黒武者 SIDE
……あの夜。
私は、何もできずに打ちのめされた。
突如として現れた男に気がつけば死の間際まで追い込まれ、無様に地に伏し。
そして、何より目標とすべき男を目の前で壊され、最後には死なせてしまった。
無力で私ではどうすることもできなかった……そう悔いるだけならどれだけ楽だったか。
私は、あの場において殺される価値もなかったからこそ命を繋いだのだ。
そのことが、何より屈辱だった。
私は、問うた。
神が殺されたことによりこの世界での唯一の役目を失った私は、私自身に問いかけた。
私の生き残った意味。私がこれからすべきこと。
他者に行動の理念や理由を求め続けた私が、何者にならねばならぬのかを。
だから私はここにいる。
その問いの答えを得るために、人生の全てを使って力を蓄えた。
あとは──証明するだけだ。
「フゥンッ!」
「ゴァアアアァッ!?」
渾身の力を以って得物を振り下ろし、神がここへ差し向けた怪物の腕を叩き斬る。
分厚く無骨な、黒い塊と呼ぶべき剣は私の望む通りの威力を発揮してくれた。
極限まで鍛え上げ、しかし
「ルグァアアアァア!!!」
「オオオォオッ!」
怪物の咆哮を雄叫びで圧倒し、瞬く間に再生された腕槍を打ち出される前に接近。
全身の筋力と突撃の勢いを用いて、下から横へと黒大剣を薙ぐ。
そして、一撃で胴体を両断した。
「すっ、すげえ! あのバケモンを一撃で!」
「っ、いや待て、何かおかしい!」
若いクラスメイト達の誰かが、硬い声で叫んだ。
その言葉は正しい。
私の目の前で、怪物は分断した両方の体からそれぞれ欠損した部位を生やしたのだ。
「「ギャガァアアアア!!!」
地面に残った方の半身が私にタックルを仕掛け、そのまま押し倒そうとする。
切り飛ばした方の半身が、その鋭い爪で私をバラバラに引き裂く──という魂胆なのだろう。
だが。
私の体はそれ自体が筋肉の塊である怪物の全力の突撃を受けようと、微動だにしなかった。
「「!?」」
「──貴様ら如き、中身のない怒りの破片に私は止められん」
奴らが硬直した時間で引き戻した剣を振るい、空中にいる方を真っ二つにする。
当然の如くそれぞれ分かれた左右の体から失った半身を補うように断面から肉が盛り上がり始めた。
私はその様をしっかりと両目で見て、最も使い慣れた技を行使する。
「〝総喰い〟」
瞬間、私の左目から飛び出す巨大な〝口〟。
歯が剥き出しのそれは、完全に二体に分裂する前に怪物の半身を飲み込み食らう。
再生云々以前に、そもそも肉体を分解してしまえば何の問題もない。
「貴様も、邪魔だ」
「ゴグァアッ!?」
膝蹴りを入れ、腰にへばりついている方をどかす。
激しく吹き飛んだ奴はどうにか減速し、獣のように四つん這いで低い姿勢をとる。
釣り上がった目を細め、唇のない歪な歯が並んだ口を怒りに歪めた。
「ガァアア……!」
その体が変化を始めた。
彫刻のように完璧なバランスだった肉体が脈動し、上半身が痩せ細っていく。
その代わりと言うように、下半身が膨張し、関節が増え、まるで豹のそれのようになる。
「……なるほど。そうくるか」
「グルァアアア!!!」
肉体の変形が完了したのとほぼ同時、奴は段違いの速度で飛び込んできた。
黒剣を両手で握り、奴の飛び蹴りに合わせて防ぐ。
激しい衝突音。
先ほどまでの三倍はあるパワーに、こちらの黒剣を握る手が震える。
後ろでクラスメイト達が息を呑み、私自身口元を歪めてしっかり受け止める。
奴は空中でそのまま飛び退き、地面に足をつけた瞬間どこかへと消え去る。
いいや、私の視認できる速度の限界を上回ったのだ。腰だめに黒剣を構え、攻撃に備える。
「──ッ、そこか!」
僅かな空気の流れと殺気の発生源から場所を察知し、黒剣を振るう。
しかし、次の瞬間音がしたのは攻撃した場所──ではなく、私の脇腹からだった。
「ぐっ!?」
何故。見誤ったというのか。
