星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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技能:因果
共に生き、重なった運命。
それより生じた、魂の赤い糸。
過去と未来、紡いだ記憶の道標。
この絆は、決して切れることはない。


[+不忘]

どんなに白紙に戻しても。

貴方自身が終わることを望んでも。

私達は、絶対に貴方を忘れない。




最後に思い出した、その言葉 4

 三人称 SIDE

 

 

 

 

 

 時は、少しだけ遡る。

 

 

 

 

 

「……ハジメ」

 

 ユエが、開けっ放しにされたナシタの出入り口を見て呟く。

 

 彼女がその行為をするのは数度目であり、彼女を含めた店内の空気は困惑一辺倒であった。

 

「ハジメさん、なんであんな……」

「……誰かを、探してた……?」

「雫も飛び出していっちまったしよぉ」

「二人とも、どうしたんだろうね……?」

 

 ハジメが飛び出していき、それを雫が追いかけてから、既にかなりの時間が経過している。

 

 シアやウサギ、他の面々も口々に囁き合うも動くに動けず、その場に留まっている状態だった。

 

 それでも誰一人として憤慨し、立ち去っていないのは、ひとえにハジメの人望だろう。

 

「もしかして、サプライズが嫌いだった……とか?」

「いや、あいつ嫌な時ははっきり嫌っていうだろ?」

 

 遠藤の言葉になるほど、と頷く清水。

 

 確かにハジメが、物事の好き嫌いは口に出して明示するタイプであるのは彼も承知の上だ。

 

 それに、人の好意を理由もなく無下にしないことも、もちろんこの場の全員がわかっていることだ。

 

「だとしたら、本当に言葉通りに……?」

「先生、あいつが言ってた人物に心当たりないですか?」

「いえ……」

 

 愛子は首を横に振るも、どうしてかハジメ達の行動を完全に否定する心境になれない。

 

 悩ましげな顔をする彼女は、ふとこの場で一番怯えていただろう子供達の方を見た。

 

 それはハジメの教師として、他所の家の子供に迷惑をかけたことの責任を感じたが故だったが……

 

「パパ、怖かった……でも、悲しそうだったよ」

「ハジメお兄さん、ここ最近ずっと様子が変だったよね」

 

 愛子が想像していたのと異なって、彼女達は怖がらせられたことへの不満を口にしていない。

 

 それよりも、母娘揃って不安そうな顔でハジメのことを案じていたことに、愛子は少し驚く。

 

 

(……そうか。滅多に南雲くんに会わない私と違って、日頃から彼を見ていたから)

 

 

 子供は、時には大人よりも鋭い直観を発揮するという。

 

 きっとミュウ達は気がついていたのだろう。ここ最近ずっと、ハジメが何かに思い悩んでいることに。

 

 今日、ついにそれが限界に達してしまったということを理解して、だからこそ心配するのだ。

 

「あんな顔、一回も見たことはなかったわ……」

「私も気になってはいたものの、どう聞き出すか迷っていたのが悪かった……」

 

 母親組も、そんなふうに相談しあっている。

 

 

(南雲くん、ここにいる皆に君は愛されているのですね)

 

 

 そして、ハジメを何より愛する彼女達もそれに気がついていないわけがない。

 

 確信めいたものを抱きながら、同じように集まって相談しあっているユエ達を見る愛子。

 

「ここ最近、ずっと悩んでた感じでしたよねぇ」

「ん。でも、悩み自体はずっと前から持ってたような気がする」

「……確かに、思い返してみれば時々似たような顔はしてた」

「ハジメくん、平気かな……」

「連絡は繋がったかの?」

 

 ティオが、先程から何回もハジメに連絡を取ろうとしている美空に問う。

 

 小さくコール音を鳴らすスマホを耳に当てていた美空は、小さな嘆息と共に手を下ろした。

 

 結果を察した一同は表情から期待を落とし、ユエが何度目か扉の方を向いて。

 

「…………え?」

 

 その向こうからこちらにやってくる、〝黄金の波動〟に目を見開いた。

 

