星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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今回はカオリンです。

前回の三人より更に膨れ上がったので分割しました。

楽しんでいただけると嬉しいです。


そして、未来が希望を知らしめす 7

 三人称 SIDE

 

 

 

「……あっという間、だったな」

 

 

 

 ポツリと、そう健太郎が呟く。 

 

 無意識にこぼれ落ちたセリフに、結界内にいた誰もが同意の首肯をせざるを得なかった。

 

 中にはあの怪物への強い恐怖を、アドレナリンによる興奮で抑えていたものが解けて座り込む者もいる。

 

「……見てることしか、できなかった」

「強すぎでしょ、あの人達……」

「もしかして、あの人達も──?」

 

 彼らの眼差しは、こちらへと戻ってくる三人と結界を維持する老婆への困惑と畏敬の念で満ちていて。

 

 その姿がどこか、あの錆色の眼光を強く放つ老いた魔王に重なって見えたのだ。

 

「平気か?」

「はっ、愚問よ。あの程度相手にもならんわ。お前こそ腰は平気か?」

「まだ現役だ」

「そら、二人共。与太話をしてる暇があればあっちに加勢してきな」

 

 ニヤリと笑う拳法家と目に闘志を宿す黒武者に、老婆が呆れた様子で言う。

 

 その言葉に地球組がハッとして、まだ怪物以外にも無数の使徒やコクレンがいることを思い出した。

 

「……私達が行く必要はないでしょう」

 

 彼らが焦りの言葉を口にする前に、制するように白侍が告げる。

 

 言葉そのものを切り裂いてしまうような声音に、反論することもなく自然と地球組は口を噤んでしまった。

 

 眼帯で目を覆って、この戦場の何も見えていないはずなのに。どうしてかその言葉には確信があったのだ。

 

「……? なあ」

「な、なんだよ」

「そういえばさっきから、一体も使徒が来てなくねえか?」

「そういえば、攻撃が止んでる……」

 

 それによって、橙色の揺りかごの外へと目を向けた彼らは気がつく。

 

 先ほどまで結界にも群がってきていた使徒が、いつの間にか骸になって転がっていることに。

 

「ああ、そういえばおっかない兎さん達がいたねぇ」

「……この五十年で、彼らは力も数も格段に増した。それに率いているのはこちらの浩介だ、心配はいらない」

「カカッ、先ほど大将首をあげていたわ。()()にいいところを見せようと必死なのだろうて」

「……彼女に見えているかどうかはともかく、ね」

「悲しいことを言ってやるな、雫」

「清水の方も既に来ているだろう。あいつの魔物は、使徒なんかよりよっぽど強力だ」

 

 物静かな口調で交わされる会話の中に点在する名前に、地球組は戦慄が止まらない。

 

 自分達の予想が的中していたことへの大きな驚きで、薄ら寒ささえ感じる。

 

 この四人だけではない、目に見えない場所に大勢()()のだと。

 

「だがまあ、何より期待ができるのは……」

「……あいつ、だろうな」

「別格だからねえ」

 

 口々に誰かのことを言いつつ、彼らは要塞の一角──愛子や香織、美空のいる方角を見やる。

 

 同じ方へ顔を向けた白侍が、やがてポツリとそちらに感じる人物の名を呟いた。

 

「……香織」

 

 

 

 

 

 瞬間、見計らったように光が爆ぜる。

 

 

 

 

 

 空そのものを埋め尽くすようだった銀のヴェールを、悉く滅ぼすような黒い絶光。

 

 地球組が目を剥き、拳法家や老婆が予想通りの展開に不敵に笑う中、発生源では……

 

「……何、あれ」

 

 要塞の足場にて、怪物と使徒の包囲によるダメージを美空に癒してもらっていた香織が呟く。

 

 

 

 

 二人の始によってこの肉体に極限と言える強化を施され、最強の堕天使となった香織。

 

 エーアスト達に迫るスペックに、一定時間経過すると再生魔法の発動する〝堕天の聖印〟などを駆使して奮闘していた。

 

