星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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今回はシリアスです。
楽しんでいただけると嬉しいです。


星狩りの試練

  爆笑する俺たちに全員がこっちを見て、不審な目を向けてくる。

 

  が、止まらなかった。むしろ思い出すたびにさらに笑いがこみ上げてきて、そのうち爆笑スキルがレェベェルマァーックス!(使い回し)になりそうだ。

 

  あまりにも天之河の言ったことがおかしくて、腹がよじれそうだ。ていうかいつのまにか笑い声が完全にエボルトになってる。

 

『ひー、ひー、あー腹痛ぇ。やはり人間というのはどうしようもなく愚かで、面白い』

「北野……?」

『いいや? 俺はエボルト。シュウジの中にいる……地球外生命体だ』

 

  天之河の言葉に、俺の体を操るエボルトはぶっぶーと手でバツを作る。あれだ、戦兎の体を乗っ取ってた時のやつだ。

 

  ていうか、ちょいちょいエボルトはん、あんた完全に肉体掌握してるがな。強引なの結構久しぶりじゃあないですかい?

 

「ち、地球外生命体?」

「ギャハハハッ! 地球外生命体とか、何言ってんだお前、頭おかしいんじゃねえの!?」

 

  何やら下品な笑い声をあげる、ゴミクズ以下の無価値な何かである檜山とその取り巻き。他のやつも、胡乱げな顔をしてる。

 

  それにふむ、とエボルトは声を出す。ていうか、明らかに声が変わってるのに馬鹿にできるとか、脳みそないんだろうか。ないな(断言)

 

『なあシュウジ、エボルドライバー使っていいか?』

 

  え?どういう……あーそういうことね。いいよ、じゃんじゃん使っちゃって。

 

  俺が許可を出すと、そんじゃあ失礼して、とエボルトは異空間を開いて、そこからエボルドライバーを取り出した。

 

  その光景に、クラスメイトたちが息を飲む。ま、普通の人間がこんなことできないからな。

 

  仮にこの世界に来て異能を使えるようになっているとしても、何故それをさも手慣れたように使えるのかということになる。

 

「ちょっとエボルト、何を……?」

『まあ見てろ』

 

  唯一、道中俺が女神様とのことを説明したハジメと空っちだけが不思議そうな顔をする。

 

  それにウィンクしたエボルトは、エボルドライバーをヘソに押し当てた。すると黄金のベルトが飛び出して、腰に巻きつく。

 

 

 

エボルドライバー!

 

 

 

『よし、これで……ふんっ!』

 

  ベルトがまかれたのを確認したエボルトが力むと、俺の体からエボルドライバーと一緒に赤黒いオーラが分離した。おっ、体の主導権戻った。

 

  赤黒いオーラは机の上に移動すると、そこで止まった。そしてエボルドライバーを中心に固形化していき、人の形になる。

 

  程なくして、分子の構成が終わったのか、俺から分離したエボルトは人間の姿になった。再び息を飲むクラスメイトたち。

 

  何故なら、その姿は白髪赤眼になり、エボルドライバーを腰に巻いた俺だったのだから。

 

「ん、んんっ……これで信じたかぁ?」

 

  どこか遠い声ではなく、ハッキリとクリアな声になったエボルトがそう言うと、檜山どもは悔しげな顔をした。

 

  大方、俺を馬鹿にできるものがなくなったからだろう。小さいやつである。なんでこんな人間が生きてるのか、理解に苦しむね。

 

「ってことで、改めましてエボルトだ。シュウジとの付き合いは生まれた時から。まあハジメと美空、雫は知ってるな」

「あなた、本当にエボルトなの?」

「おう、そうだぜ。なあシュウジ?」

「おうよエボルト」

 

  懐疑的な顔をする雫に、俺は椅子から立ち上がるとエボルトの隣に登った。そしてイェーイ!とハイタッチする。

 

「俺たち二人で」

「プリキュアだぜ!」

「ああ、このふざけ方はたしかにエボルトね」

「それで納得しちゃうの雫ちゃん!?」

 

  机を叩きながら立ち上がり、ツッこむ白っちゃん。今日はよくバンッ!って音を聞くな。

 