 みるみるうちに出入り口に到達したその波動は、壁をすり抜け侵入してくる。

 

 ようやく他の者達も気がつき、驚愕したり、慌てたり、咄嗟に両手で上半身を庇ったりした。

 

 しかし例外なく平等に、柔らかな波動は全員の体に、魂に染み込んでいき。

 

 

 

 ──あるいは、封じられたものを呼び覚ます。

 

 

 

「っ……何も、ない?」

 

 波動が吹き抜けていくと、身構えていたユエは怪訝な顔をする。

 

 謎の現象が起こったにも関わらず、彼女には何の異変も起こっていなかったのだ。

 

「い、今のって?」

「さ、さあ……」

「幻覚、かのう?」

 

 それは、シアも、ウサギも、ティオや他の数人も同じで。

 

 

 

 だから。

 

 カシャン、と何かを落とす音が背後からした時、彼女達はすぐに反応することができた。

 

 あるいはそれは、不自然なほど一瞬で店内が静寂していたからかもしれないが。

 

「────。」

「美空……?」

 

 音の発生源は、美空。

 

 謎の異変が起こる前と全く同じ位置にいた彼女は、その手からスマートフォンを取り落としていた。

 

 しかし、床に落ちてひび割れたそれを気にも留めず、ただ、ただ。

 

 ……蒼白の顔で、立ち尽くしていた。

 

「美空さん? どうしたんです、美空さん?」

「ぁ、あぁあ……」

「みそ──」

「あああぁあああっ!!?」

 

 手を伸ばしていたティオは、突然発狂した美空に動きを止めてしまった。

 

 ユエ達もギョッとする中、美空は両手を頭に持っていき、ぐしゃりと髪を握る。

 

「なんで……何で、私、忘れて…………どうして、あいつのことっ……!」

「美空さん、どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」

 

 尋常でない様子の美空。

 

 たまらずその肩を鷲掴みにしたシアは、しかし次の瞬間その手を逆に掴まれて、酷く驚愕する。

 

 構わず、美空はシアの白い二の腕に指を食い込ませる勢いで掴み、声を張り上げるのだ。

 

「忘れてた! 何年もずっとっ! 私は、私達だけは忘れてちゃダメだったのにッ! 幼馴染なのにっ! 友達なのにっ!」 

「み、そら、さん……?」

「あいつのこと、忘れるわけないっ! なのに忘れちゃった! ハジメにあんなこと、絶対に言っちゃいけなかったっ! なんで、なんでなんでなんで!」

 

 いつも冷静なはずの美空は、完全に錯乱した様子で「何で」と繰り返し叫ぶ。

 

 大粒の涙を零ししながら、顔をくしゃくしゃにしながら、悔しげに……悲しげに。

 

 それが、ハジメの言っていた()()のことだと、シア達は遅れて気がついた。

 

「み、美空さん、とにかく一回、落ち着いて……」

「何でそんな平気な顔してるの!? あいつがいないんだよ! みんなで取り戻そうとした、あいつが──」

「ふっ!」

 

 不意に、美空の体が震える。

 

 次の瞬間、糸が切れたように崩れ落ち……その体を、背後にいた香織が優しく受け止めた。

 

「……ごめんね、美空。あとでちゃんと謝るから」

「香織さん……」

「ねえ、美空は……」

「大丈夫。ちょっと気を失わせただけだよ」

 

 ウサギは思わず面食らった。心優しい香織らしからぬ言葉だ。

 

 しかし、どこか薄ら寒いほど冷静な面持ちの彼女は、そのままソファに美空を寝かせ。

 

 それから店の中に視線を一巡させて、重々しく口を開いた。

 

()()()()()()()()……この中で、意味がわかる人は?」

「──ああ、わかる」

「……俺もだ」

 

 不可解なその質問に答えたのは、二人。

 

 険しい顔で手を挙げている龍太郎と浩介に、香織に集中していた視線が流れていった。

 

