シュウジ「どうもシュウジだ。前回はハウリア族を助けたんだったな」
ハジメ「おう。そこの残念ウサギは最後まで残念ウサギだったがな」
シア「うう、ひどいですよウサギさぁん!」
ウサギ「………」
ユエ「…無視されてる」
エボルト「ウサギはシュウジと同じくらいわが道を行くな…で、今回は帝国兵との遭遇だ。それじゃあせーの…」
六人「「「「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」」」」
峡谷の中を、今度はシアさんだけでなくシルバニアファミリー(違う)とともに進んでいく。
明らかに弱そうなウサギたちを魔物が獲物と定めて襲ってくるが、そこは我らが(鬼畜)ヒーローハジメマンがすぐに撃ち殺す。
そうでなくてもユエやルイネなど、頼れるマイファミリーが迎撃しているのでなんの問題もなく峡谷を進んでいた。
そんな彼らを見て、大人のシルバニアファミリーは畏敬の念のこもった目を、子供たちはヒーローを見る目で見ていた。
ちなみに俺は、主にその子供たちの相手をしてます。なぜかシアさんが引いてるサイドカーに乗ったままのウサギにも群がってるけど。
『ああ〜心がぴょんぴょんするんじゃあ〜』
わかりみだわ〜
「ったく、しつけえ奴らだな」
「うふふ、ほらほらハジメさん、子供たちが手を振ってますよ?振り返してあげたら「ドパンッ!」あふんっ!」
またしても上空から襲ってきたハイベリアを撃ち殺したハジメにシアさんが話しかけ、ゴム弾で鎮圧されていた。しかもサイドカーが止まったのでウサギがイラッとしてる。
言い忘れてたけど、ウサギは身内と認めた人間には大天使だけど、心を許してない、あるいは関心のない人には見ての通り雑な扱いをする。
『仕方がねえな、あの残念ウサギ阪神ファンだから』
なんでや!阪神関係ないやろ!
「誰がそんなことするかボケ」
「ほらほらハジメ、そんなこと言わずにこっち来いよ」
「おい公園にある子供に占拠された週末のジャングルジムみたくなってんぞ」
現在、俺に張り付いてるミニウサギの総数は十二匹。重くないよ、重くない(震え声)
なお、地面に沈んだシアさんをみてカムさんは「そんなに懐いてるとは、父は嬉しいやら寂しいやら……ああ、これが子離れしていく気持ちか」とか言ってる。
『こいつらの危機管理能力マジパネーイ』
どっかの銀河最強の筋肉バカが出てきそうだな。
つーか、危機管理能力が薄いっつーよりは天然が入ってる感じ?兎人族全体がどうかは知らんが、同じような反応してるあたりハウリアは手遅れだ。
ていうかこんなんで仲間どうしで争ったとき、いったいどんなことになってるのやら。そこんとこちょっとカムさんに聞いてみよう。
「なーカムさん、あんたら喧嘩したときどうしてんの?」
「ああ、それは……」
突如、カムさんがズボンを脱いだ。流石の俺もその行動は想定外っつーかポルナレフ状態というか、とにかく硬直する。
見れば、振り返っているハジメもぽかーんとしている。ユエとルイネもぽかーんとしてる。エボルトはきっと悪人ヅラしてる。
「いやなんで脱いだん?ねえなんで脱いだん?」
「ほっほっ、我らは喧嘩した際は暴力ではなく、尻尾のキューティクル具合で勝負をつけるのです」
「モフモフでつやつやの方が勝ちなのー!」
俺をジャングルジムにしてるチビウサギの一人であるリコちゃん(仮称)がカムさんを細くするように大声で言う。み、耳が……
思わず耳を抑えているうちに、ウサ耳おっさんは下着を中途半端に脱いでケツを晒していた。つーか尾てい骨にあるウサ尻尾を出してた。
「これでも私、尻尾のキューティクル具合では一族で最高だと自負しております」キリッ
「お、おう……」
「シューにーちゃんはどの尻尾が好きなのー?」
カムさんを皮切りに、どんどんパンツを脱いでケツを晒していく子供達。程なくして俺はケツスパイラルに飲み込まれた。
「アイルビーバック……」「マスター!?」なんて子供のケツに飲み込まれながら親指を立てる。ハジメが嘆息する声が聞こえた。
自分は関係ないですよ的な反応をするハジメにちょっとイラっときたので、巻き込んじゃおう。他意はないゾ★
『むしろ悪意しかない件』
こまけぇこたぁどうだっていいんだよ!
