星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

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どうも、宇宙船読んではよオーマジオウのアーツ出ろやと思ってる作者です。

シュウジ「ども、シュウジだ。前回はハジメと黒竜の戦いだったぜ」

エボルト「ぶははは!ケツに杭って、ケツに杭って!」

ハジメ「エボルト大爆笑してんな。仕方ねえだろ、あれが一番てっとり早かったんだよ」

ユエ「ん、仕方ない…そういえばエボルトっていえば、クローズの映画?がついに上映開始するみたい」

シア「へえ!あれ、そういえば作者さんの脳内にクローズエボルの登場プロットがあった気が…」

ウサギ「シア、それはまだ秘密。情報漏洩は禁止だよ」

シア「あ、はいですぅ」

シュウジ「まさか、あいつがなぁ……」

ハジメ「ネタバレ禁止つってんだろうが…今回は黒竜との話し合いだ。それじゃあせーの」


六人「「「「「「さてさてどうなる襲撃と再会編!」」」」」」


意外!それは変態ドラゴン!

 

「というわけだ」

「うーん、思ったより過激」

 

  コンコン、と黒竜のケツにぶっ刺さったパイルバンカーを叩くハジメに、俺は笑いそうになるのを必死にこらえた。

 

  いやまあ、目を覚ましといてとは頼みましたよ、ええ。どうせなら一発強いのガツンと入れてしまえと煽りましたよ、ええ。

 

  でもいくら我らが鬼畜主人公のハジメさんといえど、YA☆RA☆NA☆I☆KA(物理)からのアッーー♂は予想外すぎて笑うわ。

 

『何故わざわざそれをチョイスしたのか』

 

 一番表現が楽だったからさ(イケボ)

 

〝あ、ちょ、叩くのはやめて!振動が響いてきついのじゃ!というか、このままだと妾のお尻大変なことに……〟

 

  その件の黒竜はといえば、涙目になりながら泣き言を言ってる。どうやら広域版の〝念話〟を使って話しているらしく、脳内に響くような感じだ。

 

『こいつ、直接脳内に……!?』

 

 それ最初に思い浮かべたわ。

 

  しかしまあ、随分と派手に戦ったもんだ。モジモジしてる黒竜のいる滝壺の周りは、無残というほかないほどに破壊されてる。

 

  滝自体も通り道が滅茶苦茶になったせいで、一直線に落ちていた美しい面影はどこへやら、チョロチョロと流れ落ちている有様だ。

 

  ちなみに、ルイネたちはまだ茂みの中にいてもらっている。万が一黒竜にウィル君の近くで暴れられでもしたら事だからだ。

 

「随分派手に戦闘したな」

「ああ、こいつ無駄に硬かったからな。おかげさまでそっちの残念ウサギはダウンだ」

 

  ハジメが指差す方を見れば、比較的破壊がマシな場所で、シアさんが聖母のように微笑むユエに膝枕されて頭を撫でられている。

 

  その隣ではウサギが違和感があるのか、しきりに耳をいじってた。なんでも、黒竜の咆哮で聴覚が一時的に狂ってしまったとか。

 

「うにゅ……」

「シア、いい子いい子」

「うーん……」

「ゲコッ」

 

  どことなく幸せそうな顔のシアさんに、ハジメはまったくとため息を吐いている。最初の頃に比べりゃ、随分と丸い対応になったなー。

 

  んで。ハジメの話によると、この黒竜一度倒したと思ったら、体内から現れた不気味なボトルの力で復活したらしい。

 

  詳細を聞く限り、そのボトルはおそらくバットロストボトルだ。あのナイトなローグでホテルでデンジャー……!な人が使ってたやつ。

 

  当然俺が黒竜に埋め込んだわけではなく、別の誰かの仕業ということになるが……

 

『ちょっと確認とっとくわ』

 

 頼む。

 

「何はともあれ、無事に洗脳は解けたようでよかったわ」

「無事……うん、そうだね。ノープロブレムだね」

 

