シュウジ「やっほー、シュウジだよ。前回はライセンに戻ったな」
香織「みんな強かったなぁ。私も負けてられないよ」
ユエ「…貧弱負け犬クラスメイト」ボソッ
香織「何か言ったかな?かな?」ニコォ
美空「ほらほら二人とも、睨み合いしない」
シア「なんでいつも喧嘩するんですかぁ…それで、今回は突然どこかに飛ばされたシュウジさんたちの話ですぅ。導入部分?らしいですよぉ。それじゃあせーの……」
五人「「「「「さてさてどうなる峡谷編!」」」」」
数瞬間の浮遊感を感じた後、迷宮の入り口とは別の場所へと移動したのがわかった。なんだか異様にジメジメしてて、しかも暑い。
とりあえず、周囲の状況を確認するために視界を巡らせる。どうやら俺たちはどこかの建物の中にいるようだ。
上にはドーム状の天井、左には壁が霞んで見えるほどの大きな空間、右にはルイネ。そして足の下にはボコボコと沸き立つ黄緑色の沼……
「……沼?」
下を二度見する。すると明らかに落ちたら俺のライフが全てコンプリートしちゃいそうな不気味な沼が存在していた。
ここに来てようやく気がつく。俺、今空中にいるわ。そう自覚した途端、ヒュゥゥウ……と真っ逆さまで沼に落ちていった。
「認識した途端落ちるとかギャグかよっ!」
普段の自分の所業から目をそらして叫びながら、飛行魔法で滞空しようとする。が、使おうとした途端に魔力が霧散した。
ギョッとしてバッヂを見るが、問題なく機能している。つまりここはバッヂの力を超えるレベルの魔力分解作用があるってことだ。
うーんまずい。このままだとアイルビーバックしちゃう。某未来から来たアンドロイドの守護者と同じ運命辿っちゃう。
「マスター!」
しかし、そうはならなかった。ルイネの声がしたと思った瞬間、片手が掴まれてガクンッと落ちていた体が停止する。
下を見れば、あと二センチで靴の先が沼の面に付くところだった。あ、あぶねえ。ギリギリセーフだ。
安堵のため息を吐いて上を見れば、赤い龍の翼を生やしたルイネが俺の手を掴んでいた。魔法ではなく、潜在能力故に弾かれなかったようだ。
「サンキュールイネ、さすが俺の愛弟子だ」
「そこは愛妻と言ってもらいたかったな」
「それはまた今度ってことで」
いつものやりとりをしながら、少しだけ高度を上げてもらう。死の沼が目と鼻の先にあったままなんて、たまったもんじゃない。
『平気かシュウジ?』
あ、エボルトいたのね。てっきり留守番してたままかと思ったわ。
『どうやら空間の移動の際には強制的に引っ張られるみたいでな。気がついたら融合してた』
なるほど珍百景。
とりあえずいつまでもルイネに捕まっているわけにもいかないので、異空間からライオンフルボトルと携帯を取り出す。
親指と人差し指だけで器用にボトルを振ると、残りの三本の指で持っていた携帯のスロットに装填。空中に投げた。
《ビルドチェンジ!》
携帯が肥大化、展開してバイクになる。そのままだと池ぽちゃならぬ沼ぽちゃするので、ハンドルを握って受け止めた。
「すまんルイネ、あとちょっとだけ支えておいてくれ!」
「了解した!」
ルイネに一声かけると、バイクを一回転。もう片方のハンドルを握ると、そこにあったスイッチを押し込んだ。
《フライモード!》
再び音声がなり、バイクが真ん中で割れて展開するとボトルの成分を燃料にしたジェットで滞空した。言わずもがな、某戦いの神()のバイクのオマージュである。
パッとルイネの手を離し、それに着地する。フライモードになったマシンビルダーは難なく俺の体重を受け止めた。
上を向いて手招きすると、ルイネも龍の翼を消滅させて落ちてくる。その体を両手を広げ胸の中にキャッチした。そう、まるで映画のワンシーンのように。
『親方ー!空から女の子がー!』
どっちかっていうと美女?
