星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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今回から数回、番外編です。よってシュウジたちの前書きは絶版だ。
楽しんでいただけると嬉しいです。


【幕間】
黄金のソルジャー 前編


  まだシュウジたちが螺旋階段を降り、ハジメがユエとともに迷宮を攻略していた時まで時間は遡る。

 

 注:ここから香織サイドです(だからメタry)

 

  私たちは今、再び【オルクス大迷宮】にいた。といっても、あの時みたいに全員での合同訓練じゃない。

 

  メンバーは私、美空、雫ちゃん、光輝くん、龍太郎くんの勇者パーティ(美空は全く納得してない)とメルドさん、あの女騎士さん、それと数人のクラスメイト。

 

  他の皆は、王宮に居残りしてる。南雲くんとシューくんのことがトラウマになって、戦えなくなっちゃったみたい。

 

  それに当然イシュタルさんとか王様はいい顔をしなくて、時間経過でなんとかなるだろうってやんわりと、でも強制的にまた訓練をさせようとした。

 

  しかし、そこで立ち上がった人がいた。それは私たちの教師である愛ちゃん先生だ。ちなみにこのあだ名考えたのはシューくん。

 

  遠征に参加せず、各地で農地開拓をしていた愛ちゃん先生は、二人が死んだのを聞くとしばらく寝込んだ後、すぐにこっちに戻ってきた。

 

  そして、王国の人たちに真正面から啖呵を切った。これ以上生徒たちを危険な目に合わせるのなら、自分はもう何もしない、と。

 

  作農師という、この世界の食糧事情を一変させる力を持った愛ちゃん先生にそう言われては叶わず、教会ならびに王国は渋々勇者パーティと行きたいものだけ、迷宮に行くことを許した。

 

  その時勇者パーティということで同席していたけど、その時の愛ちゃん先生は私たちの知らないような、とても冷徹な印象を受けた。

 

  いつもと違って落ち着き払い、淡々と自分のカードを有効に使って王国の人たちをねじ伏せた。そう、まるで変貌した御堂さんみたいに。

 

  そして今に至る。あれから一ヶ月弱、私たちはシューくんに課せられていた訓練を自主的に行いながら、着々と力を高めていた。

 

  迷宮攻略は今日で六日目、階層はもう60層に差し掛かっている。最高到達階層まで後五階層といったところだ。

 

「香織、大丈夫?疲れてない?」

 

  迷宮の中を進んでいると、隣にいた美空がそう問いかけてくる。私はそれに笑顔で大丈夫だよ、と答えた。

 

  あの語らい以降、私たちは南雲くんたちの無事を信じるという共通点で、前のいがみ合っていたばかりの時よりずっと仲良くなってた。軽い喧嘩友達って感じかな。

 

  今では一緒にお風呂に入ってたりもする。その時知ったけど、美空は着痩せするタイプだったみたいですごく大きい。あれを南雲くんに……って何考えてるの私!

 

「二人とも、いくら鍛えてるとはいえ疲れたなら休憩するのよ?」

「うん、ありがとう雫ちゃん」

 

  雫ちゃんのほうも、こうして前みたいにオカン的な発言をしているくらいには平常通りに戻っていた。むしろすごくケロッとしてる。

 

  雫ちゃん曰く、「え?そりゃ確かにあの時は気が動転してたけど、シューが死ぬわけないじゃない。たまたま見かけた火だるまのマンションに突っ込んで無傷で取り残されてた子供助けるくらいよ?」らしい。

 

  そんなことしてたんだ、っていうかなんでそんなとこに入って消防士さんでもないのに無傷で帰ってこられるんだろうと思いながらも、なんか納得してしまった。

 

  雫ちゃんのいう通り、よく考えてみればあのシューくんが死ぬのなんか地球が木っ端微塵になるくらい想像できなかった。むしろシューくんって死ぬのかな?(偏見)

 

  そんなこんなで、立ち直った二人と一緒に私は元気にやっています。今頃南雲くんとシューくんはどうしてるかな。いつも通りふざけてそうだな。

 

「大丈夫だぜ、香織、みーたん。休憩してる間は俺がバッチリ守るからよ!」

 