  ハジメが杭を突くたびにビクンビクンと震える黒竜から目をそらす。さっきまでは涙目なだけだったのだが、今は若干息が荒いように見えた。

 

  これはのちのちハジメが面倒なことになる予感。今のうちから煽る準備をしなくてはちけない。えっゲス?ハハハ、今更なにを()

 

「んで、お前の方は……」

「モチのロン、撃退したぜ」

 

  アクノロギアの腕から作ったナイフをヒラヒラとちらつかせる。すると、ハジメは意外なものでも見たような顔で目を瞬かせた。

 

「珍しいな。お前が一度戦った相手を殺さないなんて」

「ルベシャトぶっ壊されたしなぁ。最後には敵意なくなってたし、それなら腕一本取っただけいいかなーって」

「あのルベシャトを壊した?流石は伝説の竜ってとこか……」

〝あ、あのぅ……〟

 

  ルベシャトのかけらを異空間から出してハジメに見せていると、不意にまた黒竜が声を出した。二人揃ってそちらを振り向く。

 

〝楽しげに話してるとこ悪いんじゃが、そろそろこれ抜いてくれんか?魔力が切れかかってて、そろそろヤバい……〟

 

「ほい、魔力譲渡(マナ・トランスファー)

 

  ポンと黒竜の体に触れて、魔力を譲渡する。これでしばらくは保つだろう。もし杭を抜いて、襲い掛かれでもしたらたまらない。

 

『で、本音は?』

 

  このままいけば多分ハジメが大変になるところ見られるから(クズ)

 

  とまあ、そんな俺の楽しみは置いておいて、この黒竜のことだ。人間の言葉を話す竜種は、俺のトータスについての知識には一つしか該当しない。

 

「あんた、竜人族の生き残りでいいか?」

〝む?確かにそうじゃ。妾は誇り高き竜人族の最後の生き残り、クラルス族の末裔である。凄いんじゃぞ?偉いんじゃぞ?じゃからこれ抜いて……〟

「だ が 断 る !」

 〝なんじゃと!?〟

 

  驚愕する黒竜改めクラルスさん。俺はかつて世界の意思を背負ったもの、たとえ相手が五百年以上前にほぼ絶滅した伝説の存在だろうと遠慮はしない!

 

  それにほら、精神年齢的には俺の方が500歳近く年上だし。えっそのくせに嫌がらせが子供っぽいって?そっちの方が効きやすいんだよ。

 

『かっこよく言ってるけどただのクズだからな。ていうかそれ、自分で言ってて悲しくねえか?』

 

  どうも、「パパって実はおじいちゃんなんだね!」とか言われたら精神的に立ち直れないので、娘に前世のこと言ってない男です。

 

『パパっておじいちゃんなんだね!』

 

 声マネて言うのヤメロォ!

 

「平気平気、あと十分くらいは保つから」

〝それが経ったら妾多分死ぬんじゃが!?〟

「大丈夫だ、問題ない」

〝大ありじゃ!〟

「んもークラルスさんったら欲張りー」

〝妾杭を抜いてくれとしか言っとらんよな!?〟

「いい加減にしろ馬鹿ども、話が進まねえだろうが」

 

  クラルスさんをいじっていると、ハジメが俺の脇腹に肘鉄をかました。おうっ結構いいとこ入った。日に日にハジメの技術が上がっておる。

 

  俺を押しのけたハジメはクラルスさんの尻に今もなおぶっ刺さり中の杭に手を置くと、グリグリとひねる。悲鳴とも嬌声ともつかぬ声を出すクラルスさん。

 

「おら、どこの誰に、どう言った経緯で操られてたのかさっさと話せ。さもないともっと深く刺すぞ」

〝それはそれで良さそ……んんっ、や、やめてほしいのじゃ!話すから勘弁してたもう!〟

 

  若干怪しげな発言を最初にしたクラルスさんは、魔力を気にしてか若干焦り気味に、されどどこか艶のある声でことの経緯を話す。

 

