星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、クローズの新予告を見てワクワクしている作者です。まさかのエボルト復活とは……
今日ファンタスティックビースト見てきました。ジョニーデップかっこいい、魔法生物可愛いら魔法良いと、見所満載の映画でした。

シュウジ「よー、シュウジだ。前回は道中ユエたちが無双したぜ」

ユエ「……ズーウー可愛い」

シア「あのちっちゃい子も可愛いですぅ」

カエル「ゲコッ」

リベル「カエルさんもかわいーよ!」

二人「「いや、リベル(ちゃん)が一番可愛い(ですぅ)」」

ハジメ「相変わらずだな……まあ確かにそうだけど。今回はフューレンに着いた話だ。それじゃあせーの……」

五人「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」

カエル「ゲコッ」


フューレン到着、早速揉め事

  魔物の大群の襲撃があった翌日。俺たちはついに、中央商業都市フューレンへとたどり着いた。

 

  今は、入り口のところで持ち込む積荷の確認をするための列に並んでいるところだ。馬車の陰で何やらモットーさんとハジメが話してる。

 

  いやーそれにしても、実に良い旅だった。冒険者たちから良いアドバイスも聞けたし、リベルは強くて可愛いし、杖折って忠誠誓ったし。

 

「前々から思ってたけど、わざわざそれするために杖作るのめんどくさくないか?」

「ふざけるのに努力を惜しまない男、スパイダーマッ!」

「うにゅ……」

 

  エボルトと会話をしながら、抱き抱えているリベルの頭を撫でる。数時間前まで元気だったのだが、ホムンクルスとはいえ子供なので、遊び疲れて眠っちまった。

 

  対するルイネは、旅の中で仲良くなった女の冒険者と話している。さすが我が弟子、人に信用されるのが上手い。まあ、元からの性格もあるだろうが。

 

  リベルもルイネも、今回の旅はなかなか楽しんでいた。彼女らの笑顔を見てるだけで俺はハッピー(アサヒ風)なので嬉スィー。

 

  それに、さっき言った通り俺自身も今回の旅は充実していた。時間は十分にあったので、〝切り札〟の一つを復活させることができたのだ。

 

  この切り札は、下手をすればまた一つ容易に血の海に変えてしまう力を持つ危険なものだ。前世でも使い方には気をつけていた。

 

「今のお前がコントロールできるのか?」

「余裕のよっちゃんイカ」

「おっさん臭え」

「好きなくせに」

「待たせたな」

 

  そういや妹も好きだったなーとか思っていると、ハジメが馬車の裏から戻ってきた。後から青い顔をしたモットーさんが出てくる。

 

「何があったん?」

「お前なら聞かなくてもわかるだろ?」

「そのとぉーり♪」

「何故にタケ◯トピアノ」

 

  大方、旅の中でも普通に使ってた〝宝物庫〟や異空間を付与したライターを売る気はないかと持ちかけられたのだろう。

 

  聞き耳は立てていなかったが、ピンポイントなハジメの殺気を感じたので、きっと脅すようなことを言って逆に叩き潰されたと見える。

 

  そうだろ?と目線で問うと、ハジメは右手を銃の形にし、トントンと人差し指でこめかみを叩いた。おやおや、やはり逆に釘を刺しといたようだ。

 

「だいぶ商魂逞しい男だ。多少回復したらすぐに〝今後ご入用の際は我が商会をご贔屓に〟だとよ」

「カカッ、いいねえ。そういう奴はいざという時、うまく生き残るぜ」

 

  そういや思い出したが、前世でもフューレンみたいな商業都市に行ったな。無論、悪辣な悪人を殺すための潜入だ。

 

  あの時はまだ〝世界の殺意〟七年目かそこらで、殺すのと同時に魔法でバレて息のかかった人間を皆殺しにすることになった。確か五千人かそこら。

 

  本当に優秀な商人は、たとえどれだけ利益を生み出してもそういうヤバイものには関わらない。うまく自分は被害を被らないようにするものだ。

 

「ていうか、早速商売してんな。ほれ」

「ん?」

 

  俺が指差し、ハジメがくるりと振り返る。するとモットーさんがユエやルイネなど、うちの女性陣に品物を見せていた。

 

  近づいてみれば、剣や薬品類、衣類など旅に使えそうなものもあれば恋人同士のアレやソレなどもあった。豊富な品揃えだなー。

 

