シュウジ「オッス、オラシュウジ。前回はミュウちゃんがさらわれちゃったぜ」
シア「とりあえずあの黒づくめたちは全員潰しますぅ」
エボルト「殺る気満々だな…ていうか今回ラビット要素なくね」
ユエ「エボルト、ネタバレしない」
雫「それはともかく、いよいよ再会の時が迫ってきたわね……今回はミュウちゃん?を助け出す話よ。それじゃあせーの」
五人「「「「「さてさてどうなる再会編!」」」」」
三人称 SIDE
フューレンのどこかにある、裏オークション会場。
会場には、百人以上の人間が素顔を奇妙な仮面で覆い、珍物を手に入れんと集まっていた。
商品の紹介をした司会が開始金額を提示し、それに目をつけたものが無言で番号札を上げる。その繰り返し。
実に静謐にして不気味。たとえ商品が生き物や、いたいけな子供でも眉ひとつ動かさず金を払う。彼らにとっては、ただの物であるが故に。
「番号札49番の方、お買い上げありがとうございます。それでは皆さん、本日のメイン商品をご紹介しましょう!」
だが、司会の高らかな宣言とともにステージの上に持ってこられたものには、全ての客が驚きにあっと声をあげた。
アーティファクトのスポットライトに照らされるのは、2メートル四方の水槽。そしてその隅に縮こまっているのは……ミュウである。
両手両足を無骨な枷で拘束され、海人族と証明するために張られた水の中で自分を見る無数の視線に怯えていた。
シアがとりあえずで着せていたサイズ調整機能付きの服を剥がれ、持っているのは抱きしめている、迷彩能力で水と同化状態のカエルのみ。
そんなミュウをよそに、どんどん札が挙げられていき、値段が爆発的に釣りあがっていく。海人族を買うリスクより、欲望が優っているのだ。
「うぅ………」
あまりに悪質な人間の欲望の視線を全身に叩きつけられ、今にも泣きそうなミュウ。三歳の少女に、これはあまりにも過酷な状況だ。
そんなミュウの心情を察して、カエルが何度目かの小さい励ましの鳴き声をあげる。そうすると目尻に溜まった涙を舌で舐めとった。
「ゲコッ」
「うん、ありがとう……」
カエルの存在を悟られないため、水に耳をつけでもしなければ聞こえない声で感謝するミュウ。今のミュウの心の支えはカエルだ。
彷徨い、最愛の母と引き離され、拐われて、ひどい環境に閉じ込められた。そこから汚水の中を逃げて、次に目が覚めた時……ハジメたちがいた。
こちらが警戒しているのをわかっていながら、体を綺麗にしてくれて、優しく頭を撫でてくれた。まるで物心つく前に死んだ父のような温もりだった。
カエルを抱きしめると、思い出すのだ。母がいなくなった今、唯一ミュウが感じた暖かい気持ちを。
鋭く、しかし優しい目を持つ少年と、カエルと喧嘩しながらも、自分に何度も大丈夫と笑いかけ、抱きしめてくれた兎の少女の顔を。
「お兄ちゃん……お姉ちゃん……」
もう一度、会えるだろうか。あのとても優しいかもしれない人たちに。そしてまた、頭を撫でてもらえるだろうか。
そんなわずかな希望が、決壊しかけているミュウの涙を止まらせる。もしかしたら自分を助けてくれるかもしれないと、そう信じ続けていた。
ドンッ!!