  クラルスさんは、竜人族の集落から異世界からの来訪者……要するに俺たちが来たことを知り、調査のために出てきたらしい。

 

  本来なら竜人族は表舞台には出てこないらしいが、流石に未知の相手に無知は危険だと判断し、議論の結果調査することになった。

 

  そしてこの山まで来て、町に降りる前にしっかり英気を養っておこうと休憩を取っていたとか。

 

〝人里に降りた際は人の姿となり、情報収集をするつもりだったのじゃが……数日前、ふらりと妾の前に一人の男が現れた〟

「男?」

 〝うむ。黒いフードで顔を隠したそやつは、洗脳や暗示などの闇系魔法で妾を僕にした。恐ろしいやつじゃった。闇系魔法に関しては天才と言わざるをえんな〟

 

  その男の闇系魔法は、これまで見たことがないくらいに強力だったらしい。それこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

  そしてクラルスさんは一日かけて(フード男の愚痴という名の自己申告より)洗脳を施され、そのあとは奥の山脈で魔物の洗脳を手伝わされていた。

 

「ていうか、一日中かけられてたって、幾ら何でも寝すぎじゃね?」

〝いやほら、それはその……のう?〟

「のう?じゃねえよ。あのことわざ通り尻でも蹴られなきゃ起きねえってか。この駄竜が」

 

  おかげでこっちは散々だ、と言いながらハジメが杭を叩く。〝あふん!〟とクラルスさんが黄色い声を上げた。おや、これは順調に調教が……

 

「で、ウィル君と冒険者たちの件だが」

〝ああ、実は……〟

 

  ブルタールの群れを一つ目の山脈に移動させてたところをたまたま遭遇し、目撃者抹殺のため万全を期してクラルスさんが向かわされた。

 

  が、気がつけばフルボッコにされてるわ変な力に呑まれるわ、挙げ句の果てにゃケツに杭ぶち込まれて、完全に洗脳が吹っ飛んで覚醒した。

 

〝そして今に至る、というわけじゃ〟

「なるほどなぁ……」

 

 

「ふざけるな!」

 

 

 

  事情を聴き終えて頷いていると、不意に後ろから叫び声が聞こえた。そちらを振り向くと、茂みから出たウィル君が体を震わせている。

 

  遅れて茂みから出てきたルイネとマリスの制止も聞かず、ウィル君はズンズンとこちらに近寄ってくると、至近距離でクラルスさんを睨み上げた。

 

「それだから……それだから、ゲイルさんたちを殺したのは仕方ないとでもいうつもりか!?」

〝………〟

 

  何も反論しないクラルスさん。彼女だってわかっているのだろう、たとえ操られていたといえど、自分が人を殺したことを。

 

『これで完全に意識がないのならまだしも、意識も記憶も残ってるってんだからなぁ』

 

 ちょっと楽しそうな声出すな元外道異星人。

 

「だいたい、今の話だって苦し紛れの嘘に決まって……」

「ああ、それについては心配ないぜ」

 

  キッ!こちらを振り返るウィル君。どうやら相当ご立腹らしい。そんな彼に、俺はコートのポケットから手のひら大の宝石を取り出す。

 

「嘘をつく時ってのは、魂の炎が陰る。この〝愚者の偽石〟はそれを感知して変色するアーティファクトだ」

 

  魂の陰りを感知すれば真紅に染まる〝愚者の偽石〟は、平常と同じ澄んだ青色のままだ。つまり、クラルスさんは嘘をついてない。

 

  アクノロギアの攻撃を防いだこともあってか、俺の言葉を信じたのだろうウィル君は悔しげに歯噛みし、強く拳を握る。

 

「それにな……嘘ついてるやつは、こんな綺麗な目はしねえな」

 

  前世で一千年もの間、様々な悪人を殺してきた。だから俺は、どんなに外面を取り繕ったって、その裏にある悪辣な感情が手に取るようにわかる。

 