 しかし、彼女やヴェノムを纏った愛子をも凌ぐ水色のシンビオートの登場により、急激に形勢が崩れる。

 

 能力はほぼ互角、しかしとにかく勢いが他のシンビオートに比べても随一であり、二人はかかり切りになる。

 

 その間に使徒達がこれでもかと押し寄せ、いくら弱体化しているといってもその数に少なからず意識が割かれ。

 

 そして香織か愛子のどちらかが重大なダメージを負い、軽傷の方が時間を稼いでいる間に回復して、また応戦の繰り返し。

 

 自分でリカバリーできる範囲を超え、美空の残る魔力もいよいよ拙くなってきた。

 

「……凄い」

『「……アノ、光ハ」』

 

 そして、今。

 

 美空が香織を癒しながら、愛子がヴェノムの自己治癒力で体を治しながら同じく見上げる光が。

 

 鬱陶しい程にシンビオートへの対応を邪魔してきた使徒達を、纏めて薙ぎ払ってしまった。

 

 

 

 

 

「──ハジメ君の見上げる空に、無粋な銀色はいらないよ」

 

 

 

 

 

 やがて、光が消えた。

 

 言葉と共に、手にした得物によって黒光を自ら振り払ったのは──女神と見紛う天使だった。

 

 七つ連なる虹の天輪。外に向かうにつれ透き通った緑色になっていく十二枚の黒翼。星空のように輝く髪。

 

 完璧な流線美を描く体にはドレスを纏い。その手には、眩く輝く黄金の槍を携えている。

 

 そしてその顔は──大人びていても、明らかに香織と瓜二つのものだった。

 

「もしかして、未来から私が……?」

「そりゃ、ハジメが来たんだから可能性はあるけど……」

『「……ナントイウコト」』

 

 奇しくも、戦場のあちこちで起こっているのと同じリアクションを取ってしまう三人。

 

 対する使徒達は、一気に百以上の同胞を屠られたことで動揺が走っていた。

 

「……貴女は何者ですか。先ほどの攻撃といい、これほどの戦力が我々のデータに存在しないなど……」

 

 ゾッとするほどに漆黒の瞳が、あまりの高威力の攻撃に狼狽えている使徒達を見る。

 

「──この戦争を終わらせる者。ただ一人の魔王を祝福する、唯一の天使」

 

 故に、と深淵のように光を宿さない瞳を以って。

 

「量産されただけの人形には、全て消えてもらおうかな」

「──不遜な。不意打ちで我らを仕留めたからといって、もう同じだけの攻撃は出せないでしょうっ!」

 

 いずれかの天使がそう言い、全ての天使がその天使へと殺到する。

 

 その数は百や二百ではない。千を超える使徒達が、あまりに強大な敵を暴殺せんと迫る。

 

「ギェァァアアアアァァアアアア!!!」

 

 最悪なことに、最大の脅威と本能で感じ取ったシンビオートも跳躍した。

 

 上と下、全方位から香織達が相手していたものが丸ごと殺到していく。

 

「っ、逃げて!」

「いくらなんでも同時には──!」

『「クッ──!」』

 

 香織と美空が思わず叫び、愛子がせめてシンビオートの行動を阻もうとする。

 

 その全てを、黒い瞳で睥睨した大天使──未来より舞い降りたカオリは。

 

「何か勘違いしているみたいだけど」

 

 空に浮かんだまま、槍の石突を天空に打ち付ける。

 

 キン──と清涼な音が、空中に広く、広く黒い波紋を広げて。

 

 

 

 

 

 次の瞬間、一斉に数百体もの使徒が内側から肉体を粉砕させた。

 

 

 

 

 

 その余波に当てられたシンビオートもまた、要塞まで落下して床にめり込む。

 

「「「な──!?」」」

「あれは、時空のトンネルを通った時の加速を止めるためのただのクッションだよ?」

 

 ──圧倒的。

 

 カオリの姿を見た全ての知的生命体が生じた感情は、その一言に全て収束された。

 

 一気に半分以上が削られた使徒達は、先ほどよりも静かに、されど遥かに上回る攻撃に瞠目する。

 