「ひぅっ!?」
そんなミュウの幼くも強い決意を揺らがせるように、水槽に衝撃が走った。悲鳴を上げ、飛び上がるミュウ。
恐る恐る水槽の外を見ると、タキシードと仮面、シルクハットを被った男が水槽を叩いて何かを叫んでいた。動けと言っているのだろうか。
見れば、客の視線が少々懐疑的なものになっている。弱っていると思われて、司会の男は値段が下がるのを恐れたのだ。
〝安心しな、お嬢ちゃん。あとちょっとで助けが来るぜ〟
「ふぇっ!?」
突然、脳内に知らない男の声が響く。未体験の現象に恐怖の涙を浮かべながら、ミュウはキョロキョロと水槽の中を見回す。
「ゲコッ」
そんなミュウに教えるように、カエルが舌でガラスを叩いた。条件反射でミュウがそちらを振り向くと、そこには仮面の男がいる。
だが、すぐにあれ?とミュウは思った。先程のヒステリックに騒いでいた様子は何処へやら、男の雰囲気が変わっていたのだ。
〝あとちょっとの辛抱だ。我慢できるか?〟
また、声が届いた。もしかして、と直感したミュウは男を見る。ニヤリ、と笑ってわずかに首肯する男。
何かを言おうとするミュウに男はしー、と人差し指を唇に当てる。ミュウはパッと片手で自分の口を押さえた。
〝いい子だ〟
『赤い目』を優しく歪めた男は、司会の男に呼ばれると一瞬前の雰囲気に戻って離れていった。ぽつん、と残されるミュウ。
しかし、すぐに脚立が持ってこられて、司会の男が棒を手に水槽の上に現れた。すぐさまミュウは元の通りに隅に縮こまる。
司会の男はざわつく客たちに焦りの表情を浮かべており、一向に動こうとしないミュウに苛立った口調で罵声を投げかけた。
「まったく、この半端者の能無し風情が。人間様の手を煩わせるんじゃ有りませんよ!」
その言葉とともに、ミュウに向かって棒が突きおろされる。ミュウはカエルをギュッと抱きしめ、目を瞑って痛みに耐え……
ヒュルルルル……………ストンッ!
だが、痛みの代わりにミュウに届いたのは、空気を切り裂く音と、何かが何かに突き刺さった音だった。
恐る恐る、目を開けて上を見上げるミュウ。すると、驚きの光景が目に飛び込んできた。
司会の喉を、赤い何かが貫いているのだ。呼吸ができなくなった男は痙攣し、口の端から泡をこぼす。
「か……は……っ!?」
棒を手放し、よろけて脚立から転げ落ちる男。ビクンッビクンッとしばらく震えていたが、やがて糸が切れたように動かなくなった。
突然司会が死んだことに、客席からちらほらと悲鳴が上がった。対するミュウは何が起こっているのかわからず、困惑した表情で水槽の外を見る。
パチ、パチ、パチ、パチ。
そんな時聞こえてきたのは、乾いた拍手の音。
こんな状況でそんなことをしているのは誰だと客たちが動揺する中、壇上に誰かが上がってくる。
それは、紫の衣装に身を包んだ謎の男だった。帽子を深く被り、目元は影に隠れて見えない。
「実に良い反応だ。その恐怖の表情、ナイスリアクション」
コツ、コツとステッキを突きながら、男は静かな声で言う。不思議とそれは会場全体に響き、客をさらに不安にさせた。
「さて、欲望にかられて倫理を忘れた豚どもよ。お前たちはこう思っているだろう、いきなり現れた、自分たちとは比べ物にならないほどカッコいいこの男は誰だ?と」
ステージの中央で立ち止まった男は両手を大きく広げ、大げさに声を張り上げて盛大に侮辱する。不安から一転、怒りを覚える客たち。
無数の憤怒の視線をものともせず笑うその姿は、まるで劇の主人公、あるいは一世一代の大計画を高らかに宣言する
「ならば、まずは自己紹介を。Ladies and Gentleman!ようこそ絶望の宴へ!今日この日、お前たちの悲鳴を聞けることに心からの感謝を贈ろう!」
口上が始まると同時に、自動でスポットライトが全て男に向けられる。
光の中、ダン!と男は強くステッキの底を床に叩きつけ、己の名を明かした。
「俺はシュウジ、北野シュウジ。悪を憎み、悪を行使するエンターテイナー。さあ、一緒に楽しもうぜ
闇の市に、最悪の
●◯●
シュウジ SIDE
俺の自己紹介に、ざわざわと会場の人間たちは揺れる。いいねいいね、この困惑した雰囲気。実に芝居のしがいがある。
さて、レッツパーリィする前に……ちらりと後ろを見る。そこにはミュウちゃんと思しき、海人族の子が水槽に入れられていた。
魔力を目に込めて、魔法で枷を外す。ミュウちゃんは軽くなった自分の手足を見てから、不思議そうな顔で水の中から俺の方を向いた。
「ハロー、可愛らしいプリンセス。ここからはちょいと怖いから、目を瞑ってくれるとお兄さん嬉しいぞい」
「……えっと、誰?」
「俺はハジメとシアさんの仲間だ。助けに来たぜ」
ハジメたちの名前を聞いて、ぱあぁっ!と顔を輝かせるミュウちゃん。うん、可愛い。これはより一層しっかり守らなくては。
