非ログインの人でも感想を書けるようにしました、よろしくお願いします。
シュウジ「よお、シュウジだ。前回は樹海から出発したんだったな」
雫「シュー、あんたなんでウサギをプレデターにしてんのよ…」
シュウジ「ヤラカシチャッタ♪」
ハジメ「おのれはどこの天使だ」
エボルト「まあ過ぎちまってことは仕方がない。で、今回は街に入るみたいだな。それじゃあせーの…」
四人「「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」」
しばし魔力駆動二輪を走らせていると、前方に町が見えてきた。周囲を塀と柵で囲まれた、小さな町だ。
おおよそ三ヶ月ぶりの人間の町だ、思わず頬が緩む。こいのぼりみたくなっている残念ウサギが何やら騒いでいるが、それよりこの感動が大事だ。
ふと足の間に収まっているユエを見下ろしてみれば、彼女もいつもの無表情を解いて頬を綻ばせていた。
隣を見てみると、シュウジとルイネもどことなく楽しそうな顔をしている。シュウジアレ絶対悪巧みしてんだろ(断言)
さらに近づくと、街道に当たる場所に木の柵と小屋がある。どうやら門番の駐屯所のようだ。その程度の規模なら、良い買い物ができそうだ。
「そろそろあっちから見えそうだから魔力駆動二輪から降りるぞ」
「……ん」
「わかった」
「あーれー!」
魔力の注入をやめ、ハンドルのブレーキを握ると魔力駆動二輪はゆっくりと停止する。隣を走っていたシュウジもバイクを止めた。
止めた拍子に残念ウサギがなにやら地面に落ちて悲鳴をあげたが、まあ問題ないだろう。サイドカーから外し、ユエとウサギが降りると〝宝物庫〟にしまった。
「ほいルイネ」
「ありがとうマスター」
隣でシュウジの手を取ったルイネがバイクから降りて、シュウジがボタンを押すとバイクが携帯とボトルに戻る。
「相変わらず物理法則無視してんな」
「俺天才でしょ?」
「聞いてねえよ」
軽口を叩き会いながら、歩いて街へと向かう。シアがブツブツ言ってたが、カエルの舌ビンタで黙らせられていた。
木の柵まで近づくと、小屋から門番が出てくる。といってもありがちな衛兵っぽい感じではなく、皮鎧と背中に背負った剣からして冒険者のようだ。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、街に来た目的は?」
「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」
まるでゲームのNPCみたく規定どおりなのだろう言葉を話す青年に、ステータスプレートを渡す。青年は興味なさげに答えながら受け取る。
そして俺のステータスプレートを見て、ギョッとしたような表情をした。裏返したり目を瞑ったりして何度も見直している。
「なんだこれ……全ステータス最低でも二万越え?技能も一体いくつあるんだこれ……」
「あっやべっ」
男の言葉に小さく呟く。ステータスプレートの隠蔽機能使うの忘れてたわ。これではステータスの数値と技能欄が丸見えだ。
やべえ、このままだと偽物だとかなんとか言われて追い返される可能性がある。なんとか誤魔化さなくては。
「ちょ、ちょっと魔物の襲撃の時に壊れちまってな」
「こ、壊れた?こんな壊れた方は聞いたことがないが……」
だろうな。俺もステータスも技能もどっちとも表示がバグるとか見たことも聞いたこともない。
とはいえ、ここは押し通すしかない。情報漏洩しちまったのはもう手遅れだが、適当に言って忘れさせなきゃいかん。
「そうじゃなかったらおかしいだろ?まるで俺が化け物みたいじゃないか」
「はは、そうだよな。こんなの本当だったら指一本で町が吹き飛ばされちまう」
実は本当なんだがな。
だが、青年はそれでなんとか納得したようだ。常識的に考えて、俺のステータスが本当か疑うより壊れたと思う方が普通だろう。
なんとかやり過ごすのに成功し、ステータスプレートが返ってくる。後ろからユエとシアの呆れた視線が突き刺さるが、多分気のせいだろう。
「そっちのお前もステータスプレートを……」
今度は俺の隣ににいるだろうシュウジに目を向け、ステータスプレートを出すよう求める青年。が、またしてもギョッとする。
また何かやらかしたかと見て、俺も絶句した。なぜならそこには、赤と黒のコスチュームに身を包んだシュウジがいたのだから。