「今の、何百メートルもの範囲の空間を支配して、回復魔法で魔力を無理矢理循環させて──?」

 

 美空と愛子もぽかんとする中で、根本的に同じ存在である香織だけがその攻撃の正体を察した。

 

 的確な解析にカオリは香織を見下ろし、少しだけ微笑むともう一度槍を上へ持ち上げる。

 

「っ、あれを止めなさい!」

 

 おそらくはこの大群の隊長格だろう使徒が叫び、同じ攻撃をさせまいと銀雲が動き出す。

 

 その時の彼女達は、人間で言うならば〝必死〟。

 

 故に自覚しないその感情の高ぶりで性能を高めた分解能力が、弱体化を僅かに上回った。

 

 一部のスペックを取り戻した使徒達が、段違いの速度でカオリへと群がり──

 

「〝融天〟」

 

 十二の翼がはためいて解放された黒い波動により、急激に停止した。

 

 香織達が訝しむ中、ピタリと動きを止めた使徒達に異変が起こる。

 

 

 

 ……ドロ。

 

 

 

 空中に止まったまま、使徒の体が溶け始めた。

 

 双大剣も、鎧も、翼も肌も、まるで蝋を溶かしたようにドロドロと融解していく。

 

 至近距離で見ればみるもおぞましい光景の中心で、香織は淡々と告げた。

 

「時の流れは我が手中。形のない〝力〟に戻りなさい、殺戮の為に作られた哀れな人形達よ」

 

 

 

 

 空間再生複合魔法、〝融天〟。

 

 

 

 

 空間魔法によって定めた境界の内側にいる者を選定し、形が定まる以前の純粋なエネルギーに逆行させる魔法。

 

 それによって、戦場全体に存在していた使徒のうちの三割が膨大な魔力へと変換される。

 

 カオリは槍を掲げ、自分の周囲に漂う銀のエネルギーをそこへ収束する。

 

 瞬く間に膨大な力が集まっていき、数秒もしないうちに槍が光そのものとなったように輝いた。

 

 カオリは、槍から地上……シンビオートの乱入により多くの命が失われた地上へ視線を移す。

 

「有効活用させてもらうね」

 

 そして、石突──否、上の穂先に比べ細く小さいもう一つの刃を下に向けたまま槍を掲げ。

 

「〝逆回りの時還〟」

 

 勢いよく、天に突き刺した。

 

 小刃から黒い時計盤が広がり、戦場を上から覆う。

 

 その時計盤の針は通常とは逆の方向に、凄まじい速度で回転して黒い光を地上へ降らせる。

 

 

 

 

 すると、戦場のあちこちであり得ざることが起こった。

 

 神軍によって命を奪われた兵士達の骸がみるみるうちに癒えていき、目を覚まして立ち上がったのだ。

 

 中には肉片も残っていないくらいの者もいたのだが、死んだ場所に黒光が集まると死者の肉体へと変わり、覚醒する。

 

 彼らはしばらく呆然としたり、不思議そうにしていたものの、生きているとわかると戦線に戻り始める。

 

 無論のこと存命の者の傷も一つ残らず癒えて、彼らは再び元気よく雄叫びをあげた。

 

「なっ、蘇生ですって!?」

 

 範囲外にいた使徒があり得ざるその光景に上擦った声を挙げ、次の瞬間いつの間にか戦場に紛れていた〝兎〟の一匹に首を刈られた。

 

 しかし、それだけであるならば香織にも同じことができる。〝回天の伊吹〟という再生魔法だ。

 

 

 

 

 

 本当の奇跡はここからだった。

 

 

 

 

 

「う、ぐぉおおおおおおおおっ!?」

 

 最初は、復活した死者の一人から始まった。

 

 急に苦悶の声をあげ、苦しげな顔をした男に、目の前で死んだのを見たその兵士の友がもしやと振り向く。

 

「お前、まさかまた──!?」

「ぐおぉぉぉおっ──生えるっ!」

 

 そんな彼の前で──バサッ! と一度死んだ兵士の背中から黒い翼が生えた。

 

