エボルト「よお、みなさん久しぶり。エボルトだぜ。前回はリベルが宿で俺と過ごしていたな。いやぁ可愛かった」
ハジメ「子供視点なんて書いたことないから、だいぶ難産だったらしいぞ。まあ、可愛いのは全面的に認めるが」
ユエ「ん……で、シュウジはあっちで何してる?」
シュウジ「尊い……尊いぜ佐藤&轟ペア……」
ハジメ「なんでも更新してない間作者とworking見てて、そのうちのひとカップルにハマったとかなんとか。まあそのうち戻ってくんだろ」
シア「目がキラキラしててうざいですぅ…今回は前回の続きで後半です。それじゃあせーの……」
五人「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」
よう、エボルトだ。俺の視点は久しぶりだな。確か2回目だったか?まあいい。
「ふんふふ〜ん♪」
今、フューレンの街中を歩いている俺の足元では小さな少女……リベルが上機嫌にアイスを頬張っていた。
緑色の長髪を揺らし、テクテクと小さな足で歩くその姿は実に微笑ましい。俺の指はさっきからカメラのボタンを押しっぱなしだ。
説明しよう!シュウジ特製のこの携帯はシャッター音をオミットしており、周囲に迷惑がかかることなく連写できるのだ!
飯を食いがてら散策に街に出たわけだが、店に入って食うよりも、買い食いして少しずつ食べさせた方が飽きないと思い、食べ歩きをしている。
この世界は中世程度の文明レベルに対して、意外と食事が美味い。こういった地球のものに酷似した菓子もあり、リベルも満足そうだ。
まあ、味のレパートリーは少ないがな。えーと、さっきの店はバニラ、ビレア(バナナ)、ドラゴンの尻尾味の三つだったか。三つ目はアイスじゃなくて肉だろ普通。
「美味いかリベル?」
「うん!エボルトおじさん、ひとくちたべる?」
「おう、じゃあもらおうかな」
「はい!」
立ち止まって腕をめいいっぱいあげ、木の容器に入ったアイスを差し出しだしてくるリベル。
シュウジに擬態している以上、当然身長的にそのままでは食べれないので、かがんで小さく一口齧る。
「むぐむぐ……」
「エボルトおじさん、どーお?」
「うーん、なかなか美味いな」
地球のものに比べれば劣るものの、それなりのクオリティだ。まあ、科学文明が発達した地球と同レベルのを作れってのも酷な話だしな。
そのわりには黄金の果実味やらゴリラの胸筋味やらアベ=サンの上腕二頭筋味やら珍妙な味が多かったが。最後のは絶対食わねえ。
「でしょっ!」
ふふーん!と、まるで自分のことのように喜ぶリベル。体の内から湧き上がる癒しにリベルの頭を撫でた。
「えへへー、エボルトおじさんのなでなで好きー」
「でも三番目なんだろ?」
「んー、一番はパパでー、二番はママなのー」
気持ちよさそうに頬を緩めるリベルに、俺は苦笑する。懐かしいなあ、こうやって幼い頃の美空の頭を撫でたっけな。
あの時は何も感じなかったが、今は違う。目的のための道具ではなく、大切な姪だと思ってこの手を動かしている。
桐生戦兎に感情を植え付けられ、女神に拷も……調きょ……教育され、そしてシュウジと共に生きてきた。その時間は、俺を変えた。
昔の俺が見れば、惰弱な存在に成り下がったなと鼻で笑うだろう。だが、今の俺はそうは思わない。
「? エボルトおじさん、どうしたの?」
「ん? いや、ちょっとした考え事さ」
むしろそれを笑い返して言おう。今この時間は、なかなか悪くないものだ、と。
「それより、あっちからいい匂いがするぜ。いってみようか」
「らだー!」
「らだーじゃなくてラジャーな」
ふっと笑い、頭から手を離してリベルの小さな手を取って屋台へ向かう。リベルがアイスを食い終えるために、ゆっくりとした速度だ。
綿密に計算したタイミングでリベルがアイスを完食し、屋台の前に立つ。そこではクレープもどきが売られていた。
「すまん店主、クレープを二つもらえるか?」
「へいらっしゃい、何味にする?」
クレープの生地を焼いていた店主が、俺の声に顔を上げる。その店主の顔は、なんだか裸でケツ晒して河川敷で死んでそうな感じだった。
見覚えのありすぎるそれに一瞬驚きながら、リベルを抱え上げて店主の出したメニュー表を見せる。リベルは「んー」と少し悩んだ後、一つを指差した。
「これ!」
「雷電斬震味な。そっちの兄ちゃんは?」
「あー、じゃあこの雷電激震味で」
「ほお……そいつを頼むとは見所がある」
なんの見所だ。鬼か、鬼になる見所か?
