楽しんでいただけると嬉しいです。
「それにしても、どうやってこの世界に?」
今更だが、なぜ彼女はここへこられたのだろう?
思いつくのはあのアーティファクトのことだが、肝心の移動手段が分からない。
そもそも、最後に気を失ってからどれくらい時間が経った? シンクレアはどうなったんだ?
それに、コウキやクーネ王女のことも気になる。彼らは無事だろうか。
「ええ、それは──」
その時、扉の向こうから音がした。
反射的にそちらへ目線をやる。
『ちょっと、何してるんですかお姉ちゃん!』
『ご、ごめんねクーネたん。ちょっとふらついて……あっ』
『えっ、ちょっ、わぁっ!』
何やら話し声が聞こえたと思ったのも束の間、ガタガタと揺れていた扉が外れた。
そして大きな音を立てて倒れ、一緒に扉の向こうにいた人物達も転がり出てきた。
「あいたた……もう、お姉ちゃんったら!」
「うぅ……」
「クーネ王女……それにモアナ女王も……」
「あっ、お兄さん! おはようございます、ご無事で何よりです! 本当に心配したんですからね!」
こちらに勢いよく振り返った王女は、女王をその場に置き去りにして走り寄ってきた。
盗み聞きでもしていたのか、中断した元凶の姉にちょっと怒ってるのかもしれない。
何とも言えない苦笑を浮かべながらも、英子の膝から体を起こす。
「ご迷惑をかけたようですみません。本当はもっと戦うつもりだったんですけどね」
「何言ってるんですかっ。あんな姿になっておいて、あれ以上無茶してたら、クーネはお兄さんが死んでても叩き起こしてぶっ飛ばす所存でしたよ、ええ!」
それだと俺、軽く二、三回ぶっ飛ばされることになるんだけども。
腰に手を当て、真剣な顔でこちらを睨みつけてくるクーネ王女に苦笑する。
「っ、そういえば《暗き者》は? 戦争はどうなったんです?」
質問するとシンクレア姉妹が顔を見渡せる。
それから真剣な表情へと変わり、厳かな口調でクーネ王女が答えを告げた。
「……終結しました。光輝さまが《黒王》を倒したことで、長い戦いに終止符が打たれたのです」
その言葉に、ほっと安堵した。
彼女達姉妹がいることや、モアナ女王の髪が何故か白金色になっていること。
何より周囲のどこからも争いの気配を感じないことから、なんとなくわかってはいた。
しかし、実際に言葉として耳にすると、心のどこかに残っていた緊張が一気に解けた。
「俺が倒れた後の経緯を聞いてもいいですか?」
「はい。まずは……」
その後の話を整理すると、こうだ。
まず、シンクレア軍は俺を回収しつつも《暗き者》達へ再び攻勢を仕掛けた。
三万近くも戦力を削ったことは大きかったようで、奴らは大きく士気が低下。どうにか王都の戦力だけでも拮抗できたらしい。
しかし、《黒王》が動き出したことで状況は一転。それまでの善戦が一瞬にして崩れた。
《黒王》の攻撃により、戦士団は壊滅。余波で王宮は半壊し、ついに王都内部まで攻め込まれた。
それでも地の利を生かして戦ったが、敢えなく敗北。
後一歩で、復讐心に燃える《黒王》の手によってモアナ女王が、そしてシンクレアが滅ぼされんとしたその時。
門が陥落した時点で逃されていたクーネ王女が、コウキと共に連れてきたのだ。
彼の世界の南雲達という、最強の助っ人を。
「魔王様の仲間達によって、後方の領地に転移していた分団も各個撃破。そして《黒王》も消滅し、辛勝を収めたのです」
「そうですか……」
事の顛末に、無意識に自分の顔が渋くなるのを感じる。
誰もが一秒先に死を覚悟する中で眠りこける俺は、さぞ邪魔なお荷物だったろう。
「こら。また余計なことを考えていますわね」
「って……でも、俺は結局足手まといになったわけで」
「そんなことありませんっ!」
「そんなはずないっ!」
モアナ女王とクーネ王女、両方にほぼ即答で否定され、その声量に身を竦める。
「貴方がいなければ、私達はもっと早く壊滅していたかもしれない! 光輝が来てくれる前に死んでいたかもしれない! あれほどの軍勢を一人で撃滅した戦士を、私は貴方以外に知らないわ!」
「モアナ女王……」
正直、俺はコウキのそっくりさん以上の認識は持たれていないと思っていた。
尊大なものではない、素の口調なのだろう言葉遣いで憤る様には、本当の怒りが宿っている。