  いろいろ見ていると、いつかの露店で見たTE◯GAがあった。他にもちらほらと。あの露店の仕入れ先ここかよ、とエボルトと顔を見合わせ苦笑する。

 

「ママ、なにこれー?ぶよぶよしてるよー」

「……リベル、それを置きなさい」

「はーい」

「ハジメ、この服欲しい」

「ゆ、ユエさん!そんなハレンチな!」

「お前の普段着の方が露出度高いだろうが」

「……なにこの液体?」

「ウサギ、今すぐそれを元の場所に戻せ」

「ゲコッ」

 

  ユンケル商会の商品を見てワイワイと騒いでいるうちに、列が動き出す。程なくして、俺たちは関門を通り抜けフューレンに足を踏み入れた。

 

  モットーさんに護衛依頼の証印をもらうと、別れを告げて歩き出す。すると、こちらを見る人間たちの視線が強くなった。

 

  大方は商人らしき人間であり、ユエ、シアさん、ウサギ、ルイネを見て何事かヒソヒソと話し合ってる。こりゃ警戒しといた方が良いな。悪質な輩がいるかもしれん。

 

  また、裏路地の方からリベルに危険な目線を注ぐ輩もいたので、そちらは記憶を調べて仲間もろとも〝臓器掌握(グラビング)の魔法で肺と腎臓を一つずつ潰した。

 

「容赦ねえな。ま、お前がやらなきゃ俺が念動力で捻り殺してたが」

「俺らはともかく、リベルは重力魔法以外攻撃手段がないからな。シアさんたちも気をつけとけよー」

「は、はいっ」

 

  いい意味でも悪い意味でも偏見の目がなかったブルックとは正反対に、値踏みするような視線に居心地悪そうにしていたシアさんは頷く。

 

  その次にさらわれる可能性が高そうなウサギは……まあ、いつも通り写真集を見てた。こっちは攫われても平気そうだな。

 

「さて、まずは冒険者ギルドへと向かおうか」

「さっきからずいぶん迷いのない足取りだが、場所わかるのか?」

「商隊の人に地図売ってもらってな。それと魔法を使って頭の中に完全な地図作った」

 

  さすがにキャサリンさんの作った地図ほど優秀ではなかったので、足りない細かい部分は魔法で補ったというわけだ。

 

  使ったのは〝空間網羅(サーチング)〟という魔法。魔力量に比例して一定空間内の物体を完全に把握する魔法だ。わりと凡庸性が高く、罠の位置もわかる。

 

「よって、ここからはシュウジの説明ターイム」

「どんどんぱふぱふー!」

「おっ、よく知ってるなリベル。誰に聞いたんだ?」

「エボルトおじさん!」

「いいぞー、ナイスタイミングだ」

「ふむ、リベル初めてのボケ……と」

「ルイネさん、なにメモしてるんですか」

 

  エボルトが頭を撫で、少し寝て元気いっぱいのリベルがわーい!と喜び、ルイネが写真とともに日記を書く。ここまでが最近のワンセット。

 

  とまあ、それはともかく。このフューレンは大まかに四つの区画に分かれている。それぞれ東西南北に中央区、観光区、職人区、商業区だ。

 

  それぞれの区画に中央区へ続く道があり、中央区に近ければ近いほど誠実かつ安全な店が多いという感じだ。まあ、外れの方の店で掘り出し物が……ってのもあるらしいが。

 

「ということで、買い物するなら中央区付近の方が良い。リベルは外に出る時は必ず俺かエボルト、ママと一緒に出かけること」

「はーい!」

「ま、面倒事は少ない方が良いしな……と、ついたな」

 

  そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着する。中に入ると当然注目が集まる……すでにデップースーツ装着済み……が、無視して依頼完了の手続きを済ませる。

 

  その時手続きした職員は男だったのだが、冒険者同様ルイネたちに見とれながらもちゃんと仕事をこなすあたり、よく教育されてるなぁと思いました、まる。

 

  報酬を受け取り、ちょうど小腹が空いていたのでギルドで軽食を取ることにした。大所帯なので二つ机をくっつけて使うことになった。

 

「なに頼む?俺唐揚げ」

「俺ステーキ100g」

「……私はサンドイッチ」

「ニンジンの丸焼き」

「ゲコッ」

「じゃあケーキにしますぅ」

「ふむ、では鶏皮にしよう」

「まかろんっ!」

「じゃあ俺h「お前はタコ足な」嘘だ!僕を騙そうとしてる!」

 