疑問を感じながらもそちらへ裏拳を振るうが、一瞬だけ見えた奴はすぐに姿を消した。
脇腹に手で触れ、確かめる。痛みは大したものではない。これならばまだ動ける。
確信したのと同時、上から殺気。
「ぬぅんっ!」
「グギャガァアアア!!」
「っ!」
また、剣を放ったのとは別の場所から攻撃を受ける。
二度も私は奴を逃したのだ。
それから、奴の攻勢が始まった。
奴が攻撃してくると予測した場所には必ずおらず、予想外の位置から攻撃が仕掛けられる。
おそらく、単純に私の意識が追いつく前に移動しているだけだろう。しかし私には捉えられない。
奴は、高威力だが取り回しの難しい、つまりは動きが鈍いこの黒剣の弱点をよく理解していた。
「ぐぅ……!」
故に、私が膝をつくのは時間の問題だった。
「おいっ、平気かよあんたっ!?」
「あ、あの、お婆さん! 結界を解いてもらえませんか!?」
「助けないと!」
「……黙って見てな。あんたらが思うほど、彼は柔じゃない」
……信頼の厚いことだ。
こちらを見つめる老婆──鈴の言葉に自嘲げに笑ってしまう。
次の瞬間、どこからともなく飛んできた無数の触手に四肢を絡め取られた。
「ぐっ!」
意識の隙をつかれ、動きを封じられた。
そう自覚する間も無く、触手の主──遥か前方に現れた奴が足をたわめる。
そして、私を支柱、触手をゴムのようにして、奴は──自らを打ち出してきた。
「アァアァァアアアアッ!!!」
まさしく、弾丸のような速度。それも南雲のそれに迫るような。
これまでで最大の速度を以て、奴は自分の肉体で私を破壊するつもりなのだろう。
悲鳴が聞こえる。
まだ歳若く、こんな場所にいていいはずのない同郷の友人達の声だ。
きっとそれは、私の体が木っ端微塵に砕け散るのを想像してのことなのだろうが。
「──それを待っていたぞ、獣」
ガゴン、と。
私の眼前まで迫っていた奴は、下からの一撃によって勢いを失った。
え、と誰かが呟く。
驚愕によるものだろうそれの理由は──私の胸から生じた拳だ。
「ガ、ァア……!?」
「行け、〝アベースメント〟」
頭を打上げられた奴を見ながら、命令する。
我が身を包んでいた鎧──この煮えたぎる屈辱と己への嫌悪で生まれた、禁術の怪物へと。
忠実に従った半身は、鎧の形にしていた全身に目を開き、そこから発した光線で触手を焼き焦がす。
次に手の形へと変じ、奴の体を逆に押さえつけて空中に固定した。
「想像もしなかったか、自分と同じものが敵になることを」
「ナ、ゼェェエエエエエエ!!!」
「何故、か………分からない。あるいはただ、私はもういないあの男に──北野に、主張したいだけなのかもしれない」
私は、これほどの力をつけ、努力をしてきたのだと。
あの怒りの化身が差し向けた怪物と真っ向から戦い、旧友達を守れるほどになれたのだと。
無意味な思考だ。遅すぎる後悔だ。
それでも、私は。
「この道を選んだのだ」
独白しながら、黒剣──かの竜女皇から譲り受けた角で鍛えたそれを掲げる。
血のように濁った魔力を流せば、それは眩いばかりの紅蓮の炎を発し、纏った。
「消えろ」
「ガグガァァァアアアアァァアアアア!!!」
絶叫するそれを、炎の一太刀で一刀両断する。
何者をも焼き尽くす紅蓮は再生を許さず、切断と共に一瞬にて灰とする。
呆気ないほどに簡単に振り下ろせた黒剣の切先を、地面スレスレで止めた。
「………………虚しいだけだな、今更勝ったとしても」
何の達成感もない。
やはり力ありきで何かを成したとて、真に意義が付随しない行為とは無為。
多少、失せる気配のない陰気が晴れただけだ。
「凄え……凄えとしか言いようがねえ……」
「ほんとに一人で倒しちゃった……」
「というか、あの太刀筋、どっかで見たことあるような……」
そんなクラスメイト達の呟きを聞きながら。
黒剣を肩に担ぎ、少し離れた場所にいる二人の幼馴染を見て。
「私が勝てるんだ、あいつらも……簡単だろうな」
そう、また独り言を零した。