  シューくんが南雲くんに突っ込まれてるのを想像してると、龍太郎くんが近づいてきてキランと歯を光らせた。主に美空の方を向いて。

 

  ここ最近まで姿を消していた龍太郎くんは、以前より随分と様変わりしていた。美空の重度のファンなことは相変わらず変わりないけど。

 

  丸刈りに近かった茶髪は少し長くなり、服装もフードのついたモスグリーンのモッズコート、金色の腰巾着に白黒の迷彩色のパンツにブーツを履いている。

 

  そして何より、その腕っ節。こと肉弾戦だけなら、多分光輝くんをはるかにしのぐほどに強い。本人曰く、ハザードレベルも4.3になっているとか。

 

  なんでも、同じくあの日以来どこかへ消えたエボルトに誘われて、特別な訓練をしてたのだとか。内容は教えてくれなかった。

 

「うん、ありがとう。頼りにしてるね!」

「おう!俺に任せときな!」

 

  満面のアイドルスマイルで言った美空に、腰に手を当てて胸を張る龍太郎くん。私の脳裏にチョロいという言葉がよぎった。

 

  そういえば前に聞いたけど、龍太郎くんにとって美空……っていうかみーたんは女性として好きというより、神様に近い存在らしい。だから特に恋愛感情はないのだとか。

 

  その割には結構アレな行動が目立ってるけど。まあ多分、時々なぜか是非シスターにと勧誘してきた熱心な信仰者とかと同じ感じなんだろう。

 

「龍っち、相変わらずだね〜!」

「うん、石動さんの前だとすごい張り切ってるよね」

 

  はっーはっはっはっ!とか高笑いしてる龍太郎くんを見てると、戦闘訓練に参加したクラスメイトのうちの二人が近寄ってくる。

 

  元気はつらつな女の子の方が、谷口鈴。百四二センチ(自己申告)の小柄な体格に反して、すごい気力を持ってる。時々オヤジみたいになるとは雫ちゃんの弁だ。

 

  そのハイテンションさでクラスのムードーメーカー的立ち位置を務めており、シューくんとも割と仲が良かった記憶がある。

 

  落ち着いた感じの子の方が、中村恵理。メガネを掛け、ナチュラルボブにした黒髪の美人である。性格は温和で大人しく、基本的に一歩引いて全体を見ているポジションだ。

 

  本が好きで、まさに典型的な図書委員といった感じの女の子である。実際、図書委員である。シューくんとはなんでか折り合いが悪かった。

 

  二人とも、高校入学以来からの友達だけどすごく仲の良い、大切な友人だ。また、私たちのパーティに加わっているほどの実力者でもある。

 

  鈴ちゃんの天職は〝結界師〟。その名の通り、あのベヒモスとの戦いで兵士の人たちが使っていた〝聖絶〟などの結界を使える。

 

 対して恵里ちゃんの天職は、〝降霊術師〟。闇系魔法の中でも超高難度の、死者の残留思念に作用する魔法を司る天職だ。

 

  ちなみにこの二人の他についてきたクラスメイトは、檜山くんたち小悪党三人組(南雲くんに前に聞いた)と、永山くんというクラスメイト率いる男女五人のパーティである。

 

「ふっ、まあな。俺はみーたんを守るためならいくらでも命をかけられる。なんなら来世まで守るまである」

「ふ、ふ〜ん、そうなんだ〜。いやぁ、愛が深いねえ!」

「当たり前だ、俺はみーたんの1番のファン(自称)だからな!」

「あぅ………」

 

  無駄にキリッとした顔でサムズアップする龍太郎くんに、いつもワーワー騒いで恵理ちゃんに諌められる鈴ちゃんが静かになった。

 

  そしてちょっと赤くなった顔で、チラチラと龍太郎くんを見ている。変化した龍太郎くんが帰ってきて以降、鈴ちゃんはこんな感じだ。

 

  雫ちゃんや美空に天然とか恋愛スキル最低値と言われる私でもこれはわかる。鈴ちゃん、確実に龍太郎くんのこと好きだ。

 

「ん?どうした谷口?」

「な、なんでもないよ!ただ龍っちのみーたん愛に呆れてただけだよ!」

「そうか、それは光栄だ!」

 

  アワアワと慌てて言い訳する鈴ちゃん。みーたんとか言っちゃってるし。ていうか龍太郎くん、気づいてあげようよ……

 

「はぁ……」

 

  ほら、雫ちゃんもため息ついてるし。こら龍太郎くん、褒めてないから満足げな顔しない。その前に鈴ちゃんのこと気づいてあげて!

