星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、転スラの作画に感動している作者です。

シュウジ「よーっす、シュウジだ。前回はついに最後の試練が始まったぜ」

ミレディ「いやぁ、一週間辛かったねぇ」

シュウジ「お前のせいだけどね」

ミレディ「そうだっけ?でもそんなの関係ねぇ!」

シュウジ「でもそんなの関係ねぇ!でもそんなの関係ねぇ!」

二人「「はいオッパッピー!」」

ハジメ「古い上にウゼえ……今回は最後の試練の話だ。それじゃあせーの…」

三人「「「さてさてどうなる峡谷編ラスト!」」」


最後の試練

『フッ!』

 

  瞬間移動でミレディ……エイリアンミレディとでも呼称しようか……の眼前まで一瞬で移動すると、まずは小手調べにと正拳突きを放つ。

 

  また、同様に変身したことで瞬間移動能力を獲得したルイネが背後に回り、鋭い上段蹴りを首筋めがけて振るった。

 

 

 

 ドッゴォォォオォォオォォォオオォォンッ!!

 

 

 

  しかし、それはミレディの右手と尻尾によって轟音とともに受け止められる。思わずほう、と仮面の下で呟いた。

 

  だが外に逃がされた衝撃波は消えることなく、部屋中に広がってステージに放射状にヒビが走った。まあそこそこ本気で打ち込んだからな。

 

『普通のゼノモーフはここで終わりだったんだがな』

「ふふん、伊達に何千年も生きてないよ。品種改良する時間はいくらでもあったのさ」

「ならば、私たちはそれを上回ろう!」

 

  ルイネの言葉を皮切りに、俺たちは動き出す。オーラの爪を形成したルイネが挟み込むように腕を振るうが、深くしゃがみ込んでミレディは躱した。

 

  その体制のままルイネに足払いをかけるがルイネはジャンプしてかわし、そこを俺が念動力を使って持ち上げ、吹き飛ばす。

 

  そのまま壁に叩きつけようとするも、その前にミレディの動きが緩やかになる。そして壁に足をつけ、片手で体を支えて着地した。

 

「やはりダメか」

『見たとこ、重力を操作する神代魔法か?』

「さーて、どうだろうね。その答えは……教えてあげないよっ!」

 

  俺をして黒い影と見紛うほどの速度で突進してきたミレディが、鋭い鉤爪を振ってくるのをすっと上半身を後ろに倒してかわし、前蹴りをかます。

 

  腕をクロスして防いだミレディは、横から膝蹴りをしようとしたルイネの足を尻尾で絡め取ると投げ飛ばした。

 

  ミレディ同様に壁に着地しようとしたルイネだったが、突然横に吹き飛ぶ。いや、まるで横に〝落ちた〟とでも言った方が良いか。

 

  かろうじて体の向きを変え、反対側の壁に着地するルイネ。推測するに、重力の方向を変えられたのだろう。

 

「少し、厄介だな」

「ふふん、残念だったねぇ〜」

『ほお、喋る暇があるのか?』

 

  重力のベクトル変更対策にスーツの力で重力の方向を固定すると、オーラでミレディを拘束しラッシュを全方位から叩き込む。

 

  ミレディは最初はいなすか防いで対応していたが、スーツの力でいつも以上に攻撃精度が上がっていくとやがて防げなくなった。

 

  そのまま畳み掛けるため、さらに多く拳を繰り出す。気分は某クレイジーなダイヤモンドのス◯ンドを背負った男である。

 

『ゼェ⤴︎クゥ⤴︎ト⤴︎の諸君!』

 

 不死身ワームニキやめろ。

 

「くっ、調子に乗らないでよねっ!」

 

  不気味に目を光らせるミレディ。とっさに身構えるが、何も起こらなかった。

 

「な、どうして……」

『もしかして重力の方向を変えようとしたのか?なら残念だったな、それは俺には効かん』

「うっそぉ!?それって反則じゃない!?」

『反則も眼福もあるか。今だルイネ!』

「はぁああっ!」

 

  部屋全体の重力を操作し、自由にしたルイネが頭上から襲いかかる。風をきって落ちる踵を、ミレディはなんとか回避した。

 

  そのまま地面に着地したルイネは、天井に向けて手をかざす。すると天井の暗がりから無数の石でできた剣がミレディめがけて落ちてきた。

 

「くっ、こなくそぉ!」

「させんっ!」

『逃すと思うのか?』

 

