星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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色々忙しくしてる間に、お気に入りがポロポロと減っていて首をかしげた作者です。

本編がつまらなく思ったのか、後日談の方か。

本編完結しているので、後日談は完全に不定期です。

そこのほど、よろしくお願いします。


決定的な違い

 

 

 

「よっ、と……」

 

 

 

 

 ラガルの死骸に、魔剣を突き刺す。

 

 先ほどのように黒い亀裂がその体を走り、端から崩壊させるように吸収を始めた。

 

「……まったくもっていい気分じゃないな」

 

 ニエブラの時は観念して従ったが、コウキの手柄を横取りしている形で非常に気分が悪い。

 

 とはいえ、これで魔剣の力が向上してより多くの瘴気を吸えるとシンセイが言うのだ。

 

 俺の自己嫌悪など、スペンサーさん達の命と天秤にかける価値もない。

 

「何か、彼に返せるものがあればいいんだが……」

 

 正直、剣技や体術といったものは大差ない。というか今の俺の方が劣ってるかも。

 

 なにせこっちは社会人。旧世界の性質を肉体が受け継いでいても、仕事漬けの生活でブランクが酷い。

 

 戦闘力自体はシンセイによるところが大きく、そういう意味では返せるものが少ない。

 

 一度介入した以上、助けが来るまで助力するくらいが関の山か。

 

 

 

 

 そんなふうに結論づけている間に、ラガルの吸収が終わる。

 

 魔剣から妖光が消え、一層オーラを増したそれを手にスペンサーさん達の元へ戻った。

 

「吸収が完了しました。今から再度瘴気を浄化します」

「申し訳ない。この礼はいずれ必ず」

「それは、全てコウキに」

 

 結界に魔剣を突き刺して吸収を開始する。

 

 ん、この短時間で彼らの瘴気が弱っているな。体内の恩恵力の影響か。

 

 容量が倍くらいに増えた今ならば、完全に取り除ける。

 

「それにしても……フール殿、貴方は何者なのですか?」

 

 俺を、というより魔剣を興味深そうに眺めていたスペンサーさんが、ふと訪ねてきた。

 

 視線を合わせれば、その老獪な瞳には疑念と警戒が見て取れる。

 

 そりゃあ、砂漠のど真ん中でスーツ着た男が現れたら怪しいに決まってる。それも勇者と同じ見た目なのだから。

 

「あえて言うならば迷い人です。ふざけた道化によってこの世界に飛ばされた、本来の役者じゃない邪魔者と思ってもらえれば……あのクソ野郎絶対ぶん殴る」

「な、なるほど。フール殿も大変なのですな……」

 

 本当にだ。

 

 あのド腐れ外道、絶対に謝らせてやる。

 

「しかし、その見た目からして貴方はどう見ても……」

「まあそうなんですが……全くの別人です」

「別人、ですか?」

「はい。彼と俺は、全然違う人間ですから」

 

 不思議そうにするスペンサーさんに、はっきりと断言する。

 

 きっと、彼はまだ迷っている、進んでいる人間で。

 

 そして俺は終着点に安寧した、もう進まない人間だ。

 

「スペンサーさん、これから言うのは第三者からの身勝手な頼みです。聞き流してくれて構いません」

「なんでしょう」

「……彼はこれから多くを迷う。けれど、どうか信じてあげてください」

 

 悪意感知で感じ取った、コウキの心。

 

 あれほどの()()()()()()()()()がどのような経験から生じたものなのか、俺はまだ知らない。

 

 何を決めればいいのか、何を成せばいいのか。それ以前に、自分が何かをすること自体が致命的な間違いではないのか。

 

 自分を信じられないからこそ、定められない。

 

 

 

 その苦しみを、別人であり同じ人間である俺は知っている。

 

 だから、まだ知り合ったばかりの彼にこんなことを言うのは、俺が何より嫌う傲慢だけど。

 

