楽しんでいただけると嬉しいです。
異世界トータスにきた翌日のこと。俺は今、とても重要なことに頭を悩ませていた。
この問いによって、あるいはこの後の俺の人生の分岐点になるかもしれない、そんなとても大切なことだ。
結局、昨日の夜は考えているうちに夜が明けて、今日まで持ち越してしまった。だから今日、この場で答えを出す。
さあ、頑張るんだ俺。怖気付くな、勇気を持て。お前はかつて、世界の殺意と呼ばれた最恐の暗殺者だろう?
だから早く、選ぶんだ。
「おでんを食べる時、はんぺんかちくわ、どっちを先に食べるか……!」
「どうでもいいよ!?多分この世界の中で一番どうでもいい問いだよそれ!?そんなの一晩も考えたのかお前!」
隣で分離済みのエボルトからツッコミが入った。何をいうんだエボルト、これはものすごく大切なことなんだぞ!
「安定のちくわが先か、定番のはんぺんが先か!これをどちらを先に食べるかで、友達と飲みにいった時に最初に食べるものが被るかどうか決まるんだぞ!?」
だから俺は考える。白けた視線を向けるハジメとカシャカシャ俺をスマホで連写している雫がいたとしても、俺はただ考えるのだ。
それから五分後、結局最初に食べるのは餅巾着ということに決まった。うん、これで解決だ。
「ここまで無駄な考えに時間をかけられる、そこに痺れる憧れるゥ!」
あざっすエボルトさん。
あ、言い忘れてたけど、今俺がいるのは王宮内の訓練場みたいなところ。今日から本格的に、訓練と座学が始まるのだ。俺必要ないけど。
「そういや座学の講師役の文官、やけに黄色くてタコみたいだったな」
ニュルフフフフとか言うんだろうか。
月の形したネクタイをつけた文官さんを思い出していると、横十二センチ×縦七センチ位の銀色のプレートが配られた。
「間違えるなよ、それキャッシュカードじゃないからな」
キャッシュカードは作らない主義だ!
「お前はどこの世界の破壊者だ」
ほへー、とか、アバタケタブラとか言いながらひっくり返したりしてると、騎士団長メイプル・ロンギヌスが直々に説明を始める。
「甘いものとおっかないものが合体した、ファンシーな名前だな」
鬼ファンキーだなァ!
「袖クルクルファンキー男の口癖ヤメロ」
いやです続けます。
「ファンキータァーイム!」
「エニグマ、停止!」
「どすこいっ!」
ジャンプしたハジメのかかと落としが頭頂部に決まった。おおう、脳が揺れる。なんか日に日に強くなってない?ハジメさんよ。
あ、ちなみに騎士団長さんの名前はメルド・ロギンスです。え、ちゃんと覚えてたのかって?ハハッ、元暗殺者舐めんな。
そんなこんなで、ハジメにコブラコブラエボルコブラツイストやられながら、俺は団長さんの話を聞いた。あっやばいボキッって言った。
「アシクビヲクジキマシター!」
「いやそれは鬼畜眼鏡に見捨てられたメガネあだだだだだだだだだ!?」
ゴキッ
話を戻そう。今明らかになっちゃいけない音が肩からした気がしたし、なんか腕に力が入らない気がするけど、話を戻そう。
このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。まさにファンタジーのテンプレアイテムだな。
文字通り自分の能力値を数値化して示してくれるものであり、同時に最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば、迷子になっても平気らしい。
えー迷子のお知らせです。脱臼した肩骨さん、脱臼した肩骨さん。北野シュウジ様がお探しです、今すぐ迷子センターに来てください。
「直しておいてやるから、話聞けよ」
サンキューエボルト。
あ、そういや団長さんはいわゆる熱血の体育教師的な性格をしてる。昨日エボルトとも楽しそうに飲み比べしてたしな。
「これから戦友になろうってのに何時までも他人行儀に話せるか!」
「あっそうすか?ならメルさんって呼んでおk?」
「ガハハ、大歓迎だ!」
ちなみに、これは早朝、エボルトが飲みつぶさせたお詫びを言いに行った時の会話である。他の騎士団員達にも同じことを言ってるとか。
