星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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こそっと更新。


エンディング 中編

 

 

浩介 SIDE

 

 

 

 ふとティーカップを口から離す。

 

「ん。終わったか」

「こうすけ、保安局とのお話は済んだの?」

「ああ。ベルセルクの痕跡は全て消した。もう安心だ」

 

 隣に座っていたエミリーに報告すれば、ほっと胸をなでおろした。

 

 それから自分が首にかけているものに触れる。

 

「これ、すごいわ。本当にこの数日、誰にも見つからなかったもの」

「まあ、行方をくらませておいたほうが何かと楽だったしな」

 

 エミリーが持っているペンダントは、俺が持つアーティファクトの一つ。

 

 催眠矢を改造した代物で、周囲にいる人間に認識されてもすぐに忘れられる効果を持っている。

 

 なので、こうして堂々と英国内のカフェにいても保安局員がやってくることはない。灯台下暗しってやつだ。

 

「にしてもこのサーモンサンド、マジで美味いな」

「もう、そんなに気に入ったの?」

「ああ。分身体が食べてた時から直に味わってみたかったけど、確かに最高だ」

 

 ちなみにいつぞやの、ケイシスの使いを誘き出した時の店である。

 

 あの時はベルセルクを飲まされた客がいたり、分身体が暴れまわって殺伐としていたが、すっかり日常を取り戻しているようだ。

 

 こうした光景を見るのも、やり甲斐の一つなんだよな。

 

「そういえば、良かったな。()()()()()()()()

「……ええ。本当に、本当に良かった」

 

 言葉の端に安堵を滲ませながら、エミリーは笑う。

 

 

 

 今回の事件、ある一つの救いがあった。

 

 それはーー最初の研究棟の事件で死亡したと思われていた、エミリーが姉と慕うダウン教室の女性が生き残っていたこと。

 

 次々とダウン教室の面々がエミリーの眼の前で死んでいく中、リシーというその女性は彼女を逃してベルセルクを引き付け姿を消したのだと言う。

 

 そして保安局の人間に研究棟から重傷で発見され、事件の関係者が収容された病院で一命を取り留めていた。

 

 

 

 エミリーの話を最初に聞いたヴァネッサが疑問に思って独自に調べていたようで、つい一昨日連絡が届き、二人は病室にて感動の再会を果たした。

 

 黒幕であるダウン教授を除けば、唯一の生還者。まさに奇跡という他にない。

 

 運命は最後にエミリーに微笑んだのだ。 

 

 

 

 ……さて。

 

 カップをソーサーに戻し、緩んでいた気を引き締める。俺の雰囲気が変わったことに気づいたのか、エミリーが居住まいを正した。

 

「エミリー、今後の話をしようと思う」

「う、うん」

「とりあえずご家族は日常生活に戻れるよ。〝組織〟の保護が解けた後も護衛がつくみたいだ」

「そう。なら、少し安心かしら」

 

 安心も安心だ。なにせ使徒が配置されるのである、並の犯罪者じゃ一瞬で分解されるだろう。

 

 リシーさんにも同様の措置が取られるよう嘆願した。そのうち、やけに綺麗なご近所さんやナースが彼らの側に現れる。

 

「そして、エミリー自身のことだが」

「……うん」

「……悪いけど、元の生活を送るのは難しい。これからは組織の下で暮らしてもらうことになる」

 

 キュッと、膝の上に乗せられた手が握られる。

 

 聡明な彼女のことだ。こうなることは予想していたんだろう。ヒーロー映画のエピローグのように、自由を返してあげられないことが心苦しい。

 

「そう身構えないでくれ。護衛がつくけど基本的には好きにしていいし、研究も続けられる。最高の環境を用意してもらえるよう、俺からも進言しといた」

「こうすけから?」

「ああ。覚えてるか? 最初に身を寄せた治療所。あそこでリュールさんの助手をしてもらうことになってる」

 

 というよりも、最初から治療所預かりになることは決まっていたようだ。

 

 エミリーの扱いについて嘆願しようとしたら、先回りするように諸々の環境が整っていることを告げられた。

 

