シュウジ「シュウジだ。今回から坂みんに加えて、シアさんも参加するぜ」
シア「シア・ハウリアです!みなさんよろしくですぅ!」
龍太郎「なんだ、ウザくて騒がしそうなのが入ってきたな」
シア「な、なんですかこのクマみたいな人っ!」
龍太郎「誰がクマだケツの穴にツインブレイカーぶっ刺すぞ。で、前回はこのウザそうなウサギの依頼を聞いたんだな」
ウサギ「……………」
ユエ「………ウサギ?」
ウサギ「…なんか、あのうさぎこんごわたしのせわをしそうなきがする」
エボルト「なんじゃそりゃ。まあいい、今回はハウリア族を助けに行く話だ。それじゃあせーの…」
六人「「「「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」」」」
峡谷の中を、またハジメと並んでバイクで走っていく。ただ一つ先ほどと違うのは、シアさんがあっちのサイドカーにいることだ。
サイドカーはバイクの右側についているのだが、それを挟み込むように俺たちは並走している。
シアさんは当然こちらの世界の人間なので、バイクなんぞ知るわけがない。だから最初はビビってたものの、次第にはしゃいで立ち上がってウサギにかかと落としを食らってた。
完全に傍若無人(お前が言うな)ウサギの足置きにされたシアさんは、涙目になりながらもどこか安心したような顔をしていた。
きっとこれまで散々な思いをしてきたのだろう。俺たちはこの世界の人間と比べれば圧倒的強者。それと一緒にいれば安堵するのも当然だ。
「あの、これなんというものなんですか?さっきまでいっぱいいっぱいだったんで聞きそびれたんですけど、こんなに早く移動できるなんて……」
「あー、これはな」
ハジメがシアさんに魔力駆動二輪のシステムを説明する。エンジンのことはよくわかってなかったが、それ以外はわかったのか驚くシアさん。
他にも、自分やユエ、俺たち全員が魔物と同じように魔力を直接操れることも説明する。すると、シアさんはぐっと唇を噛みしめる。
「おいおい、どうしたシアさん?」
「あ、いえ……これまでずっと一人だったので、仲間がいるとわかって嬉しくて……」
そう言って涙ぐむシアさん。きっとこれまで魔物と同じ性質や力を持つことから孤独感を感じてきたのだろう。
唯一の救いは、家族がそれを受け入れ愛情を注いで育ててくれたことか。俺はむしろその力を利用され、道具にされたしな。
いや、むしろ追放されても一緒にいてくれるほど愛されていたが故に、〝他者と違う〟という孤独感が増したのかもしれない。
だが誰かがそばにいてくれる、あるいは同じような人がいるというのは、それだけで心の支えになるものだ。事実、俺もそうだった。
『お前はルイネやあいつらに救われたんだったな』
ああ。あいつらと出会って、暮らして、先代が俺なんかと一緒にいてとても楽しいと、幸せだといつも言っていた意味がよくわかった。
そしてそれは、今この瞬間でも言えることだ。両親と妹に始まり、ハジメ、雫、美空、白っちゃん、ユエ、ウサギ……皆、家族のように思ってる。
『なんだ、さっきまで散々ふざけてたのに神妙なこと言うじゃないの』
その中にはお前もいるからな、エボルト。
『……あーすまん、今一瞬考え事してたから聞こえなかったわ』
はいはい照れ隠し照れ隠し。
「お前もありがとな、ルイネ」
こんな俺を追いかけて、一緒にいてくれて。
「ふふ、こちらこそだ」
「あっれーわからないと思ったんだけどなー」
「言っただろう?少し見ればマスターの考えていることはわかる」
……はは。本当にいい弟子を持ったよ、俺は。
だがそんな俺と違って、ふと見てみるとユエは複雑そうな顔をしていた。魔力操作や固有魔法を持つという意味では一緒だが、彼女は誰もそばにいなかった。
むしろ誰よりも信じていた存在に裏切られ、三百年もの孤独を味わった。無表情になったのもそりゃ仕方がない。
「ユエ、気にすんな」
「……ハジメ?」
「今は、俺たちがいる」
しかし、俺が何かを話しかける前に頼れる我らが鬼畜主人公、ハジメさんがポンと頭を叩いた。わーおイケメン。
「……ユエ」
「ウサギ?」
それまで写真集を見ていたウサギが、ユエの方を向く。そしてふわりと微笑んだ。
「わたしは、ハジメがだいすき。でもおなじくらい、ユエもだいすき。だから、だいじょうぶだよ」
それだけ言うと、さっとウサギは写真集で顔を隠した。普段ユエ以上に無口でハジメ以外に無愛想なウサギがあんなことを言うとは。
ユエもぽかんとしていたものの、やがてニヤけるのを抑えているのか小さな口をムニュムニュとさせていた。百合の香りがするぜ……!