 目を点にする兵士。

 

 しかし当の本人は少し驚いた後、何かに気づいたように顔に闘志を漲らせると咆哮して魔物に斬りかかっていく。

 

 その動きは、〝血塗れ吸血鬼(アルモラ・ヴラド)〟の強化を大幅に超越していた。

 

 一人にとどまらず、次々と戦場の各地で人類軍の元死者達が翼を生やしていき、限界を超えた奮闘ぶりを発揮し始める。

 

 〝逆回りの時還〟。その魔法の効果は、魂魄魔法で選定した対象への、死体すら残っていない者の蘇生をも可能な超常的治癒。

 

 

 

 

 

 そして、一時的な〝使徒化〟である。

 

 

 

 

 

 再生魔法でカオリが通常の使徒のスペックだった頃の〝時間〟を特定・保存し、それを対象者に付与したのだ。

 

 その効果は非常に反則的なことに、生者にも及んでいる。

 

 肉体の時間を巻き戻しながら付与したことですぐに馴染んだ死者ほどではないにせよ、そのうち使徒化するだろう。

 

「これで被害のリカバリーは済んだかな。さて、あとは……」

「ギィイイィイイイッ!!!」

 

 カオリが見下ろしたのは、暴れもがいているシンビオート。

 

 実は先ほどから虹輪より発していた光で、全く身動きが取れていない状態だった。

 

 ただただ怒りの咆哮をまきちらす異形の姿に、愛子が香織達を守るように立つ。

 

「心配しなくても、すぐに終わらせますよ」

 

 そんな彼女へ一言落とし、カオリが今度は上の穂先を手の中で柄を回転させて向けた。

 

 そこには先ほど〝融天〟で集めた魔力が一部残っており、カオリは自前の魔力を上乗せする。

 

 ボッ!! と激しい音を立て、緑色の美しい炎が穂先を包み込んだ。

 

「ギィガァアアアアア!!?」

 

 それを見た途端、突然シンビオートの声の性質が変化する。

 

 怒りをぶつけるものから、あの炎より逃げようとする悲鳴へと。

 

 その所以は、あの炎の正体が過剰すぎるほどの治癒の力であり。

 

 同時に、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「怒りの化身の欠片である貴女にとって、これは何よりも嫌厭するものだよね?」

「ヤ”メ”ロ”ォオオオオオォォ!!!」

「──虫が良すぎるよ。私達から、大切な人を二人も奪っておいて」

 

 冷徹で無慈悲な言葉と、投擲。

 

 恐ろしいほど音も無く落ちた槍は、肉や骨を破く音さえも出さずにシンビオートの頭を貫く。

 

 そこから流し込まれた、あまりに過剰な癒しの力がその必要がない肉体に浸透していく。

 

 

 

 ボギュッ!

 

 

 

 この槍は、カオリが数々の大魔法を使う為の杖でもある。

 

 そして、この炎を使った時にだけ発動する、とある再生魔法が付与されているのだ。

 

 それは──因果の強制成立。

 

 

 

 ゴボッ、グジュッ、ギュルルルウ!!! 

 

 

 

 癒す場所のない肉体。

 

 であるならば、溢れ出る治癒の力が通じる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その逆説を具現化する魔法により、シンビオートはみるみるうちに何十倍にも膨張し、グロテスクな肉塊になる。

 

 痛みの声は上げない。

 

 上げられるはずがないのだ。どれだけ壊死した贅肉が増えようと、逆に気持ちいいのだから。

 

 

 

 

 やがて、限界まで膨張したシンビオートがパンッ、と軽い音を立てて弾けた。

 

 その血肉は愛子達に到達する前に空中で死に切って黒炭と化し、何も残らない。

 

 唖然としたまま動かないで、唯一地面に突き刺さっている槍を見ていた三人の前にカオリが降りてくる。

 

 そして、大した力を込めた様子もなく槍を引き抜くと。

 

「うーん、ちょっとスッキリ!」

 

 惚れ惚れするいい笑顔でそう言った。

 

