シュウジ「どうも、皆さん大好きシュウジだ。今日はこの方に来てもらったぜ!」
雫「えっと…ここどこ?」
シュウジ「そう!我が最高にして最強、最カワな雫さんです!どんどんぱふはふ〜!」
雫「あ、やっと見つけたわよシュー。まったく、どこにいってたの…ん?これまでのあらすじとカンペ?なになに…なんか色々凄いことになってるわね。前回は樹海へ向かったそうじゃない」
ルイネ「マスターは子供たちと戯れていたな。非常に懐かれていた」
雫「あなたは…ああ、あの予感の」
ルイネ「予感?なんのことかわからないが…ルイネだ。あなたの話はよく聞いている、よろしく頼む。正妻殿?」
雫「ふーん…ま、いいわ。よろしく。それとシュウジ、あとであっちの部屋ね」
シュウジ「マジか…まあ久しぶりだしいっか。で、今回はなにやら森の虎さんたちと遭遇するらしいぞ。それじゃあせーの…」
三人「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」
あるー日、森の中♪熊さんに、出会った♪
『花咲く森の道〜、ってか?』
ま、ここにいるの虎だけどね。
さて、状況を説明しよう。いきなり目の前に樹海のフレンズ(違う)が現れたと思ったら、なんかやいのやいの騒いでる。
どうやら俺たち人間と亜人族が一緒にいることが許せんみたいで、シアさんを匿っていたこともあってこの場で処刑とか叫んでた。
ドパンッ!
上に指示も仰がずに処刑とかダメじゃね?と思っていると、ハジメがドンナーを発砲して、リーダーらしき男の後ろの木を吹っ飛ばした。
「っ!?」
耳が頭の上ではなく横にあったらでっかくなっちゃったどころか永遠にオサラバしていたであろう虎耳おっさんは、理解不能といった顔で背後を振り返る。
ま、この世界にゃ銃なんて高度な武器はない。あのおっさんどもからすれば、魔法でもない謎の超攻撃にしか思えなかっただろう。
しかし、すぐに我に返って攻撃をしてきそうだったのでルイネに目配せをする。俺たちも少し脅しておきますかね。
「ヘイおっさんども、ルックアットミー」
大きな声で叫ぶと、その場にいた全員が俺の方を振り返った。それに俺は、とある方向を指差す。
つられてそちらに向いた亜人たちが見たのは……
ドォオオオオオオンッ!!!
突如、謎の巨大な黒い生物が地面から空へ向けて飛び出す様だった。その無数の牙の間からは、遠目でもわかるほど大量の魔物の残骸がこぼれ落ちている。
先ほど帝国兵と馬を食ったばかりのアレは、しかし新たな食事にありつけたことに咆哮しながら姿を消した。
それを見届けた亜人たちの方に視線を戻す。すると虎耳おっさんたちはガクブルしてた。ハウリア族は一度見たから割と落ち着いてる。
「さて、今みなさんにお見せしたのは俺のペットだ。もし下手に動こうものなら……今の魔物たちみたいに丸呑みにされちゃうよ?」
「くっ……!」
「あ、背後から攻撃とか無しね。全員位置把握してるから」
俺が言うのと同時に、隣にいたルイネが金属糸を握った手を引く。すると虎耳おっさんの後ろから糸で縛られたおっさんが転がり出てきた。
「ぬがっ!?」
「なっ……」
驚いた顔をする虎耳おっさん。密かに包囲していたのに、まさか捕まるとは思っていなかったのだろう。慢心するとは情けない!
その俺たちの行動のおかげで、虎耳おっさんたちは大人しくなった。よし、これで会話できるな。ハジメにウィンクする。
「それキモいぞ」
「えっマジで」
冗談だ、とハジメは笑い、ドンナーをホルスターに収めながら一歩前に出た。そして凄まじい威圧感を発する。技能の〝威圧〟だろう。
威圧というのは、魔力を放射することで物理的なプレッシャーを発する技能である(オスカーペディア参照)
それを受けた虎耳おっさんたちは先ほど以上にガクブルしてた。足とかバイブレーションになってる。ていうかルイネに縛られたやつ失禁してね?