  形状も大きさもバラバラのそれをミレディは回避しようとするが、俺のオーラに加えて糸状にされたルイネのオーラに全身を拘束され、身動きが取れなくなった。

 

  ミレディはその身で全ての剣を受け止める。外骨格が弾くものもあったが、ほとんどが全身に突き刺さった。

 

  数十秒ほど続いて、剣の雨は止まる。濛々と煙の立ち込めるステージの上では、無数の剣で串刺しになったミレディがいた。

 

  貫通した傷口から、ビシャビシャと黄緑色の血がこぼれ落ちる。それはゼノモーフのものと同じようで、床をドロドロに溶かしていた。

 

『さすがに、それなりにダメージが入ったんじゃねえのか?』

 

 だといいがな。

 

『どうした?もうバテたか?』

「ぐふっ……たしかに……私の魔法が効かないのは……想定外…だったよ……でも……この程度では……終わらない!」

 

  ギンッ!と強い光がミレディの目に宿る。かつて神殺しをしようとしたものに相応しいその眼光に、思わず目を細める。

 

  尋常でないオーラを発するミレディは、地面に磔になった体を無理やり動かす。当然傷口が大きくなり、より多くの血がこぼれ落ちた。

 

『いや、違う。むしろそれを狙ったのか……!』

「ガァアアアァァアアアァアアアアァアアアッッッ!!!!!」

 

  獣のような咆哮をあげて、ミレディは大きく体を動かす。強酸性の血液により腐食した剣が木っ端微塵に砕け、彼女は解放された。

 

  思わず眼を見張る俺たちの前で、煙を上げてミレディの傷が修復されていく。十秒もする頃には、完全に傷が塞がっていた。

 

「……どうやら長年かけてバージョンアップしたというのは本当らしいぞ」

『みたいだな。こんな能力従来のエイリアンにはなかった』

「ふぅ、ほんのちょっと痛かった。さて、このままじゃあ勝てなさそうだから本気出させてもらうよ」

 

  またしてもバキバキという音を立てて、ミレディの体が変わっていく。ポニーテールが尻尾になり、より攻撃的なフォルムへと変化していった。

 

  最終的に、先ほどまでより一層怪物じみた姿になる。オーラの質も一段上になっており、決して油断できないだろう。

 

「さあ、いくよ」

『いくらでもかかってくるがいい。殺してやるよ』

「お前を、倒す」

 

  俺たちもまた、暗殺者として明確に殺すことを宣言する。それすなわち、ここからは()()()()()()()()()ではなく本気でいくということだ。

 

  異空間からルインエボルバーを取り出し、腰だめに構える。ルイネもオーラの糸を揺らめかせ、ミレディは体を深く沈めた。

 

  一瞬睨み合い……次の瞬間、ヒュッという音を残して突撃。次に部屋に響いたのは、ミレディの攻撃が俺たち二人の攻撃とぶつかり合う衝撃音。

 

「はぁあああぁああっ!」

『フッ!』

「ラァッ!」

 

 さあ、後半戦のスタートだ…!

 

 

 ●◯●

 

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!

 

 

  最初の衝突をはじめとして、超高速で移動を繰り返しながら部屋中を縦横無尽に駆け回り、何度も互いへ攻撃を仕掛ける。

 

「ふっ!」

「よっと!」

「ハッ!」

「そうはいかないよん!」

 

  振り下ろしたルインエボルバーをミレディは腕で受け流し、そこを狙って放たれたルイネのオーラを頭の触手で弾けさせた。

 

  取り回しの時間が惜しいと判断し、すぐさま異空間からスチームブレードと長めのナイフを装備。再度斬りかかっていく。

 

  先ほどの倍以上の手数で攻めるが、ミレディはそれすらも反応し防いできた。さすがは〝解放者〟の一人なだけはある。

 

  ならばと、近接攻撃はルイネに任せて瞬間移動で後退し、異空間からオレンジと黒、鉄色の銃……ホークガトリンガーを取り出す。

 

『何気に初登場だな』

 

 毎回メタいんだよお前。

 

 

《テン!トゥウェンティ!サーティ!フォーティ!フィフティ!シックスティ!セブンティ!エイティ!》

 

 

  オレンジ色のリボルバー……を回すたびにタカの頭部を模したパーツの目が輝き、エネルギーがチャージされていく。

 

