香織「みなさんこんにちは、白崎香織です。数話だけどよろしくお願いします」
美空「石動美空です。よろしく」
ヴェノム「呼ンダカ?」
愛子「ある意味あっているけど違いますよ。というか白崎さん、性別を選べとは言いませんが人のいないところでああいうことはしなさい」
香織「ひゅっ!?」
美空「?どうしたの香織」
香織「にゃ、にゃんでもない!にゃんでもないから今こっちみにゃいで!」
雫「なんでもないこともないでしょう。石動さんにキ…」
香織「わー!わー!わー!」
ヴェノム「騒ガシイモノダ…今回ハエボルトトヤラガ登場スルラシイゾ。デハ息ヲ合ワセテ……」
四人『さてさてどうなるクラスメイトサイド』
謎の怪物
シュウジたちがミレディのライセン大迷宮で楽しい楽しい試練を受けている頃。
今、私こと白崎香織を含めた光輝くん率いる勇者パーティは、【宿場町ホルアド】にて一時の休息を取っていた。
その理由は、いよいよオルクス大迷宮の七十階層を超えたからである。そこから魔物の質、量ともに凄まじく攻略が難しくなったのだ。
そのため、既に私たちの戦闘についていけなくなったメルドさんたちのアドバイスもあり、二、三日休息をとることとなった。
無論、明らかに余裕な龍太郎くんや一刻も早く南雲くんを見つけたい美空と私は不満な顔をしたが、メルドさんたちに無理をさせられないので仕方がなく街へと戻った。
さて。そんな中、今私が何をしているかと言うと……
グルルルッ!
低いうなり声をあげ、剣呑な光を目に宿す小型の狼のような魔物……〝ディロス〟数匹と、私は真正面から向き合っていた。
ここは町外れにある森。迷宮に比べて比較的弱い魔物が生息しており、ここで魔物を倒したり何かを採取したりして生計を立てる冒険者さんもいるらしい。
そして今私がやっているのは、戦闘訓練。他には誰もおらず、私一人だけだ。雫ちゃんたちには内緒の特訓である。
しっかりとディロスたちの目を睨み返しながら、油断なく腰だめに構えた長杖を握りしめる。そして静かに詠唱を始めた。
「フゥー………抑する光の聖痕、虚より来りて災禍を滅せよーー〝
体内の魔力を対価にして、光魔法の一つ〝縛光刃〟を使う。するとまるで剣のような、十字架型の光の刃が空中にいくつも出現した。
これは本来、相手を地面に縫い付けることで拘束するための魔法だ。攻撃力は皆無で、傷つけることはできない。でも……
「災い滅する光の聖痕 今我が手に来りて刃となれ」
続けて詠唱すると、〝縛光刃〟が一つに収束する。そして手に持った長杖の先端にまとわりつき、まるで光の槍のように変化した。
これは〝縛光刃〟から私が編み出した技だ。縛光刃をくっつける長杖がないとできないが、正真正銘オリジナルの魔法である。
縛光刃が長杖に固定されたのを確認すると、私はもう一度ディロスたちを見る。用意ができたとわかったのか、ディロスたちは襲いかかってきた。
「ハッ!」
キャインッ!
まず、トリッキーな動きで飛びかかってきた先頭にいたディロスを長杖改め、〝縛光槍〟で打ちはらう。
刃の中に隠された長杖の先端はディロスの頬を捉え、吹き飛ばして近くの木に打ち付けた。立て続けにその後ろに隠れていた一匹に石突きで刺突。
まとめて吹き飛ばされた二匹はすぐに立ち上がろうとするけど、足に力が入らないようで地面の上に転がっていた。
これが縛光槍の効果である。長杖の物理的な攻撃と共に、当てた箇所の自由を奪うことができる。かなり苦労して作った甲斐あって、我ながら強力な技だ。
グルァアッ!