『やだ臭い!』
「さて、さっきこいつらを殺すとか言ってたな?残念だがそれは俺たちが許さない。約束を果たすまでこいつらの命の保証人だからな」
「ぬぅ……!」
「どうしてもやるというのなら、容赦なく殺させてもらう。だが、引くのなら追いはしない。選べ」
無駄死にするか、惨めに生き残るか。どちらかを選択しろと迫るハジメ。見ようによっては完全にヤクザである。
虎耳おっさんは戦士としての誇りでもあるのか、随分と悩んでいるようだ。歯ぎしりをして俺たちを睨んでる。おお怖っ。
『とか言って全然ビビってない件』
デートに遅刻した時の雫のほうがこれの数億倍は怖いね。あの穴が空いたような目…あっやべ鳥肌立ってきた。
ホラー映画かよいうような雫の怒りフェイスを思い出しているうちに、何かしらの考えをまとめたのか虎耳おっさんが話し出す気配がした。
「……その前に、一つ聞きたい。一体何が目的だ?」
端的な質問をする虎耳おっさん。事と次第によっては、この場で命を散らしても俺たちと戦うという顔をしていた。
大方フェアベルゲンを襲うとか、そこに住んでいる亜人たちを奴隷として捉えにきたのかとか考えてるんだろう。
だが、そんなの俺たちは興味ナッシング。ここにきた目的は……
「いやぁそいつがねえ、大樹ウーア・アルトってとこに行きたいわけですよ」
「大樹だと?」
ハジメの肩に腕を置いた(顔に肘鉄入れられた)俺がそういうと、虎耳おっさんは拍子抜けしたような顔をした。
カムさんたちの話でも、大樹は神聖視されてはいるが、さほど重要視はされていない観光スポットみたいなところだ。
「そんなところに、一体何の用だ?」
「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」
「本当の迷宮……?何を言っている、七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」
「いや、それはおかしい」
「なんだと?」
訝しげな虎耳おっさんに、ハジメがこの樹海についての考察を語る。
オルクスのところと比べて魔物の強さがはるかに劣っていること、そもそも亜人族だけとはいえ、簡単に深部に行けてしまうこと。
〝解放者〟どもは、一種族を贔屓するようなヤワな試練は残しちゃいない。オルクスの時だってルイネを奪われて……
「…やっぱ今からでもあそこブラックホールで飲み込んでこようかしら」
「マスター、私はもう気にしていないぞ?」
「ぬぅ……」
ケッ、ルイネに感謝するがいいオスカーめ。
『いや、死人に言っても意味ないだろ』
また俺の恨みつらみはともかくとして、その説明を聞いた虎耳おっさんは訳がわからないといった様子だった。
〝解放者〟たちの情報は、この世界の中でも最もトップシークレットなもの。このおっさんがどういう扱いか知らないが、そうそう知るものはいないだろう。
しかし、今この状況において優位に立っているのは俺たち。嘘をつく理由がないので、困惑しているというところか。
結局部隊長のおっさんの独断では決められないってことで、本国に指示を仰ぐことになった。お偉いさんが来るまでは待機である。
「さあ集まれちびっこたち、つくってあそぼの時間だ!」
「俺たちが工作を教えちゃうぜ」
なので、暇つぶしにチビウサギたちと遊ぶことにした。俺は赤い帽子に黒縁の伊達眼鏡、分離したエボルトはいつしかの某クマに擬態している。
これまでの馬車の中で懐いていたチビウサギはすぐに集まり、工作の時間が始まる。わくわくしちゃうね!
「何やってんだあいつは……」
「ん」
「おっと」
「………」ポスッ
ハジメの方をちらりと見ると、ユエが足の間に、ウサギが背中によりかかっていた。くっ、ピンク色のオーラが……!
「い、今なら……!」
「やめておけ」
おっさんの声が聞こえたのでそっちを向くと、今が攻撃できるチャンスだと思ったのか動こうとする虎耳を制止していた。
ズ……
その動きに反応したように、近くにあった木が半ばからズレて倒れる。虎耳はビクッと体を震わせ、ルイネの方を見た。
木に背中を預けている我が弟子は、金属糸のきらめく指をくるくると回し虎耳を牽制する。何をしても無駄という意思表示だ。
そっちは問題なさそうなので、チビウサギたちの相手に戻る。あっすげえリコちゃん(仮称改め本名)折り紙で◯ジラ作ってる。
「はーいみんな、できたかなー?」
「「「できたー!」」」
「それじゃあこいつの前に並べてくれ」
「「「はーい!」」」
元気よく答えて、自分の作ったものを俺の前に置くチビウサギたち。おお、色々あるな。カマキリ、バッタ、クモ、キリン、アンク、安倍さん、エイリアン待って途中から何かおかし(ry
それらのものに、魔法で擬似的な命を吹き込む。すると折り紙の人形たちは動き出し、それぞれ作者のチビウサギの元へ向かっていった。
最初は驚いていたものの、キャッキャと騒ぎ始めるチビウサギたち。それをみて頷く俺とエボルト。
「うむ、子供には笑顔が一番」
「あの、ありがとうございますシュウジ殿」
「いいっていいって」
かしこまった様子で頭を下げてくる親の兎人族にひらひらと手を振る。そうするとハジメたちの方に行ってみた。
「ちょ、ギブギブ!」
「………」( * ゚д゚)
すると、シアさんがユエに腕の関節を極められていた。バシバシとタップしてるが怒りマークをつけてるユエは一向にやめない。