「まーそういうことだ。昔は違ったかもしれねえが、今は俺たちが家族だぜ。辛い時にゃ笑わせてやるから任しときな」
『右に同じ、だな』
「シュウジ、エボルト……」
「うむ、マスターの言う通りだ。我々はずっと一緒だ」
「ルイネ……ん。皆、ありがとう」
まるで花が咲くような笑顔を浮かべるユエ。どうやら体から力が抜けたようで、背中をハジメに預ける。
「……あのー、いい雰囲気のところ悪いんですが。私いるんですけど、忘れてません?ねえちょっと、ここはわたしにも同じことを言うべきではないでしょうか?私チョロインですよ?コロッといっちゃいm「……うるさい残念ウサギ」あべしっ!」
なにやら言いかけていたシアさんの脳天に、ウサギの踵が振り下ろされる。煙をあげるシアさんの頭。
散々雑な扱いをされた上に話の発端となったのにこの扱い、流石の俺でも不憫に思えた。まあそういうキャラだから是非もないよネ!
しかしすぐに復活したシアさんは、まずは名前を呼んでもらいますよお!と意気込みしていた。どうやら仲間を見つけたのがよほど嬉しかったようだ。
その後、シアさんが騒いであっちの三人のいずれかに制裁されるということを繰り返していると、不意に多くの気配を感じた。
「ハジメ、そろそろみたいだぞ」
「ああ、わかってる」
魔物と思しき咆哮と悲鳴に、俺たちはバイクのスピードを上げる。立ち上がっていたシアさんが慌てて捕まった。
周囲の景色を置き去りにして、ぐんぐん進んでいく。そして走ること数分、最後の大岩をドリフトして迂回する。
するとそこには、悲鳴や叫び声をあげながら逃げ惑う、魔物に襲われている数十人の兎人族が姿を現した。
まるでワイバーンみたいな飛行型の魔物から、岩陰に隠れて必死に逃げている。目視できるのと隠れている気配の数を合わせると、だいたい四十人程度か。
「ハ、ハイベリア……」
シアさんの震える声が聞こえた。あのワイバーンモドキは〝ハイベリア〟いうらしい。ハイベリアは全部で六匹はいる。
兎人族たちの上空を旋回しながら、まるで嘲笑うように鳴いている。完全に弱者相手に狩りをするハイエナだ。
そのハイベリアの一匹が、不意に行動を起こした。岩の間に隠れていた兎人族に急降下すると、空中で一回転し遠心力のたっぷり乗った尻尾で岩を殴りつけた。
ドゴォンッ!
轟音と共に岩が粉砕され、兎人族が悲鳴と共に這い出してくる。それにハイベリアは待ってましたと、大口を開けて襲いかかった。
狙われたのは大人と子供の兎人族。ハイベリアの一撃で腰が抜けたのか、動けない小さな子供に男性の兎人族が覆いかぶさって庇おうとしている。
「……で、ルイネ。準備は?」
「ーーもうできている」
俺の背後でバイクのシートの上に立ったルイネが、魔法でより集め形成した風の糸を引く。すると、襲いかかっていたハイベリアが不自然な動きで停止した。
その体にはルイネの風の糸が巻きついており、ギチギチと全身を締め上げて身動きを取れなくしている。他の五匹のハイベリアも同様だ。
「ハッ!」
ルイネが一声上げるのとともに、腕を振るってハイベリアをひとところに集める。その瞬間、俺はハイベリアに右手を向けた。
ズズ……………
すると、俺が手をかざした進路上、つまりハイベリアたちに向けて空間に黒い穴……小型のブラックホールが出現する。
凄まじい吸引力を持つそれは、動けないハイベリアたちを飲み込み消滅させた。断末魔の声が消えるのとともにブラックホールが閉じる。
これはこのロングコートの能力で、着ている間魔力を使ってブラックホールを生成できる。なんか完成させたら勝手に付与されてた。
『そりゃ人のローブ剥ぎ取ってまで作った代物なんだ、それくらいの力ついてなきゃ俺がキレるわ』
エボルトもしかして怒ってる?
『むしろ怒らないわけなくね?』
そりゃそうだな。さーせんっしたー。
『うっわ適当、声から顔まで何もかも適当』
ともかく、兎人族たちを殺しかけていたハイベリアは排除した。呆れたように笑っているハジメと目配せし、バイクを動かす。
ギャァ!
だがその瞬間、絶壁の陰からもう一匹ハイベリアが飛び出した。やべっ、もう一匹隠れてたのか!
「あっ!は、ハイベリアがもう一匹……って、え?」
シアさんの不思議そうな声に、後ろを振り返る。するとサイドカーの上で立ち上がったウサギが、今にもシアさんを投げようとしているところだった。
「あ、あの、ウサギさん?なんで私持ち上げられて……」
「……とりになってこい」
「うにゃぁああああああああっ!?」
そして投げ飛ばされるシアさん。呆然としていた兎人族の皆さんが、シアさんだと気づいたのか「シア〜〜〜〜〜っ!?」と目を剥く。
そんな家族に見守られ(?)、結構な速度で飛んでいったシアさんはハイベリアに激突し、逆さまになって落ちていった。
ドパンッ!
