星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、朝から電車が遅延しまくって大遅刻中の作者です。

シュウジ「よっ、シュウジだ。前回はまたブルックに行ったな」

リベル「私リベル!こんにちは!」

シュウジ「おお、来たのか。よく挨拶できたな、偉いぞー」

リベル「えへへー」

ルイネ「可愛い……」

雫「すごい顔になってるわよ…ていうか、なんで娘までできてるのよ。シューの初めての子供は私って決めてたのに」

シュウジ「ごめんごめん、それはおいおい…な?」

雫「もう……」

エボルト「ああ〜口の中が砂糖であふれて窒息しそうなんじゃあ〜。今回は愛ちゃん先生の話だぜ。それじゃあせーの…」

五人「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」


道中

 ブルックの街から所変わって、とある街道。

 

「……………」

 

  私……今世では畑山愛子は、大型馬車の中で黄昏ていた。頬杖をつき、窓の外をぼんやりとした気持ちで見つめる。

 

  この世界に来てから数ヶ月、私はこうやって世界各地の農地巡りをハイリヒ王から言い渡されている。現在の目的地は、ウルの街という湖畔にある街だ。

 

  作農師という貴重な職業は、戦争中であるこの世界の食糧事情に多大な影響を及ぼすことができる。その影響力を使って、以前生徒たちの安全を確保したりもした。

 

『ソノ時ハ失敗シタ、トモ言ッテイタガナ』

 

  あれは記憶が戻ってから直後のことで、少々感情が高ぶっていたからです。もう二度はあのような醜態は晒しません。

 

  話を戻そう。この遠征は、私にとって案外好都合なものだ。この世界の情勢を自分の目で直に見て情報を集めることができる。

 

  生徒たちの様子を把握できないというデメリットは、ネルファによって解決した。彼女とは定期的に、通信魔法であちらの様子を報告してもらっている。

 

  故に以前にも増して、私はこの遠征に集中していた。仕事さえこなせば、あとは何も口出しはされない。思う存分動くことができる。

 

  それでも監視はつくが、あんなもの尾行のびの字にすら入らない。それ以前に魔法で作った偽物(デコイ) を尾けている時点でお察しだ。

 

  情報収集は概ね順調、なんの問題もない。このままいけば、いずれあの人の情報もつかめることだろう。

 

 唯一、何か問題があるとすれば……

 

「愛子、大丈夫か?疲れていないか?」

 

  ……教会から派遣された男ども(これら)の相手をしなければいけないことだろう。

 

「ええ、平気です。そんなに心配されなくても、先ほど休憩したばかりなのですから大丈夫ですよ」

 

  話しかけてきた隣に座る男……神殿騎士団専属護衛隊隊長のデビッドに、畑山愛子を装いにこやかに答える。内心はため息だ。

 

  以前の生徒たちの戦闘訓練についての件以降、私には護衛がつくようになった。それも外見が整っている男ばかりが、だ。

 

  少し考えれば誰でも思うが、私をハイリヒ王国につなぎとめるためにあの老害がけしかけたハニートラップである。前世で自分もやっていたから、すぐにわかった。

 

  素直に答えよう。面倒で仕方がない。あの人のもとでハニートラップに対する訓練をした私からすれば、彼らの薄い笑顔は滑稽にしか映らなかった。

 

『最初ハアマリニモ辟易シテ、食オウトシタナ』

 

  私が止めていなければ、あなた彼らが寝ている間に食い散らかしていたでしょう。

 

  ずっと見ていたらノイローゼにでもなりそうだったので、精一杯頑張る畑山愛子を演じて逆に利用させてもらうことにした。

 

  結果は見ての通り。ミイラ取りがミイラになり、彼を含めこの馬車に乗る四人の神殿騎士は私の仮面に惚れている。それを知った時の生徒たちの顔は少し面白かった。

 