「フッ!」
左右に回り、連携して突進してきたディロスをジャンプして回避。着地と同時に槍で足を払い、回し蹴りを下顎に叩き込む。
光輝くんをサンドバt……ゲフンゲフン練習台にして鍛えた蹴りは果たして効果があったようで、ディロスは簡単に吹っ飛んだ。
そうして、私たちは最初の位置に戻る。油断できないとわかったのだろう、もがきながら立ち上がったディロスたちは警戒した目を向けてきた。
「さあ、どこからでもかかってくるといいよ」
そんなディロスたちに対し、挑発するように槍の切っ先を向ける。怒り狂ったディロスたちは、再び襲いかかってきた。
迫り来るいくつもの牙や爪を、縛光槍でいなす。あるいはかわしてカウンターを入れて逆にダメージを与えた。
二人が奈落の底に消えてから、もう三ヶ月弱。その間、私は着実に実力を上げている。現在のハザードレベルは3.6だ。
訓練相手は主に龍太郎くんで、次に槍術をメルドさんに。そして最後に光輝くんを実験d……オッホン練習した技の鍛錬に付き合ってもらっている。
結果雫ちゃんよりは弱いものの、なんとか一人で戦闘をこなせるようになった。足りない部分は、回復魔法や光魔法で補っている。
特に頑張ったのは今も使っている縛光刃などの補助魔法だろう。本来なんの攻撃性も持たないそれを攻撃転化するのは至難の技だった。
そう、つまり今の私は白崎香織ではなくスーパー白崎香織なのだ。シュウジくんが見たらバーサークヒーラーとか言われそうだけども、スーパー香織ちゃんなのだ。
そんな私だが、すでに訓練を始めてから数時間。いくらハザードシステムの恩恵で体力が底上げされているとはいえ、流石に疲れてきた。
「だから、そろそろ終わらせる!」
ギャンッ!
また飛びかかってきたディロスを縛光槍で殴り飛ばすと、途中から参加した烏のようなバハルという魔物の攻撃を転がってかわす。
バハルの攻撃方法は硬化する羽をナイフのように飛ばすことであり、立ち上がった途端飛んできたのを槍を回転させて弾いた。
「〝
そして羽が生えてくるまでの隙をつき、魔法を使う。すると空中に光の波紋が広がり、そこから鎖が出てきてバハルを拘束した。
困惑するバハルに足に力を込め、跳躍。「はぁああああっ!」という雄叫びと共に、心臓に槍を突き刺した。
縛光槍の刃は、触れたものの自由を奪う。つまり心臓の動きを止めれば当然、そこで死に至るのだ。
ふっと脱力したバハルが落下していく。それと共に地面に降り立つと、そこですでに長杖でボコボコのディロスたちが四方から突撃してきた。
「守護の光は重なりて 意思ある限り蘇る 〝
詠唱とともに手をかざすと、手の平サイズに凝縮された何枚もの障壁が出現してディロスたちの突進を食い止めた。
なおも押し込んでこようとするディロスたちに、私はわざと障壁を解除。バランスを崩すディロスたちに槍を振るう。
「ふっ!はっ!せいやっ!」
吹き飛ばされ、お腹を晒すディロスたちに私は槍を突き出し、一匹一匹確実に心臓の動きを止めていった。
地面に落ちる頃には、ディロスたちはもう絶命している。私は最後の一匹に槍を突き出した体制のまま、それを見守った。
数秒待って、完全に倒したことを確認すると体制を元に戻す。槍から刃を消し、長杖に戻すとフゥと一息吐いた。
「よし、今日もいい感じだった!」
「なーにーがー、いい感じですって?」
その声を聞いた途端、ビクゥッ!とその場で飛び跳ねた。ここにいるはずのないその人物の声に、だらだらと冷や汗が流れ出す。
まるで錆びた蛇口みたいな動きで後ろを振り返れば………案の定、そこにいたのは雫ちゃんだった。木に寄りかかり、こわーい笑顔を浮かべている。
「え、えっと、な、なんでここにいるのかな?」
「それはこっちのセリフよ。こんな町外れで一体、何をしているのかしら?」
「あ、あははー……訓練、かな?」
「かな、じゃないわよこのお転婆娘!」
雫ちゃんの雷が落ちた。ズカズカと歩み寄ってきた雫ちゃんは私の両頬を指でつまむと、ぐいーっと引っ張ってくる。
「い、いひゃい!いひゃいよひぎゅくひゃん!」
「黙りなさい!まったくいつも一人で無茶して!龍太郎のこと言えない脳筋娘が!」
「ご、ごめんなひゃい〜!」
「いーえ、今日という今日は許しません!そこに直りなさい!たっぷり説教してあげるわ!」
お母さんモードになった雫ちゃんには、シュウジくんですら敵わない。当然私なんかが反抗できるわけもなく。
結局地面に正座して、私は雫ちゃんの説教を受けることとなった。ガミガミと腰に手を当てて言う雫ちゃんは、本当にお母さんのようだった(遠い目)
「まったくあんたはいつもいつも!」
「うぅ……すみませぇん……」
「おーい、雫、香織ー」
怒涛の剣幕にいよいよ涙目になっていると、雫ちゃんの背後から声が聞こえた。雫ちゃんと同時に振り返る。
すると、龍太郎くんがこちらに手を振って向かってくるところだった。他にも美空、鈴ちゃん、光輝くんがいる。
「何よ、あなたたちも来たの」
「そりゃあんだけの大声で叱ってたらな。森の近くにいただけで聞こえてきたぞ」
「相変わらずお母さんだねシズシズ〜」
「香織、大丈夫?」
「足、痺れて痛いです……」
近寄ってきた美空に手を貸してもらい、なんとか立ち上がる。雫ちゃんは「まあ、今日のところはここら辺で勘弁してあげましょう」と肩をすくめた。
「香織、あまり無茶はしないでくれ」
「光輝くん」
「何も一人でそんなに頑張ることはない、俺がまも『いやぁ、相変わらず仲が良いねぇ』っ!?」
光輝くんが何か言っている途中で、どこからか声が聞こえてきた。その場にいた全員が弾かれたように声のした方を見る。
するとそこには、宇宙服にも見える赤いスーツと装甲に身を包んだ人間……確か、ブラッドスタークがいた。あれは……!