「その他に何か指示されたり、あるいはベルセルクみたいに危険なものを作るよう強制もされない。そこだけは絶対だって釘を刺しておいた」

「こうすけ……ありがとう」

「いやまあ、ちょっと騙してたみたいなとこあるし。これくらいはな」

 

 正直、ミスターKの名前をちょっと利用したみたいなことはある。

 

 余計な警戒をされるのも面倒だし、何より思い込みを解く暇もなかったからだが、せめてもの誠意だ。

 

「うん、わかった。私、頑張ってあの人のお手伝いをするわ」

「そう言ってくれると助かるよ。リュールさんのそばにいることはエミリーの研究のためにもなると思う。ほら、ブレイクスルーへの近道にさ」

 

 なにせ異世界の魔法や技術だ。地球にない植物などもあそこじゃ使ってるので、アルツハイマーの治療薬の開発にも何かしら役立つだろう。

 

 

 

「……研究、していいのかしら」

「……エミリー?」

 

 しかし、答えるエミリーの声色は暗かった。

 

 いきなり弱々しくなった言葉尻に彼女を見ると、どこか自嘲気味な笑みを浮かべている。

 

「また私のせいで、先生みたいな人を生み出してしまったら……ダウン教室のみんなみたいに、傷つく人が出たら……そう思うと、怖い」

「……そう、だな」

「今でも〝先生〟だって思うの。あんなに酷い事をされても、それでも確かに積み上げたものがあったから」

 

 エミリーにとって、レジナルド・ダウン教授は裏切られたとてそう簡単に心の中から切り捨ててしまえる存在ではないのだろう。

 

 依頼を受けた時、彼女についての情報を見た際にどれだけ彼や学友に救われ、居場所をもらったかを少しながら知った。

 

「誰の中にも、ベルセルクがいるんだと思うわ。それまで重ねたもの全てを壊してでもーーそう思わせてしまう激情の引き金を、たった一つの何かが引いてしまう」

 

 そして実際、ダウン教授の引き金を引いてしまったからこそ怯えているのだ。

 

 自分の道を突き進んだその先で、また同じ事を起こしてしまったら。夢を叶えんとするため、誰かに犠牲を強いたら……と。

 

「もし、もしそうなってしまうなら、私は……!」

 

 懺悔のように。告解のように。

 

 言葉を吐き出すエミリーは、しかしそれでも恐怖に負けたくないと言わんばかりの意思を瞳に表していたから。

 

 それを見た俺は、ぽりぽりと首筋をかいて口を開く。

 

 

 

 

 

「ーー昔、全てを裏切った男がいた」

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 ようやくエミリーが顔を上げる。

 

 いきなり語り出した俺にきょとんとする彼女に苦笑して、んんっと喉の調子を整えると言葉を続けた。

 

「男はイケメンで万能でジョークな好きな、愉快で破茶滅茶なやつだった」

「は、破茶滅茶なの?」

「破茶滅茶だ。でもそいつは生まれついての親友と、誰より愛する女。親しい奴のためならどんなことをする信念を持つやつでもある」

 

 俺の言葉から真剣な話である事を感じ取ったのか、エミリーが顔を真面目にして耳を傾ける。

 

「ある日、男がクソみたいな邪神の手で親友達と一緒に剣と魔法に満ちた異なる世界に連れ去られた」

「異なる世界……地球じゃない場所ってこと?」

「そうだ。だがそこでも男は変わらず、あくまで意気揚々と戦った。自分たちをオモチャにしようとする邪神を殺すと決めたんだ」

「か、神様を殺す!?」

 

 驚くエミリーに頷く。

 

「その為に、全て利用し、欺き、時には仲間達にさえ背を向けて。たった一つの、愛する人達を故郷に帰すという目的を達成しようとした」

 

 その過程で多くの命を奪い、屍の山を築くことでさえ、必要ならばやってのけた。

 

 罪の意識に苛まれ、手にかけた者達の亡霊に追い立てられ、片方を選ぶことでしか何かを守れない己を憎み。

 

 

 

 何度も、何度も心をすり潰しながら。

 

 それでも南雲達の笑う明日を創れるのであればと、どんな重責だって一人で背負い進んだ。

 