あ、その後メルさんはエボルトと次はどれだけ行きつけの店の料理を食べれるかで勝負することを約束してた。
それをいうと、躾がなってないと俺が雫に絞られた。解せぬ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って、魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語にクソ之河が質問をする。イラッとゲージが増した。
「あの顔、映画版プリイヤのワカメ頭に変えてやろうか」
「いやいや、そこはスマトラサイだろ」
「もっと酷いじゃねえか」
ちなみにスマトラサイってのはナマズみたいな顔をしたサイのことである。前にコラ画像作るために画像探してたら見つけた。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。ステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
「あー、ようするにオーパーツみたいなものね。さすがメルさん、よっ説明上手!」
「はっはっはっ、もっと褒めろ!」
「さすが筋肉ゴリラ界最強!よっマイティーゴリラ!」
「それ褒めてるのか?」
「はーい出荷よー」
「そんなー(´・ω・`)」
俺が雫にドナドナされているうちに、他の奴らは言われた通りにしてた。
雫からハジメに引き渡された俺も、同じようにする。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。ちなみにエボルトが分離してても、能力は健在だ。面白いね!
すると……
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北野 シュウジ 17歳 男 レベル:1
天職:星狩り
筋力:ERROR
体力:ERROR
耐性:ERROR
敏捷:ERROR
魔力:ERROR
魔耐:ERROR
技能:天体観測・特殊空間航行・全事象耐性・憑依・衝撃波・魔具精製・念動力・毒物精製・瞬間移動・異空間収納・敵対感知・物体操作・隠密・剣術・銃術・闘術・暗殺術・交渉術・世界の殺意・自己再生・変身・蒸血・進化・言語理解
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「……oh」
案の定、ヤベーイ!だった。まあそりゃ、エボルト体内に入れながら前世と同じ、いやそれ以上の鍛えかたしてたらこうなるわな。
「おい、人のせいにすんなや」
「えっ人なんてどこにいるんだ?」
「目の前!目の前に俺いるぞ!?」
「ああ、すまん。ついタンパク質が大好物な人食い細胞の塊かと思ったよ」
「誰がアマゾンだコラ」
「ヴォォオオオオオオッ!アマゾ「君の
最近ボケようとするたびにハジメに一撃食らってる気がしてならない。
「いててて。ハジメさん、酷くない?」
「ふざけてるからでしょ。あ、ステータスどうだった?」
「ハイ」
「……ああ、うん」
渡して見せたら、ハジメはフッととても達観したような笑みを口元に浮かべた。なんだなんだ、その反応はおかしいぞ。
「もろシュウジだね」
「おっ、そうだろ?」
「褒めてないよ……はぁ。まあいいや。僕はこんな感じだった」
ハイつ と渡されたステータスプレートをのぞいてみると……
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10(300)
体力:10(800)
耐性:10(200)
敏捷:10(400)
魔力:10(500)
魔耐:10(1000)
技能:錬成・闘術・脚術・乱撃・加速(特定条件下で発動)・言語理解
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こんな感じだった。うん、なんだろうこの括弧は。えっスイッチを切り替えたときの数値がたぶんこれだって?