「お兄さんがいたから、クーネ達は挫けなかったんです。お兄さんがあんなになるまで戦ってくれたから、私達も死ぬわけにはいかないって、必ず生きて勝つって、そう思えたんですよっ」
「……俺は、ただ出来ることをしただけです」
「そうです、その通りなんです。だからそんなふうに自分を貶めるのはやめてください! クーネが頼ったお兄さんは、そんな偉業を〝出来ること〟だからと言ってやれてしまう、すごい人間なんですっ!」
モアナ女王よりも熱烈に、ベッドの縁から身を乗り出してまで訴えられる。
その目には真剣な感情と、計り知れない想いのようなものが秘められていた。
……そうだな。無理な謙遜はしなくていいと、言われたばかりだった。
俺は俺に選べる最善を行った。そこに他のどんな付加価値もつきはしない、純然たる事実だ。
他でもない、守ろうとした彼女がそう言ってくれるのだ。いい加減頑固な自分は卒業しなくては。
「ありがとうございます、クーネ王女。そう言ってもらえて嬉しいです」
「……むう。クーネって呼んでください」
「え、いきなりですね」
「いいからっ! クーネのことはクーネと呼ぶように! 変に他人行儀なのはこれから禁止ですっ! あと敬語もっ!」
「……わかったよ、クーネ。これでいいかな?」
「ふふっ、はい!」
何やら上機嫌だ。彼女が単純に嬉しそうなのは初めて見たような気がする。
っ、なんか寒気がした。なんだろう、この部屋の温度が急に下がったような……
「そういえば、コウキは今どこに?」
「あー……」
「えっと、その……」
さっと目を逸らす二人。また何かおかしなことでも起こったのだろうか。
重要なことではありそうだが、深刻そうな様子ではない。彼の身に何があったんだ。
「光輝は……別の世界に旅立ったわ…………」
「それは、元の世界に帰ったということですか?」
「いえ、そうではないのですお兄さん。光輝さまは……この世界とも、光輝さまの故郷とも違う世界に、召喚されてしまったのです……」
「えぇ……」
我が事ながら、なんてトラブル体質なんだ。
エヒトに器候補として召喚され、フォルティーナに救世主として召喚され、更には次の異世界入りまーす! と言わんばかり。
二度あることは三度あるというが、別世界の自分にはもはや御愁傷様と言う他になかった。
●◯●
「その際、魔王様にしがみついて一緒に連れていってしまいました。〝お前だけは絶対に離さないぞ、魔王ぉおぉぉお! 〟と言って……」
「光輝のあんな必死な形相、《黒王》との戦いの最中でも一度も見なかったわ……」
「な、南雲とは複雑な関係なんですね……」
俺は旧世界の聖戦を一緒にくぐり抜けたことで、あいつともユエさん達ともそこそこの仲だ。
たまに集まって飲み会するくらいの間柄なのだが、どうも世界が違うと関係性も違うらしい。
なおあちらのユエさん達は、コウキ共々お空の向こうに消えた南雲の帰還を待ってるらしい。
もう《黒王》との決着から三日目になるそうで、俺は随分と長く寝ていたようだ。
今はちょうど全員王宮にいるそうで、会いますか? と提案されたが、断っておいた。
これ以上あちらに干渉する必要はないだろう。
「……神域での戦い、か」
「あら。私の顔を見てどうしたの? 何か思い出したことでもあって?」
「ちょっと、な」
昨日は記憶が飛んでたけど、今はもう思い出している。
俺は一度、死の一歩手前まで追い込まれて〝侵食再生〟を暴走させ、異形の竜になったのだ。
よく帰ってこれたなぁ……プライトがいなければどうなっていたことか。
そういえばあいつは、と思っていると、扉のない出入り口からひょっこり顔を出して手を振ってくる。
「やっほーマスター。もうお昼寝はいいのぉ?」
「おかげさまでな。今回は本当に助かったよ、色々とありがとう」
「キャハッ、マスターといるとご飯に困らないからねー。これからもヨ・ロ・シ・ク♪」
「こちらこそな」
クスクスと笑う小悪魔は憎たらしいが、しかし同時に頼もしくもある。
良い相棒を得たな。
「あら、随分と可愛らしくなったこと。いつ光輝の中から引き摺り出して羽虫のように潰そうかと思っていましたが、良い具合に取り込みましたわね」
「えっ」
「アハッ、ご主人様もこれで満足でしょ?」
「フフフフ」
「キャハハハハッ」
……怖い。恋人と相棒がすごく怖い。
結局話すことはできなかったけど、世界樹の女神様すみません! ほんとすみません!