そう考えているうちにミュウちゃんが目を瞑ったので、客席に向き直る。仮面をつけたクズどもは、今にも席を立って怒鳴り込んできそうだ。
「さあ、長らくお待たせした。そろそろ幕上げといこうか」
……ズルリ
その言葉とともに、影からカーネイジが立ち上る。カーネイジは赤く、まるで心臓のように脈動しながら大きくなっていった。
「これより始まるは楽しい楽しい殺戮劇、血を飲み心臓を喰らう極上の見世物!お前たちの人生というサーカスの最後の演目!」
カーネイジは俺の口上が進むにつれ、より巨大に膨れ上がっていく。そして纏っている時と同じ形を成し、クズどもを見て舌なめずりした。
クズどもは正体不明の何かに怒りからまた一転して、恐怖に悲鳴を上げ我先にと外に出ようとした。
しかし、一向に足が進まない。先ほど以上の怒号が飛び交い、情けない悲鳴がそれを彩る。
「おいおい困るぜ、主役が逃げちゃあつまらないだろ?」
まあ、なんてことないトリックだ。魔法により影を操って、全員の足を縛り付けて拘束してるだけ。魔法って便利だね(殺意)
というわけで、カーネイジを指を鳴らして解き放った。歓喜の声をあげ、俺の影から分離してクズどもに襲いかかるカーネイジ。
「う、うわあああああ!!?!!?」
「ひぃぃいいいいい、い、生きながら食われ、ギャァアアアッ!?」
「痛い痛い痛い痛い痛いイタいいタイイたイ!!!」
目についた端から喰い散らかし、不味そうだったら殺す。映画とかだったら心の弱い方は速やかにご退場くださいとか出る光景だ。
ちなみに食われる際の汚い断末魔の声は、水槽に防音魔法をかけているのでミュウちゃんには届かない。
「子供の教育にまで心を砕く俺、素敵っ!(ナルシスト)」
「おい、いたぞ!」
それを眺めていると、わらわらと黒服の集団がやってきて取り囲まれる。全員武器を持っており、俺に対して殺意剥き出しだ。
数は……ひー、ふー、みー、んー。全部で二十人か。男が十二、女が五、あと三人はニューエイジ?ニューハーフ?どっちでもいいや。
「クソガキ、よくもやってくれたな。俺たちフリートホーフに手を出すだけじゃなく、客まで殺しやがって」
「おろろ、そんなに青筋立ててると血糖値が上がるぞ?」
俺の挑発に、バナナ取った時のゴリラみたいな顔になっていくリーダー格の男。これだけでロケットに点火しそう()
「てめえら、やっちまえ!後ろの商品には気をつけろ!ガキは殺せ!」
その号令とともに、全員が武器を振り上げて襲いかかってきた。俺は迎撃体制をとることなく、不敵に笑んで待ち構える。
そしていよいよ、あと二メートルまで近づいたところで……ステッキの上部分を回転。魔力を流してアーティファクト〝エ・リヒト〟を起動した。
その瞬間、ステッキから魔力が放出。それぞれ俺とミュウちゃんを中心に半径1メートル半の空間に半透明の結界が出現する。
「なっ、なんだこの結界は!?〝聖絶〟か!?」
「なんでこんなガキが!」
ギャーギャーと騒ぎながら、ガンガンと結界を叩くフリートホーフの構成員。〝リヒト〟の十倍の硬さを持つこれは早々破れん。
〝エ・リヒト〟。ハジメの〝リヒト〟を俺流に改造したアーティファクト。視界内の場所に結界を張ることができる優れものだ。
形だけ買った時のままで中身を改造しまくったこのステッキには、〝エ・リヒト〟の他にも色々仕込んである。
え?それなら最初からお前が作れよって?お前それサバンナでも同じこと言えんの?(意味不明)
「くっ、早くそれを壊せ!そいつが操ってるあの化け物をとめなきゃまずい!」
「おー、焦ってるねえ。まあ仕方がないか、
なぜそれを、という顔をする男。そう、こいつらフリートホーフは今結構ヤバい。
以前フューレンに来た時、リベルに怪しい視線を向けてたので俺が痛めつけた奴らを、エボルトが見せしめで組織ごと潰した。
それによってフューレン中の裏組織がしばらく鳴りを潜めることに。そんな中大組織のフリートホーフは未だ動いていたのだ。
「傘下の組織からの上納金も、同盟関係からの援助もない。だからこの裏オークションは大切な生命線。つまり、客を殺されたらお前らは終わりってことだ」
「てめぇ、まさか警告が出てた……!」
「そーいうこと。いやー運が悪かったねえ」
ギリギリと怒り心頭といった様子で顔を真っ赤にする男。ミュウちゃんがハジメたちと知り合った時点で詰みだったんだよなぁ。
〝おいシュウジ、拐われてた子供たちは全員救出できたぞ〟
さーて、次はどう煽ろうかなーと思っているとハジメから念話が入る。どうやら時間稼ぎはここら辺で終わりのようだ。
〝てんきゅー。フリートホーフの重要拠点は?〟
〝ユエたちからさっき連絡が入った。なるべく被害を最小限に抑えて潰したってよ〟
〝オーケー。で、こっちにはどんくらいで着く?〟
ドゴォンッ!!!