「ちなみにスイッチが切り替わるのって?」
「シュウジとトレーニングしてるときとツッコミ入れるとき、あと美空に何かあった時」
「ハハッ、冗談も大概にしろよあんちゃん」
「誰があんちゃんか」
それにしても、まるでゲームのキャラにでもなったようだと思いながらハジメと二人でステータスプレートを見せ合いっこしてると、メルさんからステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
「へえ、ゲームみたいにレベルが上がるからステータスが上がる訳じゃないんだな」
「ちなみにステ振り制だったらどうするんだ?」
「ラックに全部振る」
「出たよ極振り。それでいてシュウジ、一緒にゲームやると必ず攻撃はクリティカルだし回避は成功するし低確率ドロアイテムは必ず落ちるし。喧嘩売ってんの?ねえ喧嘩売ってんの?」
「しかも俺がいくら買っても当たらないのに宝くじ必ず一等だし。リアルラックもいいとか、喧嘩売ってんのか?」
「ちょっとモチつこうかハジメさんエボルトさん」
「越後製菓っ!」
「高橋英樹っ!」
ハジメのビンタで俺は沈んだ。おいエボルト、死にかけの虫突くみたいな動きで俺のこと蹴るな。
エボルトに死体蹴りされてて聞いていなかったが、ステータスは鍛錬したり、魔道具みたいなのをつけても上昇するらしい。
あと、救国の勇者御一行だからなのか、専用の装備を国の宝物庫から貸し出してもらえるとか。うーん、いらないな。
『一応見とけよ。この世界のエレメントにまつわるものを六十個同時に想像すれば、パンドラボックスでボトル作れるぞ』
あっそっか。フルボトル作れねーじゃんって思ってたけど、最初から六十本お前が作って、ベル様に消されたのを再回収してたのか。
別に俺の記憶力と思考速度ならできそうだけど、せっかくならこの世界のエレメントで作りたいから放置しとこ。
あ、一応ライオンフルボトルとかフェニックスフルボトルは作っとくか。ていうか欲しいのだけってできんの?
『できると思うぞ。欲しいボトルだけエレメントを想像して、あとは無成分を想像すればいい。例えば五つ想像して、あとの五十五本は何も想像しないとかな』
そんな細かいことできるのね。
次に〝天職〟ってのが、才能を意味するらしい。いわゆる才能を意味してて、技能とシンクロしてる。天職持ちはめっちゃ少ないらしく、持ってるだけでかなり自慢できるらしい。
戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合。非戦闘系も少ないと言えば少ないが、結構な確率で持ってるらしい。
「んで、生産職は結構な数いる、と」
「ていうことは、僕の錬成師もその一つだね。なんだか〝ありふれた職業〟だなぁ」
「まーまー、そういうのが一番凡庸性高いんだぜ?むしろ考えてみろよ、戦闘系の天職なんざ持ってたって、いつ使うんだ?」
「…それもそっか。元の世界に帰ったら、剣なんて持たないしね」
帰れたら、の話だけどな。
まあそれはともかく、いくら強力な魔法や、凄まじい速度の斬撃をできたとしても、平和にどっぷり浸かった日本じゃ使わねえ。
使うとしたら、雫の実家とか前世の俺みたいな仕事やってるやつくらいだろう。俺ももう2度と元の世界じゃやらないって決めてるし。
ま、場合によるけどな。例えば雫とか雫とか雫とか雫とか雫とか雫とか雫とか。
『全部雫じゃねえか』
ま、それだけじゃないけど。そう思っていると、メルさんが結構衝撃的なことを言ってくれた。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
この世界のレベル1の平均は10らしい。となりのハジメを見てみると、すげえダラダラ顔に汗が流れていた。
「あっるぇーどう見ても括弧の外の方が平均なんですけど。もういっそ見事なくらい平均なんですけど?チートじゃないの?俺TUEEEEEじゃないの?」
「ドンマイハジメ。まあ、俺が鍛えてやれば変わるだろ」
「ありがとうエボルト……」
「ふはははは残念だったなハジm「怒りのレモンスカッシュ!」あはんっ♡」
何が平均だよこの野郎めちゃくちゃ痛えじゃねえか。
俺が地面に転がってハジメのヤクザ蹴りを受けているうちに、カス之河がステータスの報告をしに前へ出た。
メルさんの声を盗み聞き、そしてエボルトが瞬間移動して見た結果、そのステータスは……
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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まあ、普通に考えりゃチートレベルの力だった。俺とエボルトにゃ敵わないし、スイッチ切り替えたときのハジメのほうがはるかに強えけど。