「さて、これで俺が人間じゃないってことをご理解いただけたところで、残念ながらさよならだ」

「えー!えぼるともういっちゃうのー!?」

「そうなんだよ、ごめんねシュウジくん。でも大丈夫だよ、おじさんの心はいつも一緒にいるからね」

「やったー!」

「いい加減にしろっ!」

 

  いつまでもふざけてる俺たちにイラついてるのか、大きく声を荒げる天之河。それに俺たちはインドダンスを踊って答える。

 

  するとピクピクと天之河の額に青筋が浮かんだので、ケラケラと笑いながらエボルトはもう一度俺と合体した。おかえりエボルドライバー。

 

『あれ、俺は?』

 

 知らんな(イケボ)

 

『ワケガワラナイヨッ!』

 

 大丈夫だ、問題ない(イケボパート2)

 

「で、何の話だっけ?」

「ふざけるのも大概にしろよ!?」

「そうカッカすんな。はい落ち着いて、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

「俺は妊婦さんじゃない!」

「あの、勇者殿。そろそろそこから降りていただけると……」

 

  迷惑そうな顔をするドドブランゴをほっといて、俺は散々天之河をからかう。途中でハジメと雫に引き摺り下ろされた。

 

『おーい、話が進まないからそろそろ代わってもらっていいか?』

 

 えーもっとふざけたいのにー(´・ω・`)

 

『なら後でハーゲンダ◯ツ買ってやるから』

 

  よっし言質取ったから……ってこの世界にハー◯ンダッツねえじゃん!

 

『ハッハァ引っかかったな!』

 

 スタァァアアアクッ!

 

『けぷこんけぷこん。ってわけでエボルトさんだ。話を始める前に、話に使うものをちょっとだけ用意させてもらうぜ』

 

  また俺の体を操作し始めたエボルトはどっかりと背もたれに背中を預け、両足を組んで机に乗せた。舐め腐ってんなこいつ。

 

  天之河の怒りがそろそろマキシマムパワー!エェークスッ!になりそうな前で、エボルトはまた異空間に手を突っ込む。

 

  そして今度は、トランスチームガンとコブラフルボトルを取り出した。ああ、なんとなくこいつのやりたいことがわかった。

 

「お前は、何がしたいんだ……!」

『勝手に出てくるなよ。黙って見てろ。ふんっ』

 

  なのでとりあえずふざけておいた。それに乗ってくれるとエボルトはマジでイケメン。いやイケボ?(どうでもいい)

 

  数回ボトルをシャカシャカと振り、カシャンとキャップをロックする。そうするとエボルトは、トランスチームガンにコブラフルボトルを装填した。

 

 

 

COBRA(コォブラァ) ……!》

 

 

 

  空中にコブラのマークが浮かび、ねっとりとした男の声が響く。夜に暗い部屋で聞いたらちびりそうだ。

 

  それを確認したエボルトは気だるげに、片手をゆらゆらさせながらトランスチームガンの銃口を上に向ける。

 

 そして……

 

蒸血

 

  己の身を変えるキーワードを、静かに言い放った。こう思うと、やけにシリアスな気分になるよね。

 

 

 

MIST MATCH !

 

 

 

  トランスチームガンのトリガーが引かれて、銃口から大量の煙が吐き出された。それは俺の体の周りを包み込む。

 

「きゃっ!」

「あっちょっと、美空スカートが!」

「見ないでハジメのえっち!」

「ふぎゃっ!」

「よしちょっとあの中突進してくるわ」

「雫ちゃんストップ!シューくんにパンツ見せに行こうとしないで!?」

「いやっ!離して香織!私は、私は行かなくちゃいけないの!」

「悲痛そうな声で何馬鹿なこと言ってるの!?」

 

  煙の外で何やら騒ぐ声が聞こえる中、自分の体がスーツのような何かに覆われていくのがわかった。主導権がエボルトでも、体の感覚あるんだよな。

 

 

 

CO COBRA COBRA……》

 

 

 

FIRE!

