シュウジ「や、シュウジだ。前回はフューレンに向けて出発したな」
雫「そうね。私たちが会えるのも、そう遠くないわ」
ネルファ「待ち遠しい、と言う顔ですわね」
エボルト「この場だけじゃなくて本編で会えるとわかってウズウズしてんな」
雫「ああ、早くシューに抱きつきたい。匂いを嗅ぎたい体温を感じたいキスしたい押し倒したい×××したい……」
ハジメ「おい、放送禁止用語言ってるぞ」
ルイネ「生徒会役員共にハマった作者の影響か…」
リベル「雫ママ、変なのー!」
雫「っ!?い、今なんて!?」
ユエ「…今回は道中の話。私やウサギが戦う。それじゃあせーの……」
七人「「「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」」」
雫「もう一回雫ママって呼ばれたい……!」
前にも言いましたが、ツイッターにウサギやルイネなどヒロイン勢のカスタムキャストを投稿してたりしまーす。
【シュウジ SIDE】
ブルックの街を後にしてから三日、俺たちは約六日であるフューレンへの道の半分ほどを踏破していた。
日の出前に出発し、日が沈むと停止して野営の準備をする。そのルーティンを繰り返すこと三回、とても穏やかな旅を満喫している。
『昨日なんか馬車の上で昼寝してたしな』
あれは気持ちよかった。一番後ろの方の馬車だから何かに邪魔されることもないし。あ、警戒は寝ながら探知魔法全開にしてるから問題ない。
てっきりテンプレな盗賊とか現れるかなーとか思ってたけど、しっかりと安全の確保された道なのでそういうこともなかった。
『もう盗賊ネタは使ったしな』
エボルト先輩メタいっす。
まあそんなこんなで平和な旅路なわけだが、今日も何事もなく野営の準備を終え、食事を取っていた。
この世界において、商人と冒険者の食事は別々らしい。周囲を警戒してピリピリしてる冒険者と一緒に食うと気が滅入るって話だ。
しかも、その飯は冒険者たちは簡単なもので済ませる主義だ。荷物がかさばるから、すぐに動けるように極力簡易的なものにするとか。
代わりに、護衛先の街で報酬を受け取ったらそれまでのフラストレーションを解消するため、腹一杯好きなものを食べるというのがセオリーとか。
『健康に悪りぃ食生活だよな。ちょっくら俺のコーヒーで心に安らぎを与えてやるかね』
いやお前のコーヒー飲ませたら心じゃなくて命に永遠の安らぎを与えちゃうからー。
『そんなバナナ』
とまあ、そんな話を俺たちは先輩冒険者たちに聞いたわけだ。俺&ハジメ特製の極上パンをルイネ、シアさんの料理上手コンビの作ったシチューにつけて食いながら。
「カッーー、うめぇ! ホント、美味いわぁ~、流石シアちゃんにルイネ姉さん!もう俺の嫁にならない?」
「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる!シアちゃんは俺の嫁!」
「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ? 身の程を弁えろ。ところでルイネさん、町についたら一緒に食事でもどう? もちろん、俺のおごりで」
「な、なら、俺はユエちゃんだ! ユエちゃん、俺と食事に!」
「ユエちゃんのスプーン……ハァハァ」
感動二割、変態八割で提供する会話を交わしながら、冒険者たちがパンを頬張る。その顔は、携帯食料を食ってる時の死んだような顔とは真反対だった。
さて、なぜこんなことになっているかというと、まあ俺とルイネ、シアさんの好意である。ほら、一時的とはいえ旅の仲間だしね。
「初日に今にも餓死しそうな猛獣的な顔で俺たちが飯食ってるの凝視してたのもあるけどな」
「それは言わないお約束」
隣でシチューの皿片手に言うエボルトにペシッと突っ込む。あ、さっきまでは回想だったから念話で話してたぜ(メタい)
知っての通り、俺たちは宝物庫があるから荷物がかさばるだなんだと悩む必要がない。そのため、普通に調理して飯を食っていた。