「男が選んだのは、人に悪と謗られる道だ。誰より自分が汚れることで、美しいと感じたものを守る覚悟があった」

「……すごい人なのね」

「けどその先で待っていたのはーー救いようのない真実だったんだよ」

「え?」

「作り物だったんだ、全部。誰かを模造し、記憶をねじ込まれ、パッチワークのように繋ぎ合わせた偽物ーー邪神とは違う、愛に狂った女神に作られた人形。それが男の正体だ」

 

 ヒュッと、息を呑む音がする。

 

 そんな人間が存在するのか。ただでさえお伽話のような内容なのに、そんなことがーー困惑が伝わってくる。

 

 それでも否定せず、続きを待っているのは俺に寄せる信頼の強さ故だろうか。

 

「男は絶望した。愛する者の隣にいる資格がないと思った。今まで行ってきたことに耐えられなくなり、やがて贖罪に取り憑かれた」

「そんな……」

「最後には全部捨てた。仲間も、愛も、自分の未来も。親友や最愛の人の手さえも振りほどき、裏切ることで、これまで自分が奪ったものを元に戻したんだ」

「元に、戻した……って?」

「文字通りだ。作り直したんだよ、世界丸ごと」

 

 自分で話していてもまだ信じられない。まさか、世界ごと一新させてしまうなんて。

 

 

 

 エミリーはぽかんとしている。

 

 自分が生きるこの現実が個人によって塗り替えられたもの、なんて、学者である彼女には容易に受け入れられないだろうな。

 

「世界はあるべき姿に修正された。本来存在しないはずの男が残した、ちょっとした幸せで満ちた形で」

「じゃ、じゃあ、その人は……!」

「そして親友によって生き返ったそいつは、家族のところに連れ戻されてこっぴどく叱られましたとさ」

「……………へ?」

「いや、今でも笑い話だよ。酒の席になるとルイネさんが、あれは渾身の一発だったってさぁ」

 

 俺は南雲達から聞いただけで実際には見ていないが、とても見事なビンタだったという。

 

 あれはもう色んな意味で受けたくない、と言うあいつの表情は、しかしいつもどこか嬉しさが垣間見える。

 

 愛の鞭、というやつなのだろう。

 

「信じられないような話だろ? でも全部、本当のことなんだ。俺の力もそいつのおかげで手に入れたもんだからな」

「そ、そうなの……じゃあ信じるわ」

 

 一瞬で顔がキリッとなった。ちょっと俺への信頼度極振りしすぎじゃない?

 

「その人は今、どうしてるの……?」

「ん、ああ……変わってないよ。世界を裏から覆う悪になることで、自分の愛と平和を守ってる」

「ーー! もしかして、それがこうすけの組織の!」

「さすが天才、頭の回転が早いな」

 

 バカは死んでもなんとやら、とは言うが、突き抜けた才人というのも同様らしい。

 

 あいつが選ぶのはいつだって茨の道だ。悪を以って悪を制することでしか生きられない。

 

「もう二度と、裏切らせない。一人で失わせない。あいつの家族がそう決めたように、俺も楔の一つになりたくて今の道を選んだ」

「大切な、お友達なのね」

「ああ。で、要するに何が言いたいかっていうとだな」

 

 ずいぶん話が脱線してしまったが、こんな長ったらしい語りをした本当の目的はというと、だ。

 

 

 

「エミリーにとっても、俺がそういう存在になるよ」

「ーーこう、すけ」

 

 

 

 うわ、小っ恥ずかしい。でも羞恥心を抑え込んで羞恥心を押さえつけて言葉を続ける。

 

「もし君が、また誰かの引き金を引いてしまって。誰かの大事なものを奪うようなことになったら、俺を呼んでくれ。頼ってくれ。たとえどこにいたって飛んでいって、君の支えになる」

「ぅ、あ……」

「言ったろ? 君の身も心も守るって。一度手を差し伸べたんだ、最後まで責任持つよ」

 

 幸い、組織の方からもエミリーのことについてはある程度の決定権をもらえてる。曲がりなりにも幹部の一人であることの恩恵が働いた。

 

「だから進んでくれ。諦めないでくれ。君の才能は、多くの人を救う可能性を秘めてる。そうしたいと望む限り、どんな悪が相手だって俺が呑み込んでやるさ」

 

 あるいはこれも、俺が今回選ばれた理由なのかもしれない。

 

 背負う罪の重さに、エミリーが自らの命を絶ったり、あるいは壊れて堕ちてしまう未来を回避するために……なーんてなぐふっ!?

