エボルト「はろはろー、エボルトだ。俺の種族にはテストなんてなかったぜ。なんなら学校なんてなかったぜ」
シュウジ「スライム状の生物が並んで授業してたらシュールすぎんだろ。前回はフューレンに到着したんだったな」
ハジメ「ったく、いきなり変なのに絡まれるとかどうなってんだ」
ユエ「……仕方がない。テンプレだから」
愛子「それはそれとして、あと少しで会うことができますね……楽しみです」
シュウジ「おう、本編の俺が覚悟しとくぜ。で、今回はお偉いさんとのお話だ。それじゃあせーの……」
五人「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」
この本によれば、普通の?高校生南雲ハジメには、魔王となる未来が待っていた。
彼は大迷宮にてオスカー・オルクスとミレディ・ライセンの力を奪い、依頼を受けて中央商業都市フューレンへとたどり着く。
そこでまた依頼を受けたハジメとその一行は、ウルの街を襲撃する魔物を殲滅し……おっと、先まで読みすぎましたね。
『ハジメはジオウか』
FG◯するために色々世界線探ってたらたまたまヒットして観たんだよね。いやーまさかライダーの歴史が書き換えられるとは。
まあ、それはどうでもいいとして。俺はギルド職員が内海さんらしき上司(違う)に状況を説明し終えるのを待っていた。エボルトと睨めっこしながら。
今のところ戦績は5勝4敗6引き分け、互いに同じ顔をしている(というよりエボルトが俺に擬態してる)ので、余計に勝負は困難なものになっていた。
「にーらめっこしーましょー」
「わーらうーとまーけよー」
「「あっぷっぷ!」」
「ちょっとよろしいですか?」
すぐ近くで聞こえた声に、エボルトと同時に振り返る。すると冷静沈着そうな面持ちのドット秘書長とやらは、ブフッと横を向いて吹き出した。
俺は口元の筋肉をフル稼働させてひょっとこ顔をしており、エボルトは擬態という荒業を使って刃◯顔で変顔している。その威力は推して知るべし。
事実、ハジメたちは全員もれなく腹を抱えながらプルプルしてた。リベルだけがわからずぽかんとしている。カエルは相変わらずゲコッてた。
しばらくプルプルと震えていたものの、なんとか持ち直したドット秘書長は、クイッと中指でメガネをあげた。
「話を聞く限り、あなた達が被害者ということはわかりました。これだけ大勢の証人もいますしね。若干過剰防衛な気もしますが、まあ死んではいないのでよしとしましょう」
「ごっつぁんです!」
「ぶっ!」
また顔の画風を変えたエボルトが答えると、ドット秘書長は口元を押さえた。特に笑ってたシアさんとユエもすでに瀕死だ。
先ほどより早く復活したドット秘書長は、ブ男たちが目覚めるまでフューレンに滞在してもらうのでと、身分証明と連絡先を求めた。
ほいさと尻ポケットからステータスプレートを取り出す。なんとか復活したハジメも近づいてきてステータスプレートを提出した。
「ふむ、〝黒〟に〝青〟ですか……その奇抜な赤い装束、もしやあなたが〝レコードホルダー〟ですか」
「正解だ!」
「ぶふぉっ!」
どっかのオールなマイトさんの劇画調な顔真似をすれば、三度吹き出すドット秘書長。どうやらこの人、変顔に弱いらしい。話が進まない?知らない知らない。
「ママー、あれわたしもやりたい!」
「そうか。それじゃあ私たちとやっていよう」
「わーい!」
「こ、こほんっ。確認させていただきます」
今度はさっきよりも遅く立ち直ったドット秘書長が、俺たちのステータスプレートを見る。そして問題ないとでも言うように頷いた。
「ああ、ちなみにこのハジメだが。俺たちの中では三番目に強いぜ」
「……ほう、〝青〟なのにですか。ということは最近登録されたのですね。それで、そちらの方々は?」
