龍太郎「どうも龍太郎だ。おお、俺のイラストか!どれどれ…」
シュウジ「へえ、割といい感じだな。んで、前回は俺が帝国兵を殲滅したんだったな」
シア「あの最後のやつ、なんだったんですか?なんか結構グロテスクな感じの見た目でしたけど…」
ハジメ「ああ、あれウサギの前に作られたホムンクルスの実験台らしいぞ。手なづけて持ってきたんだと」
ルイネ「うむ、さすがはマスターだ」
シア「ええっ!?」
エボルト「俺も最初は驚いたぜ。で、今回は樹海への道での話だ。それじゃあせーの…」
六人「「「「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」」」」
俺、南雲ハジメは七大迷宮の一つ、【ハルツィナ樹海】に向かってバイクを走らせている。背後に牽引するのは大型の馬車二つ。
最初は数十頭ほど馬もいたのだが、シュウジのやつがアレに帝国兵もろとも間違って食わしてしまった。コブラツイストしといた。
そのシュウジは馬車の中で、チビウサギどもの相手をしてる。あんだけ怖がられてたのに子供が群がってるあたり、あいつは上手い。
対するバイクの上には俺の他にユエ、そしてサイドカーに大天使ことウサギとなぜか断固としてこちらにいることを主張した残念ウサギがいる。
当然ユエが何度も蹴り落としたが、ゾンビのごとくリスポするので諦めてウサギの足置き台になってる。ウサギ可愛い。
まあ、これまで一人だったから〝同類〟である俺らと何としても仲良くなりたいのだろう。こっちにその気は毛頭ないが。
「ハジメ」
背後から聞こえてくるシュウジとチビウサギどものカエルの合唱にイラッとしていると、不意にユエに名前を呼ばれる。
「どうしたユエ?」
「ん、なんか物思いにふけるような顔してたから」
「ああ、それはな……」
少し前まで考えていたことを、ユエに話す。実は先ほど、シュウジが一人逃した……いや、あえて逃したのだろう帝国兵を一人撃ち殺していたのだ。
その理由は二つあり、一つ目は〝纒雷〟の実験をするため。迷宮の魔物はともかく、人間相手にアレはオーバーキルだ。ボトルなんて論外である。
そんなものを街中でぶっ放した場合、間違いなく大被害になる。流石の俺でも、なんの罪もない人間を巻き添えにはしたくない。
結果は上々。一度しか試すことはできなかったが、シュウジとの訓練のおかげでそこらへんの威力調整は一回で感覚を掴めた。
そしてもう一つは、人を殺すことに戸惑いを覚えないかどうか。これに関してはシュウジを見ているからか、全く何も思わなかった。
代わりにあったのは、敵であれば殺す。迷宮で作り上げたその信念だけだった。これならもう心配はない。
「ま、そういうことだ」
「初めてだったんですね、ハジメさん」
「のわっ、聞いてたのか」
身を乗り出してきた残念ウサギに、思わず驚く。すぐにウサギに蹴られて足置き台に戻っていた。もはや見慣れてきたな。
「あいたた……」
「どうして初めてじゃないと思ったんだ?」
「その、あまりにも容赦がなかったので……それにほら、シュウジさんはアレでしたし…」
「ああ、そういうことか。確かに俺は初めてだが、あいつは違うぞ。むしろ数え切れないくらい殺してる」
「えっ?」
どういうことですか?といった顔をする残念ウサギに、しまったと思った。別に答えなくてもいいことに答えてしまった。
ちらりと、後ろの馬車の中にいるシュウジを見る。すると聞き耳を立てていたのか、シュウジはひらひらと手を振った。
本人がいいって言ってんなら別に話してもいいか。まあ樹海までもうしばらくかかる、その間の暇つぶし程度に話そう。
そして俺は、残念ウサギにシュウジから聞いた前世について大まかに説明する。操り人形だったこと、〝世界の殺意〟として千年もの間暗殺者をしていたことなど。
それを聞いた残念ウサギは驚いたり怒ったりと、まあコロコロと表情を変えた。そういえばあの漫画雑誌昔よく買ってたな。
「とまあ、そんなとこだ……って、どうした?」
話を聞き終えた残念ウサギは、なにやらグスグスと泣いていた。
「ぐすっ、だって酷いですぅ〜!生まれた時から心を奪われて、人殺しの道具にされて〜!」
「……まあ、今の本人はあんな感じだけどな」
また馬車の中を見ると、なぜか「ゲッツ!」とか「コマネチ!」とかポーズとってた。いちいち無駄に衣装チェンジしてる。
特異な力を持つものが選べる道は、この残念ウサギのように排除されるか、あいつのように利用されるかのどちらか。
同じように辛い道を辿ったものとして、共感でも覚えたんだろう。出会って間もないのに、お人好しな残念ウサギだ。