 

 

 ほどなくして、花火が上がるような音を立てて火花が散り、煙が晴れた。視界が緑色になって開ける。

 

『ふむ、ちゃんと蒸血できたな』

 

 エボルトが体を見下ろしてそういう。確かに、俺たちは今ビルドの怪人であるブラッドスタークになっていた。

 

 体を覆うのは血のように赤い、いたるところにパイプや装飾が施された、宇宙服に似たデザインのスーツ。胸には大きなコブラの意匠だ。

 

 エボルトは手を開いたり閉じたりして力の具合を確かめると、よっと机に飛び乗った。またかよおい。

 

『皆、この姿の時はブラッドスタークと呼んでくれ。さあて、話を始めようか。つっても簡単な話だ。お前ら、本当に戦争する覚悟あんのか?』

 

 まるで演説をするように、大仰に手を広げて問いかけるエボルト。クラスメイト達はざわざわと揺れ、天之河はどういうことかと言った顔をする。

 

『どうやらよくわかってないようだな。それだからお前らは愚かなんだ』

「どういう意味だ!」

『そのまんまの意味だよ、正義のヒーロー(笑)くん?俺はこう言ってるんだ。お前達に『この世界のよく知りもしない人間のために兵器になって、人を虐殺していく覚悟』があんのか?ってな』

「っ!!?」

 

 そこでようやく、クラスメイト達は自分たちが流れに任せて何をしようとしていたのか、理解したみたいだった。さっと顔が青ざめる。

 

 それを見て、かつて『世界の殺意』と呼ばれた暗殺者であった俺は思う。ああ、こいつら平和ボケしすぎだろ、と。

 

 命を奪うという意味を、誰一人として、まるで理解しちゃいない。いや、ハジメと空っち、雫はわかってるみたいだな。

 

『ん?どうした?お前ら一致団結して戦うんじゃなかったのか?魔物も、こいつらとちょっと見た目が違うだけの魔人族っていう()()の命も無慈悲に、まるでゲームのように奪っていこうと思ったんじゃないのか?』

「そ、それは!」

『なんだよ、俺はあくまで客観的に、冷静に事実を言ってやっただけだぜ?人殺し志望者君達?』

 

 その言葉に、顔を俯かせるクラスメイト…いや、未熟な半端者ども。こんなんでよく、喜んであなた達の武器になります!って言えたもんだ。

 

『はっきり言ってやる。お前らは、お使い感覚でそこの得体の知れない老害の頼みで、簡単に他の生物の命を奪う畜生以下のゴミクズだ』

「それは違います。魔人族の殲滅は、創世神さまより与えられた試練であり」

『ちょっと黙ってろ、今俺が話してんだろうが』

 

 エボルトが本気で殺気を放つと、イシュタルは口をつぐむ。こいつもせいぜい、温室でぬくぬく育った顔だけ威厳のあるカス野郎か。

 

  それにしても、エボルトも容赦ないねえ。いや、正論だから全くもって止める気は無いけどさ。

 

  ずっと一緒に生きてきてわかったことだが、エボルトはその残虐性を失ったわけではない。ただそれが隠れるほど良い部分が膨らんだだけだ。

 

  つまり、〝冷酷無比で残虐な星狩りのエボルト〟は、消えたわけじゃない。確かにそういう面も存在している。

 

  だから、こういうことも平然とする。俺はそれを止める気は無い。やるべき時はやるべきことをやる、がポリシーだ。

 

  だからふざける時は徹底的にふざける。異論は許さない。あっお前今ふざけるなよって思ったな?よろしいならば戦争だ(黙れ)

 

『認めたくないか?信じたくないか?自分たちはそんなんじゃないって言いたいか?言いたいよなぁ。それどころか、自分たちじゃなくて魔人族が悪いって、そう言いたいんだろ?』

「だ、だってそうだろう!事実、この人たちは苦しめられている!」

 

  苦し紛れな反論をする天之河。薄々わかっていながらも、正義は自分にあると主張する、か。

 

『……へぇ。だったらやってみろよ』

「え?」

 

  天之河が間抜けな声を上げるのと同時に、エボルトは前腕の毒針を伸張させて、メイドの一人を拘束して引き寄せた。

 

「何をッ!」

『何、ちょっとしたショーさ』

 

  エボルトは、ガチガチと歯を鳴らして怯えるメイドの顔に手をかざす。するとそこから煙が出現した。

 

「イヤァアアアアッ!」

 

  悲鳴をあげるメイド。だが19tもの怪力を持つ、蒸血しているエボルトには敵わない。そうしているうちに、煙の放出が止む。

 