そして、予想外の攻撃にふらふらと飛んでいるハイベリアの頭をハジメが撃ち抜く。絶命して落下するハイベリア。
もはや見慣れてきた落下するシアさんを、ルイネが風の糸で捉えて引き寄せる。そのままサイドカーに投げた。
「うにゃぁああ!」
「………」ゲシッ
「はきゅんっ!?」
そして、すでに写真集を読みながら座ってるウサギに蹴られて地面に落ちた。どこまでも雑な扱いなシアさんであった。
『そこに痺れる憧れるゥ!』
いや憧れないっす。
「うう〜、さっきから私の扱いがひどいです!待遇の改善を要求します!」
「………」
すぐに復活して騒ぐシアさんをがん無視するウサギ。だが少しするとうるさかったのか拳で黙らせた。沈むシアさん。
苦笑しながら近づくと、「私も大事にされたいですー……」とつぶやいているのが聞こえた。ほぼゴミ同然の扱いだからなぁ。
しかし大事にされたいとは、俺たちにそれなりの信頼を置いているらしい。絶望の淵から救ってもらった吊り橋効果的なのもあるんだろう。
「シア!」
度重なる非道な行い(八割がた俺たち)にもうほとんど衣服が残ってないシアさんにタオルをかけていると、兎人族が近づいてくる。
走り寄ってきたのは濃紺の短髪のおっさんだった。ウサ耳つけたおっさんとか誰得だよ。一部の安倍さんにしか需要ないだろ。
『いや安倍さんでも引くんじゃね?』
「父様!」
「無事だったのか、よかった……!」
ひしっと抱き合うシアさんとお父さんらしきウサ耳のおっさん。親子の感動の再会だ、感動的だな、だが無意味じゃない。
しばし泣きあった二人は(その間ルイネと変顔対決してた)少し話すと立ち上がって、おっさんの方が畏まった姿勢になる。
ハジメだとすげえ殺伐とした会話になりそうなので、俺が一歩前に出て代表として話すことにした。さすが俺マジイケメン。
『自画自賛乙』
「シュウジ殿、でよろしいですか。私はカム、ハウリア族の長です。此度はありがとうございました、シアのみならず我々まで助けていただいて。しかも脱出まで助力してくださるとか……」
深々と頭を下げるウサ耳おっさん改めカムさん。後ろのハウリア族の一同も同様に頭を下げる。
「いいっていいって、気にすんなよ。そのかわり樹海の案内よろしくな?」
「はい、それはもちろん。受けたご恩は必ずお返しいたしましょう」
にこやかに笑うカムさん。うーん、確か亜人は被虐種族だったはずだが。
その中でもダントツに弱かったら、より一層警戒は強そうなものなのに、こうもあっさり信用されるとは。
しかも元を辿れば、この峡谷に追い詰められたのだって帝国の兵士……つまり人間のせいだ。むしろ恨みそうなものだけどねぇ。
「そんなに簡単に信じてもいいのかい?」
「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」
「うーんむしろ珍しいくらいお人好しだったわ」
苦笑するカムさんに、俺もまた苦笑い気味の顔で答えた。ちょっと危機管理能力が心配になるレベルだ。
「大丈夫ですよ父様、あそこにいるハジメさんは平然と女の子殴るし対価がないと動かないし、シュウジさんも見てるだけだしふざけてばかりですけど、約束は必ず守る人たちです!」
「はっはっはっ、つまり照れ屋な人たちなんだな」
すっげえポジティブに捉えるカムさん。やべえ、この人たち思ってた以上のお人好しだわ。詐欺に引っかかるどころかホイホイ出て行って人攫いに捕まる勢いだわ。
ていうか背後でハジメがドンナー抜いてるのがわかる。結構ボロクソ言われてたのが気に食わなかったんだろう。
「……ん、ハジメは(ベッドの上だと)照れ屋」
「ユエ!?」
「そうだね、ハジメ、〔ピッー〕するとすごくはずかしがるもんね」
「ウサギアウトォ!?それアウトォ!?」
しかし、ユエとウサギによって発砲は抑えられた。代わりにハジメの性癖の一部が露見された。ほら、ハウリア族の女性の方々がモジモジしてるでしょ。
まあそんなこんなでグダグダとしながらも、いつまでも同じところに留まっていてはまた魔物が集まってくるので出発する。
そうしてハウリア族を助けた俺たちは、ライセン大峡谷の出口を目指すのであった。
〜〜〜
オマケ その1
道中の会話
シア「ユエさんも助けてくれてありがとうですぅ〜!」頭ナデナデ
ユエ「……子供扱いしないで。私の方があなたより遥かに年上。呼び方も包容力のある大人の女性にふさわしい呼び方をするといい」キリッ
シア「んー、わかりました。考えておきます」
そしてハウリア族合流後
シア「皆さん、私を助けてくれたうちの一人のユエママです!」
ユエ「!?」
ハウリア族1「おお、ママ!」
ハウリア族2「ユエママ!」
安倍さん「ママン!」
シュウジ「うわぁ地獄絵図」
そのあと実力行使でやめさせたとかなんとか
ククク、こいつらをアレにするのが楽しみだぜ……
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