「ほお、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
「チッ」
「こらシュウジ、舌打ちしない」
だって嫌いなんだもーん。
ちなみに付け足された説明によると、技能=才能という先天的な代物である以上、増えたりはしない。唯一の例外が〝派生技能〟ってものだとか。
これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する、後天的技能である。byメルさん。
バカ之河と同じくらいかなと瞬間移動で盗み見した他の連中も、クソ之河に及ばないながらわりと高めだった。
『だが、ハジメを超える奴は案の定いない、か。鍛えた甲斐があるな』
おっそうだな。
んだが、ハジメは自分のステータス欄にある〝錬成師〟を首を傾げながら見つめてる。どうやら自分的にはお気に召さなかったようだ。
「そーんな不満か?」
「うーん、だってねえ」
まあ、俺が伝授した〝闘術〟とか、リーチの長さを足すために重点的に鍛えさせた〝脚術〟とかなかったら、デフォの言語理解以外は錬成だけだもんな。
「ていうか、この加速ってなんだろう?」
「うーん、わからんっぺ。特にこの〝特定条件下で発動〟が意味わかんねえな」
『試しにラビットエボルボトルでも使わせてみるか?』
いや、まだ普通の人間のハジメが使ったらエボルボトルの成分はキツいだろうから、もうちょい鍛えたらだな。
『へいへいー』
そんなことを話してるうちに、ハジメがステータスプレートを見せる番が来た。不安そうな顔をするハジメの背中を、バシッと叩く。
「ハジメ、いってらー」
「まあそう気負うな」
「う、うん」
俺とエボルトがサムズアップして送り出したハジメは、恐る恐るメルさんにプレートを提出する。
今まで、この世界の常識から逸脱したステータスばかり確認してきたメルさんの表情はホクホクしている。
が、ハジメのプレートを見ると一瞬固まり、次にコツコツと表面を叩いたあと、首を傾げた。
「あの、何か……?」
「いや、錬成師なのに戦闘系の技能を持ってるから、ちょっと不思議に思ってな。しかも、未確認の技能か。まあ、そういうこともあるだろう。ハッハッハッ!」
あ、非戦闘職なのに明らかに戦闘系の技能持ってたから首かしげてたのね。ていうか、やっぱりあの〝加速〟って技能は詳細不明なのか。
「あ、ありがとうございます。シュウジのおかげです」
「ほう、シューの?」
こっちに目を向けてくるメルさんに、エボルトと二人で優雅にワルツを踊ってた俺はDA☆I☆SU☆KE☆ポーズで答えた。
「そのポーズなんだ?」
「元の世界で大人気だった歌い手のポーズです。全国民が踊ってるんですよ」
ブフゥッ!と、クラスメイトたちが噴き出す声が聞こえた。俺は別に間違ったことは言ってないぜい。
ぷるぷるとクラスメイトたちが笑いをこらえている中、檜山たちが悔しげな顔をしてるのが見えた。鼻で笑ったらめちゃくそ顔歪めてた。
それからも、どんどんステータスプレートが提出されていく。ハジメや俺みたいなわけわからんのは、どうやらいなかったようだ。
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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ちなみに、畑ちゃんのステータスはこんな感じだった。「よっ豊穣の女神!」って言ったら、顔を真っ赤にしてビンタされた。
「もう、女神なんて!まったく北野くんは……………でも、えへへ。なんか嬉しいです」
「…………………………」
「し、雫ちゃん?顔が怖いよ?」
なんか言ってるのが聞こえたが、地面に沈んでる俺にはわからなかった。これが地球とキスってやつか……!
「地球じゃないけどな」
ごもっとも。
「さて、これで全員終わりか。皆非常に優秀だ!ビシバシ鍛えてやるから、覚悟しとけよ!」
そう言って快活に笑うメルさんに、あるものは自信に満ちた顔を、あるものは不安そうな顔をしていたのだった。
ちなみに。
「ていうかこの括弧の中、なんかとんでもない数字になってるが……どういうことだ?」
「ああ、それは……シュウジ、ちょっとボケてみて」
「ふざけるのに命をかける男、スパイダーm「東◯パンチ!」ばびろんっ!」
「こういうことです」
「どういうことだ!?」
ハジメの括弧の中のステータスの説明に使われました、しかも通じてませんでした、まる。
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