「雷電斬震と雷電激震、師弟ペア味で二百ルタ割引……六百ルタだ」
「はいよ」
財布(奈落の魔物の革製)から硬貨を取り出し、店主に渡す。受け取った店主は両手に道具を持つと、キラリと目を光らせた。
次の瞬間、店主の両手が消える。するとまるで手品のように、手がきらめくたびに薄く広がっていた円形の生地がクレープの形を成していった。
電光石火の勢いに感心していると、完成したクレープが出てくる。濃い緑色の生地に、それぞれ茶色いチョコレートクリームと銀色っぽい白いクリームの使われたものだ。
「はいよ、お待ちどうさん」
「おじちゃんすごーい!」
「そうだろ?」
少し自慢げにいう店主に一言礼を言って店を後にすると、早く早く!と手を伸ばすリベルに雷電斬震の方を渡す。
「さて、それじゃあお手並み拝見といくかね」
「いただきます!」
リベルと一緒に、クレープを齧る。そして咀嚼した瞬間、全身に電撃が走ったような感覚を覚えた。なんだ、この表現し難い美味さは。
まだ戦兎たちの世界にいた頃、ファウストの金をちょいとちょろまかして色々美味いもん食ってたが、これは初めての味だ。あの鬼……間違えた店主やるな。
ちなみに、この食事についてもその時とは認識が違っている。昔はこの程度か、と思っていたが、今は心から食事を楽しんでいる。
思えば俺、星のエネルギーを吸収することで生きてたから地球に来るまで飯なんかほとんど食ったことなかったなぁ。豊富な料理に驚いたもんだ。
……豊富なタコの種類と料理の数にも驚いたもんだ。別の意味で。シュウジの野郎いつか絶対シバき倒してやる。
「おいしー!」
「そうだな」
どうやらリベルもご満悦のようだな。ルイネも喜ぶだろうし、念話でシュウジにも教えてやろう。有能な俺、恐ろしい子っ!
「そこの君たち」
さて、次は何をリベルに食わせようかと周囲に目を巡らせていると、不意に右隣の方向から声をかけられた。
そちらを見れば、三十代くらいの女が大きな風呂敷を敷いて地面に座っていた。これまたどっかで見覚えのある顔だ。
「何か用か?」
「ここでちょっとした体験をしていかないか?三十分程度で終わるものだ」
ふむ、と思いちらりと風呂敷の上を見てみれば、いくつもの瓶と数多くの種類の花が綺麗に並べられている。傍らには硬貨の入った壺も鎮座していた。
この散策の主役たるリベルを見てみれば、すでにしゃがみこんで花を手に取り、キャッキャとはしゃいでいた。すかさず撮影。
「で、どんな体験だ?」
「簡単だ。花と瓶を使って置物……生け花を作る。1回千ルタだが、どうだ?」
「ほぉ……」
概ね予想通りの代物だな。昔の鎧盗んだり弟子の弟子のアイテム奪って変身したり花に包まれて死んだりしてそうな顔で大体察してたが。
「どうだリベル、やってみるか?」
「うんっ!」
リベルが元気よく頷いたので、財布から千ルタ硬貨を取り出すと指で弾く。クルクルと宙を舞う硬貨は、チャリンと音を立てて壺に落ちた。
「ありがとう。ではリベル、私の指示に従って、気をつけてやりなさい」
「はーい!」
手を挙げて答えるリベルに女はフッと笑い、まず最初に使う瓶を選ばせる。リベルが選んだのは、子供らしいこじんまりしたものだった。
それを確認した女は瓶の大きさに対して使える花を選別し、さらにそこからリベルがこれがいいというものを選ばせる。
「んー、これとこれ!それとこれとー……」
リベルは楽しそうな顔で、次々と花を選ぶ。白い花に黒い花、赤い花、緑の花、赤黒い花、金に近い黄色の花、淡い青い花、ピンクの花……
「ん?」