  それはクラスメイトの魔法にやられたハジメや、三百年前吸血鬼の王として、邪念渦巻く支配者たちのトップにいただろうユエだって同じだ。

 

  この場の全員が、嘘つきというのがどういうやつか知っている。それを感じ取ったのか、ウィル君はなんともいえない顔をした。

 

「でも、ゲイルさんはこの依頼が終わったら結婚するんだって、あんなに幸せそうな顔で言ってたのに……」

「そりゃまた、これ以上ないほどにベタだな……」

 

  やれやれ、といった顔のハジメの隣で、俺は必死に笑いをこらえた。俺はそのゲイルさんという人のことについて知ってたりするので。

 

  そう、ハジメたちは知らなくていい。ウルの街でゲイル・ホモルカを健気に待っていた、フレデュ・マキュリスとかいうおっさんがいることなんて。

 

『酒の席って時々、とんでもないことも聞くよな』

 

  マリスのとこ行く前に冒険者ギルドで情報収集なんかするんじゃなかった(白目)

 

「あ、そういや思い出したけど。これもしかしてウィル君の?」

「あ!それ僕のじゃないですか!拾ってくれたんですか?」

「まあにゃー」

 

  異空間からロケットペンダントを取り出して差し出すと、嬉々として受け取るウィル君。そして中の写真を見て嬉しそうにする。

 

「ちなみにその女性、彼女だったり……」

「? いえ、ママですけど」

「デスヨネー。そんな気がしてたよ異世界マザコンめ、はっはっはっ」

 

  そんなこんなで、いくらか冷静になった様子のウィル君。だが怒りは消えたはずもなく、やはり危険だからクラルスさんを殺そうと言う。

 

  が、その目の色を見る限り、明らかに本音は復讐だ。せっかくハジメに殺さない方向で頼んだのに、はいそうですかと殺しちゃあ意味がなくなっちまう。

 

「おっきなとかげさん!」

〝おお、これは可愛らしい女子じゃの。妾はな、トカゲではなく竜というんじゃ〟

「りゅう?」

〝うむ、そうじゃ。とかげよりももっと強くてかっこいいのじゃぞ〟

「あはは、りゅうさんの顔かたーい!」

〝あっ、こら、鼻先をペシペシするでない!今の状態だとそういうところを刺激されると……〟

 

  ルイネに抱えられてるリベルがクラルスさんと戯れてるのを見ながらどうしようかと考えていると、ふとあることが引っかかった。

 

「そういやクラルスさん」

「あはは、かたいかたい!」

〝だ、だから鼻先を叩くなと……むう。それで、なんじゃ?〟

「その男、魔物の群れを支配していってるって言ってたよな。何を目的にしてるとか、そういう情報は落としてなかったか?」

〝ああ、それなんじゃが……あの男、魔物の大群を作り、それで街を襲撃するつもりらしい。妾が把握しているだけでも、すでに四〜六千の魔物がおる〟

「なんだって!?」

「おお、こりゃまた超重要な情報を」

 

  そいつ、うまくいくとすぐに調子に乗るタイプの人間だな。これなら他にも何か言っている可能性が高い。

 

〝その他にも、「これで俺は勇者より上だ」などとも宣言しておったな。どうやら勇者に因縁のあるもののようじゃ〟

「……勇者、ね」

 

  今度は、マリスが小さく呟いた。そちらを見れば、冷静沈着な彼女の目には予想通りという色と、どこか悲しげな色が浮かんでいる。

 

  その反応にちょっとクラルスさんに詳しく聞いてみると、どうやらその男は黒髪黒目の、まだ二十もいかない人間の少年だったらしい。

 

『これは、ビンゴじゃねえか?』

「だな。クラルスさんよ、これ見てくれるか」

〝む?〟

 

  携帯の写真アプリを開き、ある写真を拡大する。それは去年……つまりまだ地球にいた頃の写真であり、一年の文化祭の時の集合写真だ。

 