 神殿騎士専属護衛隊隊長デビッド

「心配するな。愛子は俺が守る。傷一つ付けさせはしない。愛子は…俺の全てだ」

 神殿騎士同副隊長チェイス

「彼女のためなら、信仰すら捨てる所存です。愛子さんに全てを捧げる覚悟がある。これでも安心できませんか?」

 近衛騎士クリス

「愛子ちゃんと出会えたのは運命だよ。運命の相手を死なせると思うかい?」

 近衛騎士ジェイド

「……身命を賭すと誓う。近衛騎士としてではない。一人の男として」

 

  ちなみにこれが、この時の彼らの言葉だ。私を守ろうとしていた生徒たちのぽかんとした顔は今でも忘れない。

 

  さらに言うと、その生徒たちは今も馬車に一緒に乗っている。園部優香という女生徒をはじめとして数人ほど、遠征についてきていた。

 

  なんでも彼女ら曰く、私に下手なことをしないかどうか見張っている、らしい。別に何をされても、彼ら程度の力ではソレに食わせるしかないのだが。

 

『若イ人間ノ肉ハジューシーデ美味イ。早クソノ時ガ来ナイモノカ……』

 

  こら、我慢しなさい。まだ彼らには駒として動いてもらう必要があるのですから。面白いように教会のことも話してくれますしね。

 

「ふふ、隊長は愛子さんが心配で堪らないんですよ。ほんの少し前までは一日の移動だけでグッタリしていたのですから……かくいう私も貴方が心配です。ホント遠慮をしてはいけませんよ?」

「その節はご迷惑をお掛けしました。馬車での旅なんて初めてで……でも、もう大分慣れましたから本当に大丈夫です。心配して下さり有難うございます。チェイスさん」

 

  アレと話しながら、適当に騎士たちをあしらう。頬に手を当て、少し恥ずかしそうにする仕草も加えれば完璧だ。

 

『悪イ女ダナ』

 

  教えたのはあの人です。それに私の演技など、一千年の歳月の中で数百の顔を持っていたあの人に比べればなんてことない。

 

  それでも、少なくともあの人やネルファ、ルイネなどでなければ見破られるとは思っていない。ハニートラップと格闘。それが私の最も得意とするものなのだから。

 

  そもそもの話、バテていたのは記憶が蘇る前の話だ。外見こそ変わっていないものの、ネルファ同様〝中身〟は前世のものに変えてある。

 

  今なら一週間動き続けても問題ないだろう、と思っているとさりげなくさり気なくチェイスが手を取ろうとしてくる。

 

「ゴホンッ!」

 

  しかし、それは対面に座る少女の咳払いと鋭い眼光によって止められた。先ほど言った女生徒、園部優香である。

 

 補足しておくとこの馬車は八人乗りであり、外には一個小隊規模の騎士達が控えている。隊長と副隊長が揃って馬車の中にいていいのかと思うが。

 

『余程オ前ト離レタクナイノダロウ。クク、仮面ヲ被ッタオ前トナ』

 

 ……含みのある言い方ですね。

 

「おやおや、睨まれてしまいましたね。そんなに眉間に皺を寄せていては、せっかくの可愛い顔が台無しですよ?」

「はんっ、愛ちゃん先生の傍で、他の女に〝可愛い〟ですか? 愛ちゃん先生、この人、きっと女癖悪いですよ。気を付けて下さいね?」

 

  並みの女性ならそれだけで堕ちそうな顔で微笑むチェイスに、今にも唾を吐き捨てそうな顔で私に言う園田さん。その意見には賛成だ。

 

  ハニートラップということは、彼らは自分たちが容姿的に優れていると自負しているわけである。その上であの顔は気色悪いことこの上ない。

 

  ネルファあたりなら「自分の美しさを武器に使うのは素晴らしいことですわ」とでも言いそうだが、私はダメだ。普通にキモい。

 

「そ、園部さん。そんなに喧嘩腰にならないで」

 

  それでも本性を悟られるわけにはいかないので、アワアワと慌てた演技をして答える。教師として生徒を騙すのは、心苦しいが。

 