それじゃあ早速……
「そういやハジメウサギの尻尾が好きって」ボソッ
「あっテメコラ、そんなこと言ったら……」
「ほほう!?」ズイッ
「うおっ!?ケツを近づけるなオッサン!」
「ハジメ殿はどの尻尾が好みですかな!?」
「「「キューティクル!キューティクル!」」」
「う、うおおおおおお!?」
俺とは正反対にオヤジのケツスパイラルに飲み込まれるハジメ。はっザマァねえな!ワロリンゴw
結局全員のケツにハジメのゴム弾が撃ち込まれたことで収集し、また行進し始めた。聞いて驚け、これで1時間無駄にした。
いつも通りバカ騒ぎしながら進むことしばらく、ようやく峡谷の終わりが見えてきた。遠目から絶壁の上へ登れる階段が見える。
実際に近づくと、それは一定の長さで反対方向に折れて積み重なっている構造の階段だった。さっきうっすらとこれの向こうに樹海が見えた。
「長かったなぁ」
『なおその間ほとんどふざけていた件について』
仕方がないだろ、ギャグ次元ニキがそうしろって言ったんだから。
「帝国兵はまだいるでしょうか?」
エボルトと会話していると、シアさんが俺たちに不安そうな面持ちで聞いてきた。ま、話を聞く限りすごい辛い目にあったみたいだしな。
試しに探知魔法を使って半径1キロ圏内の、俺たち以外の生物を探知する。すると人間と思しき集団が壁の向こうにいた。
「うーん、簡潔に言うといる」
「っ……そう、ですか」
「まあ、安心しな。約束通りちゃーんと守ってやるからよ」
「そ、それは助かるんですが……その、敵対してよろしいんでしょうか?」
「どう言う意味だギャグウサギ?」
シアさんの言葉にハジメが反応して聞き返す。こんな状況でも名前を呼ばないあたり杜撰な扱いと感じる今日この頃。
『いやあの勇w者wに対してのお前の方が酷いから』
ぼくこどもだからなんのことかわかんなーい。
「だ、だって相手は人間ですよ?これまで倒してきた魔物とは違って、同じ種族……それでも敵対するんですか?」
「いやお前、俺たちが帝国兵と敵対するところ見たんじゃないのかよ」
「は、はい、それはもうバッチリと。シュウジさんが全員血祭りにあげるのをはっきりとこの目で見ました」
「え、俺なの?」
「だったらなぜ疑問に思う?」
「あっ安定のスルーですねはい」
少し躊躇にした後、シアさんはそれが疑問ではなく確認だと言った。自分たちを守ることは人間と敵対するも同義であると。
まあ、この世界での亜人の立場は良くて愛玩奴隷、悪くて獣のなり損ないの人間モドキ。中には亜人を狩る人間だっていると聞いた。
そんな亜人を、大国の兵相手にかばう。なるほど、確かにそれは人間と敵対するのと同じ意味になるな。
それをわかっているのだろう、シアさん同様ほかのハウリア族も同じ顔をする。子供達も空気を機敏に察して口を噤んだ。
だが……
「それがどうかしたのか?」
「え?」
「シアさん、俺たちは別に人間と敵になる……まあ素直にいやあ、殺すことになんの疑問も抱いてないぜ?」
「ど、どうしてですか?同族なのに……」
「そんなん決まってんだろ。必要なことだからだよ」
そもそも、彼女らを助けたのはルイネの頼み以前に、樹海の案内役をさせるという名目があったから。
つまり、樹海の案内が終わるまでは俺たちが彼女らを守る義務があるわけだ。そのために必要なら人を殺すことも普通にやろう。
冷酷といえばそれまでだが、あいにく俺を含めここにいる誰一人として、敵にまで温情をかけるような甘ったれた考えを持ってる人間はいない。
『そんなやつだったら、俺はお前をひっぱたいてたよ』
だろうな。そういうのはあのバカ勇者だけで十分だ。
必要だから人を殺す。その点において、俺はこの場にいる誰よりもずっとその意味を、重要性を知っている。
当たり前だ、でなきゃ一千年も世界のために暗殺者なんざやってない。それがただ自分たちのために置き換わっただけである。
殺すことで救える命がある。今回の場合、それはシアさんたちハウリア族に該当する。それならそこに迷いはない。
そこらへんのことをかいつまんで説明する。あ、もちろん暗殺者云々のことは子供がいるから省いたよ★
「まあ長々と説明したが、要するに何が言いたいかというと、俺は帝国兵で焼肉パーティをする(真顔)」
「せめてこんな時くらい最後までシリアス通せや」
「な、なるほど……」
「はっはっはっ、シンプルで良いですな。樹海の案内はお任せくだされ」