 

「うおっ! お、おい、エミリー?」

「……こうすけ。こうすけ、こうすけぇ」

 

 突然抱きついてきたかと思えば、何度も涙声で俺の名前を呼ぶエミリー。

 

 きっと色々なものが決壊したのだろうと、その肩に手を置いてなるべく優しく撫でた。

 

 

 

 などと気を緩ませたのがいけなかったのか。

 

 不意にガバッと顔を上げたエミリーは、至近距離からうるうると潤んだ瞳とどこか色気を感じさせる表情を向けてきた。

 

「やっぱり、我慢できない」

「へ?」

「あのっ、あのね。本当はもっと、ちゃんと落ち着いてから言おうと思ってたの。でも、もう抑えきれなくてっ」

「………あ”っ」

 

 やっっっべ、ラナのこと話すの忘れてたァ!?

 

 全部片付いた時にはちゃんと話そう話そうと思って先延ばしにし続けていたら、いきなりぶっこんで来やがった。

 

 おまけに今は空気の読めない駄ネッサもいない。邪魔する存在がいないこともあってか、完全にエミリーの覚悟がガンギマリだ。

 

 

 

「私、私ねっ。こうすけのことが、少し前からーー!」

「ちょまっ、エミリー、俺の話をーー!」

「あらあら。思春期真っ盛りって感じの子猫ちゃんね。可愛いわ♪」

 

 

 

 

 ビシッと、空気が凍りついた。

 

 

 

 至近距離から聞こえた、第三の声。

 ここにいるはずのない、この世で最も俺が好きなその美声を間違えるはずもなく。

 

 固まったエミリーとシンクロして、ギギッと錆びた機械のような動きで右を見るとーーソファの背もたれに美女が腰かけていた。

 

 

 

 凛々しくも愛嬌のある大人びた顔立ち。

 紺色の髪は美しく、冗談のように均整のとれた八頭身の肢体はさながら芸術品のよう。

 

 そこにいたのは、紛れもなく、他の誰でもなく。我が最愛の女性であるーー。

 

「ラナ!?」

「やっほーこうくん。会いにきちゃった」

 

 パチンと星が見えそうなウィンクを投げられて心臓に突き刺さる。

 

 俺の彼女相変わらず超可愛い。ってそうじゃねえ!

 

「ど、どうしてここに!? 日本にいるって話じゃ……」

「センセイ……いいえ、首領からちょっとした()使()()を頼まれてね。ちゃちゃっと終わらせて愛しのこうくんのところに来たのよ」

 

 言いながら、ラナは軽く腰を浮かせると片足で床を蹴り、軽々と体を浮かせて俺の膝の上に落ちてくる。

 

 反射的にエミリーをそっと元の位置に戻し、恋人を受け止めればにこりと笑って頬にキスされた。

 

「さっすがこうくん。素晴らしい抱擁だわ」

「お、おう」

「ーーッ!!?」

 

 嬉しいご褒美だが、流石に人に見られながらは恥ずかし………あっ。

 

「……コウスケ。ダレ、ソレ?」 

「ひっ」

 

 エミリーさんの瞳からハイライトが退勤してらっしゃるぅ!?

 

 地獄の底から響いてきたかの如く平坦で暗い声音に、本能的な恐怖が呼び起こされる。目の瞳孔開いてるんですけど。

 

「あら。自己紹介がまだだったわね」

 

 俺よりも先にラナが反応し、俺の首に回していた手を解くと足の上で姿勢を正す。

 

 

 

 そして、おもむろに取り出されるグラサン! 上半身で繰り出される香ばしいポーズ!