 

 

「そうそう、園部はんの言うとおりですわ。神殿騎士っちゅーのは随分と好色なんやなぁ?」

「いやぁ、怖いわぁ。ウチも狙われるんちゃいます?」

 

 

 

  そんな園部さんに同調する声が二つ。全員がそちらを見れば、ニコニコと笑顔を貼り付けた二人組がいた。

 

  一人は長い髪を縛った男、一人は斜めに髪を切りそろえた女。瓜二つの顔をした双子の兄妹はそれぞれ白黒と青黒のチェックのスカーフ、そして共通の黒と紫の軍服を着ている。

 

  兄のハクと妹のソウ。騎士団に最近入隊したこの二人組は、神殿騎士とともに遠征についてきていた。

 

  この世界に似つかわしくない軍服とエセ関西弁、異常なほどの戦闘力。そして……見覚えのある黄金の小さなボトル。神殿騎士すら話しかけるのをためらう、不気味な存在だ。

 

  彼らの正体は、なんとなく気がついている。おそらくあの人と一緒にいたあの怪人……エボルトとやらの差し金だろう。

 

  何を思ってこの二人に私を()()させているのかは知らないが、いざとなれば叩き潰せばいい。

 

  クスクスと笑う彼らから目線を外し、園部さんに向き直る。先ほどの彼女のセリフで、一つだけ本心から疑問がある。

 

「園部さん。せっかく〝先生〟と呼んでくれるようになったのに〝愛ちゃん〟は止めないんですね……普通に愛子先生で良くないですか?」

「ダメです。愛ちゃん先生は〝愛ちゃん〟なので、愛ちゃん先生でなければダメです。生徒の総意です」

 

  ……どうしよう、意味がわからない。しかも生徒達の共通認識?これが今の世代の思考なのか?助けてください先生。

 

『ソンナクダラナイ事デ頼ルナ……』

 

  生徒たちに頭を悩ませていると、不意に馬車が止まった。同時に、前方に何十もの気配を感じる。

 

  窓から顔をのぞかせれば、馬車の周りに騎士たちが固まり、臨戦態勢を取っていた。前を見ると、粗野な装備に身を包んだ集団が道を塞いでいる。

 

「……野盗ですか」

「あらあら、これは大変ですわぁ」

「ぎょーさんおりますねぇ兄様(あにさま)

 

  ぽつりと呟くと、同様に顔を出した兄妹がのんびりと会話する。そこに緊張は全くなく、脅威と認識していないのがわかる。

 

  まあ、それは私も同じことだ。あの程度なら神殿騎士たちが撃退してくれるだろう。既にデビッドたちは立ち上がっている。

 

「愛子はここにいてくれ、俺たちが戦う」

「はい、お願いしまーー」

 

『腹ガ減ッタ』

 

 ………なんですって?

 

『腹ガ減ッタト言ッタンダ。アノ野盗ヲ食ワセロ』

 

  あなた、朝もたくさん食べたでしょう。まだ足りないというのですか?

 

『フン、干し肉とスープ(あんなもの)食ッタ内ニ入ラン。死ニキッタ肉ダ』

 

  ……はぁ。あなたが一度そう言い始めると、私が動かざるを得なくなるのを知っているでしょう。

 

『アア、ダカラ動ケ。殺シテ食ワセロ』

 

 ………仕方ながないですね。今回だけですよ。

 

「〝沈黙(サイレンス)〟」

 

  小さく魔法を唱える。すると立ち上がっていたデビッドの目が虚ろになって椅子に座り、他の全員も同様になった。

 

「あら、寝てまいましたわ」

「不思議やなぁ」

 

  ……いや、若干二名ほど平気な人間がいた。ハクとソウはケロリとした様子で不思議そうに首を傾げている。思わずため息が出た。

 

「あなた達は生徒たちを守ってください。前の野盗は私が倒します」

「おお、わかりましたわ。ほんじゃいってら〜」

「なあなあ兄様、このムカつくイケメンどもに落書きしてやりましょか?」

「おっええこと思いつくなぁ」

 