●◯●
拳士 SIDE
「記憶にあるより、いささか強烈な顔だな」
「ギャォアァァアアアア!」
うむ、威嚇する顔も実に不気味。色が黄緑というのもまた気色が悪い。
ちゃんと中身のあった
あの時は戦った後とはいえ、為す術なく膝をつかされたものだが、さて。
「我がこれまでの生涯をかけて鍛えた拳、どこまで通ずるか試させてもらおう」
「アァアァァアアアアッ!!!」
奴がこちらへ飛び出し、両腕を広げて向かってくる。
その腕が、武器へと変形しようと脈動を始めたのを両の目でしかと見極め。
「セィッ!!!」
右脚を振り上げ、地面に向けて震脚を落とす。
それは地面を伝い、奴の体を駆け巡って麻痺させることで両腕の変形を封じた。
「ガッ……グ、ァ!」
「セイハァッ!!」
二歩目の踏み込み、それにて奴に肉薄し、掌底を入れる。
人で言えば鳩尾に当たる場所に打ち込めば、奴の背中から血飛沫のように肉片が飛び散った。
掌を通して伝わる、確実に中の素体にダメージを入れた感覚。普通ならばこれで動けまい。
だが普通でないのがこやつらの代名詞。手を引く前の一瞬で、ガワが素体に侵食して治しおったわ。
「ギェアアァァアアアア!!!」
「ハッ!」
おおう、危ない危ない。頭へかぶりつこうとしてきたわ。
左の掌底で顎を閉じさせ、そのまま引き戻した右の肘を横っ面に抉り込む。
奴の頭は面白いほど鮮やかに二回転半し、一時的に繋がりが切れた体が力を失った。
そこへ追い討ちをかける。胸へ握った右の拳を当て、鋭く息を吸い込み。
「覇ッ!!!!」
一撃。
奴の全身が波打ち、一拍置いてから思い出したように後ろに向けて飛んでいく。
空中に衝撃の後が波形として残り、ワシはゆっくりと息を吐き出した。
「ふぅむ。思ったよりもいけるのう」
あのいくら歳を食っても見た目の変わらん、おっかない女に習った技だけはある。
これを極めんと長年鍛錬してきたものの、正直思ったよりも相手が鈍い。
「皮肉なことよ。あの夜はあっさりとグリスの鎧を砕かれたというに、ワシの動きに鎧の方が耐えられぬほど強くなってから通用するようになるとはな」
「だからって油断するんじゃないよ」
「分かっとるわい。明日は孫と遊びに行く約束があるんじゃからの」
さっさと終わらせて、車の整備でもしておかなければならん。
道具の場所を思い出そうとしていると、上から降り注ぐように殺気が向けられてきた。
「ギェアアァァアアアア!!!」
「ぬんっ!」
振り下ろされた大きな刃へ、左腕を腰の後ろへ回して右の手刀を放つ。
ワシの指先と黄緑色の剣がぶつかり、そこへカッ! と開眼して衝撃を伝えた。
指の先から貫くように発した衝撃により、刃になった奴の腕は放射状にひび割れ、砕けた。
「グガァァア!!!」
「吠え声だけは一人前よ。だがいささか脆いようじゃな?」
伸ばした指先を折り曲げ、そのまま開いておく。
それで落ちてきた奴の顔面をがっしりと掴み取り、指で固定した。
発狂した奴は暴れ回り、ワシの指を外さんとやたらめったらに暴れ回る。
刃や鞭、鈍器、様々な形に変形した腕や足がビシバシと身体中に叩きつけられた。
「きゃぁあああっ!?」
「お、おい、あの爺さんなんで棒立ちになってんだ!?」
「ま、まさか、流石に反撃できないんじゃ……」
「阿呆」
好き勝手に言う小童小娘どもに一声かけると、妻の結界の中でビクリとする。
群がる使徒達を自動的に衝撃波で破壊するあれの中で観戦しているだけというに、あれこれと言いおって。
ま、不快とは思わん。ワシとて妻に散々言われて、若い頃のように短気ではなくなったのじゃ。
「こやつがあまりに弱いから眠気が出て、少し体の方に喝を入れているまでよ」
「な、何言って……」
「弱い……私達があれだけ苦戦した怪物が、弱い……」
「カカッ、まあ見ておれ」
さて、そろそろ怠けるのも潮時だろう。
どれだけ奴がやっても微動だにしなかった自らの指に、力を込める。
