見た端から殺し、食い散らかし、()()()()()()()()()()暴れまわる。

 

 怪物の周囲にいた使徒達は早々に退避し、あとは人類と退避という概念も理解できないコクレン達の虐殺劇が始まった。

 

「ちぃっ! どういうことだこれは!? あんな奴は戦力に入ってなかったぞ!」

 

 広範囲に撒き散らされる極大の棘の雨から逃げ回りながら、帝国軍の先頭で戦っていたガハルドが悪態をつく。

 

『──やってくれたな、アベル。奴め、いつからかはわからねえが戦場の各地にこいつらを隠してやがった』

 

 その言葉をパンドラタワーにて聞いていたスタークが、やや面白くなさそうにぼやく。

 

 そんな彼の周りでは、極度の混乱状態にある司令部が慌ただしく通信の対応を行っている。

 

 その理由は──

 

 

 

『こちら騎士団! 緑の筋肉の塊みたいな、馬鹿でかい魔物が出た! 一応人型だ! コクレン達も数が減ったが、こちらも壊滅状態!』

『隊長、こっちにきます!』

『畜生が! 奴らめ、こんなのまで隠してやがったのか!?』

 

 

 

 

『こ、こちらスマッシュ部隊! 突然黄色い怪物が出てきて、ハードガーディアンは半分以上が機能停止! 気がつけば俺達も──ぐわぁっ!?』

『マルコっ!』

『副団長、危ないっ!』

『っ!?』

 

 

 

『こちら香織! 先生と一緒に水色のシンビオートと交戦ちゅ──あうっ!?』

『香織っ!』

『だ、大丈夫! 掠っただけだから!』

『何言ってんのこの馬鹿! 脇腹抉れてんでしょうが! 早く戻ってきて!』

『私達ガ時間ヲ稼ギマス! 白崎サンハ治療ヲッ!』

『うっ……すみません!』

 

 

 

 

『ちぃっ! こいつはちょっとまずいですぜ!』

『おい、次弾の準備急げ! いくら族長でも一人じゃ死ぬぞあれ!?』

『可愛らしいピンク色のくせに不細工なツラしやがって!』

『急所を一斉に狙え! 少しでも動きを止めりゃ、族長が首を刈り取るはずだ!』

 

 

 

 

 

『ぐほぁああっ!?』

『あらんっ、ちょっとこれは勝てないかも!?』

『アドゥル様、あの橙色の魔物尋常な相手ではありません!』

『くっ、なんという奴! まさしく世界の黄昏から滲み出た悪魔か!?』

 

 

 

 

『ちょっ、あれ何よ!?』

『ぐふっ……まだ、いける……!』

『やめとけ重吾! 死んじまうって!』

『ありったけ魔法ぶち込めっ! あの白いのに近づかれたら日本に帰る前にお陀仏になっちまう!?』

『待って待って待って!? なんか別のも来てんだけど! 何あれ、紺色と黄緑!?』

『三体とかふざけんなよ、マジで!?』

 

 

 

 

 

『ああっ、べるちゃんがっ!?』

「ミュウっ!」

『もうっ、あの灰色のやつ乱暴なのっ!』

 

 

 

 

 

 戦場の各地から届く、同じ敵の出現の知らせ。

 

 たったの数体。それだけの戦力の増加によって、数の暴力に拮抗していた人類軍が押され始めた。

 

 徐々に悪くなっていく戦況。

 

 しかし、それだけでは終わらない。

 

「使徒達が動き始めたぞっ!」

「奴ら、混乱に乗じて聖歌隊を攻撃するつもりだっ!?」

「っ、上空の門に魔力の反応を確認っ!」

「おいおい、魔物の軍勢の第二波かよ!?」

 

 目まぐるしく変わる戦況。

 

 それらを全て聞いていたエボルトは、コツコツと苛立たしげに指でバイザーを叩く。

 

 隣で膨大な報告を処理していたベルナージュが、ちらりとそれを見て重々しく口を開いた。

 

「次の作戦は?」

『……ミレディとあの黒光り連中が到着すれば、まだマシにはなるだろう』

「消極的だな」

『認めたかないが、ミスったな。切り札があっちにもあるのは考えてたが、予想をはるかに超えていた』

「…………我々は、負けるか?」

()()()。残念ながら、あいつらが目的を果たすまで持ちこたえるのは無理だ』

 