  ちゃっちゃと注文を済ませるとお金を払う。怪しい笑顔でコーヒーを錬成しているエボルト?知らない知らない。報復とか知らない。

 

  頼んでから五分ほどで頼んだものがやってくる。「いただきます」と全員手を合わせ、食事を始めた。

 

  飯を食っている間も、冒険者たちや依頼に来ているだろう商人の視線が集まった。まあ、これはルイネたちが美しい以上は仕方のないことだ。

 

「お前にもいくつか視線集まってるぞ。主に女の冒険者」

「やだエッチ」

 

  案外うまい軽食をある程度腹に収めたところで、ごほんと咳払いする。全員がこちらを向いたところで、おもむろに話を始めた。

 

「で、宿はどうする?全員の意見を聞いた上で、要望に沿って決めようと思うが」

「美味しいご飯?」

「ゲコッ」

「……お風呂があればいい。混浴で、貸切可能の」

「パパとママとお風呂はいるのー!」

「ふふ、そうだな。私もユエと同じ意見だ」

「ベッドは大きい方がいいですぅ」

「そうだなぁ、昼寝するのにちょうどいい屋根のとこがいい」

 

  ウサギ、カエル、ユエ、リベル、ルイネ、シアさん、エボルトの順に答える。ふむ、とハジメは頷く。

 

  女性陣全員の混浴宣言に、周りの男の冒険者たちが射殺さんばかりの目で俺たちを睨みつけてきた。当然スルーである。

 

  俺同様そんなものカケラも気にしないキングオブ鬼畜マイペースなハジメら、お前は?と俺に目線で問いかけてきた。

 

「皆と大体同じだが、やっぱ責任の所在がはっきりしてるといいんじゃないか?」

「だな。いざという時、物理的解決ができる」

「厳重なとこもいいが、絶対じゃないならそっちの方が手っ取り早いしな」

 

  もしルイネたちを手に入れようとした何者かの襲撃があった時、こっちが完全被害者なのに宿の器物の弁償代でもふっかけられたらたまったもんじゃない。

 

  それなら最初から自分たちの拳で解決した方が楽ってもんだ。まあそうなったとしても俺が交渉すればどうとでもなるが、ぶっちゃけめんどい。

 

  それじゃあそういう宿を探しますか、と席を立とうとした時、不意に視線を感じた。周りの冒険者よりもはるかに粘着質な、気持ちの悪いものだ。

 

  ルイネやユエらに向けられるそれに視線の元へ目を向ければ、なんというか……一言で言うなら豚がいた。いや、豚みたいな人間?

 

  100キロは超えてそうな贅肉だらけの体に身なりの良い服を着た豚人間は、俺と対面のハジメが面倒だ、と言う顔をしたのと同時にこちらに歩いてきた。

 

  俺たちの目の前まで来たブ男(豚男の意)は、ジロジロと舐め回すような目でユエたちを見る。その瞳にあるのは濁った欲望だ。

 

『ヤミー生まれるんちゃう?』

 

 無欲の王様呼ばないと()

 

  散々うちの女性陣をキモい目で見てくれたブ男は、さもようやく俺たちに気がつきましたと言わんばかりにこちらを向き、なんとも気色の悪い顔をした。

 

「お、おい、ガキ共。ひゃ、百万ルタやる。この兎たちを、わ、渡せ。それとそっちの金髪と赤髪はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」

 

  耳が腐れるような耳障りな声で言ったブ男が、ユエに手を伸ばす。きっとこいつの中ではもう、ユエたちは自分のものなんだろう。

 

 

 

 ゾッ!

 

 

 

  だが、それを許すハジメじゃない。モットーさんの時とは逆に周囲の冒険者もろとも、気絶しない程度の殺気を叩きつける。

 

  加減してなお、濃密なそれを受けた冒険者は半数以上がひっくり返り、ブ男も「ひ、ひぃっ!?」とか情けない声を出して尻餅をつく。股間から黄色い液体が漏れ出した。

 

「行くぞ」

「まあまあ、ちょい待ち」

 

  場所を変えようとするハジメの肩を叩く。なんだよ?と言う目をするハジメに、俺は任せろとウィンクした。

 

『なにする気だ?』

 

 いやなに、ちょっとした実験さ。

 

「よぉあんた、こいつらが欲しいんだって?」

 

