星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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シュウジ「よお、シュウジだ。今回はもはや何も思い浮かばなくて作者の前置きはないぜ」

ハジメ「言ってやるなよ……で、前回は俺の戦いだったな。ウサギ、本当にありがとな」

ウサギ「ハジメのためならなんてことないよ」

ハジメ「ウサギ……マジ天使」

ユエ「むう、キャラ崩壊の上に私よりいい雰囲気」

ルイネ「まあ、そういうな。あれがなかったら二人とも危なかったのだろう?」

エボルト「これで美空に刻まれる回数が二回に増えたな」

ハジメ「やめろよ!まったく……で、今回はシュウジが目覚めた後の話だな。なんでもかなり重要なことが明かされるみたいだぞ。それじゃあせーの……」


五人「「「「「さてさてどうなる迷宮編!」」」」」


解放者の遺産

 酷く……長い夢を見た。

 

 

 

  それは俺の中で最も最悪な、しかし今の俺の強さを作り上げた長い前世の記憶。俺という人間の、最大の秘密だ。

 

  俺という人間の原点となった世界は、ハジメたちと暮らした今世の現代と、トータスのものによく似た魔法科学の混合した世界だった。

 

  俺……いや、〝私〟はそんな世界で、なんの変哲も無い一人の子供として生まれた。ただ、他の人間と違いある一族の分家の血を継いで、だが。

 

  両親もわからない私は、生後ひと月もしないまま拾ってくれた村人の家からその一族……世界最強の暗殺者一族の本家に引き取られることとなる。

 

  そして、その本家とは地獄そのものだった。その血筋を受け継ぐものはすべからく暗殺者であるべし、生まれた時からその道を否応なしに決められる。

 

  まず、まだ自我も芽生えないうちから数え切れないほどの苦痛を味あわせられ、人格が確立する前に感情を殺された。

 

  そうして作り上げられた人形に、次は一族が何千年にも渡って培ってきた暗殺術を覚えさせられる。それを乗り越えてようやく半人前。

 

  その訓練は地獄という言葉すら生温いものであり、私以外のほとんどの子供が死んだ。不幸にも、私は暗殺者として歴代当主をはるかにしのぐ才能を持って生まれてしまったのだ。

 

  当然、そんな子供を本家がただの訓練で済ますはずがない。より凶悪に、より強靭になるよう一族総出で徹底的に鍛えられた。

 

  さしもの天性の才を持つ私でもそれは非常に過酷なものであり、感情が壊れていても本能が助けを求めた。

 

  しかし、本家の中に誰一人として人間らしい感情をもつものはおらず、心の拠り所になるようなものはなかった。だからより鍛錬に逃げることしかできなかった。

 

  その結果として生まれたのは、一族の最高傑作と呼ばれる暗殺者。文字通り全ての技術を受け継いだ、殺すためだけに生まれた人間。

 

  そして最後に、本当の暗殺をさせられた。十にも満たない歳の時のことだ。それに特に感じることはなかった。

 

  当たり前だ、そもそもそういう感情がないし、それが当然だと生まれた時から教え込まれていたのだから。

 

  これによって本当の意味で暗殺者になった私は、本家の命令に従い人を殺める人形として生きた。

 

  ただひたすらに、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺した。

 

  殺し続けて十年経って、二十年経って。やがて世界で最も強い暗殺者と恐れられるようになったその時。私はある、一人の男と出会った。

 

  その男こそが、私の親とも呼べるべき存在。空っぽな人形だった私に、人間の心をくれた大切な恩人。

 

  男は、〝世界の殺意〟であった。それはそのまま文字通り、世界の意思を代行して人を殺す存在。〝世界の殺意〟は、私の称号などではないのだ。

 

  始まりは、世界が人間が増えていくにつれ不安定になる命のバランスに、人間自身から自らの意思を代行して秩序を保つ存在を作ったことに起因する。

 

  それは千年ごとに次のものに受け継がれ、数千万年にも渡って今に至るまで世界を揺るがすほどの悪を殺し、均衡を維持してきた。

 