それにしても改めて思ってもそんな過去を持ってるやつがあんなのになるとかやべえなとか思ってると、残念ウサギが意を決したような顔をして喋る。
「あ、あの、できればお二人やウサギさんのことも教えてくれませんか?」
「……なぜ?」
「あ、いやその、シュウジさんの話を聞いて、他の皆さんはどのような感じなのかなー、なんて」
「……まあいいか。暇つぶしの延長で話してやるよ」
そう言うと俺は語り出す。裏切られて奈落に落ちて、ウサギやユエと出会い、そして今現在に至るまでの経緯を。
自分で話してみて、俺ってなんでこんな理不尽な目にあってんだ?と思った。シュウジじゃないが、いずれぶつかる神は必ず殺してやる。
んで、それを聞いた残念ウサギの反応は……
「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、みなさんがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんで恵まれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」
案の定、滂沱の涙を流して号泣していた。鬱陶しいと思いながらも、自分が話したことなのでなんとも言えない。
っていうかどさくさに紛れて涙やら鼻水やら人のコートで拭いてくれやがったので蹴り飛ばした。サイドカーの中でひっくり返る。
「ったく、あつかましいウサギめ……」
「お二人共、私決めましたよ!」
「うおっ!?」
いつもなら待遇を改善しろだのなんだのと騒ぎ立てる残念ウサギは、まるでビデオを巻き戻すような動きでキラキラとした目を向けてきた。ホラーか!
「私、皆さんについていきます!遠慮はいりません、私たちは同じ仲間なのですから!」
「「だが断る」」
「相変わらずの清々しい即答っぷりですねぇ!?」
すぐさま断った俺とユエにツッコミを入れる残念ウサギ。むしろなぜ連れて行くと思ったのか。
「……私たちに守られてるくらい弱いのについてくるなんて、ハジメたちに迷惑がかかる。だからダメ」
「う、ウサギさんまで……」
オロオロとする残念ウサギ。だがその目には、何としても俺たちについてくるという意思がうかがえた。
少し考えれば、すぐにその理由に思い当たる。そして深く嘆息し、残念ウサギに向かって話しかけた。
「要するにお前、旅の仲間が欲しいんだろ」
ビクッと体を震わせる残念ウサギ。どうやらビンゴだったようだ。
察するに、こいつはハウリア族の安全が確保でき次第自分は離れて行くつもりだったのだろう。また、新たな災いを呼び寄せないために。
で、そこに異端という意味で〝同類〟である俺たちがタイミングよく現れた。だから守られた恩返しにかこつけてついて来ようって魂胆だろう。
ユエとウサギにしか興味のない俺がいうのもなんだが、客観的に見てこいつの容姿はかなりのレベルだ。さらにこの髪色、ひとり旅は到底不可能だろう。せいぜい奴隷にされるのがオチである。
最悪ひとり旅も考えていたんだろうが、それではあのバカみたいなお人好しどもは追いかけてくる。だが、俺たちについていけば納得できるだけの理由ができるわけだ。
まあ、そこに単純な俺たちへの興味もあるのかもしれんが、そこらへんはどうでもいい。なにせ連れてく気がないからな。
それをつらつらと説明すると、最終的にミッ◯ィーみたいな口になった残念ウサギは黙り込んだ。何から何まで図星かよ。
「別に責めてるわけじゃない。むしろ賢明な判断だ。だが、こちとら七大迷宮を攻略する旅なんだ。お前はお荷物にしかならん」
「うっ………」
自分の非力さは痛いほど理解しているのだろう、残念ウサギはバツの悪そうな顔をする。
結局残念ウサギはそれきり一言も喋らず、落ち込みながら何事か考えていた。早々に興味をなくし、運転に集中する。
そして数時間ほど走らせ、ついに【ハルツィナ樹海】の前へと到着した。馬車からハウリア族どもが降りてくる。
「はーい、皆整列してねー」
「「「はーい!」」」
一緒に降りてきたシュウジは、なんかやたらチビウサギどもに懐かれていた。その横にいる幼稚園児くらいの少女が点呼を取ってる。
魔力駆動二輪をしまって近づいて見ると、それは某働くなんちゃらの血小板だった。ただし目が赤い。
「おい、何やってんだエボルト」
「おおハジメか、こっちのほうが馴染みやすいだろ?」
ニュッと顔だけブラックホールフォームにして振り返るエボルト。幼女の体に仮面が乗ってる姿はものすごくシュールだった。
「なーぜかうーえだけー」
「それ俺も思い浮かべたわ……ってそうじゃねえ、さっさと点呼取れ」