《ナインティ!ハンドレッド!》

『こいつでもくらいな!』

《フルバレットォ!》

 

  上限までチャージが完了したホークガトリンガーの銃口をミレディに向け、引き金を引く。六門の銃口から無数のタカ型のエネルギーが吐き出された。

 

  それは不規則な軌道で飛翔し、ミレディの体に着弾する。ルイネは直前で飛び退いて回避していた。

 

  ドドドドドドッ!!という轟音を響かせて全身を貫くエネルギー弾に、しかしミレディは臆することなく大口を開けて超音波のような咆哮を上げて消し飛ばした。

 

『ヒュ〜、ナイスガッツだねぇ』

「その余裕の表情がいつまで続くかな!」

 

  一瞬で懐に潜り込んできたミレディのアッパーを躱し、異空間からホークガトリンガーをアザンチウム製の大鎌に持ち帰ると斬りつける。

 

  ミレディはそれを真剣白刃取りで受け止め、頭と臀部の尻尾で上下から挟み込むように持ち手を粉砕した。

 

『マジか!』

「ふんっ!」

 

  壊れた大鎌の刃を投げ捨て、両側から挟み込むように腕を振るおうとして……後ろから巻きついた赤い糸状のオーラに止められた。

 

  ミレディの背後にいるルイネが糸状のオーラを引くと、両腕が二の腕の半ばから斬り飛ばされる。俺は無防備な胴体に拳を叩きつけるため拳を握った。

 

「なぁめぇるぅなぁ!」

 

  しかし、ボコッ!という音ともに一瞬でミレディの両腕が一回り巨大になって再生した。さらに、カマキリのように湾曲した刃が付いている。

 

  ミレディはそれを、踵を返して俺ではなくルイネに振るった。鎌鼬さながらに飛んだ斬撃をルイネは跳んで回避するが、一瞬のうちに移動したミレディに叩き落とされた。

 

「がはっ!」

『ルイネ!』

「まずは一人!」

 

  地面にめり込んだルイネを蹴り飛ばしたミレディは叫ぶと、今度はこちらに襲いかかってくる。

 

  鋭く振るわれたカマを、異空間から取り出した大太刀で防いだ。ミレディは更にギリギリと押し込んできて、俺はそれを押し返す。

 

  最終的に俺が押し勝ち、超至近距離での打ち合いが始まった。流水のように振るう俺の大太刀を、ミレディは見事に打ち返す。

 

「多彩だねぇ……!」

『あいにくと、伊達に長生きしてなかったからな……!』

 

  俺の戦闘スタイルは、特にこれといって決まっていない。

 

  武器を使うときもあれば素手の時もあるし、あるいは人の体を武器にすることもある。

 

  無論、最初はそうではなかった。だが千年も生きてりゃ時代も進歩するもんで、既存の方法だけじゃ暗殺できないこともあったのだ。

 

  故に俺は、長い時間を有用に使って様々な武器や戦闘技術を吸収してきた。ルイネの操糸術もそのうちの一つである。

 

『ラァッ!』

「づっ……!」

 

  居合気味に放った一撃が、ミレディの体を捉える。すぐに再生するが、動きが止まった一瞬の隙に体を一回転させて一閃。足を切り落とした。

 

  一瞬遅れ、足がずれてこぼれ落ちる。地面に落ちるミレディの首を掴み、抵抗されないよう両腕も切り落とし、更に毒を注入した。

 

「ぐっ、これは……!」

『そろそろフィナーレといこうか!』

 

  ぐぐっと腕を引き絞ると、ミレディを上空に投げ飛ばす。そこに俺が相手しているうちに復活したルイネが跳躍した。

 

 

《ガタガタゴットン!ズッダンズダン!ガタガタゴットン!ズッダンズダン!》

 

 

  ミレディめがけて跳びながら、ルイネはドライバーのレバーを回す。俺もエボルドライバーのレバーを回し、飛び上がった。

 

 

《READY GO!》

 

 

《〈ハザードフィニッシュ!〉グレェートドラゴニック フィニーッシュ!》

 

 

《ブラックホールフィニーッシュ!》

 

 

『「はぁぁああああぁぁぁあっ!!!」』

 

  雄叫びをあげながら、ルイネが背中から。俺が正面からミレディめがけ、エネルギーが収束した足を叩き込む!