「エボルト!」
『よぉカオリン、元気だったか?』
「う、うん、元気だったよ。それより、今までどこにいたの?もう何ヶ月も見てないから心配したんだよ?」
『ハハッ、ちょいと野暮用があってな』
肩をすくめるエボルト。約三ヶ月ぶりに見たのに、どこか陽気な父親のようなその姿はまったく変わっていなかった。
でも、どうしてだろう……前と、何かが違う気がする。掴み所のない雰囲気はそのままなんだけど……すごく、背筋がゾワッとする。
まるで姿や仕草だけ一緒の別人を見ているような、そんな感覚。ヘルメットで顔が見えないのもあって、どこか悪寒を覚えた。
『ああそうだ、ところでカオリン。随分訓練に励んでるじゃねえか』
「えっ、見てたの?」
拭えないその違和感に気持ち悪さを覚えていると、ポンと手を叩いてエボルトはそう言った。
「まさか見られてたなんて、まったく気がつかなかった」
『あいにくと、気配を消すのは得意なもんでな……………なあカオリン、今の訓練で満足してるか?』
「え?」
『ここいらの魔物じゃあ、そろそろ物足りなくなってるんじゃねえのか?迷宮の魔物とは比べ物にならないだろうしな』
「確かに、そうだけど」
エボルトの言葉はもっともだった。私だってこれが練習にしかならず、実戦訓練には程遠いことは理解している。
でもあまり無茶をしようものなら、雫ちゃんからお説教が来る。それはもうナマハゲが可愛く見えるくらいにひたすら怒られる。超怖い。
『そんなカオリンに、俺からプレゼントを送ろう。それは……こいつだ』
パチン、とエボルトが指を弾く。それを不思議に思いながら見ているとーーゾッと全身に悪寒が走った。
「アァァ………」
そんな私の悪寒に答えるように、森の暗闇の中から〝それ〟は姿をあらわす。直に〝それ〟を見た途端、更なる悪寒が体を駆け巡った。
それは、一見すると小さい子の見るテレビ番組の怪人のようだった。帽子のように平べったく横に広がった頭に、翼のような前腕。ゴツゴツとした体。
でも、テレビに出る作り物とは決定的に威圧感が違った。本能というものが囁いてくる、あれは相手にしてはいけない怪物だと。
『さあ、〝フライングスマッシュ〟。存分に戦え』
「アァアアア!」
雄叫びをあげた〝フライングスマッシュ〟というらしい怪物は、驚異のスピードで飛んで接近してくる。龍太郎くんくらい速い!?
「香織!」
「キャッ!」
恐怖心で棒立ちになっていると、雫ちゃんに押されて地面に倒れた。頭上をフライングスマッシュが通り過ぎ、豪風が吹き荒れる。
バッと上を見上げると、空高く飛翔したフライングスマッシュが急降下してくるところだった。狙いは……鈴ちゃん!