ガワをあっさりと貫き、中身の頭蓋に指の先端が食い込んで骨が砕ける音がした。
「ふんっ」
小さな悲鳴を漏らした奴を、地面へと叩きつける。
地面が割れ、奴の体が一度大きく浮いた。
「ふぅうううぅぅううぅぅ……」
馬乗りになり、手を退かすとそのまま首へと移動させ、息を吸う。
それから、小指から順にしっかりと握った左の拳を振り上げ。
「こいつで終いじゃ──セイハァアッ!!」
裂帛の叫びとともに、奴の頭を砕いた。
先ほど叩きつけた時以上の亀裂が、地面へ走る。
体が股の下で激しくバウンドし……落ちた後、二度と動きはしなかった。
「ふう。ちと肩が凝ったのう」
「遊びすぎだよ。逆に力を抜きすぎたんじゃない?」
「カカッ、そうかもしれんのう」
綻びひとつない衣服の土汚れを払い、妻の言葉に笑う。
さて。ポカンと間抜けた顔をしておるものの、子供達も一人残らず無事なようじゃ。
「後は周りの使徒じゃが……」
「──三割は既に片付けた。スマッシュ部隊を襲っていた黄色い個体も殺っておいたぞ」
独り言を言った瞬間、耳元でそう告げた誰かがいた。
認識した次の瞬間には既に気配は消えており、もう自ら出てこない限りは感知できぬだろう。
相変わらずの影の薄さ、それも自在な存在力の操作には笑いしか出てこないものよ。
「仕事の早い奴じゃ」
さて、では後は雫の方だが。
「まあ。負けることなど、絶対にありえんだろうて」
あいつこそが我らの中で、最も強いのだからな。
●◯●
白侍 SIDE
光を失った。
寄る辺を失った。温もりを失った。
愛しているなどという、言葉一つ程度では到底収まるはずがない、彼への心。
それを伝える機会を永遠に奪われたことは、私にとって生きる意味を失うことそのもので。
だから、白くなった。
彼との記憶で満たされた私の中は、まるで漂白剤をかけたように白く染まっていった。
いつからだろう。この目に色が映らなくなったのは。
少なくとも、最後に南雲くんに会った時にはもう失われていた。
錯覚なのか、本当に瞳が割れてしまったのか。私自身では判別がつかない。
気がつけばそうなっていて、この白と黒しかない世界に慣れるという過程すらも……
どうでも良かったのだ。自分という存在が薄いガラスのようになったことを自覚していたから。
私の世界に、色はあらず。
もう、二度と必要のないものだから困りすらもしない。
彼がいて彩られた。ならば彼と二度と会えない世界など、色付いていても意味がない。
いっそのこと死のうか。そう考えたこともある。
けれど生まれ変わってすら、魂まで消えてしまった彼には巡り会えないと理解して。命を捨てる意味をも失った。
ああ、もう、何もない。
そう悲観して膝を抱えたくなっても、彼以外に弱い私を曝け出せる相手なんていない。
最も友達として心を許していた南雲くんさえも、存在しない希望を求めて去っていった。
だから縋った。
誰かが求めた強い自分──凛としていて責任感が強く、面倒見の良い八重樫雫に。
空っぽな理由、薄い意思、欠如した心。
ますます自分が薄くなるのを感じて、それでも演じた。
でも、ふとある日唐突に、〝光〟が見えるようになった。
剣を振るっている時、僅かにだが色彩のない世界に、紫色の光が。
それはとてもか細い光。拙くて、糸のようで、今にも切れてしまいそうなもの。
それを阻む何かに光をなぞって剣を振るうと、あらゆるものを斬ることができるようになった。
魔物も、天使も、怪物も、悪魔も、人も、それ以外の何かも全て全て、断ち切れた。
確信した。
この何処か懐かしい紫色の光を追いかけ続けて、斬り続けたら。
きっとその先、遥か彼方の実在も曖昧などこかに。
あの夜の喪失を、明けることのない夜の闇を。
少しだけ変えることができる、大きな光があることを。
私は、瞳を覆った。
その光以外を見たくなかった。
故に地球の、私の部屋に残っていた彼の衣服。そこから作った眼帯で目を封じた。