 

  虚無のエネルギーと破滅のエネルギーを纏った蹴りはそれぞれ胸、腹部を貫き、飛び上がった時とは反対の場所に着地する。

 

 

《ヤベーイ!》

 

 

Ciao(チャーオー)?》

 

 

「ぐ、ぁああああぁぁあああぁあっ!」

 

  ドライバーが言葉を吐き出すのと同時に、爆発。背後からの爆風がローブを激しく揺らす。

 

 

  そうして俺たちは、ミレディに勝利を収めた。

 

 

 ●◯●

 

 

  ドライバーからボトルを抜きながら振り返った。変身が解除され、視界が普段のものに戻る。

 

  ドライバーを異空間に放り込みながら、同様に変身を解除したルイネとともに落ちてきたミレディに近づく。

 

「ごふっ……」

 

  近づいて見たミレディは、見るも無残な姿になっていた。頭部以外のほとんどが真っ黒に炭化しており、瀕死だ。

 

「よおミレディ、調子はどうだ?」

「ごほっごほっ、最悪だよ。まったく、こーんな可愛いミレディちゃんに容赦なく殺人キックかますとか鬼畜だねぇ〜」

「お前にゃ言われたくないね」

『お前にもな』

 

 やかましいエボルト。

 

「でも……うん。これだけの強さを持つなら、私の神代魔法を託せる。信念も申し分ない。改めて、合格だよ」

「……そいつはありがとな」

 

  頷く俺に、力なく微笑むミレディ。どうやらもう、時間がないようだ。これほどの傷、いくらその体でも再生できないのだろう。

 

  そう思っていると、不意にミレディは笑みを消す。そして真剣な表情になって俺の目を見つめた。

 

「私からの最初で最後のお願い。聞いてもらってもいい?」

「おう、どんとこい………つっても、だいたい予想付いてるけど」

「だろうね…………………………神を、殺してくれ。このクソッタレな世界を作った、私から平和も家族も奪った神を………殺して」

 

  真剣な声音と強靭な信念の宿る瞳で、強く訴えかけてくるミレディ。そこからはかつて見た、先代の瞳に似たものを感じた。

 

  知識によれば、最初に〝解放者〟を名乗り他の世界各地の〝解放者〟たちを神殺しに誘ったのは、ミレディだという。

 

  彼女はほかの〝解放者〟たちより人一倍、世界を救わんとした者としての自負があるのだろう。でなければ、こんなに強い目はできない。

 

  それだけの感情をぶつけられたのだ。ならば俺たちもまた、本気でそれに取り合わなくてはならないだろう。

 

「……かつて、平和を守るために命を捧げた〝世界の殺意〟の名にかけて。確かにその願い、聞き受けよう」

「同じく、その後継者候補として」

「……そっか。最初に感じたシンパシーはそういうことか……………頼むよ、類友たち」

 

  その言葉を最後に、満足そうな顔でミレディは目を閉じた。それきり動く気配はない。おそらく、生き絶えたのだろう。

 

  部屋の中を、沈黙が支配する。エボルトも分離して、三人でじっとミレディの亡骸を見つめた。

 

  いくら見つめても、ミレディは二度と帰ってはこない。当たり前だ、俺たちがこの手で倒したのだから。

 

  しばしの後。俺はおもむろに口を開く。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、そろそろシリアスな雰囲気終わりでいい?」

「あ、やっぱバレてた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  パッチリと目を開くミレディ。数分前までの空気は何処へやら、ウザい煽りをしまくってきた時の雰囲気に戻ってる。

 

「うーん、こんなに早くバレるとはミレディちゃん予想外」

「ははっ、類友舐めんな。ウソ死になのはすぐにわかったぜ☆」

「たっはー、流石だねぇ。迷宮攻略中の様子見てわかりそうだなーとは思ってたけど」

「どうせそんなこったろうと思ったよ」

「やれやれ……」

 

  肩をすくめるエボルトと、腰に手を当てて苦笑するルイネ。そんな二人に対し、ケラケラと笑う俺とミレディ。

 

  とは言うものの、ちょっと考えりゃ誰だってわかることだ。ここで本当にミレディが死んじまえば、次の挑戦者はどうなるって話だからな。

 

「見たとこその体も、あの人形みたいに操作してるんだろ?」

「正解!この義体は本体のクローン品で、試練のために用意したものだよ。本当の私はもっと強いぞ〜?」

「おお、そりゃ怖えな」

 