にこやかに笑ったカムさんが答えた。どっかのアホみたいに下手な正義感を出すよりギブアンドテイクのほうが信頼できるってもんだ。
話もひと段落ついたところで、階段を上る。しばらく飲まず食わずの割に、案外ハウリア族の足取りは軽かった。
そして、最後の階段を登りきる。するとその向こうにいたのは……
「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~。こりゃあ、いい土産ができそうだ」
事前に探知した通り、三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。
全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、俺らを見るなり驚いた表情を見せた。
だがそれも一瞬のこと、目の前で聞いてるってのに捕らえて女で楽しむだの高値で売れるだの、胸糞悪い話をしやがる。
「………マスター?」
「なんですか、ルイネ」
「!……いや、なんでもない」
気がつけば、勝手に技能が発動して〝俺〟は〝私〟になっていた。ルイネが息を飲んだ後、引き下がる。
回帰した途端、それまで〝俺〟が感じていたものがさらに強まった。誰かが囁きかけてくる、目の前の〝悪辣な悪〟を殺せと。
「はは……あん? 誰だお前ら、人間か?」
静かに殺意を滾らせていると、シア・ハウリアを欲しがっていると話していた小隊長と呼ばれる男が私たちに気づいた。
「ええ、人間です」
「シュウジ、お前……?」
ハジメが出る前に、私が一歩前に出て話をする。私の口調に驚いたハジメにアイコンタクトを取り、小隊長の方を向いた。
「はぁ~?なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ?しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か?情報掴んで追っかけたとか?そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」
勝手に推測し、勝手に結論に達した〝暗殺対象〟は、そう言って剣の切っ先を向けてきた。自分が上位者だと思っているのだろう。
「はぁ……全く、これだから程度の低い対象は困る」
「………あ?」
「頭も悪ければ性根も悪い。あまつさえ自分と相手の実力の差を見すらしない。反吐が出ます」
「……テメエ、調子に乗ってんじゃねえぞ」
殺気立った〝暗殺対象〟が、剣を構える。後ろの有象無象も同じように武器を構え始めた。
「この程度で感情の制御を怠る……本当に質の悪い。これではアレも貯まるかどうか…」
「ああ!?何をブツブツ言ってやがる!」
痺れを切らした様子で怒鳴る対象に、私はスッと目を細める。そして最後の言葉を投げかけた。
「最後の言葉を思い浮かべなさい」
「なんだと!?」
「はやくしなさい、でないとーー」
トンッ。
「ーー眠ってしまいますよ」
「え、あ……?」
瞬間移動し、人差し指の先を額に置いた対象は、間抜けな声を上げた後ぐるりと目玉を回して地面に倒れた。
呆然とする部下たちの前で、じわりと対象の額に赤い内出血のシミが浮かび上がる。きっと中身の脳は弾けていることだろう。
威勢の割にあっけなく死んだ対象に、私は〝暗器創造〟の魔法を使う。すると死体がねじれ、潰れて、おぞましい色の棘のついた細剣になった。
一体何が起こったのかわからないという顔の兵士たちに、細剣を握った私は高速移動して姿を消す。そして兵士の一人の背中に回って胸を貫いた。
「ガッーーッ!?」
ビクンッと体を震わせて、自分の胸に刺さったものを見下ろす。それは肉と骨、鉄の混じった棘付きの細剣。
なにか兵士がする前に細剣を引き抜き、さらに移動。兵士の間を縫うように移動しながら頭を一突きして絶命させる。
「こんなものですか……」
「ば、化け物がぁああああぁあ!」
1分もかからず、十人の兵士が血の海に沈む。姿を現した私に、表現不能な叫び声をあげて兵士が切りかかってきた。
グリンッ
「かぺっ?」
だが、次の瞬間には頭が百八十度回転して倒れ込んだ。後に続いていた兵士の表情が凍りつく。
それに構わず、私は兵士の首に巻きつけていたもの……殺した兵士たちの背骨を溶接して作った鞭を解いて振るい、また一人打ち殺した。
「た、隊列を整えろ!」
「遠距離からの魔法ですか……良い手ですが、いささか遅い」
鞭に〝暗器創造〟を使って棘付きの槍にすると、呪いをかけて手をかざす兵士たちに向けて投擲する。