「鈴ちゃん避けて!」
「谷口っ!」
「はわっ!?」
しかし、ミサイルのように落ちてきたフライングスマッシュに鈴ちゃんが潰されることはなかった。直前に龍太郎くんが抱えて飛び退いたのだ。
フライングスマッシュが地面とぶつかった時の爆風で龍太郎くんは地面を転がり、しかし木にぶつかる直前で体制を立て直す。
「無事か谷口!」
「あ、あわわわ」
「顔真っ赤だぞ大丈夫か!?」
「ち、近いよ!顔近づけないで龍っち!」
「助けたのに酷くねえか!?」
「アァアアァァァアアァ!」
こんな状況なのにラブコメしてる二人に、フライングスマッシュがふざけんなやコラァ!と言わんばかりに襲いかかる。
龍太郎くんはすぐに反応して立ち上がると、鈴ちゃんを抱えながら飛びかかってきたフライングスマッシュを避ける。
そのままバックステップで後退すると、剣を構えていた雫ちゃんに真っ赤な鈴ちゃんを預けてフライングスマッシュに向き直った。
「アァァアァ……」
「お前に恨みはねえけど、倒させてもらうぜ」
《スクラァァアッシュドライヴァアー!》
懐から取り出したスクラッシュドライバーを腰に巻いた龍太郎くんは、続けてロボットスクラッシュゼリーを取り出す。
しかしそこでフライングスマッシュが突進。それを横に転がって交わした龍太郎くんは、ロボットスクラッシュゼリーをスクラッシュドライバーに装填する。
《ロボット・ゼリー!》
「変身!」
《潰れる!流れる!!溢れ出る!!!ロボットイィイングリスゥ!ブゥゥウラアッ!》
ビーカーが地面から出現、一瞬で金色の液体に満たされると絞られる。そして中から変身した龍太郎くんが出てきた。
《ツインブレイカー!》
『心火を燃やしてぶっ潰す……!』
「アァアアア!」
「実況解説は白崎香織がお送りします」
「何言ってるの香織?」
胸をツインブレイカーを握った拳で叩いた龍太郎くん改めグリスに、フライングスマッシュは大きな両手を広げて突撃した。
大剣のような轟音を立てて振るわれた手をグリスは避け、ボディーを叩き込む。 でもガキンッ!という硬い音が鳴って防がれた。
『こいつ、硬え!』
「アァアア!」
お返しと言わんばかりに、フライングスマッシュが頭突きをする。グリスはそれをツインブレイカーで受け止め、膝蹴りを胸に入れた。
しかし、また硬質な音を立て攻撃は弾かれる。グリスになった龍太郎くんの攻撃が効かないなんて、なんて硬さなんだろう。
その後もグリスは猛攻撃を繰り出すけれど、フライングスマッシュにはあまり効いていなかった。それどころか素早い動きで攻撃をかわされている。
『ちょこまかと、動くなぁ!』
《ディスチャージボトル!潰れな〜い!ディスチャージクラッシュ!》
痺れを切らして叫んだグリスが、筒状のもの……時計のシンボルが描かれたフルボトルをドライバーに入れてレンチを下ろす。
すると、片手に鈍色のオーラが纏われた。グリスはそれを地面に叩きつける。その瞬間、周囲一帯をオーラと同じ色の結界が包み込んだ。
「ア、アァア……!?」
それまで縦横無尽に飛び回っていたフライングスマッシュの動きが、ものすごく遅くなる。時間を遅らせるボトルだったみたいだ。
《シングル!ツイン!》
『お仕置きだコラ!』
《ツインブレイク!》
ゴリラの描かれたボトルとダイヤモンドの描かれたボトルをツインブレイカーに装填したグリスは飛び上がり、フライングスマッシュの鳩尾にそれを叩きつける。
すると轟音を立てて、先ほどとは別の意味でフライングスマッシュが落ちてきた。吹き荒れる風に、思わず髪を押さえる。
「ガ、アァアアア……」
『オルァアッ!』
苦しむフライングスマッシュに落ちてきたグリスが馬乗りになって、ツインブレイカーと拳でタコ殴りにする。
マウントを取られたフライングスマッシュは逃げることもできず、グリスの猛攻にやられっぱなしだった。龍太郎くんまたハザードレベル上がったよねあれ。
「ギァア!」
それでもなんとか抜け出したフライングスマッシュは空へ飛び、なんとか脱出を図ろうとする。
「させない!鈴ちゃん!」
「了解!」
「「守護の光は重なりて 意思ある限り蘇る 〝
私と鈴ちゃん、二人同時に結界を張る。逃げようとしていたフライングスマッシュはそれにぶつかり、三度目の落下をした。
そして、その落下地点には……すでにドライバーのレンチに手をかけた、グリスが待ち構えていた。
『こいつで終いだ!』
《スクラップフィニッシュ!》
ドライバーから音が鳴って、グリスの肩の装甲が九十度スライドする。そして白い噴射口から黒いゼリーのようなものが噴き出した。
グリスはそれを推進剤に飛び上がり……フライングスマッシュめがけて、黄金のオーラが収束した足を叩き込む!