ルイネたちにもステータスプレートを要求するドット秘書長。だが、あいにくと俺とハジメ以外ステータスプレートは持ってない。エボルトは合体してたし。
さて、どうするかと思っていると、エボルトが俺の肩を叩いて一歩前に出た。奴の顔を見れば、不気味にニヤリと微笑む。
「なあ、ちょっといいか」
「はい?一体なんですか?」
不思議そうな顔をするドット秘書長の耳元に、エボルトが顔を寄せる。そしてボソボソととても小さな声で、何かを呟いた。
それを聞いた瞬間、ドット秘書長の目が最大まで見開かれ、ビクッ!と大きく肩が跳ねた。次の瞬間には冷や汗が頬を伝う。
「……そ、それは本当なのですか?」
「ああ。どうだ?連絡先の方は大丈夫だろ?身元も保証できる」
「は、はいっ。し、しかし、身元の確認は私一人では判断し難く……」
「なら上を呼べ。そいつならわかってるはずだ。それでももしダメなら……おーいハジメ、あの手紙貸してくれ」
「あ?……ああ、あれか」
声を元の大きさに戻して振り返ったエボルトに、ハジメが懐からキャサリンさんにもらった手紙を出して投げる。
手裏剣のように飛んで行ったそれをエボルトは人差し指と中指の間でキャッチし、少し怯えているドット秘書長の手に握らせた。
「こいつを見せろ。これなら危ない橋を渡る必要もない」
「わ、わかりましたっ」
エボルトにコクコクと激しく頷いたドット秘書長は、俺たちに職員が案内する部屋で十分ほど待つように言い、慌ただしい足取りで階段を上がっていった。
おそらく上の人間を呼びに行ったのだろうとそれを眺めていると、エボルトが「いやーいい仕事した」と言い伸びをしながら戻ってきた。
「とりあえず、こいつで安心だ」
「エボルトさん、一体何を言ったんですか?」
あの冷静そうなドット秘書長をあそこまで慌てさせたエボルトに、シアさんが不思議そうに尋ねる。
「ん? そいつは……秘密さ」
そんなシアさんにエボルトは、くつくつと得体の知れない笑みを浮かべて答えた。それを聞いて、シアさん同様不思議に思っていたハジメたちが拍子抜けした顔をする。
そんな皆を横目に、俺はエボルトに直接テレパシーで問いかけた。なあエボルト、お前もしかしなくても〝アレ〟言った?
『まあな。まずかったか?』
ま、大丈夫だろ。いざとなったらなんとかするだろうし。
俺が肩をすくめると、エボルトはそうかと答えて面白そうに笑う。そこで職員が近づいてきて、俺たちを部屋へと案内した。
ウサギにカエルを返したリベルを抱え、職員の後についていく。さて、出てくるのは蛇か鬼か。
エボルトと二人、少し楽しみに思い笑いあいながら、俺たちは足を進めるのだった。
●◯●
職員に案内された部屋で待つこと、きっかり十分。
コンコンと扉がノックされ、何者かの来訪を告げる。それに返事をすると、ガチャリとドアが開いて人が入ってきた。
入ってきたのは、先ほどと変わらず若干こわばった顔のドット秘書長と、金髪をオールバックにした三十代ほどの男だ。
「はじめまして。冒険者ギルド、フューレン支部支部長のイルワ・チャングだ。シュウジ君、エボルト君、ハジメ君、ユエ君、シア君、ウサギ君、ルイネ君に……リベルちゃんでいいかな?」
俺たちの顔を一人ずつ見渡し、最後に職員が出してくれたお菓子を幸せそうに頬張るリベルを見て、口元を綻ばせるイルワさん。
ここの職員、なかなか優秀である。子供であるリベルが待ち時間を退屈するのを見越して、お菓子を持ってきてくれたのだ。花丸あげちゃう。
『誰得だよ』
「それで問題ないですよ。ていうかエボルト君とか草」
「お前だってシュウジ君なんてカオリンくらいにしか呼ばれねえだろ」
「それな」
イルワさんの差し出した手を立ち上がって握り返しながら、エボルトといつも通りの応酬を交わした。
自然体な俺たちにイルワさんは苦笑した後、探るような目をする。