「ふぃー、間一髪だったぜ。改めてありがとなルイネ」
「気にすることはない。それよりも……ここは一体どこだろうか」
周囲を見渡すルイネに、つられて俺も視線を巡らせる。どうやら円形の部屋らしく、直径は三十メートルはくだらないだろう。
よく見ると壁には細かな彫刻……ていうか絵のようなものが浮き彫りになっており、七人の人間が巨大な何かと戦っている。察するに解放者とエヒトか。
そして何より、この沼。ジメジメとした空気を作る蒸気の発生源もここであり、本能的に危険なことがわかる。
試しに異空間から適当なナイフを取り出して落としてみると、ジュゥッ……という音ともに一瞬で溶けた。やっぱ強酸性だったか。
「はてさて、どうしたもんかねぇ。出口らしい出口も見当たらないし。いっそのこと天井ぶち抜いてみるか?」
『いや、もし天井の上にもこの沼と同じ液体があったら頭からかぶって仲良くお陀仏だぞ』
デスヨネー。
とりあえずエボルトも分離させて三人で打開策を考えていると、不意にガコンという音がした。振り返ると、壁の一角がズレている。
その壁はそのまま横にスライドし、奥から台がせり出てくる。その上にはニコちゃん顔の人形が鎮座していた。
「あー、テステス。聞こえるー?」
突如、人形から声が発せられる。声音からして女であり、この状況で該当する声の正体は一人しかいなかった。
「おー聞こえちゃってるぜー。あんたもしかしてミレディ・ライセンさん?」
「おぉー!よくわかったね!そう、私こそがこの迷宮の創始者ミレディ・ライセンちゃんです!イェイ☆」
まるでJKのごとく、ピースするように丸っこい手を目の横に持ってきてポーズをとる人形。どうやら意思疎通は可能のようだ。
解析魔法を使って人形を見ると、魔力によってどこかに繋がっている。どうやら録音されたとかではなく、オンタイムのようだ。
女神様から授かった知識にはこうあった。解放者の一人、ミレディ・ライセンはウサギたちホムンクルスの技術で今もなお生きていると。
つまりアレは、迷宮の最深部にいるであろうミレディ・ライセンの使役するアーティファクトってことになる。
とりま後でルイネに同じポーズをやってもらうために写真を撮ると、ごほんと咳払いをする。そして人形に話しかけた。
『古今東西どこを探しても、JK的なポーズをとった喋る人形を撮影してんのはお前だけだろうよ』
でしょうね。人にできないことをやってみせる、それが俺クオリティ。
「それでミレディさんよ、ここはいったいどこだい?見たとこ普通のライセン大迷宮じゃないんだろ?」
「正解!君たちは悪い子だから特別ハードモードの迷宮にご招待しました!」
ばばーん!と胸を張る人形。たぶん本人も同じポーズとってんだろうなぁってのがわかる。ハジメだったら今頃キレて発砲してるだろう。
だが俺は違う。こういう相手には同じテンションでいったほうが得策なのだ。故に俺もいつものテンションでいかせてもらおう。
「ほほう、悪い子とな?たしかにここにいるルイネに度々いたずらはしているが……」
「主に夜にベッドの上でな」
「ちょ、マスター!エロルト!」
少し慌てるルイネ。エボルトが「誰がエロルトだ」と突っ込むと、人形は可笑しそうにケラケラと笑った。
「君たち面白いねぇ〜!いやぁ、久しぶりの会話する相手がこんなだとテンションあがるよ」
「ふっ、そいつは光栄の極み。で、結局のところここに入る条件はなんだったんだい?」
「ふっふーん、笑わせてくれたお礼に特別に教えてあげよう。嬉しい?ねえ嬉しい?」
煽るような口調で言う人形inミレディ。あー、これハジメだったらもうドンナーにタカフルボトル入れて乱射してるわ。
『お前いつもやられてんじゃん』
俺たちは煽ることを、強いられているんだ!