  そしてその後継者は、最もその時代で人を殺すことに長けているものが選ばれる。そう、私は先代〝世界の殺意〟に後継者として選ばれたのである。

 

  私にそれを断る意思はなかった。人形として生を受け、人形として生きてきた私には自分の意思というものがなかった。

 

  本家に知られぬまま、先代〝世界の殺意〟の後継者となった私が最初に教えられたことは……人間の心がいかに素晴らしいものか。

 

  〝世界の殺意〟を継承するものは、誰よりも人間の善性と悪性を知らなくてはいけない。清と濁、両方併せ持ってこそ世界の意思を代行するにふさわしい。

 

  人間の悪性しか知らなかった私は、長い時間をかけて先代に人間らしさというものを教えられ、そしていつしか心を持った。

 

  とはいえ、元々徹底的に壊されていたものを作り直したのだ。最初はそれも薄弱なものだった。それにこぎつけるまで随分苦労したと、先代は苦笑していたが。

 

  だが暗殺者としてではなく、一人の人間として人の間で生きるうちにこの秩序がどれだけ尊く、守らなければいけないものかを理解した。

 

  しかし、それによって一つ悪いこともあった。人間の優しさを知ったことで、刃を握る手が鈍ってしまったのだ。

 

  先代に人の善性を教えられながらも、本家の命令には従っていたが、思うような結果が出なくなった。最強の殺人マシーンではなくなったのだ。

 

  当然、本家はすぐそれに気づいて私を役立たずとみなし、用済みだと殺そうとした。当然私は持てる力を使い、全力で逃げた。

 

  そうして逃げて、外から本家を見たとき………知った。この家こそが、世界から争いのなくならない最大の原因であると。

 

  本家は長年にわたって、()()()()悪を殺してきた。しかしその実、黒幕を操り混乱を引き起こしていたのは本家そのものだったのだ。

 

  全ては、自分たちの存在意義を保つため。完全な平和が訪れては、自分たちの役目は終わってしまう。だからこそ、自分たち自身で悪を作り上げていた。

 

  そのとき、ようやくわかった。先代や、その前の〝世界の殺意〟たちが殺してきたのは、こういう〝悪辣な悪〟だと。

 

  ならば、俺がするべきことは何か。その答えはたった一つ。悪辣な悪を殺す、絶対悪になる。それしかなかった。

 

 

 

 

 

 そして、俺は〝世界の殺意〟を継承した。

 

 

 

 

 

  継承してまず最初に、本家を潰した。まさか自分たちの作り上げた無敵の人形が敵になるとは思わなかったようで、あっさりと全員殺すことができた。

 

  そうして世界の殺意となった俺に対して、先代は……代行者として許されていた千年の生を終え、死んでいった。

 

  最後にお前に出会えてよかった。先代の別れの言葉は、そんなものだった。それとともに、先代は最後の教えを俺に授けた。

 

  それは、別れる覚悟。いつしか俺自身が後継者を見つけた時、共に暮らし、役目を継承して永遠に別れる辛さを覚悟しておけ。先代はそう言った。

 

  その言葉を胸に、俺は気が遠くなるほど長い時の間世界の秩序を守る役目を全うした。いつか来るであろう、誰かとの別れを予期しながら。

 

 

  そうして九百と数十年が経った時。俺はついに、路地裏でうずくまっている小さな幼子を見つけた……。

 

 

 

 

 

 ブヅッ。

 

 

 

 

 

 そして、そこで夢は終わった。

 

 

 ●◯●

 

 

「ん………」

 

  まるで走馬灯のような夢から、俺は覚醒する。うっすらと目を開けると、知らない天井……つーかベッドの天蓋が目に映り込んだ。

 

「知らない天井だ……」

 

  お決まりの言葉をいいながら、よっこらせと上半身を持ち上げて周りを見渡す。すると、自分がベッドに横たわっていたのがわかった。

 

  今俺がいる部屋は、迷宮とは思えないようなホテルみたいなベッドルーム。どこかの序盤のヒゲワニが喜びそうである。

 