 あえて軽い、どこか突き放すような口調で言いながら、エボルトは後頭部で手を組んでだらけた姿勢をとった。

 

 それはこの戦いへの興味を失ったのではなく、冷徹とも呼べるほど現実的で冷静な判断をしたが故の諦観。

 

 ずっとシュウジと何千何万という議論を重ね、この最終決戦におけるあらゆる戦況の想定をしたのだから。

 

 

 

 

 

 

 その最終的な結論──地上における戦いで最も勝率が高い戦法は、時間稼ぎだった。

 

 

 

 

 

 どんな過程を経るにせよ、エヒトと殺し合うのであればこの世界の人類全てを巻き込むのは確実だとシュウジは判断した。

 

 その場合、人々を滅ぼしにやってくるだろうエヒトの軍勢を殺しきるだけの戦力の用意は不可能だとも。

 

 たかだか一年程度の準備では、どれだけ力を尽くしても数万年もの間エヒトが溜め込んでいる戦力を覆せるわけがない。

 

 確実に、自分がエヒトの首を掻っ切る前にこの世界の人類は滅亡する。

 

 カインが千年積み上げた知識をフル活用し、どんなに計算し直してもその結論は変わらなかった。

 

 大衆を守ろうとしすぎて世界を壊した男の記憶を引き継いだシュウジが、それを看過できるわけがない。 

 

 

 

 

 だから、シュウジは自分が人柱となり、そして地上で起こる戦争を自分を助けるまでの時間稼ぎに用いることにした。

 

 最初から絶対に巻き込まれるのなら、積極的に巻き込んでやろうということだ。

 

 それが最もエヒトを殺せる確率が高く、かつこの世界の人々の大部分が生き残れる確率が高い作戦だったから。

 

 ほぼ永久的に0にならないだろう雑魚敵には囮を使って時間を作り、その間にボスを倒して丸ごと無力化。簡単な作戦だ。

 

 そのボス殺しの役割を担うのが【神域】組である。

 

 シュウジは自分ではなく、ハジメ達にそれを任せた。当人達が知らないうちに丸投げしたとも言える。

 

 

 

 

 

 だが、ハジメなら絶対に助けに来てくれると、そう信じたのだ。

 

 

 

 

 

 エボルトは、この世界の人間などどうなろうが知ったことではない。

 

 長く時間稼ぎをすると言う意味では手助けする理由はあるが、滅ぼうが生き残ろうがどっちだっていい。

 

 極論を言ってしまえば。

 

 リベルや香織達など一部の例外を除いて、ある意味神域という安全地帯にいるハジメ達さえ生き残れば、それでいいのだ。

 

 だが。女神への復讐をある意味諦めてまで共に生きることを選んだ、シュウジの心が壊れるのだけは面白くなかった。

 

 

 

 

 シュウジはこの世界の人々を見捨てられない。

 

 ハジメ達よりも心理的価値は低いが、それでも()()()()()を使ってまで救おうとしている。

 

 だからエボルトはここにいる。

 

 後で取り返せると本人が誰より知っているくせに、それでも必要以上の犠牲を許せない甘々な相棒の為に。

 

 

(……まあただ、本当に)

 

 

 本当に、明け透けなことを言ってしまうのならば。

 

 死に物狂いで戦っている人類が絶滅しようが、生き残ろうが。

 

 ハジメ達がもしも仲間の誰かを犠牲にしながらもエヒトを討ち取り、シュウジを取り戻そうが。

 

 どうせ()()()()()()()()()()()ことを知っているエボルトからすれば、ただの暇潰しだ。

 

 

(だから面白いんだけどな)

 

 

 エボルトは待っている。

 

 舞台の上で皆が必死に足掻いて作り上げたドラマの集大成を、馬鹿な相棒が自分ごとリセットして。

 

 そんな相棒の決意も覚悟も、何もかも全部台無しにして。

 

 そうすることで、一番くだらない形でその舞台を終わらせる。

 

 それを見てぽかんとしている相棒の顔を、これでもかと爆笑してやる──その瞬間を。

 

 

(とはいえ、だ。俺もまだ舞台の上で踊ってるキャラクターの一人。せいぜいそれに徹してやるとしますかね)

 

 

 一人愉悦を滲ませながらも、エボルトはこの最悪の戦況を持ち直す方法を考えようとした。

 

 厄介なのはあの魔法生物達。

 