「すぐに、だ」
近くの壁を十字架のアーティファクトがぶち破って、ハジメが姿を現した。思わず「ヒュー♪」と口笛を吹く。
フリートホーフの奴らは、突如現れたハジメに困惑して動きを止めていた。その隙にハジメが二人撃ち殺し、跳躍して結界の前に降り立つ。
いきなり背後に現れたハジメに黒服たちは驚き、数歩分飛び退いた。武器を構え、警戒するように残った全員で俺たちを囲む。
「ナイスタイミング」
「おう。で、こいつらをやったら終わりか?」
「何も知らない警備員と、隠れてた潜入捜査官以外は全部片付けた」
ハジメの問いかけに答えるのと同時に、カーネイジが戻ってきてミュウちゃんの方に群がっていた奴らを轢き殺すと体内に入る。
それをみて、慌てて後ろを振り返るフリートホーフの奴ら。そこにはすでに、徹底的に破壊された客席と血の海、あと肉片しかない。
「時間切れ〜。残念だったにゃー」
「貴様ぁ……!」
「つーわけで、次はお前らの番だ」
ハジメがドンナーを構えると、どよめきが広がり一歩後ずさる。めっちゃ怯えとるやんけ(謎の関西弁)
当然そんなふうに止まってりゃ、うちの容赦ゼロの魔神様に全員頭を撃ち抜かれる。二十個の首無しオブジェができるまで十秒もかからなかった。
「ふん、弱かったな」
「お疲れちゃーん。後片付けは任しとき」
さっさか影を通して死体をフィーラーに直送して、結界を解除する。するとハジメが水槽に近づいた。
「おい、ミュウ」
「……お兄ちゃん?」
恐る恐る目から手を外すミュウちゃん。律儀に最後まで見ないようにしてたみたいだ。素直でよろしい。
ハジメを見た途端、パッとミュウちゃんの顔が明るくなる。そこにハジメがふっと優しく微笑むと、えへへと笑った。可愛い。
「おう、俺だ。ずいぶん帰りが遅くなって悪かったな」
「ううん…ミュウ、へいきだったよ」
「そうか……そこでじっとしてろよ」
拳を握り、水槽に叩きつけるハジメ。ただのガラスはあっけなく割れ、水が吹き飛んでミュウちゃんだけが残された。
よろよろと立ち上がったミュウちゃんは、小走りに駆けて行ってハジメに抱きつく。ハジメはちょっと困ったような顔をした。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……!」
「……そうだな、一人で怖かったよな」
震えるミュウちゃんの後頭部をそっと撫でるハジメ。うーん、何度目かわからないけど随分と丸くなったねぇ。
二人の再会を眺めていると、ハジメとミュウちゃんの間から何かが飛び出してきた。緑色のそいつは目の前に着地すると、俺を見上げる。
「ゲコッ」
「おーカエル、お前ミュウちゃんと一緒にいたのか」
「ゲコッ」
「そうか、ボディーガードご苦労さん」
「ゲコッ」
一度鳴くと、カエルは肩の上に飛び乗ってきた。頬をくすぐると指を食われかけた。優しいのか辛辣なのかよくわからん。
それからハジメたちを促して外に出る。すると入り口のところでエボルトが壁に背を預けて待っていた。
「よう、うまくいったみたいだな」
「あ、さっきのおじちゃん!」
「おお、嬢ちゃん。俺はエボルトっていうんだ。よろしくな」
頭を撫でるエボルトに、ふみゅと相貌を崩すミュウちゃん。こいつパパみあるよなぁ。
その後、ルイネたちと連絡を取ってギルドで集合することを相談し、その場を後にしたのであった。
●◯●
んで、一時間後のギルド応接室。
「で、何か言うことはあるかな?」
「ミュウちゃん、あーん」
「あむ、おいしいの」
「えへへ、じゃあもう一個」
「そうですね、うちの娘はマジで大天使です(ちょっとでかいショーをやりました)」