  ベッドは吹き抜けのテラスのような場所で一段高い石畳の上にあり、爽やかな風が頬を撫でる。周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれていた。

 

  予想するに、ここはあの扉の向こう……解放者の住処なのだろう。自分で行った記憶はないから、多分エボルトあたりが運んできたか。

 

『んごごっ………』

 

  そのエボルトはどこじゃいねと探すと、なんか床の上で大の字になって寝てた。しかもブラックホールフォームのまま。

 

「って、なんでテメエ知らないうちにブラックホールフォームになっとんじゃぁーー!」

『ゴフッ!?』

 

  ベッドから跳躍し、落下速度を乗せた肘を鳩尾に落とす。それに変な声を出して起きたエボルトは、床の上をゴロゴロとのたうち回った。

 

『ってえなコラ!起きて早々命の恩人に肘打ちかますとはどういう了見だ!』

「やかましいわ!人が楽しみにしてたものを独り占めしやがって!だが助けてくれたことには感謝する!」

『キレるのか感謝すんのかどっちかにしろや!』

 

  いつも通り、ギャーギャーと騒ぎ立てる俺たち。さっきまであんな夢みてたのに元気だな?当たり前だルォ?

 

  しばらくすると気が済んだので、あの後どうなったのかエボルトに聞く。どうやらエボルトリガーを復活させて、俺の代わりに戦ってくれたらしい。

 

  無事、ルイネも取り戻してくれたようだ。そのルイネはいずこへ?と聞くと、今は食事を作ってるとか。もう完全に任せっきりだな。

 

  んで、そのあとはこの解放者の住処に連れてきて、俺を介抱しながら過ごしてたとか。エボルトはいつ起きてもいいように待機してたらしいが、自分が寝てたら世話ないだろ。

 

「で、俺どれくらい寝てたわけ?」

「だいたい一週間弱ってとこだ。ハジメたちも隣の部屋にいるぞ」

「ウボァーまじか」

 

  そんなに長い間寝てたのね。そらあんなクッソ長い夢も見るわな。

 

「エボルト、入るぞ」

 

  とりあえず無駄に豪華な刺繍のされた寝間着を脱いでいそいそと着替えていると、扉の向こうからルイネの声がした。

 

  扉が開き、湯気の立つ食事を持ったルイネが姿を現わす。その瞬間思わず瞬間移動し、ルイネを抱きしめた。

 

「っと、マスター。起きていたのだな」

「……ああ、まあな」

「とりあえず、一度離してもらって良いか?飛び上がるほど嬉しいのだが、このままだとエボルトに撮られたままだ」

 

  バッと後ろを見ると、エボルトが携帯で俺たちの姿を録画していた。変身したまま撮影とかシュールな姿だな。

 

  とりあえずエボルトに十字固めして部屋の外に捨てると、ベッドの上に戻る。だいぶ腹が空いていたのでルイネの持ってきてくれた粥を食べて一息ついた。

 

「ふいー、ごっそさん」

「体の方は大丈夫か?」

「バッチグーだ。お前は?」

「ああ、おかげさまでな」

「そうか……良かった。本当に、良かった」

 

  言いながら、ルイネの手を握りしめる。ルイネは少し困ったように笑いながら、手を握り返してくれた。

 

「どうしたんだマスター、いつになく弱気だな。普段ならふざけているところなのに……」

「……ちょっと、前世の夢を見てな」

 

  先代に拾われるまで本当に何もない、他者に操られるだけのマリオネット(糸人形)だった頃の俺。

 

  その頃に比べて、今この手にある温もりがどれだけ大切なものか。それを今一度思い出して、思わずぎゅっと強く握りしめた。

 

  この手を、今俺のそばにいてくれる人たちの手を、離したくない。離してほしくない。案外、俺は寂しがり屋のようだ。

 

「……なあ、ルイネ」

「なんだ、マスター?」

「俺さ、お前のこと好きだよ」

「……え?」

 

  一瞬前までの余裕のある顔は何処へやら、急に赤くなっていくルイネ。構わず言葉を続ける。

 