「天之河光輝は、己の全てを否定する暗闇に直面し、乗り越えたその時に何かを見つけられる人間だ。だからその時まで、見捨てないでください」

 

 本当、自分で言っていて偉そうで無責任な、下衆の言葉だ。

 

 あの野郎に毒されたか。それでもいい。俺が見つけた答えを、彼への返礼の一端としよう。

 

「……フール殿は、そのように?」

「幸いにも、隣人の巡り合わせには恵まれました」

 

 

 

 (姉貴分)は見守ってくれた。龍太郎(親友)は隣で戦ってくれた。

 

 

 

 北野(仇敵)は、殺すつもりで背中を蹴飛ばしてくれて。

 

 

 

 英子(最愛)が、俺の愚かさを信じてくれた。

 

 

 

「愚者の戯言です。心の隅に引っ掛かりでもすれば、それだけでいい」

「……心に留めておきましょう」

「感謝します」

 

 益体もないことを語っている間に、ほとんどの瘴気を吸い取れた。

 

 他の護衛隊の人達も、徐々に意識を取り戻していくと、俺を見て仰天する。

 

 単純に驚いたり、《暗き者》に間違われたり、起き抜けで混乱して恩恵術ぶっ放されたり。

 

 まあ、結界に怪しげな剣を突き刺してる不審人物なので仕方がない。うん、仕方がないのだ。

 

 

 

 

 

 スペンサーさんの取りなしで、どうにか目覚めたら全員から敵認定は解除された。

 

 説明しているうちにアロースというらしい騎獣も覚醒して、コウキ達の後を追いかけることになる。

 

「すみません。この剣は瘴気を吸収するだけで、恩恵力を回復したり、体を癒すことはできていないんですが……」

「なあに、それだけで十分というものです。我らとてシンクレア王国の戦士、ご心配はいりません」

 

 頼もしい彼の言葉に、俺の中の申し訳なさも少しだけ和らぐのだった。

 

「さて、俺も……」

 

 

 

マテ

 

 

 

 ん? どうした? 

 

 

 

 

テイアン

 

 

 

 

 次にシンセイが告げてきた言葉に、俺は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 スペンサーさん達の上空を飛び、砂漠を移動すること一時間。

 

 

 

 

 

「ん、あれは……」

 

 俯瞰的な視点にいる俺は彼らに近付いてくる、同じ格好をした集団を発見した。

 

 下を見ると、スペンサーさんがこちらを見上げて片腕を掲げている。

 

「味方、か。救援部隊のようだな」

 

 どうやらコウキとモアナ女王は、無事に安全圏へ辿り着けたようだ。

 

 移動を中断した両者は、地上でしばらく何事か話し込んだ。

 

 情報交換を終えたらしき彼らは隊列を編成し直し、再び王都の方へと移動を開始。俺も追随する。

 

 さらに二時間ほど、周囲を警戒しながら飛んでいくと、また新たな集団が行く手に見えてきた。

 

 コウキ達だ。

 

「無事でよかっ……ん?」

 

 ……なんか、子供がいないか? 

 

 モアナ女王の後ろに7、8歳くらいの少女がいる。ツインテールに括られた金髪は、この高さでもよく目についた。

 

 明らかに命の奪い合いの場にいる存在ではない。いる場所からしてモアナ女王の妹か? 

 

 

 

 

 その俺の予想は、概ね当たっていたらしい。

 

 合流したスペンサーさんが少女を見るや否や、驚愕を顔に貼り付けて何事か怒鳴っている。

 

 凄まじい剣幕に少女は泣き出し…………泣いてるかあれ? 悪意感知が恐怖を感じないんだが? 