で、その美味そうな匂いにつられて干し肉みたいな携帯食料を食っていた冒険者がすごい顔とよだれの滝で精神攻撃(違う)してきたので、お裾分けしたというわけだ。
無論、ハジメもユエもウサギもそんな気はかけらもなかった。が、うちの食事係であるルイネとシアさんに反論すれば飯がなくなるのである。
そのため、渋々暖かい食事を提供することを了承。今に至るというわけだ。ちなみに料理スキルの高さは上からルイネ、俺、シアさん、エボルト、ウサギ、カエル、ハジメ、ユエである。
「まだ子供のリベルはランキングに入らない模様」
「花嫁修行にはまだ早すぎるからな」
「ガチ勢じゃねえか」
しかしまあ、三日目ともなると最初は殊勝にしてた冒険者たちも調子に乗ってきたな。食いながらうちの女性陣を口説き?始めた。
ユエたちの方はハジメに任せるとして、ルイネはあかん。今は半ば冗談の口だけだからいいが、何かしたらそいつはミンチにする。
「そして調理され、人肉ハンバーグに……」
「ふー、ふー。どっかのモグラ怪人がハンバーガー食えなくなりそうだな。はいリベル、あーん」
「あーん!」
息で覚ました特大の鶏肉が内包されたシチューを、膝の上にいるリベルに食べさせる。リベルは元気にパクッ!と食いついた。
スプーンを引き抜くとモグモグと口を動かし、幸せそうな顔で咀嚼する。愛らしい姿に、俺を含め全員がため息を漏らした。
「可愛いは正義だ」
「お前かなりリベルのこと気に入ってるよね。ビルドの世界の美空育てた時の思い出でも蘇った?(小声)」
「まあな。あの頃は感情がなかったが、今思えば可愛かった……戦兎ども俺が消えた後変なことしてねえだろうな」
「はいはい親バカ親バカ」
ちなみにウサギも結構リベルのことがお気に入りのようだ。普段は無表情なのに、3時間ごとに頭を撫でては口元を綻ばせる。ハジメの写真フォルダは多くなる一方だ。
「となり、失礼する」
そのハジメに威圧をぶつけられて調子に乗った冒険者たちが年上なのに土下座するのを見ていると、シチューのおかわりに待機していたルイネが隣に腰を下ろした。
すぐさまリベルが反応して、パッと笑顔で「ママ!」と手を伸ばす。ルイネはふっと笑い、リベルの頭を撫でた。
「いい子にしていたか?」
「うん!あのねあのね、パパに〝しちゅー〟食べさせてもらったの!」
「そうか、それは良かったな。明日は私が食べさせよう」
「わーい!」
「ルイネもすっかり母親が板についてきたなぁ。そろそろ母親検定初級は卒業か?」
「そうだと嬉しいがな」
少し嬉しそうに笑い、華奢な指でリベルの頬をなぞるルイネはどこからどう見てもお母さんだった。母性が溢れ出てる。
「今思ったけど、雫然りルイネ然り、お前母性のある女が好きなんじゃないか?」
「否定はしない。そして肯定はする」
「要するにイエスな」
でも微妙にベクトルが違う。雫はどっちかっていうとオカンで、ルイネはお母さんだ。これ、テストに出るよ。
ひとしきりリベルを愛でたルイネが、髪を耳にかけてから持ってきたシチューをスプーンで掬う。そして口につけ、満足そうに頷いた。
焚き火のオレンジ色の火に照らされ、まるで芸術品のような美しさを醸し出すルイネに皆見惚れる。そんな中、俺はふとあることに気づいた。
「ルイネ、シチューついてるぞ」
「ん、どこだ?」
首をかしげるルイネに、俺は口の端についたシチューを指で拭き取る。そうするとそのままぺろりと舐めた。冒険者たちが羨ましそうな声をあげる。
ルイネは少し目を見張った後、ありがとうと小さく礼を言って顔をそらした。照れ屋なとこも可愛い、俺の嫁最強とか思いながらシチューを食べる。
「……マスター、シチューが口についてるぞ」
「お、マジか」
「人に言っといてお前もか」
「うっせエボルト」
「取ってやろう」
そう言ったルイネはスプーンを皿のへりに立てかけると、スッと手……ではなく、体ごと顔を近づけてきた。
ん?なんかおかしくね?と思っていると……ぺろり、と下唇を撫でられる。思わず硬直していると、少し顔を引いたルイネは悪戯げに笑った。