「家族として、一人の女として、俺はお前が大好きだ。だからずっと一緒にいたい、そばにいてほしい」

「マスター……」

「こんなこと、俺が言う資格がないのはわかってる。でも、本心なんだ……こんな俺でも、一緒にいてくれるか?」

 

  俺の言葉に、ルイネは少しの間俯いた。しかし突然顔を上げたかと思うと、ベッドに登ってきて抱きついてきた。

 

  いきなりの行動に驚いて踏ん張れず、そのままぽすんとベッドに倒れ込む。そんな俺の体を、ルイネは強く抱きしめていた。

 

「……ルイネ?」

「…ずるいぞ、マスター。私が先に言おうと思っていたのに」

 

  先にって……ああ、もしかしてこいつ、暴走して俺に怪我を負わせたことを気にかけてんのか。そんなん前世じゃいくらでもあっただろうに。

 

「私はあなたを傷つけた。あなたの後継者としてあるまじき痴態を見せてしまった。だから、不安でたまらなかったんだ。マスターが目覚めた時、見捨てられるのではないかと」

「……バッカヤロー、そんなわけねえだろ。弟子の全てを受け止めるのが師匠の役目ってもんだ。俺がお前を手放す?ハッ、今すぐ世界が滅んでもありえないね。おまえはずっと俺のもんだ」

「……ふふ。それは、プロポーズと受け取って良いのか?」

「どうとでもとりゃいいさ。お前がそばにいてくれんなら、俺は万事オッケーなんだからよ」

「………」

 

  あれ、返答が返ってこない。いくら気持ちを伝えたいからって、ちょっとキザ過ぎただろうか。

 

 

 ムニッ

 

 

  とりあえずまた何か言おうとすると、突然掴まれた。アソコを。そこをキープされては流石の俺も動けず、何もできなくなる。

 

「ル、ルイネさん?ちょーっとそこから手を離していただけると……」

「……ハァ、ハァ」

「あ、あのー?」

「マスターが悪いんだ。そんな、私のスイッチを直撃するようなことを言うから……!」

 

 あっこれ発情してますわ。

 

  息を荒げ、頬を紅潮させて目を潤ませたその表情は、どこからどう見ても発情している女そのものである。ていうかモニュモニュしないででっかく(意味深)なるから!

 

「ちょっ、ルイネストップ!俺起きたばっかでまだ体力が……」

「大丈夫だ、天井のシミを数えている間に終わる」

「お前の体力だとその前に三途の川が見えるでしょうが!」

「……元気そうだな、シュウジ」

 

  その時、出入り口の方から第三者の声が聞こえた。反射的に振り返るルイネの腕の中からなんとか抜け出す。

 

  安堵のため息を漏らしながら救世主の方を見ると、そこには壁に背中を預けているハジメがいた。

 

「ハジメ、ナイス。ほんとナイス。さすが俺の親友。いざという時に頼りになるな」

「こんな状況で言われても嬉しくもなんともねえわ……ま、そんだけ動けるなら見舞いに来た意味もなかったな」

「私の生命力は五十三万です、なんつってな。ハジメのほうこそ、大丈夫なのか?」

 

  擬態の解けた左腕を見てそういう。余程のダメージを受けない限り、エボルトの擬態は解けないはずだ。

 

「ああ……まあ、なんとかな」

「?」

「とりあえず、移動しながら話す。ついてきてくれ」

「ほいほい。おーいルイネ、いくぞ」

「うう……」

 

  正気に戻って布団の中でくるまってるルイネを促し、ハジメの後を追う。ベッドルームを出ると、ユエが待っていた。

 

「ん、おはようシュウジ」

「おー、ユエさんじゃないか。俺が寝てる間にハジメとの中は深まったか?」

「ん」

 

  満面の笑み……とは言い難いが、満足そうな笑顔で頷くユエ。隣にいるハジメがさっとそっぽを向く。おやおや、これはいい感じになったな。

 

  挨拶もそこそこに、移動を開始する。といっても隣の岩から削り出したみたいな屋敷に行くだけだ。

 

「そういやエボルトは?」

「拗ねてあっちの川で魚釣りしてる」

「何やってんだあいつ」

 

  ブラックホールフォームのエボルトが川釣りをしているのを想像しながら、屋敷の前に立つ。扉はかなり立派だ。高さは3階建てくらいか?