 

 

 

ウソナキ ウソナキ

 

 

 

「だよな……」

 

 リベルちゃんが時々無駄に上手い泣き真似するから、なんとなくわかる。あの野郎娘に何教えてやがるのか……

 

 っと、スペンサーさんが手を振ってるな。少女のことはともかく、お呼ばれしたらしい。

 

 コウキもこっちを見上げているので、俺は彼らの音へと下降していった。

 

 俺の姿が見えるにつれ、驚愕と動揺をしながら降下地点から離れていく戦士達。

 

 自然と出来た円の中に降り立った俺は、翼を霧散させてスペンサーさんと対面した。

 

「お待たせいたしました、フール殿。クーネ様……ああ、陛下の妹君が部隊に紛れ込んでおりまして」

「いえ、問題ありません」

 

 なるほど、やはり王女だったか。

 

 彼女に目を向けると、びくりと震える。今度は本気の警戒とわずかな恐怖を感じ取った。

 

 ……まあ、()()()()()()()()()当たり前だよな。

 

「貴様、何者だ? 《暗き者》のような翼を持っていたな」

 

 彼女を守るように体で隠し、鋭い目つきと声音でモアナ女王が問いかけてくる。

 

 他の戦士らも、少しの間で動揺を収めるとスペンサーさん達を除いて俺の動きを観察し始めた。

 

 コウキは、言うまでもなく聖剣の柄に手をかけている。 

 

「それに…………その珍妙な仮面はなんだ?」

 

 ………………やっぱりそこ突っ込まれるよな。

 

 俺は、自分の顔を覆うピエロと悪魔の合いの子みたいな面の下で嘆息する。

 

 混乱させない為にガスマスクをシンセイに変形させてみたんだが、やっぱり逆効果だったらしい。

 

「陛下、どうか話を聞いていただきたい」

「スペンサー。この者は一体?」

 

 俺に向けられていた眼光が、彼へと流れる。

 

 それはスペンサーさんだけでなく、その背後に揃う護衛部隊の面々にも向けられたもの。

 

 

 

 

 にわかに場の緊張が高まる。

 

 モアナ女王らと一緒にいた、熊のような巨漢が僅かに抜剣した。

 

「彼は、不思議な剣の力を用いて我らの瘴気を取り除いてくれました。先の襲撃でも、ラガルをコウキ殿と共に相手取った戦士です」

「なんだと? それは本当か、光輝?」

 

 確認を求められたコウキは、俺のことをじっと、彼女のそれよりも鋭い目線で睨みつつ。

 

 しばらく無言で何かを考えた後。深く、深く息を吐いて構えを解いた。

 

「……少なくとも、こちらに助力してくれたことは間違いありません」

「そう、か……つまり私も助けられたわけだな?」

 

 再三の確認。コウキとスペンサーさん達は首肯する。

 

 それを受けた女王は、一瞬の思考のうちに横へ広げていた腕を下ろした。戦士達も戦意を消す。

 

 ほっ、と胸の中で安堵の息を吐いた。彼らと戦う意思など俺には最初からないのだから。

 

「すまなかった、仮面の戦士よ。恩を仇で返すところだった」

「怪しげな出で立ちであることは事実ですので。改めて、自己紹介をしても?」

「ああ、構わない。覆面の君、貴方の名は?」

「フールと申します。故あってこの世界に迷い込んだ脇役と思っていただければ」

 

 彼女に、そしてこの場にいる全員に示す為、仮面越しにも大きく聞こえるよう喉を震わせる。

 

 作法など、英子が戯れに教えてくれたものしかわからないので、右手を胸に、左手をヴァーゲの柄頭にお辞儀をした。

 

「この世界に迷い込んだ……つまり、光輝と同じ世界から?」

「似たような別物です。困ったことに身寄りがない為、女王陛下にひと時この剣を預ける栄誉をいただければと」

「それは、まあ強力な戦士が助太刀してくれることは喜ばしいが……」

「ですが?」

「…………その、奇怪な仮面は?」

 

 やっぱりそこだよなぁ! 

 

「……事情があって、顔をお見せすることができません。どうしてもと言うのなら、別の機会に」

「そうか……」

 

 悩んでいるな。

 

 当たり前か。いくら自国の戦士や勇者が身柄を保証しても、どうしようもなく不審感が拭えない。

 

 とはいえ、顔を明かしてもさらに怪しくなるだけ。呆れるほど分の悪い賭けだ。

 

 さて、どう出る? 