吸収されてしまった女神に心の中で謝り倒していると、ふとシンクレア姉妹がドン引きしているのに気付いた。
「お、お兄さんは……何というか、特殊な女性の趣味をされているのですね……」
「まあ、人それぞれだと私は思うわよ、うん」
「は、ははは……」
少なくとも普通の相手ではないことはそうなので、なんとも言えない……
うわぁ……って顔でそんな俺を見ていたクーネ王女は、ふと何かを思案するような顔になる。
そのまま沈黙してしまい、モアナ女王が不思議そうに見た。
少しの黙考。その後に、クーネ王女は何かを決意したように表情を引き締めると。
「お、お兄さんがそういうのが好きなら、クーネは頑張りますっ!」
「クーネたんっ!?」
「おい待って王女。マジでそれだけは待ってください王女。死ぬから、色んな意味で俺が死ぬから」
主に社会的にとか恋人的にとか物理的にとかその他諸々!
「へぇ……?」
ほらぁ! 後ろからものすんごくねっとりとした「へぇ」が聞こえたよ!
せっかく生き残ったってのに、何でこんな場面で命の危機を感じなきゃいけないんだ!
「ふふ。賑やかでございますね」
誰か助けてくれ、という俺の思考を読み取ったかのようなタイミングだった。
新たに部屋の中に入ってきた、落ち着いた美声に混沌とした空気が変えられる。
全員がそちらを見る。
出入り口の向こうから、コツコツと硬質な足音を立てて入ってきたのは──
「貴女は……あのホテルの…………?」
「ご無事に目が覚めたようで、何よりでございます。そのご様子ですとお体の方は問題がなさそうですね」
そう言ってにこりと笑うのは、上質な濃紺のパンツスーツに身を包み、〝紫と赤の蛇が絡み合う〟バッヂを付けた美女。
凡そこの世界に似つかわしくない装いのその女性は、英子と宿泊したホテルのフロントにいた人物だった。
「そういえば。私がどのようにこの世界へ来たのか、という話が途中だったわね」
「英子、どういうことだ? どうしてこの人がここに……」
「あら、簡単なことよ。
「な……」
「私どもの不手際により、天之河様と御堂様には大変ご迷惑をおかけしました。本来であれば、私どものホテル内は
「っ!?」
心から申し訳ないという顔で語る女性に、俺は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
あそこが異界にあった? ただの高級ホテルじゃなかったのか? 空間魔法を何故使える?
混乱する思考の中、急に不気味に思えてきたホテルマンを見て──俺は絶句する。
どうして、今の今まで気がつかなかったのだろう。
俺は彼女を知っている。正しく言えば、
忘れられるはずがない。
神の造形ともいうべき完璧な体も。どこか青みがかった銀髪も、作り物めいた端正な顔立ちも。
それは、あの最後の戦いで何百、何千と見た、【神門】の向こうから人々を滅ぼさんとやってきた……!