「しかし、そうか。君たちがシュウジ君とエボルト君か……ふむ、確かに〝彼〟に聞いた通りだ」
「彼?誰のことだ?」
「いや、なんでもない」
ハジメの質問に答えを濁しながらイルワさんは手を離し、ソファに座る。イルワさんに倣って俺たちも再び腰を下ろした。
「で、俺たちの名前は手紙に?」
「ああ、そうだ。先生の手紙に確かに全員の名前が書いてあったよ。将来有望、しかし全員もれなくトラブル体質だからできれば目をかけてやって欲しい、とね。それとシュウジ君とエボルト君の漫才は基本スルー、ルイネ君との仲は温かく見守ってくれと」
「キャサリンさん中々わかってるう」
自分で言うのもなんだが、俺とエボルトの会話は基本放置するに限る。ハジメのように慣れてなきゃツッコミ疲れるからね。
それだけでなく、俺とルイネの仲のことまで書いてあるとは。こんな気配りまでできるとかキャサリンさんマジいい人。
「しかし先生とは、やっぱキャサリンさんってすごい人?」
「おや、知らなかったのか。実は彼女はね……」
そしてイルワさんから明かされたキャサリンさんの素性は、やはりというかすごいものだった。
イルワさん曰く、キャサリンさんは王都のギルドででギルドマスターの秘書長をしてたらしい。んでその後、ギルド運営に関する教育係を請け負った。
現在各町に派遣されている支部長のうち、五、六割は彼女の教え子だとか。イルワさんもその一人で、今も頭が上がらないとは本人の談。
「知っての通りだとは思うが、あの人柄の良さと若き頃の美しさから、当時は僕らのマドンナ的存在、あるいは憧れのお姉さんのような存在だった。その後、結婚してブルックの町のギルド支部に転勤してね。子供を育てるにも田舎の方がいいって。彼女の結婚発表は青天の霹靂でね。荒れたよ。ギルドどころか、王都が」
「あーそういえば、そんな伝説聞いたなぁ」
俺が最初に冒険者登録をしたのは、王都のギルドだ。そこでランクを上げがてら先輩冒険者たちの話を聞いてた時にそんなことを聞いた。
曰く、王都冒険者ギルド最大の損失。曰く、王都最高の絶望の日。イルワさんと同世代くらいの冒険者は、口を揃えてアレはまさしく混沌だと語った。
「今じゃ、恰幅のいいおばちゃんだけどな」
「言うなよハジメ、アレはアレで肝っ玉母ちゃんじみてて良いじゃん」
「お前ほんと母性ある人好きな」
「そういう意味の良いじゃねえ」
「呼んだか?」
「いやルイネも確かにそうだけd……ハッ今どこからか「私は?」っていう雫の幻聴が!」
「だめだこいつ、早く何とかしないと」
「よんだかー!」
「……真似してて可愛い」
「わかるよユエ」
「ですですぅ」
「君たち本当に仲がいいね」
鮮やかなスピードでボケに入る俺たちに、先ほど同様に苦笑するイルワさん。なお、ドットさんは緊張しっぱなしである。
それからイルワさんにキャサリンさんのことを聞かれたので、俺たちが見たキャサリンさんのことを話しながら30分ほど雑談を交わした。
「とまあ、こんなとこですね」
「そうか、先生は元気か。ありがとう、話を聞かせてくれて」
「いえいえ。それじゃ身分証明もできたでしょうし、そろそろお暇します」
ちらりとルイネの胸の中で眠るリベルを見る。重力魔法を抜けば年相応の頭であるリベルには、俺たちの長話は退屈だったようだ。
途中で入ってきた職員が出した紅茶を飲み干すと、マスクの下半分をかぶり直して立ち上がる。冷めても美味いとはなかなかだ。
『俺のコーヒーとどっちが美味い?』
こっちの紅茶に決まってんだろニーキック食らわすぞコラ。
「いや、少し待ってくれ」
が、そこで待ったがかかった。まだ何かあるのか、と隣に座っていたハジメが剣呑な光を目に宿す。
「実は、君たちの腕を見込んで、一つ依頼がしたい」
「断る」
俺が何か言う前に、ハジメがイルワさんの言葉を切って捨てた。十中八九、面倒ごとを請け負うことになると悟ったのだろう。