「ほら、取ったぞ?」
「……ははぁ、こりゃあ一本取られたぜ」
「ハッハー、してやられてやんの」
「パパとママ、仲良いー!」
「うぐぐ、羨ましい……でも入り込めない!」
「あの圧倒的な夫婦感……くう、俺も結婚してぇ!いたずら好きの綺麗な奥さんと天真爛漫な娘が欲しい!」
「その前にまずその出っ張った腹なんとかしろ」
コントじみたやり取りをする冒険者に、俺たちは笑う。向こうでは、ハジメがユエとシアさんに肉を交互に食べさせられたりしてる。
「んぐ、んぐ………ハジメ」
「ん?なんんぐっ!?」
「「「口移し、だとっ!?」
「はわわっ!う、ウサギさん!それは反則ですぅ!」
「……人にできないことをやってのける」
「おー、山犬の姫みたい」
「確かにそんなシーンあったけども」
あれビーフジャーキーの三倍の硬さあるらしいね。そりゃ衰弱したアシタカさんじゃ食えんよ。
そんな感じに、穏やかに俺たちの食事の時間は過ぎて行った。
●◯●
【ユエ SIDE】
ブルックの街を発ってから五日目、馬車の中。
変わらずフューレンへの道を順調に進む私たちは、今日も今日とて馬車に揺られていた。ルイネがリベルを抱きかかえながら眠り、エボルトがいびきをかいている。
「んじゃ、いくぜハジメ」
「ああ、いつでもかかってこい」
そんな中、私の前で向かい合うハジメとシュウジの前には、乳白色の塊………パンの生地が入った銀色のボウルと金属板が置かれていた。
ロングコートを脱ぎ、腕まくりをした二人はすでに臨戦態勢であり、不敵な笑みを浮かべている。そんな二人の顔を交互に見て、私はスッと息を吸って。
「……始めっ」
小さく呟くのとともに、カチ、とシュウジの作ったアーティファクト、一分にセットされた〝ストップウォッチ〟のスイッチを押した。
その瞬間、二人の腕がブレる。かと思えばまるで前に見せてもらった千手観音像のように無数に分裂するほどの速度で生地をこねた。
「ほらほらどうした、お前の力はそんなもんか!」
「舐めるな!今日こそ勝たせてもらう!」
カチ、カチ、とストップウォッチが時を刻む中、楽しそうに笑う二人の金属板の上に丸くなった生地が置かれていく。互いに一歩も譲らない攻防だ。
この二人、しょっちゅう競争してる。この前はブルックの街で焼き鳥早食い対決してた。前の世界にいた時から、そういうのが好きだったらしい。
エボルト曰く、皿洗い対決、ゲーム攻略速度対決、ジェンガ、動物煽り対決、エトセトラエトセトラ……色んなことで競争してたみたいだ。
勝負をしている時のハジメは、私とハジメだけだった時は見たことがないくらい楽しそうで。ああ、本当にシュウジのことが親友として好きなんだなとわかる。
私が二人の友情に感心しているうちに、ストップウォッチが終わりを告げた。ピタリ、と示し合わせたように二人の手が止まる。
二人の金属板を見ると、全く同じ数のパンの元が鎮座していた。引き分けか、そう思い副審判のウサギを見る。
「……勝者、ハジメ」
ウサギは、右手に持っていた白い旗を揚げた。シュウジが「なぬっ」と驚き、ハジメが「よっしゃ!」と子供のように喜ぶ。
判決の根拠は?とシュウジが目線で聞けば、ウサギはハジメのボウルに手を伸ばした。そしてそこから、八割がた完成している生地を取り出す。
「……これもカウントに含めると、僅差でハジメの勝ち」
「あっちゃー、そこも換算されてたのか。こりゃ参った」
ペシッとおでこを叩くシュウジ。勝ち誇った顔でハジメがうんうんと頷いた。あ、ウサギの手の中のパンをカエルが食べた。
モキュモキュとカエルが口を動かすのを見ていると、不意に馬車と外を仕切る布がずれて、ピョコンと上下反対のウサ耳が姿を現した。シアだ。
「シア、どうした?」
「敵襲です!森の中から大量の魔物が!」
私が聞くと、シアは切羽詰まった様子でそう報告した。一瞬で緩んだ空気が引き締まり、敵襲と聞いてルイネとエボルトが目を覚ます。
「敵の数は?」
「目視したところ、三百以上はいるかと思いますハジメさん」