「貴女は、神の……!?」
喘ぐように言う俺に、彼女は深い笑みを形作る。
「僭越ながら自己紹介を。ホテル〝
そして、左胸に軽く手を当てると、俺へ頭を下げてきた。
「〝
容姿も、声音も、恭しい所作も完璧な、美貌の〝神の使徒〟。
一人たりとも残っているはずがない、そう思っていた存在に俺は二の句を告げられない。
だが、思考は勝手に回転を始める。
現存している神の使徒。浩介の紹介で利用した空間魔法により隔絶されたホテル。
そして、シンボルに掲げられた紫の蛇と赤の蛇──。
「は、ははっ、ははははっ」
「お、お兄さん……?」
「フール、どうしたの……?」
もう、笑うことしかできない。
ああ…………やっぱり、あいつの掌の上じゃないか。
●◯●
「今回の件の謝罪につきましては、〝オーナー〟から事情の説明、及び地球への帰還とホテル内での最大限のサービスをと仰せつかっております。その一環として、御堂様をこの世界までお連れいたしました」
「……そう、ですか」
「お兄さん!? 目が死んでますよ!? 今にもそこの窓から飛び降りよっかなーみたいな感じですよっ!?」
もうなるようになーれという心境だった。
一種の悟りを開いた俺の前で、ホテルマン改め、毒蛇の使徒シーザは語り始める。
「そもそも、今回の件の原因はオーナーよりお預かりし、天之河様へお届けしたアーティファクトにあったのです」
「はぁ」
「あれは〝上位存在からの悪意ある干渉を禁ずる〟という概念魔法が込められた品でした。その効力は試験運用で問題無しと判断されたのですが……唯一見落とした部分があったのです」
「へぇ」
「悪意の拒絶。その概念が強く効果を発揮しすぎていました。その為に、〝純粋な善意からの干渉〟にはむしろ強く反応し、その力を呼び寄せやすくなってしまった。この致命的な欠点により、天之河様はこの世界へと召喚されたのです」
「ほぉ」
「お兄さんっ! 戻ってきてくださいお兄さんっ! 魂がどこかに飛んでいってしまいそうですっ!?」
いや、もう、なんて言ったらいいか。
今も俺のことをブンブン揺さぶってるクーネや、人々の助けに少しでもなれたと喜んでいた。
でも、あいつの存在があまりに大きく強大で、自分がこの世界でしたことが馬鹿らしく思えてきた。
あいつは一体、いくつ手札を持ってるっていうんだ。
冗談じゃなく地球はあいつに支配されてるんじゃないかな、ははははは。
「今後このようなことが起こらないよう、アーティファクトの改良をさせて頂きます。……それで、いかが致しますか? すぐにでも地球へとお連れできますが」
どこか遥か彼方にぶっ飛んでいた意識が、その言葉で戻ってくる。
そうだった、元々地球に帰ることが何よりも俺の悲願だった。
その成就が目の前にある。英子と一緒に帰れるのだ、俺の生きる故郷へと。
「……お兄さん、帰ってしまうのですか?」
頷きかけた俺に、クーネの呟きが待ったをかける。
隣を見ると、彼女は酷く寂しそうな顔で俺の腕を掴んでいた。
「そう、よね。別の世界に召喚されてしまったけど、光輝も元々帰るつもりだったんだもの。貴方もそのつもりだと最初から言っていたのだから、当然よね」
そんな彼女の肩に手を置きながら、モアナ女王もちょっと寂しそうな顔をしてくれる。
こんな顔をされてしまうと、この世界に来て良かったという気持ちが湧いてきてしまう。
「今までお世話になりました。この御恩は忘れません」
「いいえ、それはこちらの言葉よ。貴方と光輝がいてこそ、私達は今ここにいる。人類は明日を生きていける。その偉業は、未来永劫歴史に刻まれ、人々に希望の象徴として語り継がれることでしょう」
「モアナ女王……」
「ま、まあ私は光輝が帰ってきたら一緒について行くんだけどっ」
最後の独り言は聞かなかったことにしておこう。
もう一度女王に礼を言い、視線を下ろしてクーネを見る。
「クーネは、これからどうするんだ?」