 

「もう先に探索したのか?」

「いや、俺も失血と過労で寝ててな。起きたのはつい数時間前だ」

「ほーん……なら、警戒していこうか」

 

  そう言いながら、俺たちは扉を押し開けて中に足を踏み入れるのだった。

 

 

 ●◯●

 

 

  入った屋敷は、相当見事な作りだった。全体的に石造りで、清涼感がある。エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。

 

「ほー、こいつは見事なもんだ。ルイネとエボルトが掃除したのか?」

「いや、私ではなく……おい、出てきてくれ」

 

  ルイネが呼びかけると、トテトテといくつもの小さな影が姿を現わす。俺の膝下くらいの、小さなゴーレムだ。

 

「どうやら彼らが定期的に管理していたらしい。数回出入りするうちに仲良くなった」

 

  ルイネが頭を撫でると、くるくると嬉しそうに回転するゴーレム。何これ可愛い、ウチでも飼おうぜ。

 

  ゴーレムを愛でるのもそこそこに、数回入っているというルイネがガイドをする。やけに説明上手で楽しかったですはい。

 

  1階はリビング、台所、トイレなど、普通の家と変わらないものが一通り揃っていた。どれも清潔感が保たれており、ゴーレムは優秀らしかった。

 

 そして何より……

 

「……ハジメ」

「ああ。これは………」

 

 

 

「「風呂だ!」」

 

 

 

  同時に叫ぶ俺たち。目の前には大きな円柱状のくぼみが存在しており、縁にはライオンみたいな彫刻が口を開けて座っている。

 

  ドキドキしながらライオンに魔力を流してみると、ダバーっと口から温水がこぼれ落ちた。どうやら機能は健全のようだ。

 

「いやぁ、お前の浄化魔法で汚れとか病気は滅してたけど、あるとわかったら入らないわけにはいかねえよな?」

「あたぼーよ。つーか今思ったけどよ、衣食住全部揃ってる上に風呂まで付いてるとか、ここ高級ホテルみたいじゃね?」

「それな」

 

  二人で頬を緩めながら、和気藹々と話し合う。するとハジメの裾をユエが、俺の方をルイネが引いた。

 

「ハジメ」

「マスター」

「ん、どうしたユエ?」

「なんじゃらほい?」

「その……マスターが良ければ、だが」

「……一緒に入る?」

 

  上目遣いでハジメに聞くユエと、モジモジとしながらこちらをチラチラ見るルイネ。心臓をクリティカルクルセイドされた。

 

「あー、その……最初は俺たち二人でのんびりさせてくれ」

「できれば男同士の語り合いをキボンヌ」

「むぅ……わかった」

「そういうのであれば仕方がない……だがマスター、今後風呂に入るときには背後に気をつけるといい」

「それ使い所違くね?」

 

  しばらくワイワイとした後、今度は二階に向かう。こちらには書斎や工房らしきものがあったが、封印されていたので入れなかった。

 

  ということで、実質的に二階はスキップして三階へ。すると今度は一部屋しかなく、やけに厳かな雰囲気が漂っていた。

 

「……これ、明らかに重要なイベント起きそうだよな」

「答 コロンビア」

「なんでやねん」

 

  スパーンとハジメに頭を叩かれながら、扉を開ける。すると部屋の中には、これまでで一番複雑かつ精緻な術式の施された巨大な魔方陣が存在していた。

 

  一応探知魔法を使い、危険なものでないか確認を取る。無事だとわかったら、その奥にある豪奢な椅子に目を向けた。

 

「…………………」

 

  そこには、一体の骸骨が鎮座していた。すでに全身が白骨化しており、その上から見事な金色の刺繍の入った黒いローブを纏っている。

 

  察するに、こいつがこの隠れ家の主人、そして解放者の一人である……〝オスカー・オルクス〟なのだろう。アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれとか叫びそう。