「大所帯だねぇ。確か通常は、二十〜四十匹程度と言ってたか?」
「とんでもない異常事態ってことだろ。まったく、人が寝てるの邪魔しやがって」
「ママー……」
「よしよし」
耳を澄ましてみれば、私たち同様報告を聞いたのだろう、前方の馬車からも冒険者たちの慌ただしい声が聞こえてきた。
「さてさてハジメ、どうする?」
「ま、百かそこらなら俺たちが出る必要もないだろ。ユエ、行けるか?」
「……ん」
ポン、と肩に手を置くハジメに、私は言外に楽勝と言いながら立ち上がる。するとウサギもカエルを置いて立ち上がった。
「私もいくよ」
「……私一人でもいける」
「ちょっと運動不足」
「なら仕方ない」
ほかの冒険者たちがいるから、しばらくハジメと三人での運動(意味深)もできてない。そろそろストレスも溜まってるだろう。
頷き合った私たちは、仕切りをくぐって外に出る。ハジメが引き返そうとする御者に、そのまま進むよう言うのが背後から聞こえた。
シアと入れ替わりになって、私たちは馬車の上に立つ。すでに森の中から魔物の大群が出てきており、今にも衝突しそうだ。他の馬車から、冒険者たちが出てきている。
「私が梅雨払いする。シュウジ、馬車の方をお願い」
「オーケー」
馬車の中から声が聞こえて、馬車に耐久力強化魔法がかけられる。それを確認し、ウサギが一歩前に出た。半身を引き、右の拳を腰だめに構える。
「……出力15%」
小さく呟いたウサギが、引いた足を前に出した。そして腰の回転を加えて、引き絞った拳を突き出しーー
ーーゴァァァアアアアァアアアアァアアッ!!!!!
ーー暴風が、吹き荒れた。ウサギの拳から生じた拳圧が、無慈悲に大群の先頭の魔物をまとめて吹き飛ばす。
たった一撃で、およそ百匹以上の魔物が木っ端微塵になるか、全身から血を吹き出して奇妙なオブジェとなった。魔物たちが困惑し、足を止める。
「な、なんだ今のは!?」
耳に入ってきた声にそちらを振り向くと、止まった馬車から降りていたらしい護衛隊のリーダーの……ガリガリくん?ガーリック?忘れたけど、なんとかがポカンとしてた。
それは他の冒険者や商人たちも同じで、私たちを見て唖然とした表情をしている。そんな中、ゆっくりとウサギが伸ばしきった腕を引いた。
「……スッキリ」
「ん、お疲れ。後は、私がやる」
「任せた」
短いやり取りを終えると、ウサギはさっさと馬車の中に入ってしまった。その代わりとでも言うように、ニュッとシュウジが顔を出した。
「えー冒険者の皆さん、非常に危険なのでそこを動かないでください。繰り返します、死の危険がありますので、馬車から出ないでください」
その注意喚起に、冒険者たちはザワザワとする。シュウジは私を見上げて、グッとサムズアップした。これで魔法を使っても大丈夫だろう。
ピシッとサムズアップを返した私は、視線を魔物に移す。先ほどの攻撃の主が私たちとわかっているのか、魔物は怯えたように後ずさった。
「……さあ、ここからは私のステージ」
小さく呟き、私は天に向けて人差し指を立てた。気分はシュウジに見せてもらった、天の道を行き、総てを司る男だ。
スッと息を吸うと、一度目を閉じる。体内の魔力を動かして、魔法を構築する準備をする。十分に魔力が活性化したところで、目を見開いて詠唱を始めた。
「〝かの者 常闇に紅き光をもたらさん
古の牢獄を打ち砕き 障碍の尽くを退けん
最強の片割れたるこの力 彼の者と共にありて
天すら呑み込む光となれ〟
〝雷龍〟」
詠唱が終わるのとともに、魔法が完成する。魔力により発生した暗雲から、その身を黄金の雷で形作った〝龍〟が現れた。
突如現れたその龍を、冒険者も魔物も、皆が硬直し、黙して凝視する。集まる視線を気にせず、私は
それに従い、雷龍は雄叫びをあげてアギトを開く。すると魔物が皆自ら口の中に飛び込んでいき、滅却されて消し炭と化した。
どよめくギャラリーに、私はさらに指を一振り。雷龍は今度は取り囲むようにとぐろを巻き、逃げようとした魔物を滅する。