  おどけて見せると、ミレディは楽しそうに笑う。うーん、やっぱシリアスなのよりこっちの方が気楽でいいわ。

 

「んで、この後どうすりゃいいの?」

「今ちょうど上での戦いも終わったから、本体の私に会いにきて。ああ、あと……」

 

  ミレディは頭を動かし、後ろを見る。すると今にも崩壊しそうなステージの上に、音もなく天井から祭壇が降りてきた。

 

  ヒビだらけのステージに着陸した祭壇は、パシュッと音を立てて展開する。そして中から何かがせり上がってきた。

 

  ルイネたちと目配せして、祭壇に近づいてその何かを見る。するとそれが、緑色の髪をした3〜5歳程度の幼女であることがわかった。

 

「その子が、私が作ったホムンクルス。今は休眠状態だけど、この部屋から出てしばらくすれば目を覚ますから。連れて行ってあげて。あ、あと名前もつけてあげて」

「りょーかいりょーかい。大事に預かりますよっ……と」

 

  背中と膝の裏に手を回すと、幼女を持ち上げる。見た目通りの軽さであり、まったくもって重くなかった。

 

  そうして幼女を持ち上げた途端、祭壇が元に戻って天井へと戻っていく。その代わりに何の変哲も無い石板が降りてきた。

 

  二人乗りだというのでエボルトを吸収し、ルイネと二人で乗り込む。そうすると動けないミレディの方に向き直った。

 

「そんじゃあ、ほんの少しのお別れだ」

「良い戦いだった。また後ほど会おう」

「私も君たちに会えてよかったよ。じゃ、後でね〜」

 

  ミレディが言い終えるのと同時に、石板が浮いて天井へと向かう。上を見上げれば、天井の中心には石板と同じ大きさの穴が空いていた。

 

  するりと穴を通り抜け、さらに上へと上がっていく。はてさて、ハジメたちの方はどんな感じだったのかねえ。

 

「にしても、長いなぁこれ」

『しりとりでもするか』

「もはや定番化してきたな」

「じゃあ最高に気分がハイってやつだ」

「だ、だ……ダンゴムシ」

 

  いつも通りしりとりを始める。今の俺はシリアスな空気で疲れてネタに飢えているのだ。いつもか。

 

  そうしてしりとりを続けることしばらく、ようやく上に光が見えてきた。到着に備え、ジョジョの奇妙な大冒険でしりとりを終わらせる。

 

  程なくして、石板が出口の穴を通り抜けて停止する。すると目の前に広がっていたのは……

 

「「「「…………………」」」」

「あっちょ無言はやめて!マジあの、お願いだから無表情でボコるのやめて!?」

 

  ハジメたちが本物のミレディをボコボコにしている光景だった。うんまあ、こうなることはわかっていたけども。

 

「あっシュウジくん!この子たち止めてくれないかな!?入ってきてからずっとこんな感じなんだけど!」

「エボルト、今日の晩飯なんだっけ」

「ちくわとキノコの炒め物」

「カロリー低っ」

「まさかのシカト!?」

 

  結局ハジメたちの気がすむまで、ミレディはボコられ続けた。えっさっき願いを聞いたのにその扱い?それはそれ、これはこれでござる。

 

「うう、酷い目にあった………」

「うるせぇ、自業自得だろ。わかったらさっさと神代魔法よこせ。じゃないとまたボコる」

「もうやだこの子、戦ってる時からほんと横暴……」

 

  よよよ……と嘘泣きをしながら、住居に案内してくれるミレディ。そこにあった巨大な魔法陣に誘われ、全員でそこに入る。

 

「おお、これオスカーのとこのと同じ感じだな」

「みたいだな。ていうかなんだその子供。攫ってきたのか?」

「ちょっとはじめん?その発言は流石に訴えるよ?訴えちゃうよ?」

「やってみろ。裁判所ごとぶっ潰す」

 

  一週間ぶりにいつものやりとりをしているうちに、ミレディが魔法陣を起動して脳に直接神代魔法が刻まれる。

 

  入り込んできた神代魔法は、やはりというべきか予報通り重力を操る魔法だった。言うなれば重力魔法か。

 

『安易だな』

 

 捻った名前考えるのメンドス。

 

『メントスみたいに言うな』

 

  そういや地球にいた時にメントスコーラしてもろに炭酸被ったハジメに殴られたな。

 