  エボルトが手を下ろすと、メイドの顔がぐにゃりと変わっていく。青い肌をして牙を生やした、いかにもな顔にだ。

 

  それを見て頷いたエボルトは、天之河にそのメイドを投げた。そして手に持つトランスチームガンも投げる。

 

「っと!? あ、危ないだろっ!」

『さあ、それでそいつを撃ち殺せ。お前が悪だと言った魔人族だぞ?』

「なっ、お前ッ!!」

 

  こちらを睨んでくる天之河。まあ、いきなり人を殺せと言われたらそうもなるだろう。

 

 だが……

 

『それがお前がやろうと、こいつらに扇動したことだ。お前はそれを言ったとき考えたか?魔人族と銘打っちゃいるが、ただ少し毛色が違うだけの人間だと。知性もあれば、家族も、友も、愛する者もいる!そのメイドのようになぁ!』

「う、ぐ……!」

 

  無機質なマスクを近づけるエボルトに、天之河はたじろぐ。それをあざ笑うように、エボルトは鼻を鳴らす。

 

『それによぉ、お前。こいつらが魔人族や、ともすれば亜人族に何もしてないとか思ってねえだろうな?』

「な、何っ?」

『相手が行動を起こす時には、何かしらの動機があるんだよ。それが家族を殺されたり、攫われたり、辱められたり……当然、そんな奴もいるぞ?それは悪じゃないのか?』

「……それは、話し合えばきっと改心するはずだ。懸命に訴えれば、きっと」

『ハッ、笑えるね。それじゃあお前、今から襲われるか弱い女だったとして、目の前で理性のなくなってる人間に、同じことをそっくりそのまま言えんのかよ?』

「……………」

 

 黙りこくる天之河。

 

  そりゃそうだ、こいつの理論はあくまで第三者、それも上から見てるクソの役にも立たない産業廃棄物だ。ドブネズミすらお断りだろう。

 

  俺は知っている。殺す苦しみも、殺される恐怖も、奪う辛さも、奪われる悲しみも、この世にある多くの〝悪〟を知っている。

 

  だからこそ、俺は誰よりも強い暗殺者になれた。苦しみを知っているからこそ、苦しみを与えずに殺すことができた。

 

  〝苦しみを知らないものに、苦しみを与える権利はない〟。それが俺が、弟子たちにも必ず言い聞かせていたことだ。

 

『結局、自分にとっての悪はそいつにとっては正義で、そいつにとっての悪はこっちの正義。この世界に正義なんてものはねえ。ただ個人の願いがあるだけだ。そういう思いを魔人族だから、その一つで踏みにじって、自分たちの目的のために犠牲を強いる覚悟があるのか?』

「…………………」

『いよいよ何も言わなくなったか……あっけない正義だ』

 

  つまらなさそうに、エボルトは俯いている天之河の手からメイドをさらい、元の顔に戻してトランスチームガンを弄んだ。

 

  それからどっかりと、椅子に深く座り込む。そして最初に蒸血した時の気だるげな体制になった。

 

  あまりにやる気のない姿に、最初からしっかりと聞いていたハジメがおい、という顔をする。大丈夫、これこいつが楽しんでるだけだから。

 

『一つ、話をしてやる。ある世界に、一人の男がいた。そいつは相棒を止めるために、禁断の力に手を出し……そして人を一人殺した』

 

  そう。それは言わずもがな、桐生戦兎のことだ。ハザードフォームの暴走により、彼は三羽ガラスの一人を殺めてしまった。

 

『そいつは心の底から後悔し、怯えていたよ。死んだ相手の幻覚を見るほどにな。それでもその罪を背負って、皆の明日を守るために戦い抜いた』

「……それって」

『お前たちには、それを何十、何百、何千、何万と繰り返し、背負うだけの覚悟があるのか?乗り越えられるだけの勇気があるのか?』

 

  あるやつは立ち上がって、自分の覚悟を俺に示してみろ。エボルトはそう話を締めくくり、ぷらぷらと足を揺らした。

 

  しばらくの間、沈黙が流れる。当たり前だ、この問いはすぐに回答を見つけ出せるほど、簡単なものじゃない。

 

 いいんですか?いいんです。

 

『スペルカード発動、ワーイジャパニーズピーポー』

 

 ポール、それは厚切りジェイ◯ンじゃないか。

 

『カール、まだ金曜日じゃない』

 

 いやそれは別のジェ◯ソンだよロッソ。

 

『そばかすっていいよな』

 

 なんで関係ない話するかな。

 

『なんのことかわらかない』

 

 いやぁ参ったぜい。

 

『今なんでもするって』

 

 てめえがだろ旦那?