俺は思わず声を漏らす。リベルが選んだのは、一見してなんの統一性もない色の花々。自由奔放な子どもらしいといえばそれまでだが、これはもしや……
「ははっ、こいつは傑作だ」
「?エボルトおじさん、どーしたの?」
「いや、なんでもない。刃物には気をつけろよ」
「うん!たのしみにまっているがいい!」
「おー、すげえ楽しみにしとくわ」
思わず微笑みを浮かべながら、リベルを促す。リベルはまたハリのある明るい声で答え、選んだ花を女の指導のもと花瓶に入れていった。
さすがと言うべきか、女の指導は見事なものだ。全く関係性のない色とりどりの花を、装飾を足しながら少しずつ調和させていく。
二十分も経つ頃には、最初はまとまりのなかったただ花瓶に花を突っ込んだだけのオブジェが、一端の美しい芸術品となっていた。
「できたー!」
「よく頑張ったな。素晴らしい出来だぞ」
「エボルトおじさん、見て見て!」
花瓶を持ち上げ、完成した生け花を見せつけてくるリベル。その顔には満足げな表情が浮かんでおり、非常に楽しんでいたのがわかる。
「くく、いい出来じゃねえか。さすがだな」
「やったー!エボルトおじさんに褒められたー!」
「おっと、そんなに振り回すとせっかくの形が崩れちまうぜ」
「あっ、あぶない!」
慌てて持ち上げた花瓶を下ろすリベル。俺と女は思わずクスリと笑ってしまう。リベルはニヘーと笑った。撮影。
女に礼を言い、リベルの手を引いてその場を後にする。そのまま道なりに町の中央広場に足を進めた。
「〜♪」
リベルはご機嫌な様子であり、自分の作った生け花を見てはむふふと笑っている。時間が経つごとに写真が増えていくな……
「リベル、それを少し貸してくれるか?」
「やっ!」
「なん……だと……!?」
異空間に入れておこうと思ったのだが、まさか拒否されるとは……フッ、これはシュウジとルイネと共有のメモに書かなくては。
リベル、初めての反抗……と。くっ、なぜだ。この俺が涙を流すとは。いや、これは涙ではなくただの海水だ(錯乱)
「いいのか?異空間に入れておけば形も崩れないぞ?」
「いーの!これはわたしがもって帰るの!」
「そうか……成長したなぁ」
気づかぬうちにこんなに精神的に成長して(再び錯乱)
目から溢れる水滴(頑なに涙とは言わない)をぬぐいながらこっそりオーラで花の位置を固定していると、視界がひらけた。
屋台の立ち並ぶ雑多な街道から、見事な噴水の鎮座する広場へと。そこでは少なからず露店が開かれ、キャッキャと黄色い声をあげて子供たちが走り回っている。
平和だねぇ。つい壊したくなる……と、昔なら思ったな。もちろん今は思わない。うん、本当に思わないぞ。ほんの0.00001%程度くらいにしか思ってない。
「……………」
「ん?どうしたリベル?」
「あ、なんでもないよ!」
ぼーっとしていたリベルは、慌ててそう答える。俺は不思議に思い、リベルの見ていた方向を見やった。
するとそこには、楽しそうに遊ぶリベルと同年代くらいのガキどもの姿がある。何も知らない純真な笑顔を浮かべ、仲睦まじくしていた。 。
もう一度ちらりとリベルを見れば、俺の視線に気づいてないのか、またガキどもをじっと見ている。その瞳には、少し羨ましげなものもあった。
「……ふむ」
思えば、リベルはライセンの迷宮から出て目覚めてからずっと、俺たちと旅をしていた。無論、同世代の友達ができる確率はかなり低いと言えるだろう。
確かに俺たちは有り余るほど愛情を注いではいるが、それだけでは子育ては成功しないことを俺も、そしてシュウジもよくわかっている。
つまり、今リベルに必要なのは……
「リベル、あのガキどもと遊んでこい」