「はい、これで終わり〜。んー、白髪くんとバグウサギちゃんは適正ゼロだね。面白いくらいに」

「やかましい、そんなのわかっとるわ」

「ぜ、ゼロ……」

「キレウサギちゃんは、まあホムンクルスだからね。生成魔法以外は手に入れられないよ」

「ん、わかってる」

 

  イラッとした顔で言い返すハジメに、ガックリとうなだれるシアさん。まあ初めての神代魔法なのに使えないって言われたらねぇ。

 

「で、シュウジくんとルイネちゃんは適正バッチリ。ていうかシュウジくんはなんで私より適正高いの?」

「私が神だ」

「よろしいならば戦争だ」

「そのネタわかるんかい」

 

  イェーイとハイタッチする俺たち。この先もミレディとは仲良くやれそうである。

 

「金髪ちゃんも同じく適正バッチリだね。十全に修練すれば……って」

 

  ミレディが言葉を止める。ユエの方を見てみれば、無言で自分の胸に向かって重力魔法を使っていた。

 

「あの、胸周りの重力を重くしても大きくはならないよ?」

「…………………………」

「いや、そんな絶望したような顔で見られても」

 

  その後ユエがミレディのおっpゲフンゲフン、胸を引きちぎろうとするという事件があったが、まあ何事もなく終了した。

 

『何事もあるよね?思いっきりあるよね?』

 

 幻聴じゃないか?

 

「おら、終わったんならさっさと攻略の証よこせ。あと使えそうな鉱石とかアーティファクトも」

「本当に横暴極まりないなぁ!」

 

  ジト目をしながらも、言われた通りのものを出現させるミレディ。かなり大量であり、攻略報酬としては申し分ないだろう。

 

「他にもあんだろ、ジャンプしてみろよほら」

「んもー、これ以上は何もないわよー!」

 

  だが、そこで終わらせないのが我が幼馴染兼親友クオリティ。カツアゲのごとくミレディをジャンプさせる。

 

「そんなわけねえだろ。スカートの中にまだあるんじゃないのか?」

「きゃーセクハラー!」

「んもうハジメさん!こっちのスカートはいつでもウェルカムですのにぃ!」

「お前のスカートからは鉱石もアーティファクトも出てこないだろ!」

「あんた最低か!」

 

  そんなこんなで一悶着起こすハジメ。特に止める気もないので傍観していると、キレたミレディがブロックで空中に移動した。

 

「何逃げてんだコラ、さっさと降りてこい」

「はぁ、最初の攻略者がこんなのって……ついてないなぁ私。まあいいや、君たちには強制退去してもらいます!」

 

  ミレディが天井からぶら下がっていた紐を引くと、ガコンという嫌という程聞き慣れた音ともにトラップが発動する。

 

  次の瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は、瞬く間に部屋の中を激流で満たす……………俺とルイネを避けて。

 

  同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。

 

「てめっ、これは……!」

「さよなら〜」

 

  便所で流される排泄物さながらの扱いに穴の端を掴むハジメが何やら叫ぶが、その前にミレディが手をかざして重力魔法を使い、ユエたちもろとも無理やり落とした。

 

  覚えてろよおぉぉぉ……とハジメたちの声が遠くなっていく中、水が新たに空いた穴から排出されていく。残ったのは俺たち二人とミレディ。

 

「いやあの、なんで俺たち残されたん?」

「だってその子寝てるのに流しちゃったら窒息死しちゃうじゃん」

「納得」

 

  攻略の証を受け取ると、代わりに用意された魔法陣の上にルイネと共に立つ。行き先はハジメたちが流されたのと同じ場所のようだ。

 

「ほんじゃ、またな。会う機会あるかわからないけど」

「重ね重ね感謝する。世話に……世話にはなっていないか」

『たしかに』

 

  最後に挨拶をする俺たち。思えばこの迷宮では色々あったものだ。トラップに煽り、トラップに煽りと煽り、トラップに煽りと煽りと煽り……八割煽りしか受けてなかったわ。

 

「うん、改めてその子をよろしくね。それじゃあ……君たちの未来が、自由な意思のもとにあらんことを」

 

  笑顔と共に放たれたその言葉を最後に、魔法陣が発動して俺たちはミレディの部屋から転移させられる。

 

 

 

 

 

  こうして、俺たちのライセン大迷宮攻略は終わりを迎えたのだった。




これにて二章は終わりです。
次回からまたクラスメイトサイドです。
三章…このアクセス数で書けるだろうか…
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