  ハジメの肩から手を離した俺は、ブ男の前にしゃがみ込み、あえて笑顔でそう言う。するとガタガタ震えてたブ男は傲慢な光を目に宿した。

 

「そ、そうだ!さっさとわ、わたせ!」

「うーん、条件によっちゃあ考えるぜ」

 

  ざわり、と空気が揺れる。ハジメが何を、と一歩踏み出す音が聞こえたが、俺は手を上げてそれを制した。

 

「じょ、じょうけんだ、だと?」

「ああ。今から言う条件を飲めるなら、考えなくもない」

「な、なんだ、い、いって、みろ」

 

  怯えながらも命令口調で言うブ男に、俺はニッコリと笑い。

 

「じゃあまず、その目玉よこせ」

「………………は?」

「次に鼻。歯。歯茎。舌。声帯。頭髪。脳みそ。心臓。肺。胃。腎臓。副腎。肝臓。すい臓。大腸。小腸。皮膚。筋肉。爪。脊髄。頭蓋骨。背骨。肋骨。肩甲骨。指骨。腕骨。足骨。尾てい骨。腰骨………」

 

  言いながら、そっと手のひらをブ男の前に差し出す。するとドロリ、と無数の黒い筋の浮かんだ血のように赤い物体が、体内からにじみ出てきた。

 

  意思を持つようにそれはナイフの形をとり、ブ男の頬を撫でる。少し触れただけで薄皮を切り、血を流させるそれにブ男はマナーモードになった。

 

「お前の持てる全てを差し出せ。そうすれば見ることくらいなら許してやる。ただし0.0

 0001秒だ。それ以上見たら……………一欠片も残さず、喰っちまうぜ?」

 

  ゆっくりと、まるで子供に言い聞かせるように囁き、変形した物体を纏った手を肩に置く。そして直接殺気を送り込んだ。

 

  ハジメ同様に極限まで手加減したそれは内臓を竦みあがらせ、耐え難い苦痛をもたらす。る◯剣風に言うならば、心の一方というやつだ。

 

「……ぶひ………いぁ………」

 

  泡を吹き、白目を剥くブ男。沈黙はノーと受け取った俺は物体を体内に戻して立ち上がった。その瞬間ドシャリと崩れ落ちるブ男。

 

  くるりと踵を返し、ハジメたちの元に戻って親指を立てる。ハジメたちはやれやれ、と呆れたような笑いで肩をすくめた。

 

『うまく制御できてるみたいだな』

 

  暴走したら流石の俺でもそうそう止められんからな、これ。

 

  さて、今度こそ出て行こうと足を踏み出そうとしたその時、またしても立ちふさがる壁が現れた。今度は筋骨隆々の大男だった。

 

  さっきのブ男とは真反対の意味で100キロはありそうであり、腰には長剣を差している。まさに歴戦の戦士って感じだ。

 

「レ、レガニド!そ、そいつらを殺せ!わ、私を殺そうとしたのだ!」

「坊ちゃん、流石に殺すのはヤバイですぜ。半殺し位にしときましょうや」

「い、いいからやれぇ! お、女は、傷つけるな!私のだぁ!」

「ったく、報酬は弾んで下さいよ」

 

  そいつが現れた途端、ほとんど気絶しかけていたブ男が後ろで騒ぎ立てる。雇われ護衛らしいレガニドという男はニヤリと笑った。珍しいことに女より金らしい。

 

  はい、レガニドとやらへの視線上にルイネたちが入ったのでアウト。あとで半殺しにしよう。とりあえず一つでも問題ない臓器は食うか。

 

『思ったよりブチギレてんな、お前』

 

  せっかく新たな街に来たのに、最初のイベントがこれじゃあなー。せめてもっと穏やかなのが良かったぜ。

 

「お、おい、レガニドって〝黒〟のレガニドか?」

「〝暴風〟のレガニド!? 何で、あんなヤツの護衛なんて……」

「金払いじゃないか?〝金好き〟のレガニドだろ?」

 

  周囲でざわめく人の声を聞くと、どうやらこのレガニド、冒険者ランクで上から三番目の〝黒〟のようだ。相当な実力者ということになる。

 

  とりあえずぶちのめすか、と拳を握ると、そっと隣から白い手が俺の手を包み込んだ。一目でルイネだと看破する。

 

  驚いてそちらを見れば、任せろと目が言っていた。その隣にやる気満々のユエ、シアさん、ウサギが並んでおり、すでに臨戦態勢だ。

 