「えっ?」
驚いた声を上げて、俺を見上げるリベル。見開かれた目には、今度は十分以上の期待の光が爛々と輝いていた。思わず苦笑する。
「同い年くらいのやつと遊んでみたいんだろ?生け花は俺が預かっておいてやるから、混ざってこい」
「あっ」
ひょいとリベルの手から花瓶を掠め取り、ほれと背中を押す。躓きそうになり、なんとかバランスを取ると、こちらを見るリベル。
「……うん!」
そして、満面の笑みを浮かべるとガキどものところへと走っていった。ガキどもはすぐにリベルに気づき、振り返る。
近寄ってきたリベルと一言二言話し、すぐに笑顔を浮かべるとリベルを加えて遊び始めた。どうやらうまくいったようだな。
「さて……と」
ベンチに腰掛けた俺は、そっと花瓶を隣に置く。そしてスッと近くの物陰にいる、ずっと俺たちを付け回していた監視者を見やった。
「せっかくの姪っ子とのお出かけを邪魔する無粋な輩を、消すとするかな」
[+増殖分裂]の技能を使ってストックしていた分身と入れ替わると、瞬間移動で監視者の男を攫う。そのまま近くの廃墟まで運んでいった。
廃墟に到着すると、そこには待ち構えていたであろう男の仲間たちが大勢いた。そんな奴らに男を放り投げる。
「ぐぎゃっ!」
「!? アドラ、どうしてここに!?」
「熱い視線で見られてたもんでね、お運びした次第さ」
声をかけてようやく、奴らは俺の存在に気がついた。信じられないとでもいうように瞠目し、動揺して後ずさる。
奴らの会話を盗み聞きすれば、どうやらアドラだかアドルフヒトラーだかいう男は隠密の技能を持っていたらしい。ま、俺には効かないな。
ざわめく奴らを嘲笑交じりに見ていると、奥からのっしのっしと大きな影が姿を現した。自然と左右に割れる奴ら。
出てきたのは、いかにも悪党の親玉と言わんばかりの大男だった。卑しく歪んだ口元に脂ぎった禿頭、筋肉の鎧に包まれた体。
「よお、てめえが俺の可愛い部下をやってくれたやつか」
「部下?」
はて、こんなモブに手を出した覚えはないが……ああ、もしかしてフューレンに来て初日に、シュウジが内臓を潰した奴か。
お礼参りとは日本のヤクザみたいだなと思っていると、何やら男は首を傾げた。そして近くにいた男に何やら聞いている。
「おい、本当にこいつなのか?報告じゃ黒と白の髪に黒目だって聞いたが」
「へ、へい、そのはずですが……」
「あー、あいつと勘違いしてんのか」
まあ白髪赤眼を除けば顔は同じだしな。一応区別をつけるために髪型とか服装は全くの別物にしてるんだが。
ま、この際狙われてんのが俺だろうがシュウジだろうがどっちでもいい。さっさと終わらせてリベルのとこに帰らなきゃ、後で話した時にルイネに吊るされちまう。
「で、俺をぶちのめしに来たってことでいいのか?」
「そういうこった。お前がどんな方法を使ったのか知らねえけどな、この人数相手じゃ何しても無意味ってもんだ」
大男の言葉に同調するように、男どもがニヤニヤ笑いながら各々の武器を手に持ち始める。ナイフ、棍棒、ナックル……選り取り見取りだな。
「ケヒャヒャ、あのガキは高く売り飛ばしてやるよ」
「テメェはせいぜい、自分の身の心配をしなぁ!」
「ハァ……全く愚かだな」
おきまりのようなセリフを吐く三下どもをを見て、俺は深くため息をついた。よもや、この俺がこんなテンプレに巻き込まれるとは。
「何だと?」
「お前らは変身するまでもないな。片手で十分だ」
「何言ってーーガッ!?」
大男のみぞおちに、握った右拳を叩き込む。そのたった一発で背中が内側から弾け、次いで流し込んだ猛毒で声すらあげずに消滅した。