「……お姉ちゃんが光輝さまについて行くので、クーネが王になります。生き残った人々と共に、この世界を緑で満たすのです」
「それは、《再生》の天恵術を持つクーネらしい望みだな」
「はい。クーネは、頑張るのです」
いつもならば、天真爛漫に見せかけた笑顔でその台詞を言うのだろう。
しかし、一向に顔を上げない彼女。それどころか袖を握る力が強くなる。
随分と懐かれてしまったなと苦笑を零す。それでも、この言葉を言わなければならない。
「俺も頑張るよ。頑張って、俺の大切な人を守り続ける。だから、無責任な言葉だけど……きっとクーネも、大丈夫だ」
「っ……本当に、お兄さんは冷たいです。大人です。割り切りすぎです」
「そんなこと言ったって、俺がこの世界に残らないのは分かってるだろ?」
彼女の頭に手を置いて、なるべく優しい口調を心がけてみる。
腕から手を解いて、俺の手を両手で掴んだクーネが顔をあげると──彼女は泣いていた。
「ええ、分かってますっ。クーネは、クーネはお兄さんなんて、いなく、ても……平気、なんでず、がらっ」
「……ごめんな。でも、俺は君の家族にも、仲間にも、臣下にも…………それ以上にも、なれないから」
「っ、ぅ、ぅううぅううっ!」
限界が来たように目元を歪めた彼女は、なんと胸の中に飛び込んできた。
姉や他の人間に顔を見られたくなかったのだろう。嗚咽する彼女の背中を撫でる。
「……ふぅん。馬鹿な自問自答の次は女たらしとは、随分と楽しい生活だったようね」
「いや、違うからな? 俺が好きなのは君だけだから」
「ふん」
ああっ、珍しく不機嫌になってる。あとで何か埋め合わせをしなければ。
涙を流す幼女と嫉妬してくる恋人のサンドイッチになっていると、しれっとシーザが一言。
「この世界への境界は繋げましたので、当ホテルをご利用の際にはお連れすることもできますよ?」
「はっ?」
「…………………………へぇ」
ぴたりと、クーネが泣き止んだ。
猛烈に嫌な予感を感じていると、ゆっくりと顔を上げたクーネ。
その顔には、満面の笑みがあった。
「く、クーネ、さん?」
「お兄さん、年下の女の子は何歳差までが範囲内ですか? それと現地妻は許容できるタイプですか?」
「ストップクーネ、本当にストップ! それはシャレにならない!?」
「く、クーネたん? お姉ちゃん、クーネたんが獲物を狙う肉食獣に見えるんだけど?」
一瞬前の涙はどこへいったと問いただしたいほどの笑顔で、クーネは爆弾を落とした。
当然、それを聞いていた恋人の指は凄まじい勢いで肩に食い込むわけで。
「ふふふ。呪いはないというのに、久しぶりに食欲が湧いてきそうですわ♪」
「英子!?」
「エイコさん、と言いましたね。改めて、クーネ・ディ・シェルト・シンクレアです。お兄さんには
「どう調理して差し上げましょうか、この羽虫が」
「やめて!? 俺の為に争わないで!?」
「キャハハハハッ! マスターモッテモテ〜♪」
人生でこのセリフを言う日が来るとは思わなかったよチクショウッ!
ぼんやりと見える幼い女豹と人喰い花のオーラから目を逸らしつつ、シーザを睨む。
何してくれてんだと恨みを込めた視線は、とても美しい邪悪な微笑みで返された。
間違いない。こいつはあの野郎の手先だッ!
「ああ、そういえばもう一つお伝えすることがございました」
「今度はなんですか……」
「天之河様達がご帰還次第、オーナーがお話をしたいと段取りを決めていたのですが、後日に変更となってしまいました」
「あいつが? どうしてそんなことを?」
ええ、とシーザは頷き。
それから、これまでに無い真剣な顔で言葉を続けた。
「現在、オーナーは未知の異世界へと強制召喚。行方不明となっており、当ホテル及び全組織を以って捜索にあたっております」
……………………は?
はい、これにて一度終幕とさせていただきます。
本編終了後のアフターストーリーにもかかわらず、20話という長尺に付き合っていただきありがとうございました。
次は誰のアフターを書こうかな。