立ち上がり、部屋から出ようとするハジメに同調してユエとウサギが立とうとする。しかしそこでイルワさんのスペルカードが発動。
「ふむ、とりあえず話だけでも聞いてくれないか?そうしたら、今回の件は不問にするんだが……」
イルワさんの言葉に、ピタリとハジメが動きを止める。そしてやや面倒そうな顔でイルワさんを振り返った。
イルワさんの言葉は、要するに話を聞かなければ今回のことをそのままにして、正規の手続きを踏んでもらうぞということだ。
すでに被害者加害者が明確になっている以上、出来レースの長ったらしい手続きを受けるのは、さぞ面倒に違いない。
『ぶっちゃけ、俺たちが〝アレ〟を使えばもみ消すこともできるけどな』
ま、それは最終手段ってことで。それに、今はまだ着実に力をつける時期だ。余計なことをするべきじゃない。
それを理解しているだろうハジメは、イルワさんを睨む。が、依頼を受けるではなく話を聞くだけ、と言っていたので、ムスッとした顔で戻ってきた。
「ありがとう、聞いてくれる気になって」
「……いい性格してるな、あんた。さすがは大都市のギルド支部長ってか」
「君も大概だと思うよ。それで、シュウジ君はいいかい?」
「ま、内容によるってとこかね」
肩をすくめながら、ソファに座りなおす。それを見届けたイルワさんは頷き、ドット秘書長を促す。
時間が経ったからか、少しは最初の冷静そうな様子に戻ったドット秘書長が、一枚の依頼書を取り出して机に置いた。
ソファの真ん中に座っている俺が書類を取り、後ろや横からハジメたちが依頼書を覗き込んだ。
そして依頼の内容を読んで、少しばかり瞠目する。そんな俺たちに、某指揮官のポーズをとったイルワさんはおもむろに口を開いた。
「君たちに頼みたいのは………ある人物の捜索依頼だ」
●◯●
「ほう、人探しですか」
「ああ。先日、北の山脈地帯の調査依頼を受けた冒険者の一行が期日を過ぎても戻ってこなかったため、冒険者の一人の実家が出した依頼だ」
そこからのイルワさんの話を要約すると、おおよそこうなる。ここからはシアさんの話ダイジェストと同じ感じで行こう。
『メタさに定評のあるシュウジ=サン』
やかましいわい。
んんっ、では気を取り直して。
ここ最近、北の山脈地帯で魔物の群れを見たという目撃例がいくつかギルドに持ちこまれ、調査依頼がされた。
↓
北の山脈地帯は、一つ山を超えるとほとんど未開の地で、地上の中では強力な魔物が出没するので、高ランクで手練れの冒険者が依頼を受注。
↓
しかしここでイレギュラーな人物がやや強引に同行を申し込み、なんやかんやあって臨時の合同パーティーで出発。
↓
そして今回俺たちに受けて欲しい依頼というのが、そのイレギュラーな冒険者だ。名をウィル・クデタ、クデタ伯爵家の三男に当たる人物である。
↓
家出少年である冒険者志望のウィル君をクデタ家は秘密裏に監視していたのだが、今回の依頼で連絡員もろとも行方不明となった。
「そして行方のわからない子供に慌てた伯爵家は、冒険者ギルドに依頼を出した、と」
「そういうことだ。つい昨日のことでね。一応、伯爵家の方でも捜索隊を出すらしいのだが……」
「おい、ちょっと一つ聞かせろ。なんだこの絵は?」
俺とイルワさんの会話に、ハジメが割って入る。険しい顔をしたハジメの手には、幼稚園生の似顔絵以下のウィル・クデタの絵が。
かろうじて金髪の男だとわかる程度で、俺から見てもふざけて描いたとしか思えないクオリティだ。
しかも日本語だとひらがなに該当する文字で、「たずねびと うぃるくん」って書いてある。これやる気あるのだろうか。いや、ない(反語)
「何、と言われても、ただの似顔絵だが……」
「探す気あんのか。ちょっと紙とペン持ってこい。俺が描き直してやる」