それだけにとどまらず、また顎門を開いて魔物を飛び込ませ、容赦なく塵に還す。たったの三十秒で、また百匹の魔物が死んだ。
三度指を振ろうとすると、突然ぴょんっ!と馬車の上に飛び乗る、私よりさらに小さい影が一つ。我が家の癒しの天使、リベルだった。
なぜここに、とリベルの顔を見ると、リベルは可愛い顔をひどく不機嫌そうに歪めていた。そういえば、リベルは昼寝を邪魔されるとすごい怒るんだった。
「お昼寝の邪魔する悪い子は、メッ!」
その言葉とともに、リベルがパンッ!と両手の手のひらを叩き合わせる。普通に見れば可愛らしいその仕草は、しかしもっと恐ろしいものだ。
そう思った瞬間、ズンッ!!!と言う重々しい音とともに、残っていた魔物が両側から押しつぶされたようにミンチになった。
リベルが手を離すと、不自然に宙に浮いていた魔物だったものが地面に落ちる。心なしか、モザイクがかかっている気がした。
「もう、お昼寝できなかった!」
「……ん、リベルすごい」
雷龍を消した私は、ぷんぷんと怒るリベルの頭を撫でる。我に返った冒険者たちが何か騒いでるけど、どうでもいい。
ひとしきりリベルが機嫌を直すまで撫で続けると、私たちは馬車の中に戻った。すると苦笑い気味のハジメたちが迎えてくれる。
「二人ともお疲れさん」
「ん、ちょっと威力過多だった」
「あれでちょっとかよ。ていうか、あんな魔法俺聞いてないんだが?」
「なんか、ユエさんのオリジナル魔法らしいですよ?ハジメさんたちから聞いた龍の話と、例の魔法を組み合わせたとかなんとか」
「なるほど……」
興味深そうに頷くハジメ。雷龍は上級魔法の〝雷槌〟と重力魔法を合わせたもので、重力魔法で落ちる雷をコントロールしたものだ。
おまけに口の中が重力場になっており、顎門を開くと対象を引き寄せることもできる。魔物が自分から飛び込んでいったように見えたのは、そのためだ。
「……綺麗だったよ」
「ウサギ、ありがとう」
「ゲコッ」
「こらっ、突然飛び出しちゃダメだろ?怪我したらどうするんだ?」
「そうだ、もしもの事がある。あまりこういった行動は、ママは認めないぞ」
「うぅ、ごめんなさいパパ、ママ……」
「いや、わかればいいんだ。リベルが無事ならそれでいいさ」
「ちゃんと謝れて偉いぞー、リベル」
賞賛してくれたウサギにお礼を言う。隣ではリベルが叱られた後に、シュウジに頭を撫でられてえへへと笑っていた。可愛い。
ちなみにリベルの攻撃の正体は、重力魔法だ。左右から絶大な重力をかけて空間ごと押しつぶす、ゴリ押しの超攻撃。まだ名前はない。
リベルは、私たちの中で誰よりも……そう、あのシュウジよりも重力魔法の扱いに長けている。さすがは解放者製のホムンクルスといったところか。
「あんたたち、助かった。ユエちゃんのお陰で被害を出さずに済んだ」
リベルの初魔物討伐記念を祝って宴会でもしようかと相談していると、護衛隊のリーダーの……ガーリックペッパー?が馬車に近づいてきた。
「今は仕事仲間だろ?礼なんて不要だ。な?」
「……ん、仕事しただけ」
「はは、そうか……で、だ。さっきのは何だ?」
困惑した様子で、ガールズマンティスが雷龍のことを訪ねてくる。既存の中では存在しない魔法だから、気になるのは仕方がない。
「……オリジナル」
「オ、オリジナル?自分で創った魔法ってことか?上級、いや、もしかしたら最上級を?」
「……創ってない。複合魔法」
「複合魔法?だが、一体、何と何を組み合わせればあんな……」
「……それは秘密」
流石にそうやすやすと、数日の付き合いの相手に自分の手の内は明かさない。そうでなくても、ハジメたち以外は信用していないけど。
「ッ……それは、まぁ、そうだろうな。切り札のタネを簡単に明かす冒険者などいないしな……」
詮索されるのは嫌だとわかったんだろう、ガルガンチュアはおとなしく引き下がった。そのまま馬車から離れていく。
それからほどなくして、馬車は再び動き始めた。フューレンまで、後一日だ。
お気に入りと感想をお願いします。