するとまず一人の兵士を貫いた槍は、まるで自分の意思を持っているかのように飛び回って兵士たちを殲滅していった。
最終的に残ったのは、一人の兵士だけであった。それ以外は全員槍に、あるいは私の振るう細剣に貫かれて死んでいる。
「ひ、ひいっ!?」
情けない悲鳴をあげ、腰を抜かして地面に座り込む兵士。それに左耳に髪をかけながら歩み寄る。
仲間たちの死体を見回して絶望していた兵士は、私が近づいてくるのを見ると悲鳴をあげて後ずさった。細剣を投げ、背後に落とすことで止める。
「ひぁっ!」
「動かないでください」
奇妙な声を漏らす兵士の頭に手を当て、解析魔法を使って記憶を読み取る。探すのは捕らえられた兎人族の行方だ。
すると、少ししてヒットした。売れそうにない老人や醜いものを殺し、後を馬車に詰め込んで移送する記憶が流れ込んでくる。
「なるほど……」
「た、頼む、殺さないでくれ!なんでも話すから!」
「いいえ、その必要はありません」
先ほど記憶を読み取った時点で、帝国の情報など使えそうなものは全て閲覧している。
どうやらこの兵士たちは精鋭の中でも上級だったようで、様々な情報を手に入れることができた。
故に、この兵士はもう用済みである。
「では、おやすみなさい」
「し、死にたくなーー」
トン、と兵士の顎に指を当てる。軽い衝撃が走った後、兜に隠れた頭頂部からドロリと血が流れ落ちてきた。
ドシャリ、と崩れ落ちる兵士。しゃがんでいた体制から立ち上がると、丁度そこで回帰の効力が切れた。
「ん〜、お仕事終わった〜」
『どっかの社畜かお前は』
手の中にある気色の悪いもんをブラックホールの応用で消滅させて伸びをしていると、ハジメたちが近づいてくる。
ハジメとユエはやれやれといった顔を、ウサギはいつも通り写真集を読み、ルイネはさすがマスターと言わんばかりに頷いている。
そしてその後ろにいハウリア族の皆さんは、完っ全に俺に引いていた。まあ人間で暗器作ってたりしたもんなぁ。子供は特に怯えちゃってるし。
『これがほんとの武器人間、なんつってw』
笑えねー。
「よーハジメ、調子はどうだい?」
「やあボブみたいなノリで話しかけてくんな。良いとこもってきやがって」
「さすが俺、華麗な戦いだったろ?」
「過激の間違いじゃないのか?」
「あ、あの……」
「ん?」
おずおずと歩み寄ってきたシアさんに向き直る。シアさんはちょっと悲鳴をあげた後、言葉を発した。ちょっとショック。
『自業自得だな』
「最後の人は、見逃してあげても良かったのでは……」
「……うーん」
お人好し度マックスな発言をするシアさんに、流石に俺は渋い顔をした。これはいくらなんでも優しすぎる。
「シアさん、一つ教えてやるよ」
「お、教え?」
「悪は悪でしかない。どんなに惨めな姿を晒そうと、弱っていようと、それに同情するのは悪に加担するのと同じことだ」
だからこそ、俺は天之河光輝が嫌いなのだ。くだらない正義ごっこで悪を見逃し、さらに悪を増やし続ける。それは立派な悪だ。
絶対悪にして必要悪だった俺にとって、〝悪辣な悪〟の次に許せないのはそういう〝悪を生み出す無自覚な悪〟である。
悪は裁かなければいけない。命の瀬戸際でどんな行動をしたって、そいつの罪は消えたりしない。
だから俺は、目の前で何をしようとも悪である限り、容赦なく殺す。
「そ、それは……」
「そもそも、一度殺そうとしてきたのに殺されそうになったら助けてくださいなんて虫のいい話だろ?」
「う……」
「シュウジ殿、そこまでで。何も、我々はあなたを攻めたいわけではない。ただ少し、こういうことに慣れていないが故に驚いただけなのだ」
シアさんの前に出たカムさんに、後ろのハウリア族の皆さんもバツの悪そうな顔をする。ま、俺も説教をしたいわけじゃない。
なので早々に話を終え、無事だった馬車をバイクと連結してハウリア族を乗り込ませ、足を確保した。
そして、殺した兵士たちの死体は……
「よし、皆乗り込んだな。それじゃあ……食え」
バクンッ!!!!!
命じた瞬間、得体の知れない巨大な何かが現れ地面ごと死体を飲み込んだ。そうすると影に沈むように地面の中に消えていく。
固まっているハウリア族の皆さんにまーた怖がっちまったかなーと思いながら、ハジメに声をかけて出発する。
そうして、俺たちは樹海へと向かったのだった。
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