ざわりと悪党どもの空気が揺れる。リーダーが瞬殺されたことが、よっぽどショッキングだったようだ。ふん、小物だな。
「二十……いや二十五か? まあいい。ほらどうした? さっさとかかってこい」
「ば、化け物っ……」
「おいおい、
やれやれと思いながら、大男を殺した手をあげる。それだけで悪党どもは一歩後退した。なんだ、腑抜けな奴らだな。
そのままかかってこいと指を曲げれば、逃げられないと悟ったのだろう。蛮勇を振り絞り、震えた雄叫びをあげて突撃してきた。
まず最初に一番近くに来たやつを、頭を鷲掴みにする。指で頭蓋骨に圧をかけると、武器を手放して絶叫した。
「ぎゃぁあああああ!?」
「ほうら、そんなに大口を開けてると……」
手のひらから精製した少しずつ侵食する毒を放出し、頭を手放す。全身の血管が紫色に浮き出た男はビクンビクンと地面の上でのたうち回った。
泡を吹く男を見て、一瞬勢いを削がれる男たち。その間に地面を這う蛇のように懐に潜り込み、一気に九人に同じ毒を原液で口に叩き込む。
瞬く間に、最初は二十五人いた悪党どもは十五人まで数を減らした。惨憺たる形相で地面を転がり回る仲間たちを見て、喉を鳴らして足を止める。
「止まっていていいのか?」
「しまっ」
そのうちの一人に肉薄し、心臓に緩く握った拳を当てると〝二重の極み〟を打ち込む。心臓が弾ける感触とともに、男が崩れ落ちた。
「なぁっ!?」
「一度やってみたかったんだよなぁ、これ」
「く、くそがぁあああっ!」
完全に錯乱した様子で、めちゃくちゃにナイフを振り回しながら突撃してくる男。まるで狙ってくれと言わんばかりに突き出した頭を〝二重の極み〟で粉砕する。
その男に感化されたのか、はたまた狂気に呑まれたのか襲いかかってくる男たちを、俺は的確に処分していく。殺すに値しない相手には処分で十分だ。
ただひたすらに処分をする間、俺の中には冷たい歓喜が沸き起こっていた。懐かしいこの感覚、これもまた俺らしい。
「ほら、こいつで終わりだ」
「ガッ!」
最後の一人に、手刀で縦に一閃する。体の中心線に赤い切れ込みが入り、左右に分かれて地面に崩れ落ちた。結局片手で事足りたな。
「おお、そういえばお前らもいたな」
未だ毒に苦しんでいる男たちに右手をかざし、体内の毒を強めて消滅させる。前はこんな芸当不可能だったが、シュウジと融合していた影響かできるようになった。
死体はあえて残すことにする。こいつらにはせいぜい、今後ここに来た時同じような輩に絡まれないための、宣伝塔となってもらおう。
「いやぁ、働いた働いた」
伸びをしながら瞬間移動して、広場へと戻る。それと同時に分身体と融合し、元の通りにベンチに収まった。
リベルを探してみるが、姿が見当たらない。子供達の姿もなく、もしやと少しの情報を感じながら気配を探った。
すると、屋台の間の隙間にいた。ほっと安堵の息を吐いて花瓶を持ち、ベンチから立ち上がってリベルのところへと行った。
「おじさん、どーしたの?」
「……僕は…」
後一歩で暗い隙間に入る、その所でリベルの他に誰かがいることに気づいた。背中を向けるリベルの向こうに、座り込む男がいる。
暗がりと長い髪で顔の伺えないその男は、無気力な視線でリベルを見ていた。とりあえず気配を消して様子を見ることにしようか。
「僕は……なぜここにいるんだろう……」
「?まいごなの?」
「僕は……死んだはずなんだ……本当の僕に世界を頼んで……それなのに、なぜ……」
ふむ……すでに死んだはずの人間、か。それにこの声、どっかで聞き覚えあるな。もしかしてまた死んだライダーだったりすんのか?