 無闇矢鱈と被害を拡大しているあの化け物どもを排除しなければ、反撃するものもできない。

 

 あれらさえどうにかできれば、少しだけ人類滅亡のカウントダウンの秒読みが増す。

 

 だからこそエボルトは、まず()()()()()()()()を排除することにした。

 

『クソ兄貴。そろそろ退場してもらおか?』

 

 その視線が射抜くのは、パンドラタワー内部に設置された司令部のほぼ正面の方向。

 

 そこでメルド達三人を相手にこれでもかと暴れ回っている、赤い凶星。

 

 未だ弱体化している使徒やコクレンなど問題ではない。

 

 魔法生物らを除けば、最も先に殺すべきは──あの厄介極まる赤蜘蛛だ。

 

「……キルバスか。だがどうする? 今の貴様はエボルドライバーを持ってすらいないだろう?」

『そうだな。だがどうにかして………………』

「……? どうした?」

 

 エボルトが、動きを止めた。そのことにベルナージュは怪訝な顔をする。

 

 わざとではない。かと言って、何かを考えているわけでもない。

 

 今のエボルトからは、ただただ驚愕したような雰囲気が──

 

『はははははは!』

「「「「「っ!!?」」」」」

『ははははははははははっ、はーっはっはっはっはっはっはっ!!!』

 

 

 

 

 

 ああ、とうとう気が触れたのか。

 

 

 

 

 

 突如として笑い出したエボルトに、極限の状況にいる司令部の誰もが思った。

 

 その言動の全てに必ず何か意味があることを知っているベルナージュの瞳だけが、何かを期待している。

 

 誰もが注目する中で、散々に笑っていたエボルトはふっと突然無言になって。

 

『やーめた』

「は?」

『俺がわざわざ動かなくても問題ない。あとは適当に任せとけ』

「貴様……!」

 

 この外道、今度こそ本当に人類を見捨てた。

 

 そう確信を得たベルナージュが声を荒げ、しかしエボルトがその口を無造作に塞ぐ。

 

 火星人だった頃ほど力のないベルナージュは、もごもごと言いながら非難の眼差しを向けた。

 

『何を勘違いしてる?』

「……?」

『俺が動かないのはな、()()()()()()()()()()()がこの戦場にやってきたからだよ』

 

 別の意味でベルナージュは瞠目した。

 

 あらゆる悪行非道残虐行為をやってのけるこの怪物が、信頼すると言ったのだ。

 

 しかし、ベルナージュは卓越した知恵を全力で回転させるものの、そんな相手は思い浮かびも……

 

『そうら、来た』

 

 

 

 

 

 

 

 直後、激しい衝撃とともに司令室が激震した。

 

 

 

 

 

 

 

 そこかしこにあったものが飛び跳ね、座っていた者も立っていた者も皆バランスを崩して転倒する。

 

 唯一、エボルトに顔を掴まれたままのベルナージュだけが彼と一緒に元の位置に着地した。

 

 揺れが収まった瞬間、ベルナージュは全力で赤い手を引き剥がすと外の様子を映すアーティファクトを見る。

 

「何が起こった!」

「わ、わかりません……」

「う、ヴァールからの映像、回復します……」

 

 酷いノイズが走っていた画面が、少しずつ正常に戻っていく。

 

 そこに再び映った戦場を見て──ベルナージュは今世で最大にあんぐりと口を開いた。

 

「あ、れは」

 

 彼女の目に映るもの。

 

 等しく、ほかの司令室の人間や、エボルトの目に映るもの。

 

 それは、コクレンの血肉によって真っ黒に染まった戦場の一角と。

 

 先の衝撃でダメージを負ったのか、なんとか立ち上がろうとしているライダー達と。

 

 そして、なによりも。

 

 

 

 片膝をついたキルバスの前に立つ──独特のフォルムをした、赤い人型の異星人。

 

 

 

『────よう。ざっと七十年ぶりの再会だな』

 

 通信機の役割を果たすアーティファクトが、ローグ達の通信を通じて声を拾った。

 

 その声を聞いて、ああ──確かにと。

 

 我を取り戻したベルナージュは引き攣った顔で納得した。

 

 何故ならば、戦場に立っているのは。

 

 

 

 

 

 

 

『お前をもう一度殺しに、はるばる未来からやって来てやったぜ。なあ、キルバス?』

 

 

 

 

 

 

 

 他でもない──究極の力を得た、エボルトなのだから。

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

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