  先頭で俺がハジメと肩を組んでる中、端っこのほうに佇む一人の男にさらに拡大。クラルスさんに見せる。すると、クラルスさんは唸り声を上げた。

 

〝おお、こやつじゃ!こやつが妾を操り、魔物たちを集めている男じゃ!〟

「確定、か」

「先生、それは?」

 

  覗きこもとするマリスに、クラルスさんの視線に合わせていた腕を下げて写真を見せる。すると先生も瞠目して、悲しげに目を伏せた。

 

  俺が二人に見せた写真の男。それは、今年もたまたま一緒のクラスであり、ともに異世界に来たクラスメイトの一人……清水幸利のものだった。

 

『勇者(笑)より上だって時点で気がついてたが、まさか本当に予想通りとはな』

 

 そっちでも情報掴んでたろ?

 

『まあな。()()()()()()()()()()()()()。とはいえ、間接的にらしいが』

 

 ふーん、そうか。

 

「ハジメ。その男だが……」

「ああ、わかってる。清水だろ。お前らの会話聞いてたらなんとなくわかったよ」

 

 さっすがハジメ。理解が早くて助かる。

 

〝む、なんじゃ。その男と知り合いなのか?〟

「まあ、ちょっとな……さて、ウィル君」

 

  うまいタネを入手した俺は、街が魔物の大群に襲われるかもしれないと聞いて青ざめているウィル君に向き直る。

 

「いいかウィル君、よく考えてみろ。たしかに冒険者たちを殺したのはこのクラルスさんだ。でもクラルスさんは操られてた。ここまでは理解できてるな?」

「……はい」

「で、だ。今の話を聞いてたらわかると思うが、そいつはこのままだとウルの街を蹂躙する。そしていずれは……イルワさんのいるフューレンや、お前のママのいる街も滅ぼすかもしれない」

「ッ!」

 

  その言葉を聞いたウィル君の、表情の変化はまさに激的だった。まず衝撃を受けたようになって、次に絶望に染まり、最後に怒りで満ちる。

 

  ちなみに俺がママと言ったことについて、隣でハジメが気持ち悪そうな顔してたが、シリアスな雰囲気なのでスルーだ。ただ足は引っ掛ける。

 

「そ、そんなの許せない!」

「そうだろ?その男を野放しにすれば、クラルスさんに殺された冒険者たちと同じ、あるいはそれ以上に大切な人間たちが蹂躙される。そこで、だ……」

 

  ウィル君の肩を抱き、俺の話に意識の全てを傾けさせるために声音を調整する。声の音一つでも、精神掌握の武器になり得るのだ。

 

「クラルスさんに……そいつを倒させないか?」

「……その、黒竜に?」

「そうさ。そもそもの話、直接手を下したのはクラルスさんでも、それを命令したのはそいつだ。なら、本当にウィル君が止めなきゃいけないやつは誰だ?」

「……それは」

 

  悩むウィル君。俺は駄目押しをするために、ウィル君に見えるように〝愚者の偽石〟をかざしながらクラルスさんに問いかけた。

 

「クラルスさん、冒険者たちを殺したことについての責任は取るつもりあるか?」

〝……無論じゃ。竜人族の誇りに誓って、裁きを受けよう。ただし、あの男を止めてからな〟

「だ、そうだ。見ての通り、クラルスさんは嘘をついてない。それなら償いとして、その男を倒させてしまえばいい。そう思わないか?」

「……確かに、そうかもしれません。それでも、怒りが収まらない……!」

 

 まだダメか。それなら……

 

「なら今この瞬間が、君が強くなるチャンスだな」

「……どういうことですか?」

「今ここでクラルスさんを殺すとしよう。だが、それをするのは誰だ?」

 

  知っての通り、隠れて怯えることしかできていなかったウィル君にクラルスさんをどうこうするような力はない。つまり……

 