目蓋を閉じていても、その光は見える。なんの問題もありはしない。
だから。
「そこにいる、誰かさん。私の光のため、斬られて頂戴」
「ガグァアァァアアアアッッ!!!」
光を踏みしめる眼前の〝黒点〟から、咆哮が轟く。
あの日に彼を奪った男が纏っていたものの声によく似たそれに、心が僅かに震えた気がした。
白く枯れ果てた心。
表面を取り繕おうと微動だにしなかったものが今、動いている。
「懐かしい感覚。けれど、それを真っ先に伝えたいあなたはここにいない」
正直、どうしてここにいるのかもよくわからない。
南雲くんがどうとか、別の並行世界だとか、そういう話は私にとってなんの意味もない。
ただ私は、追いかけてきたのだ。
もう目の前にある、あの大きな大きな紫の光を。
「待っていて。その黒い染みを拭って、すぐ行くから」
「ガグルアァアアッ!!!」
声を上げ、目蓋を閉じた瞳の裏で一際黒い〝黒点〟が跳躍する。
私は左手を胸に当てて、緩く握った右手を添え。
「〝錬刀〟」
魂魄魔法と昇華魔法、変成魔法で作り上げた魔法を発動する。
それによって私という存在そのものが結晶化し、魔力が形となって現れる。
自分の胸から溢れる桜色の光と共に出てきた、かろうじて包帯で巻かれた柄を握り締め。
抜き放った刃を、〝黒点〟に向けて。
「〝一太刀・桜舞〟」
くっきりとその首に浮かんだ光になぞって腕を振る。
抵抗は無く、花びらを切ったような脆い感覚と共に刃が抜けた。
「ゲ、グァ…………」
〝黒点〟が、私の隣を通過して地面に倒れる。
続けて落ちてきた頭には、十字の光がまだ浮かんでいた。
「〝二太刀・
袖を押さえ、右手だけで刃を振るう。
私自身を具現化したその刃は元より薄く、脆い。
完璧な軌道を描かなければ、刃の方が砕けてしまう。
だからそのバツ印は、完全なものだった。
「ギェッ」
四つに分かれた〝黒点〟の頭は、奇妙な声を上げて地面に四散する。
やがて、暗闇の中で形を持っていた〝黒点〟は崩れるように消えていった。
それを見届けて、私は鞘も柄もない、ただ斬るだけの刃を胸へと収めた。
最後に、前を見る。
「……あと、少し」
眩いばかりの光は、あと一歩のところまで迫っていた。
50年、長かった。
けれどようやく、掴み取ることができるのね。
「やっぱりお前が一番早かったな」
「……龍太郎?」
「おうともさ。光輝の方も無事済んだようだな」
「……そう。なら、後は周りの害虫だけね」
最大の黒点が消え去っても、光の周りをウロチョロと銀色の点が舞っている。
煩わしいことこの上ない。
あれも、斬らなくては。
「……心配しなくてもいい。後は〝兎〟どもに任せておけば、お前の〝光〟は穢されん」
「……そうね。なら、もう休ませてもらうわ」
「ああ、休め休め……でなければ、焼き焦がされてしまうぞ」
「……? 何か、言った?」
「いいや、何も。さ、南雲のところへ行くぞ」
「……ええ」
龍太郎に言われるがままに。
〝光〟の糸が伸びている、南雲くんがいるだろう方向へと歩き出した。
読んでいただき、ありがとうございます。
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◆●樫■ 68歳 女 レベル:???
ハザードレベル:ナNaつeNニ
天職:斬鬼
筋力:いtぃMぁン
体力:はttぅSェん
耐性:H阿っSェン
敏捷:ItぃMぁんHぁセン
魔力:3zeンきゅu百
魔耐:ヨnせN
技能:斬術[+透斬][+抜光][+無我][+事象切断]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・先読[+狂求][+導光]・気配感知[+全感知]・隠業[+幻撃][+暗撃]・言語理解・昇華魔法・変成魔法・魂魄魔法・因果[+絶対不朽]・錬刀
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