 

「……一つ聞きたい」

「何でしょう」

「貴方は何故、光輝に助力を?」

 

 そう来るとはな。

 

 いや、予想できたことか。

 

 ならば答えは……

 

「彼が、苦しみながらも前に進もうとしていたから」

「「…………っ!」」

「あそこで終わらせてはいけないと思った。彼も、貴方がたも。それが理由です」

 

 たとえどんな馬鹿野郎だろうと、天之河光輝には家族が、大切な人がいるはずだ。

 

 それはモアナ女王も、スペンサーさん達も同じである。つまりは俺と同じだ。

 

 

 

 

 

 俺は、勇者じゃない。

 

 英子以外の誰かを、身も心も、魂までも賭けて、なりふり構わず救おうとはもう思えない。

 

 それでも俺は天之河光輝だから。

 

 全てを彼女の為に用いて、その上でやれることがあるのなら、全力でやってみたい。

 

 胸を張って、彼女の所に帰れるように。

 

「これでは足りませんか?」

「……いいや。十分だ」

 

 ふと、仮面越しに何かが目の前に現れる。

 

 礼を解いて見ると、それはチョコレート色の手だった。傷と剣だこに塗れた、戦士女王の手。

 

 モアナ女王は、王者らしい貫禄と威厳に満ちた笑顔を、俺に向けて。

 

「改めて、救命の恩に感謝を。我々は貴殿を歓迎する」

「……よろしくお願いします、女王陛下」

 

 

 

 

 

 俺はその手を、しっかりと握った。

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

「しかし、本当にフール殿は不思議ですなぁ」

 

 自己紹介も済み、改めてシンクレア王国王都へと向かう道すがら。

 

 隣を並走するアロースに乗る、熊のような巨漢──戦士長ドーナルさんの言葉に顔を向ける。

 

「やはり、不気味ですか?」

「ははは、悪い言い方をすればですがね。なにせ……そのようなものまで出せるとは」

 

 豪快に笑った彼は、口調にそぐわぬ眼光で俺が跨がるものを見た。

 

 そう、アロース達と同じ速度で砂漠を駆ける──かの《暗き者》ニエブラに似た漆黒の巨狼を。

 

 

 

──アタラシイコト デキル

 

 

 

 

 出発直前、そんなシンセイの一言から始まった。

 

 ラガルを取り込んだヴァーゲは、瘴気の貯蓄量のみならず、ニエブラの情報を元に魔力で騎獣を編めるようになった。

 

 シンセイ曰く、命名《 影狼(かげろう) 》。作った理由は飛ぶのが面倒くさくなったから。

 

 この悪魔、年々人間味を増してる気がする。

 

「まあ、アロースが俺に怯えて乗れなかった以上はこうするしかなくて」

「それもそうだ。いや、失礼した」

「いえ」

 

 完全に信用などされていないことは、最初から分かりきっている。

 

 ならば、僅かにでも向けられたものをそれなりのものにしてみよう。

 

 アタッシュケース片手に砂漠で野宿生活は勘弁したい。せめて救援が来るまでは……

 

「変な仮面のおにーさん!」

「うわっ!」

 

 びっくりした! 気がついたら背後に幼女がよじ登っている!? 

 

「クーネたん!? いつのまにそんな所に!?」

「クーネ様、危ないですぞ!」

「平気です! そうですよね、変な仮面のお兄さん?」

 

 狼狽えるモアナ女王達へふふん! と胸を張る王女。てか今〝たん〟って付けてた? 