 

  俯いたまま動かぬ骸は、魔法陣しかないこの部屋で何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てたのは、果たして……

 

「とりあえず、魔方陣に入ってみるか。危険なものじゃないのは調べがついてるしな」

「お前がそういうなら、安全なのは確実か。一応警戒はしとけよ」

「はいはいーっと」

 

  軽い口調で答えながら、全員で魔方陣の中に入る。そして中央に立った瞬間ーーカッと純白の光が魔方陣から爆ぜた。

 

  その直後、〝真のオルクス大迷宮〟に落ちてからのことが走馬灯のようによぎる。おお、すげえ演出。

 

  しばらく待っていると、やがて光は収まり……代わりに、目の前に黒衣の青年が一人、佇んでいた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮をつk「キングクリムゾンッ!!!!!」話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

  長ったらしいからカットした(メタい)演説を終えたオスカー君の生前に残した記録映像は、魔方陣の淡い輝きとともに消えていった。

 

  え、何言ってたか聞きたいって?しょーがないな、特別にシュウジお兄ちゃんが教えてあげよう。特別だよッ☆

 

  オスカーが語ったのは、今この世界で知れている歴史とは違う、本物の歴史。俺が女神様に直接脳に刻み込まれた記憶そのものでもある。

 

 神代の少し後の時代、世界は争いで混乱を極めていた。理由は様々あるが、結局神の陰謀によって全て操られていたの一言で片がつく。

 

  神々は今のトータスよりさらに多くの種族、国にそれぞれ信託を授け、言葉巧みに操って駒にすることでゲーム感覚で戦争をさせて楽しんでいた。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それがオスカー達〝解放者〟と呼ばれた集団である。

 

 神代から続く神々の直系の子孫という共通点を持って集まった彼らは、神の真意を知り世界を救わんとした。

 

  オスカーを含めた、〝先祖返り〟と呼ばれる強力な力を持つ七人を中心に、神々のいる〝神域〟を突き止めたはいいが、そこでバレた。

 

  結局神々は人々に彼らを神に仇なし世界を滅ぼす〝反逆者〟であるとし、守るべき人間と敵対するわけにもいかずあえなく一人、一人と討たれた。

 

 最後まで残ったのは先祖返りの七人だけだった。もはや世界の敵である彼らは、自分たちでは神殺しは不可能と判断した。

 

  そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

  これが、オスカーの語ったこと。あんまりにも長いもんで、疲れると思って割愛した。

 

「うーん、概ね女神様からもらった記憶と変わらんな」

「うっわシュウジ、うっわ」

 

  隣でドン引きしたハジメが何かいうのをスルーして、考える。この問題をどうするかを。

 

  無論、その神……エヒトはブチ殺す。それはこの世界に呼び出され、平穏を奪われた時から変わっていない考えだ。

 

  そうじゃないとしても、どちらにしろ元の世界に帰りたいと思うのならエヒトとは必ずぶつかる。実質選択肢は一つだ。

 

  俺はそれでもいい。エボルトもいいだろうし(拒否権はない)、ルイネも何を言おうとついてくるだろう。

 

 だが……

 

「なんだよシュウジ、人の顔ジロジロ見て」

「……?」

 

  それに、こいつらを巻き込んで良いものかどうか。できればこれ以上、ハジメには傷ついて欲しくない。せいぜいユエとか美空とかとイチャついてくれればいい。

 

「……なあシュウジ、なんか変なこと考えていそうな顔してるから言っとくぞ」

 

  なんだったらずっとここにいるように説得する術を考えていると、不意に厳しめな口調でハジメが話しました。

 

「お前がなんと言おうと、俺はお前についていく。ぶっちゃけこの世界のことなんて心底どうでもいいが、故郷に帰るためなら神を殺すのだって構わない。だから、置いていこうとかふざけたこと抜かすんじゃねえぞ?」

「……ありゃりゃ、お見通しか。そんなにわかりやすいかね?」

「馬鹿野郎、何年親友やってると思ってんだ」

 