「……美空。私、夢でも見てるのかな? それとも死の間際の幻覚かな? かな?」

「安心して、ちゃんと起きてるし死んでないから」

『「……強イデスネ」』

 

 互いに頬を引っ張り合う二人を尻目に、愛子はヴェノムを解除しながら歩み寄る。

 

 カオリはすぐに気がつき、虹輪と翼を消すと体ごと向き直った。

 

「……白崎さん、でいいのですよね?」

「はい、そうです。でも正確には少し違います」

「正確には……?」

 

 首をかしげる愛子に、カオリは一度目を瞑る。

 

 次に瞼を開けた時、彼女の目は光のない黒ではなくオッドアイだった。

 

 右は香織の、少し茶色がかった黒い瞳。そして左は緑がかった黒い瞳だ。

 

 それを見て、愛子はしばし考えた後にハッとする。

 

「まさか──!」

そ。私も中にいるし。主に香織に任せてるけどね

 

 頷いたカオリの口調は、それまでの穏やかで優しげなものとは異なっている。

 

 少し勝気な、自信の滲む声音。腰に手を当て、口の端を釣り上げる様はまるで……

 

「石動さん……?」

この体を動かすには、香織でも難しすぎたからね……だから私達二人で、この力を手に入れたんです

「それは……とても頑張った、んですね?」

「美空と二人で一人にっ!? そ、そんなの羨ましい……!」

「香織?」

「はっ! な、なんでもないよ美空?」

 

 美空のジト目から逃げる香織に、カオリ/ミソラがクスクスと笑った。

 

 愛子も苦笑いし──その時、空の大穴から地鳴りのような音が響いた。

 

 弾かれたように顔をあげる三人。

 

「今度は何が!」

「【神門】に異変が……!?」

「っ、魔力の流れがおかしくなり始めてる……!」

 

 口々に感じたことを叫ぶ香織達に、カオリは同じように【神門】を見上げて。

 

「……来るよ。援軍が」

 

 その言葉と同時、【神門】から一気にヘドロのような大量の瘴気が放出された。

 

 それは【神山跡】にまとわりつくように落ち、地を張って瞬く間に草原まで到達してくる。

 

 その中から次々と咆哮をあげ、飛び出して来たのは──無数のコクレンと、魔物の群れの第二波。

 

 更には【神門】から直接、追加で数千体の使徒までもが出現する。

 

 

 

 

 

 その数、第一波の約三倍。

 

 

 

 

 

 各地の人類軍と、現れた未来からの助っ人によってほぼ壊滅していた神軍が立て直された瞬間だった。

 

「嘘でしょ……!?」

「まだ、あんなに……!」

「早く、皆の士気を取り戻さなくては……!」

 

 再び怒号と戦闘の音が各地から響き始め、香織達は実に苦しげな顔をする。

 

 愛子は絶望に包まれているだろう戦士達を鼓舞しに高台へと走り、香織と美空は未だ座り込んだまま。

 

「まだ立てるはずだよ。私達は、この程度でへこたれるはずがない」

 

 そんな二人へ、カオリが手を差し伸べた。

 

 二人はその手を見上げ──豪、と瞳に再び炎を宿す。

 

「そうだね。こんな風に座り込んでたら、ハジメくんに笑われちゃう」

「まだまだ、私達の意地を見せつけてやろうじゃん!」

 

 カオリの手を取り、勢いよく立ち上がる香織と美空。

 

 一人はアーティファクトである大幣を握りしめ、一人は双大剣を手に再び翼を広げて浮遊した。

 

 諦めなど微塵も感じられないその表情に、大天使は笑いながら天地を埋め尽くす軍勢を見る。

 

「……これで数は足りるはず」

「え? 何か言った?」

「ううん、なんでも。さあ行くよ。私たちが二人ずついるんだから──負けるなんて、あり得ないよね?」

「「──当然!」」

 

 空へ飛びながらカオリが飛ばした挑発に、二人が確認はこれが最後と強い声で叫び。

 

 

 

 

 

 そして、再び戦場へと飛び立った。

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

次回でこの展開は終わるはず。
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