「そう、あんたじゃなくて俺たちだ。それは、あんたが仕返しをしたことになるのか?」

「っ!」

「それなら今この場は我慢して、クラルスさんにも対抗できるくらいに強くなったら一発かましてやればいい。その方がスッキリすると思うけどなぁ?」

 

  一理ある、という顔で黙り込むウィル君。怒りと先ほどの洞窟の中での決意がせめぎ合っているのか、非常に葛藤した様子で考えていた。

 

  これで諦められなかったら、気絶させて異空間の中に入れていこう。例のカマキリで知っての通り、今の異空間は生き物も入れられる。

 

  ポッ、ポッ、ポッ、ピーンとかどっかの閃きそうな怪人の口癖を思い浮かべながら待つ。あ、そういやもう少しでクラルスさんに魔力渡してから10分経つな。

 

「……わかりました、そうします」

 

  1分ほどかけて塾考していたウィル君が、結論を出した。賢明な判断をしてくれたことに賞賛の拍手を送り、クラルスさんに向き直る。

 

「というわけだ。協力してもらうぜ?」

〝ああ。この件には妾にも責任の一端があるからの……けど、あの、そろそろ……〟

「ほいほい。おいハジメ、そろそろ〝竜化〟の限界でクラルスさんの下半身がパッカーンするから抜いてくれ」

「わかった」

 

  おもむろに杭を両手で掴んだハジメは、クラルスさんの尻から抜き始めた。半分近く突っ込んだせいか、かなり手間取っている。

 

〝はぁあん! ゆ、ゆっくり頼むのじゃ。まだ慣れておらっあふぅうん。やっ、激しいのじゃ! こんな、ああんっ! きちゃうう、何かきちゃうのじゃ~〟

 

「これは教育上非常によろしくないねぇ」

「あっママ、なんでお目目隠すの?りゅうさんのこえもきこえないよ?」

「リベル、お前にはまだ早い」

「……今回ばかりはフォローします」

 

  俺がいうまでもなく、ルイネがリベルの目を隠し、マリスが黒い物体で念話の魔力ごと耳を塞いだ。さすが俺の弟子、手際が良い。

 

「うるせえ、変な声出すな。あと少しで……オラァッ!」

 

 

 ズボッ!!

 

 

  捻ったりちょっと戻したりして、ついにハジメが杭を引き抜いた。それはまるで昔話の、大きなカブのようであった(ただしソロ)

 

〝あひぃいーーー!! す、すごいのじゃ……優しくってお願いしたのに、容赦のかけらもなかったのじゃ……こんなの初めて……〟

 

  やや艶かしい声で言ったクラルスさんが、その体を黒色の魔力で繭のように覆うと人一人入る大きさまで縮小していく。

 

  そして魔力が霧散すると、そこにはちょっと色々な意味でヤバい格好で地面にへたり込んでいる、黒髪金眼の美女がいた。

 

 見た目は二十代前半ほど、身長は百七十センチ前後。黄金比のような体型をしており、はだけた服の裾からでかい桃……いやスイカが

 

『ルイネとマリスが見てるぞ』

 

  はっはっはっ、別に胸なんか見てないぞ。いやほんとにマジで。レアリー。

 

「ハァハァ、ギリギリだったのじゃ……まだお尻に違和感があるが……それより全身あちこち痛いのじゃ……ハァハァ……痛みというものがここまで甘美なものとは……」

 

 クラルスさんはアレ発言をしながらも、姿勢を正し、凛として雰囲気でこちらを見る。なお、息が荒いのでかなり台無しである。

 

「色々と面倒をかけたな。改めて、妾の名はティオ・クラルス。以後よしなに」

「おう、俺はシュウジ。んでこっちの鬼畜大魔神が……」

「誰が鬼畜大魔神だこのおふざけ暗殺者……ハジメだ」

「うむ、よろしく頼む。シュウジ殿にご主じ……ハジメ殿」

 

  なにやら不穏な呼び方にハジメが眉をひそめる中、クラルスさんは他のメンバーと自己紹介をする。

 