  軽いノリの二人に若干の不安を覚えながらも、扉をあけて外に出る。すると騎士たちも表情の抜け落ちた顔をうつむかせていた。

 

  軟弱な騎士たちに何度目かもわからない溜息を吐きながら、野盗たちを見る。突然動かなくなった騎士たちに、野盗は困惑していた。

 

  スーツの前のボタンを外し、ゴキリと首を回しながら、野盗たちに歩み寄っていく。野盗は私を見て、女だとわかった途端ニヤニヤとし始めた。

 

「おーおー、こいつは可愛らしい嬢ちゃんじゃねえか。なんだ、命乞いにでもきたか?」

「二十……いや三十ですか。少しは腹の足しになりますか?」

『アア、充分ダ』

「あん?何言ってーー」

 

 

 ブチンッ

 

 

  首を傾げていた野盗のリーダーと思しき男の頭が、消えた。ぽかんとする野盗たち。

 

  数秒ほど固まった野盗たちは、ゆっくりと私を見る。私のからだのそばでは、ソレの悍ましい顔が体から出てきて男の頭だったものを咀嚼していた。

 

「お味はいかがでしょう」

「……ソコソコ。アノ騎士ドモヲ食エバヨカッタ」

「今更わがままを言わなでくださいよ、わざわざ魔法まで使ったんですから」

「な、なぁ……!?」

 

  会話する私たちに、戦慄の表情を浮かべる野盗たち。そんなことをしている間に、また一人頭を食い千切られる。

 

  流石に二人目ともなれば反応するようで、怒りの表情を浮かべた野盗たちは一斉に襲いかかってきた。それを冷めた目で見据える。

 

  まず最初に剣を振りかざした野盗を、手をソレで覆って適当に殴り砕く。破裂した内臓や骨が空中に飛び散った。

 

  それに固まる後陣にソレが蛇のような動きで接近し、三人まとめて頭を食い千切る。そのまま一周回転して円の中にいた野盗を捻り殺した。

 

「せいぜい十人程度にしておきなさい。あとは騎士たちが倒したことにします」

「了解」

 

  返答の言葉を返しながら、ソレはまた一人新たに頭を飲み込む。それを見ながら、私の方に襲いかかってきた野盗の両足を蹴り砕いた。

 

  私の指示通り、ソレは十人ほど頭をもぐと食べるのをやめた。後は簡単で、両足からソレをめいいっぱい野盗たちの足元に広げる。

 

  そして下から一気に串刺し、あるいは街道の両脇にある木で向きを変え、茂みのに隠れていた野盗もろとも頭を切りとばすことで皆殺しにした。

 

  馬車の外に出てからものの数分で、野盗だったものは全て頭のない骸と化した。ソレが血だまりの中に沈む〝食べ残し〟を齧る。

 

  肺、膵臓、肝臓、腸……ソレが一通り食って満足すると、体内に戻して馬車に戻った。おっと、服に付いた血を取っておかなくては。

 

  魔法で返り血を消すと馬車に乗り込み、「「おかえりなさいセンセイ〜」」と手を振る兄妹に答えると、もともと座っていた場所に腰を下ろす。

 

  そうするとパンッ、と合唱して魔法を解除した。途端に自我を取り戻し、顔を上げるデビッドたちや生徒たち。

 

「あ、あれ?私は一体何を……」

「ありがとうございます、デビッドさん。野盗を倒してくれて」

「え?あ、ああ。そうだったな。愛子を守るためなら当然さ」

 

  目を見て軽い暗示をかけると、あっさりかかってくれたデビッドはにこやかに頷く。それにまたケッと園部さんが悪態をついた。

 

 

 

  その後、彼女ら同様に元に戻った外の騎士たちが自分たちが倒した〝ことにした〟野盗の死骸を片付け、また馬車は進み始めるのだった。




うーん、冷徹さがちゃんと出ているだろうか。
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