そういやホルアドにいた時もやたら頂点に立ちたがる男とかいたし、〝あれ〟に言って一応情報を集めとくか。念のために。
「僕は、人間じゃない……それに守るものももう……それなのに今更、生きてる意味なんて……」
「んーと……よくわかんない」
リベルの無情な言葉に思わず吹き出しそうになった。まあそりゃ、五歳児程度の知能のリベルに死んだだなんだなんかわかるはずもねえか。
なんとか笑いを収めながら、今一度隙間を覗き込む。すると、男の頭をリベルが撫でていた。男の肩が震え、少し頭を上げた。
「まもるとか、にんげんじゃないとか、よくわかんない」
「そう、だよね……僕は……」
「でも、わたしからひとつ、あどばいすするね」
「……え?」
「パパが言ってたの。〝じんせい、ほどほどにわらっていきて、ときどきやるときはまじめになればたのしくなる〟って」
「笑って、生きる……」
「うん、だからおじさんもがんば!」
再びうつむいて何事か考え始めた男に、リベルはグッと親指を立てる。俺は思わず感心した。小さいのによくやるな。
どうやらそれで満足したのか、リベルは立ち上がると踵を返し、隙間から出てくる。そしてすぐに屋台の柱に寄りかかっていた俺に気がついた。
「あ、エボルトおじさん!」
「よおリベル、そんなとこでかくれんぼか?」
「んーん、いーことしてた!」
「そうかそうか、リベルはいい子だな」
「えへ〜」
一部始終見ていたが、まあ黙っておいて頭を撫でる。リベルは相変わらずふやけたような顔で口元を緩ませた。
「さあ、そろそろ帰ろうか。ほれ生け花」
「うん!」
リベルに花瓶を返すと、手を繋いで広場から出ていく。そのまま宿への道を一直線に歩いていった。
しばらく歩いていると、見覚えのある後ろ姿が見えた。青みがかった銀の長髪と、ピンク色のボブカット。どちらともにウサ耳がついている。
「よお、ウサギたちじゃねえか」
「あぁ……エボルトさんとリベルちゃんじゃないですか……」
声をかけると、二人とも立ち止まり俺たちの方を振り返る。俺に言葉を返したシアは、やけに疲れきったような顔をしていた。
「ウサギおねーちゃん、カエルさん貸して!」
「ん、いいよ」
「ゲコッ」
「はぁあああ……」
「どうした、何かあったのか?」
「ええ、まあ色々ありましたよ……それはもう色々と……」
「……わたしは無実だ」
「何言ってるんですかぁ!カジノ行って大暴れしたくせに!」
「……記憶にございません」
「嘘つかないでくださいよぉ〜!お金ぼったくろうとした店員ぶっ飛ばして靴とったり食堂荒らしたりルーレットぶっ壊したりトイレの像壊したり、色々やったじゃないですかぁ!衛兵さんと必死に話しした私の気にもなってくださいよぉ!」
「……なんのことやら」
「むきー!」
「ゲコッ」
あくまでしらばっくれるウサギに、シアがぎゃーぎゃーとキレる。どうやらなかなか面白いことになっていたようだ。後でじっくり聞こう。
リベルがどうどうとシアをなだめ、お供(違う)二人を加えて賑やかに四人で宿に戻った。いやぁ、色々あった散策だったな。
「うーす」
「今帰ったぞ」
「ただいまっと」
「……ただいま」
四人で雑談をしていると、程なくしてシュウジたちも帰ってくる。時間も夕暮れ時だったので、帰ってきて早々夕食を済ませることになった。