ランラララッとテンポを取るシュウジにそう言って、ハウリア族を集合させる。すると族長のカムが進み出てきた。
「ハジメ殿、樹海に入ったら我らから離れないように……」
「待て、その前にその出したままの半ケツをしまえ。もう一発ゴム弾食らわしてやろうか」
「おっと、これは失礼。馬車の中で磨いた我が尻尾を見てもらおうと思いまして」
「お前は俺にトラウマを植え付けたいのか?」
ドンナーをちらつかせながらズボンを履かせる。まったく、こいつらハウリア族じゃかくてアホリア族なんじゃねえのか。
〝宝物庫〟に馬車をしまい、俺たちを中心としてハウリア族が固まって樹海へと入る。なお、エボルトはまだ血小板のままだった。
目指すは樹海中央にそびえる大樹。なんでもハウリア族を含めた亜人族の中では〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないとか。
なぜそこを目指すかというと、最初はこの樹海そのものが迷宮かと思っていたのだが、それではあのレベルの魔物相手にこいつら亜人族が生きているはずがない。
ならばオルクスの迷宮のように、他に〝真の迷宮〟への入口があるのでは?と考えたのだ。そこに樹海の中に立つ大木、怪しさ満点ではないか。
なので、まずはそこへと向かう。それを伝えるとハウリア族たちは頷いた。
「皆さん、できる限り気配は消しもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」
「ああ、承知している。俺たち全員、ある程度は隠密行動はできる」
「ん」
了承の意を返して〝気配遮断〟を使う。隣にいるユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。ウサギも俺から伝えると気配を完全に消す。
「ッ!?これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」
「ん? ……こんなもんか?」
「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」
苦笑い気味に笑うカム。兎人族の唯一の武器は隠密能力と聴覚による索敵と言っていたから、その自分たちがわからないとなればそういう顔もするだろう。
「あれ?そういやシュウジは……」
「呼んだか?」
突如、ふっと目の前にシュウジが現れる。猛特訓のおかげで半径五メートル内に気配があれば気づくのだが、まったくわからなかった。
まあ、こいつは前世は世界最強の暗殺者だ。俺たちの中で誰よりもそういうのはうまいだろう。それはルイネも同様だ。
とにかく、ちゃんと気配を消せるということでシュウジが頭だけブラックホールの血小板エボルトを吸収し、移動を始める。
暫く、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。現在位置も方角も完全に把握しているようだ。
聞いたところによると、理由は分かっていないが亜人族は亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。
道中幾度か魔物に襲われながらも、ことごとくたやすく撃退していく。迷宮の魔物に比べれば雑魚だった。
「ハニートラップ」
「プリンセス」
「酢飯」
「シンガポール」
「ルート」
「どうしてこうなった」
「大丈夫だ、問題ない」
「芋けんぴ 髪についてたよ」
「ヨホホホホホホホ!」
「ほんとすこ」
「このロリコンどもめ!」
「メン◯ス」
「ステンバーイ」
「インドを右に」
ずっと歩いているのは暇なのか、シュウジとルイネがしりとりするのが聞こえた。だが姿は見えないので不気味に思える。
そうして数時間も歩いていると、不意に大量の気配が俺たちを取り囲んでいるのを感じ取る。
数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。
そして、何かを理解したのか顔を歪ませた。残念ウサギに至っては、顔を青ざめさせている。
ほどなくして俺たちも相手の正体に気がつき、面倒なことになったとため息を吐いた。
その相手の正体は……
「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」
虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。またしても誰得案件である。
いっぱい読んでいただけるとウレスィー。
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