 

『なあそろそろ腹減ってこない?』

 

  いい加減誰か答えてくれないかしらん……あっ。

 

『やーいやーい馬鹿め!俺の勝ちだ!』

 

 スタァァアアアクッ!

 

  なので、エボルトとしりとりをして待つことにした。シリアス?知らない知らない。そんな物壊すためにあるんだし。

 

「……僕は」

 

  と、そこで覚悟を決めた顔のハジメが立ち上がった。ほらエボルト、真面目モードに戻れよ。

 

『えー(´・∀・`)』

 

 えーじゃない!

 

「僕には、人を殺す覚悟はない。そんなの普通に怖いし、やりたくないと思う」

『ほう、最初から問いを否定したか。ならお前の覚悟はなんだ?』

 

  エボルトの問いに、ハジメは一度瞑目して。そしてキッと目を鋭くして、精一杯の声で叫ぶ。

 

「僕の覚悟……それは、戦う覚悟だ。それは自分のためじゃない。僕が戦って、美空を少しでも脅威から遠ざけるために、僕はこの世界で戦う」

「ハジメ……」

 

  空っちが頬を赤く染めて、照れ臭そうに笑うハジメを見上げる。そんなんだからヤンデレ度増すんだよなぁ。

 

「それに、せっかくシュウジにならった技もシュウジ以外に試してみたいしね」

 

  ……あれ、いつのまにかハジメが若干武闘派になってらっしゃる。やめて、いい笑顔でグッて拳握らないで。

 

『自業自得だろ』

 

 そんなー(´・ω・`)

 

『……他人のために戦う、か。まあそれもいいだろう。前の俺じゃ理解できなかったがな。それも立派な一つの決意だ。さあ、次はどいつだ?』

 

  体制はそのままに、エボルトがクラスメイトたちを見渡すと、一人の男が立ち上がった。坂上だ。

 

「……俺も、戦う」

『何のために?』

「…正直言って、俺は馬鹿だからお前の話はあんまし理解できねえ」

『自分で脳筋っていうとかマジでテラワロス』

「北野テメェ後で覚えとけ」

 

 いいえ、今のはエボルトが言いました。

 

『いや明らかにお前の声だったよね?ねえ?何なすりつけてんの!?』

 

 ほらエボルト、あくしろよ

 

『こ、こいつ……ごほんっ。で?だからなんだ?』

「でも、要するに自分の大切なもんをかけるってことだろ?それなら俺は、自分の大切なもののために戦う。そんで、相手の大切なものの分も生きていく。そんだけだ」

『……まあ、及第点ってとこだな。いいか、くれぐれも忘れるな。一回負けたら終わりだ』

「ハッ、そんなの言われなくてもわかってらぁ」

 

  それじゃあ次、そう言おうとしたところで、ガタッと音を立てて空っちが立ち上がった。自然とそちらに顔を向ける。

 

「わ、私も戦うよ!あ、いや、えっと、戦えないけど」

『……どういうことか説明してみろ』

 

  空っちは一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。そして静かな声で語り始めた。

 

「ハジメは、私のために戦ってくれるって言った。それなら私は、戦って帰ってきたハジメを笑顔で迎えるの。たとえ、どんな時でも。それが、私の戦い」

『……剣ではなく、心で戦う、か。エクセレント!実に素晴らしい。せいぜいハジメと支え合ってくれ。あと結婚式には呼べ』

「な、何言ってるのっ!」

「当たり前だルォ?」

「ハジメっ!」

 

  嬉しそうにニヤニヤしながらサムズアップするハジメの頭を叩く空っち。おうおう、仲のよろしいことで(嫉妬)

 

『さあ、どんどんいくぞ。さーてお次は……』

「わ、私も!私も戦うよ!」

 

  次に立ち上がったのは白っちゃん。理由はまあ、だいたい空っちと同じだったので割愛で。

 

『適当すぎない?』

 

  だって傷ついて帰ってくる皆を癒すとか言ってて、終始ずっとハジメの方見てるんだもん。もうお腹いっぱいでさぁ。

 

「……私も戦うわ」

 

  そして立ち上がったのは、我が最愛最高最強最カワ全生命体、いや!全宇宙の中で最も至高な我が姫君、雫だった。

 

『長いよ。そしてうるさいよ』

 

 な、なんで心の声が……(カズミン風)

 

『フルボリュームで聞こえてるしっ!』

 

 待ってそれ空っちっていうか美空のセリフ!