「あのね、パパ、ママ。今日ね、すごいもの作ったんだよ!」
料理が来るまで雑談を続けていると、不意にリベルが声を上げた。全員がピタリと声を止め、リベルを見る。無論俺もだ。
リベルは一旦椅子から降りると、椅子の下に隠していた花瓶をうんしょ、うんしょと引っ張り上げる。俺はそれを手助けした。
机の上に置かれた色とりどりの花で飾られた花瓶に、その場に座る全員がおおと声を出す。カエルは食おうとしてたので口を掴んだ。
「すごいな、これリベル一人で作ったのか?」
「うん、そうだよ!」
「嘘つけ、手伝ってもらってたろ」
「あっ、エボルトおじさんそれはないしょ!」
しーっと人差し指を唇に当てるリベル。ハハハ、と穏やかな笑いが起きた。まったく、嘘つきは俺の始まりだぜ。って誰が詐欺師だ(セルフボケツッコミ)。
「それで、この花たちはなんの意味があるんだ?」
「んーとね、これがパパなの」
黒い花を指差して、リベルがそう言う。流石に予想していなかったのか、シュウジは目を瞬かせた。面白かったので録画しといてやろう(ゲス顔)
「それで赤いのがママで、白いのがエボルトおじさんで、ちょっぴり黒い赤いのがハジメおじちゃんで、黄色いのがユエおねーちゃんで、青いのがシアおねーちゃんで、ピンクがウサギおねーちゃんで、緑がわたしとカエルさん!」
「リベル、お前……」
「……これは涙じゃない、そうただの汗」
「うぅ〜、リベルちゃんいい子すぎますぅ〜、もっと好きになっちゃいますよぉ〜」
「……リベル、ほんといいこ」
「ゲコッ」
天使のような笑顔でそれぞれの花を意味するものを説明するリベルに、全員目頭を押さえていた。俺?ハハ、別にハンカチなんて持ってねえよ。
普段は何か食うか鳴いてるしかしてねえカエルも、机に飛び乗ってリベルの頬を舐めている。リベルはちょっとくすぐったそうにしていた。
そんな俺たちはまだ優しいもんで、初めての娘からのプレゼントとも言えるものに、シュウジはそっぽを向いて涙をこらえ、ルイネに至っては胸を押さえてうつむいている。
「別に、泣いてなんかないし?うん、ほんとほんと。ほらあれだし、ちょっとあっちに気になるものがあるだけだし」
「くっ……このこらえようのないほどの喜びを、私などが感じて良いのか……!?」
「何を自問自答してんだ、素直に喜べよ」
ルイネにハンカチを差し出す。おっとそこの紳士諸君、もちろん新品だぜ?かっこいい悪役は、使用済みのハンカチなんて使わせねえのさ。
「ああ、すまないエボルト……リベル。ありがとう。私は、私たちは、本当に嬉しい」
「えへへー、がんばったかいがありますなぁ」
ルイネの言葉に涙をぬぐい、うんうんと同調する一同に、リベルは照れたように後頭部をかく。思わず頬をプニプニ突いた。柔ら可愛い。
「リベル。お前は私の………いや、私たち全員の、誇りの娘だ。その素晴らしい心を、どうかこれからも忘れないでくれ」
「りょーかいでありますっ!」
「お待たせしましたー」
リベルが小さな手で敬礼したところで、タイミング良く料理が運ばれてくる。感動的なイベントもあったということで、俺たちは上機嫌に夕食を食べるのであった。
こうして、フューレンでの一日は終わりを告げ……そして、衝撃的な出会いのある、ウルの街へと俺たちは出発した。