「……私たちがやる」

「返り討ちにしてやりますぅ」

「……キャロットケーキもう一個」

「というわけだ。私たちが守られるだけの女ではないと証明しよう」

 

  自信の満ちた四人の顔に、俺は少し考えた後拳から力を抜いた。そしてひらひらと両手をぶらつかせる。

 

「カカッ、そりゃあいい。んじゃー、任せますかね」

「ああ、存分にぶちのめしてやれ」

「くくっ、良いショーが見れそうだな」

「がんばれー!」

「ゲコッ」

 

  俺とハジメ、エボルト、ウサギからカエルを預かったリベルがそういうと、頷いた四人はレガニドと相対する。

 

「おいおい、嬢ちゃんたちが相手かい?夜の相手でもして許してもらおうって「黙れ下郎」っ!?」

 

  油断しきっているレガニドが最後まで言い切る前に、ルイネの金属糸が神速でその両手を縛り上げていた。

 

  全く予想だにしていなかったのだろう、瞠目するレガニドだが、さすが黒の冒険者というべきかすぐに振りほどこうとする。

 

  が、不可能だ。あの金属糸はブラックホールフォームのローブを凝縮して糸状にしたもの。それこそルインエボルバーでもなければ、斬ることもままならない。

 

『こんな体、もうお嫁にいけない……』

 

 十枚くらい剥ぎ取ったからね。

 

  身動きの取れなくなったレガニドに、ユエがポキポキと拳を鳴らし、シアさんが大槌を取り出し、ウサギがハー…と手のひらに息を吹きかけた。

 

「じゃあ、いっきますよぉ!」

 

  最初の攻撃は、シアさんだった。一足でレガニドに肉薄し、腰だめに構えた戦鎚ドリュッケンを轟音とともに振るう。

 

  レガニドは火事場の馬鹿力が働いたのか、腕を強引に胸元に引いて防御の構えを取る。が、そんなものは超重量のドリュッケンには意味をなさない。

 

  ボキッ、という音を立ててレガニドの腕が粉砕した。痛みに顔をしかめるレガニド。後ろに飛ぼうとするが、それを許すルイネではない。

 

  強制的に踏ん張ることとなったレガニドの腕が、完全に砕けた。「カハッ……」と血を吐くレガニドに、ウサギが迫る。

 

「……1%ビンタ」

 

  ウサギのビンタが、レガニドの横っ面に炸裂した。レガニドの頭がかっ飛び、暴風がギルド内に吹き荒れる。

 

  先ほどよりさらに血を吐き、白目を剥くレガニド。もはや半ば意識のない哀れな男に、ユエの第二の追撃が襲いかかった。

 

「舞い散る花よ 風に抱かれて砕け散れ 〝風花〟」

 

  風の弾丸を放つ魔法と重力魔法の掛け合わせにより生まれた魔法が、レガニドを宙に舞わせる。

 

  タイミングよくルイネが金属糸を解いたので、レガニドは風の球を受けて高く飛んでは落ち、飛んでは落ちを延々と繰り返した。しかも股間を集中的に狙って。

 

  ぐしゃりと音を立てて地面に落ちる頃には、レガニドはもうボロ雑巾のようになっていた。ピクリとも動かない。

 

「ふむ。私がタマを蹴る前に気絶してしまったか。もったいない」

 

  半身を引いて構えていたルイネが、ため息を吐きながら姿勢を正す。ユエの攻撃でガタガタと股間を抑えていた男冒険者が、さらに顔を青ざめさせた。

 

  一仕事終えた四人は、踵を返して俺たちのところに戻ってくる。周りを取り囲んでいた奴らが一歩後ずさるのにちょっと笑った。

 

「……ハジメ、終わった」

「キャロットケーキを所望する」

「あっけなかったですぅ」

「おう、お疲れさん」

「存外、大したことのないものだな」

「ママかっこよかったー!」

「ククッ、なかなか面白かったぜ」

「そうだなー………さて」

 

  ぐるり、と振り返ってブ男を見る。レガニドがやられるとは思ってなかったのか、絶望したような顔でブ男は後ずさった。

 

「ひ、ひぃっ!く、来るなぁ!わ、私を誰だと思っている! プーム・ミンだぞ! ミン男爵家に逆らう気かぁ!」

「うん、まず全世界のゆるキャラに土下座しようか」

 