『オルァアァアアアアアアッ!!!』
「ガァアアアァアァアアア!」
グリスの蹴りを受けたフライングスマッシュは、断末魔の叫び声をあげて爆発した。今日はよく強風で髪が揺れる日だなぁ。
グリスが着地するのと同時に、ドサッと音を立てて煙を上げたフライングスマッシュが落ちてくる。動く様子はなく、完全に倒したようだ。
「以上、白崎香織の戦闘実況でした」
「だから何言ってるの香織?」
隣の美空から突っ込まれながら見ていると、グリスがゼリーを抜いて龍太郎くんに戻るとフライングスマッシュの方を向いた。
すると、フライングスマッシュの体が白い粒子になってどこかへ集まっていく。そちらを見れば、エボルトが透明のボトルを構えていた。
粒子は空のボトルのキャップから中に入っていき、やがて全て納まるとボトルが蜘蛛の巣のような装飾のされた丸いものに変わる。
後に残ったのは……
「えっ!?」
「に、人間!?」
「うそぉ!?」
思わず驚きの声を上げる私と美空、鈴ちゃん。フライングスマッシュがいた場所には、白いシャツとズボンを着た男の人が気絶して倒れていたのだ。
『ふむ、こんなとこか』
「エボルト、どういうこと!?」
『さぁて、どういうことだかねぇ。とにかく、坂口とカオリン、谷口は合格。雫も警戒してたから一応合格。そこのアホは失格だ。お前ほんと勇者(笑)だな』
「なっ……」
終始呆然としていた光輝くんを指差すエボルト。驚く光輝くんだけど、何もできなかったのは本当なので悔しそうに歯噛みした。
『まあいい、最初から毛ほども期待してないからな。それじゃあまた遊ぼうぜ、Ciao!』
「待ちやがれエボルト!」
龍太郎くんが近づく前に、エボルトはヘルメットの煙突から吹き出した煙と共にどこかへと消えてしまった。
場に、なんとも言えない雰囲気が満ちる。まさかあのエボルトが、人間が中にいる怪物をけしかけてくるなんて信じられなかった。
ちらりと美空を見れば、今目の前で起こった光景が受け入れられないのか、スカートの裾を握りしめ辛そうな顔をしている。その表情にキュッと胸が締め付けられた。
「……とりあえず、この人を運びましょう」
「……そうだな」
いち早く復活した雫ちゃんと光輝くんが、男の人を担いで運んでいく。遅れて我に返った私たちも、その後に続いて街の方に向かった。
「びっくりしたね、まさかあんな……」
「うん……エボルト、あんなこと今まで一度もしたことなかったのに」
私より何年も長くエボルトを知っているだろう美空は、どこか沈鬱な表情をした。こういう時どうすればいいのかわからず、ワタワタとする。
ギュッ
結局私にできたのは、美空の手を握ることだけだった。美空が不思議そうな顔で自分の手を見て、次に私の顔を見る。
「……香織?」
「え、えっと、そんな顔しないで、ね?南雲くんが心配しちゃうよ?」
「……そうだよね。こんな顔してたら、シュウジにも笑われるし」
そういった美空は、数回頭を振っていつもの笑顔を浮かべた。それに心臓がドキリと跳ねる。なんか最近私おかしくないだろうか。
ドキドキと高鳴る自分の胸に変な気持ちになりながら、美空から目線を外して後ろを振り返る。
エボルト……あなたは、何を考えてるの?
「谷口、サンキューな。お前らのおかげで逃さずにすんだ」
「そ、そんなことないよ〜。カオリンがいたおかげもあるし〜」
「そんなこと言うなって。やっぱお前、頼りがいあるな」ニッ
「〜〜〜っ!だからその顔反則ーーー!」
「何がだ!?」
ちなみに隣で龍太郎くんたちがラブコメってたけど、シリアスな思考だった私には聞こえてませんでした。ホントだよ?
クラスメイトたちサイドは基本、四話でお送りします。
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