背中にはクロスした刀を二本背負い、腰にはまるでそのマスクのようなレリーフのついたベルト、太ももには銃の収まったホルスター。どっからどう見ても某アメコミのキャラだった。
「!?」
「はいはい、ステータスプレートね」
少しくぐもった声で言ったシュウジが、ステータスプレートを差し出す。ハッと青年は我に帰り、それを受け取る。
さすが抜け目がないというか、俺と違ってちゃんと隠蔽機能を使っていたようでそちらは難なく終わった。見た目のインパクトが強すぎるが。
「じゃ、じゃあそっちの四人もステータスプレートを……」
シュウジにステータスプレートを返した青年はユエたちにステータスプレートを要求して、またぽかんとした。よく惚けるやつだな。
まあ、これに関しては仕方がないだろう。ユエとウサギはビスクドールのような完成された美しさだし、ルイネは絶世の美女。シアも黙ってりゃ美人……
「ブフッ」
そう思いながら振り返って、俺は吹き出しかけた。シアが身体能力強化をして気を抜いた時になる筋肉モリモリマッチョウーメンになってたからだ。
露出度の高い服を無駄にたくましい筋肉が盛り上げており、そこにウサ耳が合わさってシュールさを引き出している。
しばらく笑いをこらえていたものの、もしやと思いシュウジを見る。するとマスクの口元を押さえてプルプルしてた。やっぱお前の仕業か!
「こっちの三人はさっき言った魔物の襲撃で紛失しちまって……こっちは分かるだろ?」
「あ、ああ。護衛の奴隷だな」
俺が必死に笑いを噛み殺しているうちにシュウジが青年と会話する。おいやめろ、撮った写真を後ろ手で見せてくるな。
結局問題なく終わり(?)、街に入れることになった。あー危ねえ、シュウジのせいで笑うとことだった。
「それと、できれば魔物の素材を換金したいんだが……」
「ああ、それなら冒険者ギルドに行くといい。中央街道をまっすぐ行けば分かるはずだ。そこで簡単な街の地図もくれるぞ」
「おー、親切にどうも。どっかで会ったら一緒に飲もうや」
ひらひらと手を振りながら、シュウジが街に入っていく。俺たちもそれに続いて、〝ブルックの街〟へと入った。
ブルックの街は、思った通りそれなりの賑わいのある街だった。かつての宿場町ホルアドほどではないが、露店が立ち並び値切りの声が聞こえる。
俺同様にユエは目元を和らげ、初めて見るウサギは物珍しそうに(可愛い)露店を見渡し、ルイネも懐かしげな顔をしている。
街並みを眺めていると、デンデンデデデデンッとか聞こえてきそうな雰囲気だったシアがポンッと煙を上げて元に戻る。そしてすぐさまシュウジに噛み付いた。
「ちょっとシュウジさん!なんで私があんな姿でなくちゃいけないんですか!門番の人ギョッとしてたじゃないですか!」
「いやぁ、普通のシアさんは見た目が整ってるから、あっちの方が危険が少なくなるかなと」
「で、本音は?」
「面白そうだったからに決まってんだろマイブラザー」
「やっぱりぃ!」
ガクガクと揺さぶるシアにケラケラと笑うシュウジ。確かにこいつの言う通り、こいつの稀有な見た目だと人攫いにあう可能性もある。
「つーかお前、何か企んでるとは思ってたけどなんでそんな格好してんだよ」
「ほら、もしかしたらクラスメイトがいるかもしれないじゃん?だからどっかの街に行くときはこれで正体隠しとこうかと」
「いやいくら異世界だからってそんな珍妙な格好のやついねえから」
すぐバレんだろ、と突っ込むと「大丈夫だ、問題ない」とイケボで言うシュウジ。きっとマスクの中はムカつくドヤ顔だろう。
「うむ、私ならば一瞬でマスターだと見抜くな」
「いやお前のは特別な第六感でしょうに」
「感覚でなくても見ればわかる。身長、体の太さ、筋肉のつき方、頭の形、靴の大きさ……」
「オーケーわかった、もうやめよう。ハジメたちがドン引きしている」
「おっと、つい熱くなってしまった」
……まあそれはともかくとして、シアの件には一理ある。身体能力強化がある限り下手な奴には負けないだろうが、変に絡まれるのもアレだ。
「おいシア、これつけとけ」
「ふえっ?って、わわっ!?」
〝宝物庫〟から取り出した首輪を問答無用でシアの首につける。黒塗りで正面にガラスのような玉のはまったしっかりしたものだ。