 

「ええと、とりあえず座っていただけると。俺も初めて使うので、操作が怪しいんです」

「むむっ、それはそうですね。じゃあお言葉に甘えて」

 

 お行儀よく影狼の背に座るクーネ王女。そしてニコニコと笑いかけてくる。

 

 そんな彼女は──未だに、最大限の警戒心を抱いていた。

 

「改めて、クーネ・ディ・シェルト・シンクレアです! 王女のような何かをやってます!」

「いや王女のような何かってなに?」

 

 って、そうじゃなくて。

 

「先ほども言いましたが、フールです。好きに呼んでください」

「じゃあ変なお兄さんで」

「なんで仮面の、を抜いたんですか? ねえちょっと?」

 

 それだとただの変人になるんだが。一歩間違えると変質者なんだが。

 

 いや格好だけ見れば変質者だけど! 

 

「変なお兄さんは、凄い力を持ってますね? 特にその剣、瘴気を吸い取れるんだとか! クーネ、興味があります!」

「あ、確定なんだ……ええ、相棒のおかげで手に入れました」

 

 さながら操縦桿の如く、《影狼》の背に突き刺さっているヴァーゲ。

 

 それをじっと観察するように見つめていたクーネ王女は、一転して明るく笑った。

 

「相棒って誰ですか? 変なお兄さんにはお仲間さんがいるんですか?」

「はい、頼れるやつです」

 

 ガリッとするけど。時々勝手に人の体使って冷蔵庫の中漁ってたりするけど。

 

「そのお仲間さんはどこに?」

 

 ニコニコとしたクーネ王女が、俺の返答に続けてくる。

 

「すぐ側にいますよ。シャイなので後で紹介します」

「へえ。そんな武器や獣を作れるなんて……」

 

 まるで、と彼女は言葉を続けようとする。

 

 魂胆は見え透いている。文字通りに。彼女は見た目通りの愛らしい王女ではない。

 

 だから俺は先手を打った。

 

「この力も、そいつも、()()()()()()()()()()()()()()()()()です。この世界では少し張り切ってますけどね」

 

 その返答に、背後で王女が息を呑む。

 

 いつしか無言で密かに耳を澄ませていた女王達やコウキも同じ様に。

 

 あるいは、少し違う意味で。

 

「そう、ですか」

「ええ。なんだかんだと付き合いが長く、上手くやってるので、()()()()()()()()()

「っ…………わかりました! では勇者さま共々頼りにしてますね、変な趣味のお兄さん!」

「おい王女。ちょっと待て王女。なんで余計なもの付け加えた?」

 

 わざわざ変質さを増させたのは仕返しか? この抜け目のないちびっこ王女め。

 

 それだと俺が変態みたいじゃないか。いや、女性の趣味が特殊なのは認めるが。

 

 

 

 ガリッ

 

 

 

 いってえ!? 

 

「も、もしものことがあるといけないので、女王陛下のところに戻ってください。振り落とされるかもしれませんよ?」

「それじゃあお兄さん、クーネが怪我しないようお願いしますね!」

「頑として降りないんですね、わかりました」

 

 それならそれでいい。無理に問答して意識を乱すよりはマシだ。

 

 こんな得体の知れないものに率先して乗るあたり、さすがは幼くても王族ということか。

 

 ……俺のことを出来る限り探ろうとしたことも含めて、な。

 

「…………」

 〈後で、ちゃんと話そう〉

「っ!」

 

 俺と彼女のやりとりを監視していた彼に、目線を一瞥して告げる。

 

 なんなら王女に乗じて詰問したかった、といった顔のコウキは苦い表情で前を向いた。

 

 同じように、俺も前を見る。

 

 やがて、砂漠の中に新たなものが見えてきた。

 

 広大なオアシスの中央に屹立する、複数の尖塔と四角錐型の建造物で構成された白亜の宮殿。

 

 そこから四方に石橋が伸び、宮殿を取り囲むように白い都市が広がっている。

 

 更に、目算十メートルはあろうかというドーナツ状のオアシスがそれらを包み、陽光に煌めいて。

 

 

 

 

 

 砂漠に広がる水の都──シンクレア王国王都が、ついに姿を現した。

 

 

 

 

 





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