クリエイター魂のスイッチが入ったハジメの有無を言わさぬ言葉に、イルワさんが目配せしてドット秘書長に取りに行かせた。
程なくして持ってこられた紙とペンを受け取ったハジメは、イルワさんにウィル・クデタの特徴を聴きながら絵を描いていく。
「で、次は?」
「えっと、綺麗に切りそろえられた金髪で……っていうかめっちゃ絵上手くないか君!?」
「オタクエリートの息子舐めんな」
ほんの五分程度で、さっきの落書きみたいな似顔絵とは雲泥の差の絵が出来上がった。イルワさんが「本物と変わりないぞ……」と驚いている。
「ま、ざっとこんなもんか。しばらく描いてなかったから腕落ちてんな」
「お前が全力で絵描くと、俺でもかなわんしなぁ」
「マスターでもか?それは凄まじいな……」
そんなこんなで落書きがハジメの美麗イラストに差し替えられ、詳細説明が再開された。ウィル・クデタの身は安全かどうか。
そういえば、マリスも一度家出したなぁ。過酷な訓練の繰り返しの生活に嫌気が差して、家を飛び出したのだ。
その時たまたま家の近くに悪名高い貴族がおり、マリスは未熟な腕でこれを暗殺した。当然、すぐにバレて追われる羽目になったのだ。
最終的に俺が追っ手を全員殺し、関係者の記憶を抹消することで事態は収束したものの、あの時ばかりは本気で叱りつけた。
それ以降二度とそんな真似はしなくなったが、あれはなかなか衝撃的な思い出だ。今も昨日のことのように思い出せる。
『懐かしい思い出に浸ってるとこ悪いが、内容がかなり物騒だぞ』
お前が物騒っていうと事実以上に物騒に聞こえるよな(偏見)
「どうしようかと困っていたところ、君たちがタイミングよく現れた。どうだろう、引き受けてくれないか?報酬は弾ませてもらうよ」
「とは言うが、高ランクの冒険者が行方不明になるような場所への依頼だろ?シュウジはともかく、俺は〝青〟だぞ?実力不足じゃないのか?」
「おや、これは奇妙なことを言う。〝黒〟のレガニドを瞬殺し、ライセン大峡谷やハルツィナ樹海を余裕で探索できるような冒険者が力不足とは、どんな冗談だい?」
さらりと当然のように言われたイルワさんの言葉に、ハジメが目を見開く。樹海や峡谷のことは誰にも言っていないからだ。
もしキャサリンさんの手紙に書いてあったとしても、彼女も何故知っているのかという話になる。
つまり、俺たちの中に話した奴がいる。その人物は必然的に、よくキャサリンさんと会話していたものに限られるので……
「……オイ、シア」
ハジメの低い声に、ビックゥとシアさんの肩が跳ねる。シアさんはややぎこちない動きで顔を上げた。
「お前、話したな?」
「い、いやー、つい話が弾んで?」
「弾んで?じゃねえよ。余計なことしてくれやがって。お前後でエボルトの新作コーヒー試飲な」
「とんでもない拷問じゃないですかそれっ!」
「おう残念ウサギ、それは一体どういう意味だ」
ワタワタと慌てるシアさんは、不意にぴこんっ!と耳を立てる。そうするとユエとウサギを指差した。
「そ、そうだ!ユエさんとウサギさんもいました!」
「……!? シアの裏切り者……」
「……悪い子はこうだ」
「いだだだだだ!?う、ウサギさっ、頭ぐりぐりするのやめてくださあいたぁぁああああっ!!」
頭から二つの煙を上げて床に沈んだシアさんを尻目に、話の内容を詰める。
「俺としては、善良な人間の人命がかかっているなら、その依頼を受けるのは吝かではない。ハジメはどう思う?」
「本音を言えば、ただ目的地への寄り道に通りがかっただけなのに北の山脈まで行けるか……ってとこだが、報酬によっては考えなくもない」
「ほう、何を望むのかね」
尋ねるイルワさんに、ハジメはピッと指を二本立てる。
「一つ、ユエ、シア、ウサギ、ルイネ、リベルのステータスプレートの発行、ならびにその内容についての絶対的な他言無用だ。あとは……」
「何かあった時に、俺たちの手助けをすること。だろ?」