「ちょっと、ハジメさん!なんてものつけるんですか!」
「別に何か拘束する力はねえよ。奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう? まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。だからそれは面倒避け……って」
つらつらと説明していると、なにやらクネクネし始めるシア。赤くなった頬に手を当て、いやんいやん言ってる。
「おいどうした、気持ち悪いぞ」
「えへへ、そんな容姿もスタイルも抜群で世界一可愛いくて魅力的なんて……こんな公衆の面前で恥ずか「……ハザードフィニッシュ」あぼんっ!?」
ジャンプしたユエのストレートが頬に突き刺さり、地面に倒れ伏す。身体強化を解いていたようで、さっきとは別の意味で顔が赤くなってた。
「……調子に乗るな」
「ぐすっ、はい……」
「あーあとな、それ念話石と特定石が組み込まれてるから魔力を流すと念話ができるし、居場所を特定できる」
念話石は〝念話〟の技能を生成魔法で鉱石に付与して作ったもので、特定石も気配感知の派生技能である〝特定感知〟を同じように付与したものだ。
その二つを融合させたのがガラス玉のようなものであり、強度もそこそこあるのでそう簡単には壊れない。
ちなみに俺たち全員が持ってるシュウジ製携帯も〝念話〟と〝特定感知〟を使っており、電波の代わりに特定の個人の魔力の波動を登録して念話で話しているとか。
従来のスマホの技能を忠実に再現した逸品!充電も魔力でオーケー!今ならお買い得です!というのがシュウジの売り文句だ。
「つまり〝私ハジメさん……今あなたの後ろにいるの……〟とかできるわけだな」
「できてもしないからな?」
「えっマジで。俺やろうと思ってたのに」
「やったらぶん殴りますぅ」
笑顔で拳を握るシア。こいつ最近シュウジに対してだけは遠慮してない気がする。物理的な意味で。
とにかく、シアは人間のテリトリーの中で自分を守る身分だということで渋々納得した。なので冒険者ギルドへと向かう。
歩く街並みは、先ほど思ったとき活気に満ちたものだった。そこかしこから美味そうな匂いも漂ってくる。
「いやー、活気があるねえ。もぐもぐ」
「おい、お前それ瞬間移動で買ってきたろ。一本俺にもよこせ」
「いいぜー」
器用にマスクの下半分を脱いで串焼きのようなものを頬張ってるシュウジから一本受け取る。香辛料の匂いが強い、鶏肉のようなものだ。
「はぐっ……ん、うめえなこれ」
「だろ?」
「……ハジメ、一口ちょうだい」
「ん、ほれ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるユエに串焼きを差し出す。するとパクッと食いつき、噛みちぎって小さい口をむぐむぐとさせた。
それを見ていたウサギも欲しがったので食べるように促す。するとパッと笑顔を浮かべた。ウサギマジ天使。
「ん……おいしい」
「私も一口欲しいですぅ!」
ウサギの横からシアが出てきて、口を開けて串焼きにかぶりつこうとする。が、その前にピシュッと何かが串焼きを掻っ攫った。
なにもない手を見つめ、次いでシアと顔を見合わせる。そして同時にウサギの頭の上にいるカエルを見た。もぐもぐとする口端から棒が見えてる。
「ゲコッ」
串焼きを食べ終えたカエルはプッと串を吐き出し、コロンと綺麗にタレまで舐めきった串焼きの棒がシアの足元に転がった。
シクシクとシアが泣いてるのとシュウジとルイネが食べさせあってるのを見ながら進んでいると、やがて建物が見えてくる。
道中奇異の目で見られたが、気にしてはいけないだろう。コスプレ男に絶世の美女、厨二まっしぐら……ぐふっ…男に美少女二人、そして泣いてるウサ耳。街の人間にはさぞ賑やかに見えたらしい。
その建物には一本の大剣が描かれた看板がかかっており、かつてホルアドで見た冒険者ギルドと瓜二つだった。違うのは大きさくらいだろうか。
「懐かしいな」
「オラワクワクすっぞ!」
無駄にハイレベルな声真似に苦笑しながら、俺はギルドの重厚そうな見た目の扉を押し開けるのだった。
エボルトの出番?ないよ。
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