 

  そんなこんなで進んでいると、やがて断崖絶壁に突き当たった。吊り橋が一つかけられており、アレで次の階層に行けるようだ。

 

  断崖絶壁を見下ろして奈落を見た瞬間、あの日のことがフラッシュバックする。そして思わず隣の美空を見た。

 

「美空、その……」

「別に心配しなくても大丈夫だよ。香織こそ大丈夫?」

「うん、平気」

 

  笑って頷きあう私たち。私たちは、もう二度と絶望しない。二人が生きていることを、信じ続けると誓ったのだから。

 

「二人とも……辛いのはわかる。でも、いつまでも囚われていてはいけないと思うんだ。きっと前に進むことを、あいつらも望んでる」

 

  そんな感じで良い雰囲気だったのに、そこに水を差すのが光輝クオリティ。流石にこれにはさしもの私でもカチンときた。

 

  どうやら光輝くんは私たちが無理やり強がっているように見てるみたいだけど、そんなことは一切ない。これは純然たる信頼だ。

 

  ていうかあの二人が勝手に死んだことにされているのが嫌だ。私ならまだしも、彼女だった美空の前でそんなこと言うなんて。

 

  前はなあなあで済ませてたけど、今はダメだ。シューくんが光輝くんのことを嫌いだった理由が、少しわかった気がしてしまった。

 

「大丈夫、俺がそばに……」

「そこまでにしとけ、光輝」

 

  さらに言い募ろうとする光輝くんと私たちの間に、龍太郎くんが立ちはだかった。そして鋭い眼光を向ける。

 

「どいてくれ龍太郎、俺は二人を励まそうと……」

「そいつはありがた迷惑ってやつだ。二人はもうあの時のことは乗り越えてるし、その上であいつらが生きてるのを信じてる。それがどれだけ低い可能性でもだ。もちろん、俺もな」

「だからそれは、現実逃避で……」

「光輝。お前の正義感は悪かねえが、ちょっと早とちりが過ぎるぜ。自己完結ばっかするんじゃなくて、ちゃんと相手の言ってることも聞いてみろ」

 

  うまく光輝くんをいなした龍太郎くんは、そのまま促して吊り橋の方へと進ませた。そしてこっちに頷く。

 

  もう一つ、龍太郎くんの変わったこと。それは光輝くんによく考えずに味方ばかりするんじゃなくて、こうしてはっきりと考えてアドバイスすること。

 

  これによって、何回か光輝くんがあまり必要のないフォローをしようとするのを回避できている。私たちはありがとう、とアイコンタクトを送った。

 

「龍太郎……」

「なんだよ雫、別に変なことは言って……」

「あなた、そんなに難しいこと考えられるようになったのね」

「酷くねえか!?」

 

  お母さんは感激よ、と言わんばかりの雫ちゃんに龍太郎くんが叫ぶ。私たちは顔を見合わせ、ぷっと吹き出した。

 

  その後、特に何もなく歴代最高到達階層である、六十五階層にたどり着く。そこでメルド騎士団長さんが声をあげた。

 

「お前たち、より一層気を引き締めろ!ここから先は地図が不完全だからな!」

 

  その言葉に、全員自ずと緊張を見にまとう。ここからは未知の世界、何が起きても自己責任だ。

 

  しばらく歩いていると、大きな広間にたどり着く。そこに入った瞬間、言いようのない悪寒を覚えた。

 

 

 

 ………ヴン

 

 

 

  そして、その予感は的中する。部屋の中央に、あの日と同じ赤黒い光を放つ魔法陣が出現したのだ。

 

「まさか、アイツなのか!?」

 

  冷や汗を流しながら叫ぶ光輝くん。私たちも即座に戦闘する体制を整える。

 

「確か、迷宮での魔物の発生原因はわかってないんだったな。だから倒しても同じ魔物に遭遇することもある」

「龍太郎……あなた本当に龍太郎?」

「だから酷くねえか!?」

「だって、あなたが勉強するなんて……」

「俺もあれから色々頑張ってんだよ!」

 

  龍太郎くんと雫ちゃんが騒いでるうちに、メルド騎士団長さんとクラスメイトたちで退路を確保する。いざという時はすぐに逃げられるようにしなくてはいけない。

 

  そして退路を確保し、全員が臨戦体制を整えたその瞬間ーー魔法陣が一際強く輝き、漆黒の怪物が姿を現した。

 

 

  グゥガァアァアア!!!