 

「我が名はラナ! ラナインフェリア=ハウリア! 北欧の地に囁かれし伝承の首刈り一族にして、影の牙たるアビスゲート卿の恋人! 今は同胞(はらから)たる少女よ、この名を心に刻みつけなさい♪」

 

 最後にちょっとグラサンをずらしてウィンクし、見事にはウリア流の挨拶が炸裂した。

 

 エミリーに渡したアーティファクトの効果が周囲の人間にも多少及んで良かったと思う。じゃなきゃ耐えられん。

 

「コイビト……恋人ぉ!?」

「どわっ」

 

 正気に戻ったエミリーが詰め寄ってくる。ガッと両手で腕を掴まれ逃げられない。

 

「こうすけ?! いたの!? 恋人が!?」

「あれ、言語理解の技能バグったかな……無理やり翻訳した英語みたいに聞こえる」

「答えて!」

「……まあ、うん。何度も話そうと思ったんだけども」

「うわぁぁあああんっ、こんな、こんなことってぇえええええっ」

 

 め、めちゃくちゃ号泣してる。

 

 なんでこういうのって最悪のタイミングでバレるんだろうな。いや悪いことしたわけじゃないけど、それでも申し訳ない。

 

「うぐっ、えぐっ。た、たとえ知ってても、絶対好きになってたけど……でも、あんまりよぉ」

「ふうん? そういうことなのね」

「え、ラナさん?」

 

 泣きじゃくってるエミリーに何かを納得したラナは、スッとサングラスを外す。

 

 そうすると完全に俺の膝から降りて、エミリーの肩に手を置いた。

 

「エミリーちゃん、で良かったわよね? ちょっとお姉さんのお話聞いてくれる?」

「な、なによぉ。釘を刺そうっていうの?」

「そうじゃないわ。ただ一つだけ聞きたいの。コウくんのことが好きなのね? 男の人として」

「……そうよ。好きよ。大好きになっちゃったわよ! ごめんなさい! ふぇえええんっ」

「ああっ、悪化した!」

 

 一体何をしたいのだと恋人を見ればウィンクが返ってきて、次の瞬間、驚くべきことが起こった。

 

 なんとラナがぎゅっとエミリーを抱きしめたのだ。

 

「よし! じゃあこうくんのお嫁さんになっちゃいましょう!」

「…………ほえ?」

「あのー。ラナさん? 一体何を仰ってるんで?」

「え? だからエミリーちゃんをゲットね!って話なんだけど」

 

 不思議そうに首をかしげるラナ。顔を引きつらせる俺。キョトンとするエミリー。

 

 ちょっとだけ流れていたもの哀しい失恋ムードがどっか吹っ飛んだ。俺はこめかみをグリグリする。

 

「……どうしてそういう結論になったのか聞いてもいいか?」

「だってエミリーちゃん、健気で可愛いし、仲良くできそうだもの。それにこうくん、いずれウチの一族の長になるでしょ? 後継ぎのことを考えたら、お嫁さんは最低7人くらいいなくっちゃ」

「あ、あとつっ!?」

「いやいやいやっ、前提がおかしいっ。俺、ラナ以外と結婚するつもりはないんだけど!?」

 

 いろんなものを打ち砕かれた気分だ。ラナと二人でおしどり夫婦とか言われるの夢見てたのに!

 

「こうくん。お嫁さんの多さは甲斐性の現れでもあるわ。転じてそれはカリスマにもなる。首領やボスにいつまでも必要とされるためには、強い長による一族の統率と繁栄が必須なのよ」

「ぐぅっ、既に俺がハウリアの長になることが決定路線になってるっ。そして地味に正論だっ」

「そ、そそそそんんなのダメよ! 不純だわ! やっぱり夫婦っていうのは、互いに最高のパートナーになれる二人だけが……!」

「あら。じゃあ諦めなさい。もし一人だけだと言うのならばそれは私以外にありえないもの」

「っ、そ、そんなのずるいじゃない! よりによって諦めるなんて……!」

「うふふ。本当に可愛いわねぇ」

 

 

 そうしてしばらく、俺達三人の馬鹿騒ぎが続くのだった。

 

 





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