「そっか。じゃあ多分、ネビュラガスを投与された人だけなんだね」

「らしいな。ったくよぉ、くたばったのが最後の記憶たぁ胸くそ悪りぃぜ」

「俺、やっと使徒とか魔物とか狩り尽くした後、一気に緊張が抜けて爆睡したのが最後なんだけど……」 

「幸せだなこの野郎」

 

 龍太郎に軽く小突かれ、浩介は「ごめんごめん」と謝る。

 

 そのやり取りは、香織にとってはちゃんと()()()()()を取り戻したと確信するには十分で。

 

 けれど、微笑む彼女とは裏腹に思い出せていないユエ達の困惑は、頂点に達しようとしていた。

 

「ね、ねえ龍っち、さっきから何の話してるの? くたばったとか最後とか、ちょっと物騒なワードが聞こえてきたんだけど」

 

 恐る恐るといった様子で、袖を引く鈴。

 

 視線をこちらに落としてきた龍太郎は、どこか彼女が知っている彼とは纏う雰囲気が違って。

 

 けれどそんな不安は、突然彼がしゃがんで抱擁をされたことで、全て吹き飛んでしまった。

 

「鈴っ、本当に、本っ当に、ごめん……!」

「りり龍っち!? あの、その、みんな見てるんだけど!」

「お前との約束、破っちまった! 俺はお前の隣に帰ってこれなかった! けど、もうどこにも行かねえから!」

「今だけは離れてほしいよぉ……!」

 

 それはもう強く、熱く全身を包み込まれ、鈴の顔からは湯気が立ちそうな勢いだ。

 

 浩介や香織は微笑しているが……側から見れば、脈絡なく熱烈な愛の告白をした構図。

 

 事情がわからない一部にとっては、もはや火に油どころかニトロ爆弾を投げ込むようなもの。

 

「だーっ、もう! さっきから何なんですか! 香織さん、説明してくださいですぅ!」

 

 そして、ついにシアが爆発した。

 

「うぅーん、なんて言ったらいいのかな……」

「再生魔法で何とかならねえのか? ほら、記憶をあれこれするとかよ」

 

 鈴を解放し、龍太郎がとりあえず思いついたように提案する。

 

 香織は少し難しげな顔をした後、首を横に振った。

 

「どうだろう。練習すれば、魂魄魔法と合わせてそういう魔法を作れそうではあるけど……」

「へ? 魔法? こんぱく? 何の話です?」

「……ダメだ、彼女らの会話についていけん」

「あ、あらあら。ルイネ、一旦休みましょう?」

 

 ユエ達の記憶もどうにかならないかと、そう相談する二人に疑問は増えるばかり。

 

 事態を収めようとしていた大人組の一人であるルイネが、こめかみを抑えながら座り込んだ。

 

 見かねた浩介も、自分に向けられる懐疑の視線に居心地悪そうにしながら口を開く。

 

「てか、それより南雲達はどこに向かったんだよ?」 

「っ! そういえばそうだったね。ハジメくんと雫ちゃんは、もしかして……」

「あいつがどこにいるか、知ってたから出てったのか?」

「いや、私達より前から思い出していただけだと思う。でも、心当たりが……?」

「肉体的にはブランクあるだろうし、今から追跡できっかなぁ……」

 

 思案する香織と龍太郎、ついでに参加した浩介。

 

 結局何ひとつとして疑問は氷解されずに、ユエ達はどうしたものかと顔を見合わせてしまう。

 

「あーっ、たくよぉ。これじゃあ大樹の試練と似たり寄ったりじゃねえか。しかも現実だから、どうしようもねえ」

「…………龍太郎くん、今なんて?」

「あ? 現実だからどうしようもねえって……」

「その前!」

 

 鬼気迫る様子で詰め寄る香織に、龍太郎はたじろいだ。

 

「た、大樹の試練と似たり寄ったり?」

「それだよ! ありがとう龍太郎くん!」

「お、おう?」

 

 答えを得た香織が満面の笑みを浮かべて、龍太郎ははてなマークを頭に浮かべるのだった。

 

 すぐに俯いて何事か考え始めた香織を、全員が固唾を飲んで見守る。

 