 

 

  隻眼のベヒモスが、私たちに向かって咆哮する。ビリビリと肌を震わせるそれに、しかし私はしっかりとその目を睨み返した。

 

「ベヒモス、今の俺たちの力をお前に見せて……」

「いや、光輝。お前は下がってろ」

 

  決め台詞を言おうとした光輝くんを、龍太郎くんが押しのけて前に出る。寂しそうな光輝くんの背中にちょっと可哀想になった。

 

  低いうなり声をあげるベヒモスと一人で対面した龍太郎くんは、どこからともなくあるものを取り出した。

 

  それは……一見プラスチックに見える、水色と青色、赤い蓋のついた瓶のようなパーツ、そして透き通るような黄色いスパナのついたバックル。

 

「あれって……?」

「テメェの相手は、まずこの俺だ……訓練の成果、見せてやるよ」

 

 

《スクラァァアッシュドライヴァアー!》

 

 

  龍太郎くんが腰にバックルを押し付けると、癖の強い男の人の声とともに銀色のベルトが伸長して巻かれる。

 

  まるであの日のシューくんのようなそれに驚いていると、ロボットの絵柄のついた黄色いゼリーのようなものを取り出す。

 

  その黒いキャップを指でセットして、手放して右手で逆さにキャッチするとバックルに差し込んだ。

 

 

《ロボット・ゼリー!》

 

 

  ゼリーの前にマークが現れて、工場を連想させるような音が鳴り始める。龍太郎くんは半身を引き、左手の指を銃のようにしてベヒモスに向けた。

 

 そして……

 

 

 

「変身!」

 

 

 

  その言葉を叫ぶのと同時に、スパナを下ろした!

 

  ゼリーが潰れて、白い蒸気が吹き出る。すると突然地面からビーカーとそれを囲う輪っかが現れて、龍太郎くんが中にいるのに金色の液体が充満していった。

 

 

《潰れる!流れる!!溢れ出る!!!》

 

 

  相変わらず癖の強い声とともに、ビーカーが自然と捻られて龍太郎を包み込んだ。それが弾けたとき、白い頭をした金色のスーツを纏う龍太郎くんが出てくる。

 

 

《ロボットイィイングリスゥ! ブゥゥウラァッ!!!》

 

 

  頭頂部から金色の液体が溢れ出して、龍太郎くんに振りかかり、そしてまた弾ける。するとまた新たな姿になって龍太郎くんが出てきた。

 

  〝変身〟した龍太郎くんは、一見ロボットにも見える金色のスーツアーマーを纏っていた。その輝きに思わず目を奪われる。

 

  液体が固形化した胴体には金色のアーマーの上から半透明の黒いパーツが、両肩にはゼリーのパッケージのような薄いパーツのついた装甲を。

 

  前腕には角ばったロボットのような手甲を身につけて、太ももには成分表示のような白いマーク、膝下を覆う漆黒の鎧と金色のブーツ。

 

  一番印象的なのは、頭のヘルメット。白の上から半透明の黒いパーツがかぶさって、赤い目の間から一本の角が飛び出ている。

 

『仮面ライダーグリス、参上』

 

  龍太郎くんが、自分の名前らしきものをつぶやく。グリス、その名前を私は心に刻みつけた。きっと他の皆も同じだろう。

 

《ツインブレイカー!》

『心の火……心火だ。心火を燃やしてぶっ潰す。祭りの時間だコラァ!』

 

 

 グルァアアアアッ!

 

 

  左手に出現した不思議な武器を振り上げ、ベヒモスに走っていく。それに対してベヒモスも咆哮を上げて。

 

 

 

 そして、私たちのリベンジマッチは始まった。




龍太郎、グリスへと変身。
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