  某キャラの黒線入りの顔を思い浮かべながら、先ほどと同じようにブ男改めプーム……やっぱブ男でいいや。ブ男の前にしゃがむ。

 

「さてさて、さっき俺が言ったことを覚えてるか?」

「だ、だまれぇ!き、きさま、必ず痛い目に合わせて「黙って俺の話を聞け、サノバビッチ(クソ野郎)」んぎゃっ!?」

 

  空中でデコピンし、その風圧をブ男の額に当てて吹っ飛ばす。地面に倒れるブ男の顔を、俺は覗き込んだ。

 

「お前がルイネたちを見ていいって言ったの、0.00001秒つったよな?お前、さっきから何分見た?」

「な、なにをふ、ふざけたことをーー」

「黙れつってんのが、聞こえねえのか?」

 

  ほんの少し、本気の殺気を出す。それだけでブ男は舌を切り落とされたように声を失い、パクパクと口を動かした。

 

「お前は許されないことをした。よってーー」

 

  念動力でブ男の髪をつかみ、引き寄せる。そしてブ男だけに見えるように、赤い物体を顔に纏わせた。

 

「オ前ノ全テヲ喰ワセテモラオウ」

「ーーーーーっ!?!!?!!!??」

 

  俺の顔を見たブ男は、声にならない悲鳴をあげる。きっとこいつの目には今、俺の顔がとんでもない化け物に見えていることだろう。

 

  その1秒後、ブ男は白目を剥いてカクンッと頭を落とす。どうやら気絶したようだ。一ヶ月くらい悪夢を見続ける呪いをかけてから、オーラと物体を解除する。

 

「他にこいつの味方は?」

 

  周りを見渡すと、全員が千切れそうな速度で首を横にする。うし、これで悪党退治は終わりだな。いやースッキリ。

 

『よくもまあ、そこまで早く感情を切り替えられるもんだ』

 

  スッキリとした気分で伸びをするとハジメたちの元へ戻ろうとすると、慌ただしい足音が後ろから近づいてきた。

 

  そろそろ飽きたぞこんにゃろうと振り返れば、ギルド職員だった。若干引け腰ながらも、三人の職員が俺を取り囲む。残りはブ男とレガニドを見にいった。

 

「申し訳ありませんが、事情聴取にご協力願えますか」

「俺たち飯食ってた、そのブタがからんできた、護衛が危害を加えようとした、俺たちは正当防衛した、はい終了」

「ちょっ!」

 

  簡単に説明を済ませ、歩き出そうとすれば肩を掴まれる。なんだよもーそんなに熱烈に肩掴まれても俺ホモじゃねえよー。

 

『アーイワーズボーン』

 

  いやその人確かそうだけどもピンポイントだな。

 

「なに?今の説明で納得できないのん?」

「とは言いましても、当事者双方の話を聞く規則なので……冒険者の方なら従っていただかないと」

「当事者ねえ……」

 

  ちらりと後ろを見る。レガニドは今治癒師が治療しているとはいえあのダメージだし、ブ男は下手すりゃ悪夢で一ヶ月起きないぞ。

 

「あれが起きるまでこの街で待ってろって?おいおい、いくらなんでもそりゃ横暴ってもんじゃねえのか?俺たちは完全な被害者、この場にいる全員もそれを見てる。証拠人なら十分以上にいるから、わざわざ俺たちは必要ないと思うけど?」

 

  正論を言ってやれば、決まりなんだから仕方ないでしょって顔をする職員たち。これだから社畜は怖い。

 

  さて、どうするかと思っていると、階段を降りる気配が一つ。やけに落ち着いた足取りのその人物は、程なくしてこの場に現れた。

 

「何をしているのです? これは一体、何事ですか?」

 

 現れたのは、メガネを掛けた理知的な雰囲気を漂わせる細身の男だった。厳しい目で俺やハジメ達を見てくる。

 

  なーんかあの人、身代わりにされて撃たれたりサイボーグになったり科学者なのに秘書やらされたりフェーズ3突破したりしそう。

 

『あぁ〜そうだった。お前はサイボーグだったな』

 

 声真似(本人)かよ。

 

「ドット秘書長!いいところに!これはですね……」

 

  助かったとでも言うような顔をした職員が、ドットとやらに説明を始める。どうやら、まだ終わらなさそうだ。

 




うーむ、原作に近すぎる。もっと離反させてなくては……
さて、シュウジが使う謎の物質はなんなのか……
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