『自重しろ変態』
とりあえず適当におだてておくと、ミレディ人形は教えてくれる。それによると、全部で理由は三つあるらしい。
まず、なんらかの魔法でこの迷宮の位置を暴こうとしたこと。次に入り口を破壊すること、。最後に、正規のものではないホムンクルスを連れている。この三つが条件らしい。
たしかに探知魔法を使ったし、扉はシアさんごとひっぺがしたし、あいつはオスカーの隠れ家の地下深くに封印されてた失敗作だ。
「なるほど、俺全部条件満たしてたわけね」
「そゆこと〜。もう、悪い子にはお仕置きだぞ!」
「はっはー、初っ端から落ちたら溶けて死ぬ沼がお仕置きとはヘビーだぜ」
「まあとにかく、かなり難しいけどミレディちゃん渾身の力作の秘密の迷宮、楽しんでね〜」
それだけいうと、壁の中に戻っていく人形。ぱたりと壁の穴は閉じ、また密室の空間へと逆戻りした。後には俺たち三人だけが残る。
「あ、最初だから一つだけヒントあげる♡」
かと思えばまた出てきた。真面目に打開策を考えようとしていたやつならブチ切れるだろう。
「この部屋を突破するには、勇気が必要だよ。それじゃあね〜、最後にまた会おう!」
またしても引っ込むミレディ人形。本当の本当に、今度こそ俺たち三人だけになった。静寂が部屋を包む。
「で、どうする?アレ曰く勇気が必要、とのことだが」
「おいおいエボルトさんよぉ。もうわかってんのにわざわざ聞く必要もねえだろ?なあルイネ」
「うむ、その通りだ」
鷹揚に頷くルイネに、エボルトはニヤリと笑う。俺も同じような笑みを浮かべ、顔を見合わせると一斉に下を指差した。
「この部屋の出口は、沼の中だ」
「他にそれらしいギミックもないようだし」
「元暗殺者のお前らが言うんだ、間違いねえだろうな」
そう、トラップは俺たち暗殺者の専売特許。パッと見るだけでこの部屋には何も仕掛けられていないことが簡単にわかる。
なら答えは一つだ。世界一肝っ玉の据わった奴でも裸足どころか、アソコ丸出しで逃げ出すようなこの悪魔の沼に、答えは隠されている。
「ルイネ、金属糸で天井を叩いてみてくれ」
「了解した。ハッ!」
ルイネが金属糸を伸ばし、天井を叩く。すると振動が壁に伝っていく音がした。微弱なそれを聞き逃さぬように耳をすます。
振動はどんどん下へと向かっていき、沼の中へと隠れ……そしてそのまま下に突き抜けた。底があるなら真ん中に収束するはずだ。
「わかった。この部屋は逆さに試験管を立てたような形になってる。その下にはかなりでかい空間が広がってるな」
「構造はとてもシンプル、だが強酸性の沼という絶対的な扉があるような感じか……」
「いっそのこと、再生能力を魔法で高めて潜ってみるか?体外に出ないのなら魔力は分解されないはずだが……」
「いや、その必要はねえ。俺たちがいるなら、あいつも一緒に転移されたはずだ」
口に輪っかの形にした指を当て、大きく口笛を吹く。西部劇で馬を呼ぶときに使う、あの馴染みのある音だ。
ズズズズズズ………
すると、五分もしないうちに沼の表面が小刻みに揺れ始めた。あいつが近づいてきている。マシンビルダーを操作し、端っこに避難した。
ほどなくして、沼の表面が内側から盛り上がり、超巨大な黒い生物が姿を現した。バシャバシャと激しい音を立てて沼に液体が落ちていく。
その生物は、一言で言えば醜悪だった。全長百メートルを超える巨躯を覆うデコボコとした大きさの合わない鋭い形状の鱗に、不揃いな無数の牙。
大きな目の周りに小さな九つの目が付いており、両方合わせて二十個もの目を持っている。その目は今、全て俺たちの方に向いていた。
「よぉ、やっぱりいたか〝フィーラー〟」
オォォオォォォォ……
俺の言葉を理解する生物……フィーラーは、嬉しそうな声音とともに大きな口を開ける。巨大な口内が見え隠れしていた。
先ほども言った通り、フィーラーはオスカーの作った試作品のホムンクルスだ。当時の強力な魔物を無数に合成して作ったらしい。
結果として生まれたのは、破滅を体現したようなおぞましい怪物。全てにおいてあらゆる魔物の上をいく、神にすら噛み付けるだろうモンスター。
だが解放者たちでも制御不能、ありとあらゆるものを破壊して喰らい尽くす凶暴性を秘めていたが故に封印せざるを得なかった。