  そのうちに、件の魔物の大群を調べることにした。ハジメがオルニスで上空から、俺がフィーラーで地中から広範囲を探す。

 

  程なくして、フィーラーにつけたカマキリから司令官に記憶が共有され、さらに司令官から俺に共有された。それを見た俺は……

 

『おー、これはまたすげえ数だな。六万は超えてんだろ』

 

  こりゃあ、ほっといたら跡形もなく蹂躙されんな。

 

「ハジメ、そっちは……」

「クソッ、チラチラとミレディの映像が混線して流れてきやがる!泡風呂とか優雅か!」

 

  どうやらダメみたいだ。ていうかわざわざ風呂場に置いてあるあたり、絶対わざとだろう。ミレディさん仕返しぱねぇっす。

 

「因果応報ザマァ」

「チッ、個体識別機能でもつけとくか。まあいい、さっさと行くぞ」

 

  麓の方向に踵を返すハジメ。ハジメが森の中に歩いていくのを見て、他のメンバーも移動を始める。シアさんは俺が背負った。

 

「珍しいな。てっきりウィル君を連れて帰るのが仕事で、魔物の襲撃なんて知らんとかいうと思った」

「ハァ?何言ってんだ。その通りに決まってんだろ」

「あっやっぱ本音はその通りなのね」

 

  じゃあなんでなん?と聞けば、ハジメは深いため息を吐いた。そして俺に呆れたような目を向けてくる。

 

「なんだ、俺はそこのクラルスさんと同じ趣味じゃねえぞ」

「訳わかんないこと言ってんじゃねえ……お前のために決まってんだろうが」

「俺?」

 

  はて、なんで俺なんだろうか。ハッ今更俺への想いに気づいて……

 

『キモいわ』

 

 単純な罵倒いただきましたー。

 

「お前さ、怒ってる時左目の目元がピクッてしてんだよ」

「えっそんなの気づいてたの?」

「何年幼馴染やってると思ってんだ。どうせこのままじゃ罪なき人間たちの命が、とか思ってんだろ?」

「………」

 

  たしかにハジメの言う通りだった。このまま魔物の大群を放置すれば、ウルの街に住む善良な人間が大勢死ぬ。それは〝世界の殺意〟としては見過ごせない。

 

  別に、俺はどっかのバカ勇者みたいに全てを守ろうなどと傲慢で不可能で無理無謀なことは思っちゃいない。

 

  それでも、知ったのなら必ず助けたいとは思う。思ってしまう。それが俺という人間のアイデンティティなのだから。

 

『ある意味、お前の魂に刻まれた呪いだな。一度剣を抜きでもしない限り、善良な人間を守ってしまう。守らなくては、お前という存在が崩れてしまうからな』

 

  その通りだ。そして俺は、この呪いを手放すつもりはない。ハジメたちに迷惑がかからない範囲で、死ぬまで通させてもらう。

 

「最悪、お前らを瞬間移動でフューレンまで送って、俺は残ろっかなーって」

「バカかお前」

「ひっど」

 

  コツン、と軽く俺の側頭部を叩いたハジメは、仕方がないような、ちょっと呆れたような笑いを浮かべて。

 

「俺はお前の親友だ。親友ってのは、大変な時には一緒にいるもんだろ?だから一緒に戦ってやるよ」

 

 そして、いつもの不敵な笑みを浮かべた。

 

「……やだ、ハジメかっこいい。惚れちゃいそう」

「茶化すなよ。せっかく似合わねえセリフ言ったんだから」

「メンゴメンゴ、ちょっと恥ずかしくてさ」

 

  言いながらハジメから顔を背ける。まったく、今世は本当に人の縁に恵まれてるねえ。思わず涙が出そうになったぜ。

 

『やーいやーい、泣き顔隠してやんの〜』

 

 子供かっ!

 

 

 

  ハジメからの厚い友情を感じながら、俺たちはウルの街へと帰還するため、山を下っていくのだった。




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