「魂魄に影響……記憶を再生……あ、竜人族の人達に見せるために使った魔法を応用すれば……うん、よし、いける」

「香織? なんか思いついたのか?」

「うん。完全に記憶は取り戻せなくても、上手くいけば違和感くらいは抱くはず」

「うし。ならいっちょ、かましてやれ」

「ふふっ、四人だけなんて悲しいもんね!」

 

 香織は胸の前で両手を握り、何やらやる気を漲らせる。

 

 その光景に、ユエ達は一抹の不安を感じることを禁じ得なかった。

 

 一体何をする気だという視線を受けながらも、香織は今一度全員の顔を見渡していく。

 

「それじゃあ、早速──」

「すまない、遅れた……あれ? みんな、どうしたんだ?」

 

 タイミングが良いと言うべきか悪いと言うべきか、新たに人が入ってきた。

 

 空きっぱなしの出入り口をくぐり抜け、何やら尋常でない雰囲気の一同を見て首を傾げる男。

 

 それは誕生会に参加する予定だった一人である、天之河光輝その人だった。

 

「ちょっと、早く入りなさい。日差しが熱いわ」

「あ、ああ、すまない」

 

 後ろからの声に慌てて光輝は店内に入り、その後から日傘を閉じながら英子が現れる。

 

 まさに絶妙なタイミングに、香織は思わず笑みを深めた。

 

「光輝くん、御堂さんも。丁度よかった」

「? どういうことだ?」

「すぐにわかるよ」

 

 全員の顔が見える位置に立ち直した香織は、一度深く深呼吸をする。

 

 それから龍太郎と浩介を見て、頷いてくれる彼らに、決意を固めて語り出す。

 

 

 

「みんな、聞いて。

 

 

 今からやることが成功した時、もしかしたらとても辛い思いをするかもしれない。悲しい思いをするかもしれない。

 

 

 

 けれど絶対に、思い出さなきゃいけないことだから。

 

 

 

 私の知るユエ達なら、きっと受け入れられると信じてる」

 

 

 

 一つ一つ、それを聞く全員の意識に刻みつけるように告げられる言葉。

 

 それは重みがあって……どこか、先程の美空が露わにしていたものと同じ感情が宿っていて。

 

 ユエ達が返答できないでいるうちに、香織は両手を組んで目を閉じる。

 

 そして、異世界で仲間達を、愛する人達を癒してきた彼女は、解き放つのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──〝遡魂(そうこん)〟」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全てを取り戻す、その魔法を。

 

 彼女の体から翡翠色の柔らかな光が現れ、人智を超えたその光景にユエ達が息を呑む。

 

 続けて、香織から溢れ出した翠の魔力は彼女の背に天使の如き翼を形作り、神秘的な姿を見せる。

 

 そして最後に、翼から先刻のように波動が放たれ、その効力を発揮するのだ。

 

 

 

 

 

 今度こそ、等しく全員に。

 

 

 

 

 

「「「「「──ッ!?」」」」」

 

 瞬間、幾人かの脳裏に浮かぶ光景。

 

 それはこの世界が創造される前に体験した、かつて大樹の試練を突破した時の記憶。

 

 香織の記憶を介し、再生魔法を魂魄に使うことで共通した記憶を呼び覚ます魔法であった。

 

「この、記憶、は──」

「迷宮の試練……樹海……私の、故郷…………?」

「大迷宮……解放者の、遺産……私は……」

「っ、今ここは、幻の世界……いいや、妾達は、新たな世界に……?」

「鈴は……私は、なんでここに……?」

「やった、成功した……!」

 

 頭を抱え、連鎖して脳裏に浮かんでくる記憶に表情を歪めるユエ達に、香織は思わず呟く。

 

 特にその効果が顕著だったのは──記憶が蘇った途端に、その場で膝をついた光輝。

 

「俺は……御堂の幻影を……間違った理想の世界…………じゃあ、今のこれは……これも、夢…………?」

「ちょっと、天之河光輝? どうしたの? 平気ですの?」

 