しかしその強大な力はうまく応用され、結果としてウサギが完成した。ポテンシャルだけなら、ウサギとフィーラーの力は互角だ。
そんなフィーラーを、俺は手なづけてオスカーの隠れ家から連れてきた。作るだけ作って死ぬまで鎖に繋がれたままではあんまりだ。
ちゃんと躾をしたので良しと言わないと何も食べないし、俺たちの言うことならなんとか聞く。今やエボルトに次ぐペット枠だ。
「誰がペット枠だコラ」
「おっといけねぇ、本音が出ちまった」
「終いにゃブラックホールフィニッシュ顔面に叩き込むぞ?」
「そこは泣くんじゃないんかい」
「エボルトが泣く……なんだか違和感があるな」
「ルイネ、そのマジで引いてる顔やめろ」
軽口を叩きながら、開けられたフィーラーの口の中に入る。そしてリモコンでマシンビルダーを操作し、舌に張り付いた。
しっかりと固定したことを伝えると、フィーラーは唸り声を上げた後バックンと口を閉じる。次の瞬間、沼に潜ったのか揺れた。
「これでよし、あとはフィーラーがそれらしい所まで運んでくれるだろ」
「その間何してる?」
「そう言えば新作のつまみができてな、試食して欲しいのだ」
「おっ、いいねぇ〜「♪〜」ん?」
ルイネの新しいつまみに興味を示していると、工場を連想するような音が鳴った。携帯を取り出すと、ハジメから着信だ。
「はいはいもしもし、こちら星を狩る会の受付です。ご用件は?明日の幹事の件ならエボルトに……」
『アホなこと言ってんじゃねえ。今どこにいんだよ』
「最後まで言い切る前にバッサリ切り捨てるのはどうかの思うの」
『どんだけお前のボケ聞いてきたと思ってんだ』
「ごもっともです、はい」
とりあえずこちらの状況を説明する。事前に話しておいたとは言え、ミレディが生きていたことにハジメは驚いてた。
『ったく、また迷宮で離れ離れかよ。ほんとにお前厄介ごと好きだな』
「ほら、俺ってモテるから」
『厄介ごとにモテても嬉しくなさすぎるだろ……まあいい、俺たちは普通の方の迷宮を攻略する。どっかで合流できるだろうから、お前らも頑張れ』
「おーう、そっちもなー」
それきり通話を終了する。ハジメたちは普通の迷宮に挑むのか。知識を見た感じ結構イライラする迷宮だったが、まあこっちよかマシだろ。
そう自己完結した後、俺は暇つぶしのためルイネの新しいつまみ(キュウリをハムで包んだみたいなやつ)を片手に、三人で酒(自作です)を酌み交わして雑談を始めた。
「で、それがよー」
「へえ、そうなのか……」
「マスター、こちらのつまみはいるか?」
「おっサンキュー。ってこれは大好物のタコとワカメの酢の物ジャマイカ」
「げっ」
「さあエボルト、一緒に食べようか。大丈夫、死にはしないさ」
「誰が食うか!」
ほれほれとエボルトに酢の物を食わせようとしていると、不意にフィーラーの体が大きく揺れた。どうやら停止したようだ。
三人揃って前方を見ると、ゆっくりとフィーラーが口を開いていく。そして約1時間ぶりになる外の景色が見えた。
外は、相変わらずあの緑色の液体で一色に染まっている。いや、ほとんど染まっているというべきか。目の前に石の道があったのだ。
マシンビルダーを通常モードに戻すと、エボルトを体内にしまってルイネを後ろに乗せる。そうするとアクセルを吹かせ、一気に口内から飛び出した。
「よいしょっと。ありがとなフィーラー!また後で会おうぜ!」
オォォオォォォォォォ…………
どことなく嬉しそうな咆哮をあげたフィーラーは踵を返し、沼の中へと潜った。最後に棘だらけの尻尾がゆらゆらと揺れながら消えていく。
それを見送ると、道の先へと視線を移した。するとそこには、荘厳な雰囲気を醸し出す神殿のようなものが鎮座している。
「どうやらあそこが本命みたいだな。はてさて、どんなやつが待っているやら」
「マスター、いこう」
『どんなのが来ても、俺たちなら楽勝さ』
ルイネとエボルトにそれもそうだな、と笑い、俺はバイクのアクセルを踏むと神殿に向けて一直線に走っていく。
こうして、俺のライセン大迷宮ver秘密のヘルハードコースの攻略は始まったのだった。
強酸性の緑色の液体……もうわかるな?(だからわからry
超眠い中書いたから適当感パナい……
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