ハジメの言葉を、エボルトが引き継いだ。呆れた顔で自分を見るハジメにエボルトはケラケラと笑い、話を代わる。
「
「しかしそれは……」
「無論、責任ある立場故の依怙贔屓の危険さは理解してる。だが、こちとら死の危険がある場所で人探ししろって言われてんだ、そんくらいの見返りがないと釣り合わないってもんじゃねえのか?」
エボルトの正論に、開きかけた口をつぐむイルワさんとドット秘書長。
言わずもがな、俺たちの目的は神殺し。そして元の世界へと帰ること。それを大して隠してない以上、いずれ教会の人間の耳にも入ることだろう。
ある程度のトラブルなら〝アレ〟を使えば俺たち自身でなんとかできるが、あいにくとまだ教会には〝アレ〟の根はそこまで回りきってない。
教会の動きを押さえつけるだけの用意が整いきっていない状況で敵対すれば、相当面倒なことになる。最悪、安心して街にいることもできない。
その時、大都市のギルドの支部長であるイルワさんの名前は使えるだろう。せいぜい〝アレ〟を使えるのは、
「……ふむ。そこまで言うほどの君たちの秘密というのも、個人的には気になるが……わかった。これは私にとって大事な依頼だ、なんとかしよう。ただし、あまりに倫理的に問題のあることは拒否させてもらう」
「そこまでは求めやしねえさ。できる範囲でいい。それに、そういうことは……こっちの専売特許だしなあ?」
エボルトがかつてのエボルトを髣髴とさせる笑みを浮かべれば、イルワさんとドット秘書長は怯えたように少し身を引いた。
「ま、本当にヤバめの時に手助けしてくれりゃいいさ」
「それなら安心だ。では、詳細を詰めていこうか」
その後の話し合いにより、いくつかのことを決めた。
まず依頼達成の条件だが、ウィル・クデタの遺品、あるいは本人を連れ帰ること。まあ後者はほとんど確率がゼロに等しいが。
達成した場合は従来の依頼通りの報酬と、今提示した二つの条件の実行を確約。なお、ステータスプレートは余計な混乱を避けるため依頼完了後に作成する。
それらのことを細かく紙に書き起こし、契約書として保管してもらうことにした。あとでそんなこと言ってないと言われてもアレだしな。
「とまあ、こんなところか。そういえば大事な依頼って言ってたが、何かあるのか?」
「……実は、ウィルを依頼に同行させたのは私でね。ウィルは貴族が肌に合わないと冒険者を目指していたのだが、あいにくとその素質はなかった」
「だから難しい依頼を受けさせて、自分の才能の無さを悟らせようとしたところそのまま行方不明になった、と。せめてもの情けが仇になったんですね」
「その通りだ、シュウジ君。ウィルは友人の息子である以上に、私にだけは懐いていてくれたんだ」
哀愁漂う表情で、悔しそうに言うイルワさん。あのキャサリンさんの教え子というだけあって、この人もなかなかの人情家だな。
「だから、なんとしてでも結末を知りたい。シュウジ君、エボルト君、ハジメ君、ユエ君、シア君、ウサギ君、ルイネ君……よろしく頼む」
最初に来たように俺たちの顔をゆっくりと見渡し、真剣な顔で深く頭を下げるイルワさん。
それに対する、俺たちの返答は……
「オケオケオッケー♪」
「別に助けてしまっても良いのだろう?」
「あいよ」
「……ん」
「……スケット団ver異世界、行くぞー」
「ゲコッ」
「はいっ!」
「ああ、任せてくれ」
俺たちの了承の言葉に、イルワさんはホッとした様子で顔を上げる。どうやら相当ウィル・クデタとは仲が良かったらしい。
それから俺たちは支度金と最寄の湖畔の街への紹介状、件の冒険者たちの受けた調査依頼の資料をもらい、部屋を後にしたのだった。
さあ、テスト頑張るぞっ(白目)
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