 突然豹変した光輝に、さすがの英子も心配の言葉を投げかける。

 

 肩を揺さぶる彼女の手に、しかし光輝は頭の中に浮かんでは消える光景で意識を奪われていた。

 

「み、皆さんどうしたんですか?」

「白崎さん、今の光は……君は一体……」

「っ、そっか、先生やルイネさんは迷宮には……」

 

 効果の程を実感していた香織は、愛子や清水、ルイネ達が首を傾げているのを見てすぐに顔を引き締め直す。

 

「もう一度、今度は別の記憶……そうだ、魔王城の……!」

 

 新たに共通した記憶を選定し直し、香織は二度目の遡魂(そうこん)を発動する。

 

 再び広がった再生の波動に、効果が無かった愛子達も反応を示した。

 

「この世界は……私は生徒達を守って…………でも、どうしてこんな……?」

「黒い獣……光の柱…………あの、人は──」

「っ、私は、ママを守れなかった……?」

「みゅっ!?」

「私達は攫われて……ルイネさんが……」

「あ、あれ? 俺、クラスのみんなと魔族に……先生が守ってくれて……いや、え?」

「……なんですの、この記憶は。天之河光輝と戦って……いえ、そもそも何故私は……」

「今度は、ちゃんと効いて……うっ!」

「香織っ!」

「白崎さん!」

 

 突然膝から崩れ落ちた香織に、素早く反応した龍太郎と浩介が駆け寄る。

 

 倒れる前に支えられた香織は、ひどく疲れたような顔で二人に笑いかけた。

 

「ありがとう、二人とも……ちょっと、張り切りすぎちゃったかな……」

「こっちの世界じゃ、元の世界より五年も経ってるんだぞ? 慣れてないのにいきなり魔力を使いすぎたんじゃねえか?」

「あはは、その通りかも……」

「白崎さん、一旦休憩しよう。皆ちゃんと思い出せてるみたいだし……」

「ううん、まだ、やらなくちゃ……」

 

 身を案じる二人に、しかし香織は決然とした表情で首を横に振る。

 

「記憶は、単一じゃない。全部繋がってるの。だから、思い出しかけてる今やらないと、上手く掴めなくなる……!」

 

 二人の腕を支えに立ち上がり、フラフラとしながらも、もう一度震える手を合わせようとして。

 

「──私も手伝う」

「……美空?」

 

 隣に並び、同じように手を組んだ人物に目を見開いた。

 

 いつの間にか目を覚ましていた美空は、そんな香織に勝気な笑みを向ける。

 

「あんたのチョップなんか効かないっての。ほら、やるよ?」

「……ふふっ。美空と一緒なら、なんでもやれる気がするよっ!」

 

 表情に、全身に気合をみなぎらせ、香織と美空は頷き合う。

 

 同じように目を閉じ、手を組み合わせた二人の治癒師は。

 

 三度、その魔法を発動するのだ。

 

「「〝遡魂(そうこん)〟」」

 

 そうして、二人が蘇らせたのはかの聖戦の光景。

 

 この場の誰もが、必ず勝ち、生き残り、そして取り戻すと、そう決めた戦いの幕開け。

 

 空が赤く満ち、門が開き始まった、命と誇りと信念を賭けた。

 

 最大にして最後の戦い、その記憶を。

 

 

 

 

 すると、ある異変が起こった。

 

「っ……!」

「……美空、感じた?」

「……うん、はっきり。あいつとの〝繋がり〟が、見えた」

「私も。彼はまだ、私達の中に……ここにいるんだ」

「なら……引っ張り出す!」

 

 力強く答えた彼女に、香織も目を閉じたまま頷き返して。

 

 

 

「「──〝遡魂(そうこん)〟!!!」」

 

 

 

 ありったけの魔力と想い、持ちうる〝彼〟の記憶全てが込められた叫びと共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 眩いばかりの緑光が、店に満ち満ちた──。

 

 

 

 

 

 




次回、最終回。


ついにこの世界が、完結する。




お楽しみに。
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