 

『お前はなんのために戦う?』

「あなたよ」

『俺?』

「いやエボルト(あなた)じゃなくてシューのほう。あなたはどうでもいいわ」

『え、酷くない?これでもいつもサポートしてるのよ?主に夜の方』

 

  おいコラエボルトお前、現実の方でもキャラ崩壊すんな!せめてそっちは真面目にやってくれ!

 

「……次に出てきたときにぶち殺してやりましょうか?」

 

 姫ー!姫が乱心にござるー!

 

「……んんっ、そうじゃなくて。私はシューのために、元の世界に帰るために戦うわ。そのためなら覚悟くらい、いくらでもしてやるわよ」

『ほう、その心は?』

「こんなとこにいたら私とシューが最高の結婚式をあげられないじゃないのよ!」

 

 

 

 

  ここにきて思いっきり私欲ダダ漏れしたーーーーーーっ!?!!?

 

 

 

 

 

「せっかく!あと一年と少しで!シューと籍を入れられたのに!ふざけんじゃないわよ!あぁもうムカつくっ!」

『あ、あのー、雫さん?』

「ハネムーンの計画も台無しだし!男の子と女の子一人ずつ子供産んで幸せな家族になる計画も延期になったし!こちとらそのためにコツコツと家業手伝ってお金貯めてるのに!」

 

  わぁお雫さんかなり気が早い!しかもかなり綿密に将来設計立てていらっしゃる!?逃げ場なんてねえなこれ!

 

  いや、別に逃げる気なんてないし嬉しいんだよ?こういう場じゃなかったら今すぐハグしてチューして部屋に連れ込みたいくらいだよ?

 

  でもさ、怒り心頭な様子でバシバシ机叩いてるのを見ると、流石にそうもいかない。っていうかクラスメイト全員ぽかーんとした顔してる。

 

『Σ(゚д゚lll)こんな顔か?』

 

 そうそう……ってお前もかよ!

 

「とにかく!魔人族だかなんだか知らないけど、さっさと解決して帰るのよ!直ぐに!可及的速やかに!なんならここにそのエヒト連れてきなさいよ!しばき倒して帰らせてもらうから!」

『雫、ストップ、ストーップ!一旦落ち着け!十分わかったから!一緒に頑張ろう、な!なっ!』

「ふー!ふー!」

 

  なんか目がえらいことになってるランゴスタにやべえと思いつつ、エボルトと入れ替わってなだめる。一回蒸血解除しちゃったよ。

 

  しばらくして雫が大人しくなったあと、エボルトと入れ替わってもう一度机に登る。空気?ちゃんと戻したよ(天井の銃痕から目をそらしながら)

 

  他にいないか、しばらく待ってみたものの、その五人以外は誰一人として名乗りをあげることはなかった。

 

『たったの5人、か……まあいい。逆にこれだけいるのは幸いだ。今後はこの五人を中心に、俺がお前らを鍛えてやる。何、直ぐにお前らも覚悟することになるさ』

 

  フハハハハハハハ……と不気味に笑うエボルトに、クラスメイトたちは怯えたような顔をした。ま、そのうち慣れるだろう。俺も慣れたし。

 

  そんなわけで、覚悟を決めて命、燃やすぜ!な五人と、未だ迷うクラスメイト、あとは甘々すぎる勇者(笑)くんとの全員でこの世界で戦うことになったのだった。

 

  ちなみに、天之河を扇動してその気にさせようと企んでたランゴスタ?ネルスキュラ?どっちでもいいけど、ジジイが少し苛立ったような顔をしていたのが面白かったです、まる。




シリアスだと言ったな…














あれは嘘だ。
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