  そりゃそうか、と笑う。ポーカーフェイスは前世で散々得意だったはずだが、どうやら幼馴染兼親友様には見破られたらしい。

 

「ま、そうはっきり言われちゃあ仕方がねえな……ハジメ。これからも俺と一緒に戦ってくれるか?」

「当たり前だ。俺たちは死ぬまで親友、そうだろ?」

「ははっ、違えねえ」

 

  パシッとハイタッチする俺たち。そこに「……私も」とユエが、「当然私もだ」とルイネが密着してきて、思わず苦笑する。

 

  そんなこんなで、世界の真実を知った(俺は元から知ってた)俺たちは、故郷へと帰るため、戦うことを決意したのだった。

 

「あ、そういやハジメの話聞いてなかったな」

「ああ、そうだっな。お前たちが消えた後ヒュドラみたいな魔物が出てきてよ、必死に戦ってたんだけど一回死にかけたんだわ」

「えっマジで?大丈夫なのかそれ?」

「まあな。で、実はその時〝ウサギ〟が……」

 

 

 カッ!

 

 

  ハジメがウサギと言った途端、突如として再び魔法陣が輝いた。流石に想定外の事態に、驚愕して身構える。

 

  そんな俺たちの前に、もう一度オスカーの映像が浮かび上がった。しかし先ほどの穏やかな顔はどこへやら、真剣な顔をしている。

 

「これは特定の言葉をこの魔法陣の上で発した場合に流れる特殊な記録映像だ。心してよく聞いてくれ。僕たちは迷宮を作った後、せめて後世に何かを残そうと思い、それぞれの迷宮に僕たちの力の他に兵器を一つずつ残した。それはーー人造人間(ホムンクルス)だ」

 

  ……おいおい、マジかよ。一体なんだと思ったら、まさかのSFチックな言葉が出てきたぞ。

 

「僕の残した人造人間(ホムンクルス)は、君たちの受けた試練をはるかにしのぐ力を持ったもの。君たちに託そう。どうかその子を使ってやってくれ」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

  オスカーの映像がふっと消えたのと同時に、床が動いて長方形の大きな箱がせり出してくる。ちょうど人一人入りそうな大きさだ。

 

  見事な装飾が施され、無数の魔法陣が輝くその箱に、俺たちは警戒しながら近づく。そしてガラス張りになっている表面を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………嘘、だろ」

「……………おいおい、こいつはなんの冗談だ?」

 

 

 

 

 

 

 

  その中で眠る、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見て、俺とハジメは呆然と顔を見合わせるのだったーー。

 

 

 〜〜〜

 

 

 オマケその1

 

 雫「だからそういうのはちゃんと報告してからにしなさい、三人までなら許すから!……って、あれ?」

 香織&美空((((;゚Д゚)))))))ポカーン

 雫「えっと……二人ともどうしたの?っていうかなんで王宮に戻って……」

 香&美「「いやそんなので目覚めちゃうの!?」」

 

 珍しくシンクロした瞬間。

 

 

 〜〜〜

 

 

 オマケその2

 

 起きていたユエとルイネの会話。

 

 ルイネ「ユエはハジメ殿に料理を振る舞う気はないのか?」残像が見えるほどのスピードで魚解体中

 ユエ「ん、でもわからない……美味しいものがたくさんあるって聞いた」

 ルイネ「私たちがいた世界とハジメ殿や今世のマスターがいた時代は酷似しているから、アドバイスもできると思うが」

 ユエ「ほんと!?なら、教えて!」

 ルイネ「うむ、良いぞ。例えば、そうだな……わかりやすく言うと、腐った豆(納豆)とか、吸盤付きの触手をぶつ切りにしたもの(タコ足)などがある」

 ユエ「……嫁いびり?ハジメと結婚するための試練?」((((;゚Д゚)))))))ガクブル

 ルイネ「おい待て、その神結晶を置け」

 

 自分はタコとワカメの酢の物好きだったり。え、オヤジ臭い?黙れ(威圧




ダメだ、シリアスにしてもどうしてもオマケを書きたくなる……
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