挙げ句の果てには、まるで絨毯のように薄く伸ばされてウサギの尻置きになった。物理法則どうなってんだあれ。
そんなこんなで時間を潰していると、かなりの速度でこちらに近づいてくる気配があるのがわかった。
「ハジメ」
「ああ」
立ち上がるハジメ。ユエも気配を感じたのだろう、さっとシリアスに戻る。なお、ウサギ組はそのままである。
霧の奥から、数人の亜人が姿を現わす。中央かつ先頭にいる初老の男は、一言で言えば美しいという言葉がぴったりだろうか。
威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。いかにも〝長老〟って感じだ。
そんな男の中で最も目立つ特徴といえば、やはり鋭く尖った耳だろう。そう、男はエルフだったのだ。
「俺も年取ったらダンディな渋カッコよさ手に入れられるだろうか」
「そもそもお前年取れるのか?」
「わかんね。ハザードレベル測定不要だし」
「ブラックホールの俺でも測れんからなぁ」
俺のハザードレベルどれくらいなんだろうか。一回見てみたいぜ。
「お前さんらが件の人間たちか。名前は何という?」
「ハジメだ。南雲ハジメ。で、こっちが……」
「ファンタスティックテクニック、どうも北野シュウジです」
「お前どっちかというとアイアンウィルだろうが。俺はエボルト、こいつの相棒みたいなもんだ」
タメ口で話す俺たちに、後ろのエルフたちが声を荒げ用とした。しかし、男がそれを制したのでことなきを得る。
そうすると、男はアルフレリック・ハイピストと名乗った。フェアベルゲンの長老の一人であるらしい。
「さて、お前さんたちの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟の存在をどこで知った?」
「うん? オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」
アルフレリックさんの質問にハジメが答える。そういえばオスカーの映像って質問できて、はんぺんかちくわどっちかって聞いたんだよな。
『で、答えは?』
大根って言われた(真顔)
「奈落の底、か……聞いたことがないな。何か証明できるものはあるか?」
「ヘイアルフレリックさん、キャッチ」
試すように問いかけてくるアルフレリックさんに、あるものを放る。危なげなくキャッチするアルフレリックさん。
投げ渡したそれは、オスカー・オルクスの指輪の複製品。遺骨を埋葬した時に、ローブの中から出てきたものだ。
「そいつで信じてくれるかい?」
「こ、これは確かにオスカー・オルクスの紋章……ああ、わかった。お前さんたちが迷宮を攻略したことを信じよう」
「そいつは良かった。それじゃあ早速…」
「取り敢えず、フェアベルゲンへと来るが良い。私の名前で滞在を許そう」
「ぬっ?」
「はあ?」
それじゃあ早速大樹へ向かいますわ、と言おうとした瞬間、アルフレリックさんはそういった。
「ウェイウェイウェイ、ちょっと待ってくだせえアルフレリックさん」
「何勝手に俺たちの予定を決めてんだ?俺たちは大樹には用があるが、お前らの国には興味がない。問題がないからこのまま向かわせてもらう」
「いやお前さんら、それは無理な話だ」
どういうことだ?と殺気立つハジメに、アルフレリックさんは嘆息する。どうやら何か理由がありそうだ。
「どういうことだ?」
「大樹の周りは特に霧が濃くてな、我々でも迷ってしまう。一定周期で霧は薄れるが、次は十日後だ。その状態でどうするつもりなのだ?」
「……そんなこと聞いてないが」
「亜人族ならば誰でも知っているはずだが……」
ちらりとカムさんらを見やるアルフレリックさん。つられて俺たちも、特にハジメが錆びたロボットみたいに振り返った。
そして、当の本人たちは……
「あっ」
まるで今も思い出しましたとでもいうように顔を青ざめさせるカムさん。おい、マジで周期のこと忘れてたんかい。
「……おい、どういうことだ」
「いや、その……色々ありましたしつい忘れていたというか、その……ええい、なぜお前たちも途中で教えてくれないのだ!」
「ちょっこっちに飛び火させないでくださいよ父様!私は父様が自信たっぷりだったから、ちょうど周期なのかと……!」
「そうですよ!」
「僕たちもあれ?おかしいなとは思ってたけど族長が……」
「お前たちそれでも家族か!?これはそう…連帯責任だ!お二人とも、罰はどうか私だけでなく全員に!」
「あっ父様汚い!お仕置きされるなら自分だけにしてくださいよ!」
「道中のお二人を見ていただろう!一人でお仕置きなんて絶対に嫌だ!」
「あんたそれでも族長か!」
ギャーギャー騒ぎ始めるハウリア族。なるほど、こういうところまで皆一緒である。さすがはハウリア族(?)といったところか。皆残念だ。
「最初のシリアスさはどこへいったやら……」
「え?ハウリアって残念の代名詞でしょ?」
ゴゴゴゴゴンッ!!!
エボルトと話しているうちに、全員の頭にハジメの握った義手が叩き込まれる。加速を使った無駄に見事な制裁だった。
地面に沈んだハウリア族に、虎耳たちもアルフレリックたちも呆れた顔で嘆息する。その反応がハウリア族の残念さを雄弁に語っていた。
とまあ、そういうわけで天然ウサギだったハウリア族のお陰で、俺たちはフェアベルゲンへと向かうことになったのだった。