『おい、心の中とフェイクが逆になってんぞ』
おっと、こいつはしくった。
つい、目の前でニコニコとミュウにお菓子をアーンしてあげるリベルに視線が固定されてて思考が麻痺していた。
改めて。 現在ここにいるのは、俺とハジメにエボルト、ミュウちゃん、その遊び相手に連れてきたリベル、そしてイルワさんと内m…秘書長だ。
とりあえず二人の天使の記録はさっきから指の連打が止まっていないエボルトに撮影は任せておいて、イルワさんに向き直る。
一昨日ぶりくらいに見たイルワさんは、なんか老けて見えた。こう、あまりに過労で実年齢より十年くらい年食ったような感じだ。
『こんだけの大騒動だ、仕方ねえだろうな』
ほら、代わりに〝あれ〟のお陰で他の二つの大きな組織については気を回さなくて済むし、セーフじゃね。
とまあ、それは置いといて。今回の裏オークションの件は、色々とイルワさんも仕事が増えたらしい。主に被害報告とか、残党とか。
「で、なんですっけ?今日のおすすめスイーツの話ですっけ?」
「そんな可愛らしい話題なら良かったんだけどね……見てくれ」
差し出された書類を手に取り、中身を見る。ふむふむ、フリートホーフの負傷者と損壊した建物の数値ね。
フリートホーフのメンバーは役四分の一が死亡、あとの四分の一は重軽度の負傷。残りの半分は〝あれ〟の人員増加と実験体に回した。
で、建物は……なんかシアさんたちがかなり暴れまわったらしく、80くらいの建物が吹っ飛んでるか半壊してた。必要な犠牲だよネ。
『最初からフルスロットルでやってたらしいからなぁ』
自分の境遇と重ね合わせたんだろうねー。そのせいで今やりすぎて宿屋でグロッキー状態なのはなんとも言えないけど。
ちらりとイルワさんの顔を見れば、すごく胃が痛そうだった。そういや〝あれ〟の活動資金調達の店に胃薬屋あったな。連絡しとこ。
『やっとくわ』
「それを見てどう思うかな?」
「いやー、派手ですね!」
「そうだね、派手に私の仕事と頭痛が増したね……」
おっと頭痛薬も追加だ。
「それは置いておいて、フリートホーフの件はある意味助かった。なにせ長い間追ってきたはいいものの、まったく捕まえられなくてね」
「切れる尻尾はいくらでもあったでしょうね」
それが大きな組織のタチの悪いところだ。いくら現場を検挙しようとも切り捨てて仕舞えば本体はいくらでも逃げられる。
だが、今回の件はある意味フリートホーフの自滅だな。最初から切る尻尾がなくて、焦って本体が出てきたのが運の尽きだ。
「後処理とか大変なんじゃないか?」
「まあ確かに、壊れた建物の補填とか構成員の尋問はあるけど、それくらいだね」
「へぇ……てっきり他の組織とかが抗争を始めるとかありそうと思ってたけどな」
「それは……ね」
ちらりとこちらを見てくる。俺はただニヤリとだけ笑った。
あいつがヘマしない限り、抗争は抑えられる。もはやこの世界の裏組織を牛耳るのは残る二大組織ではない。トップは決まっているようなものだ。
『しないけどな』
ごもっとも。
「もし何かあった時は、俺たちの名前使っちゃってくれていいですから。ほら、支部長お抱えの〝金〟!みたいな」
「それは助かるけど……ハジメ君はいいのかい?」
「まあ、流石にその結果一般人が怪我しましたとかは気分悪いからな。適当にやってくれ」
そのハジメの言葉に、イルワさんは目を瞬かせた。まるで信じられないものを見たような表情だ。
「ハジメ君、少し変わったかい?以前なら仲間以外はどうでもいいとか言いそうだったけど……ウルの街で何かあった?」
「……そんなとこだ」
少し遠い目をしながら答えるハジメ。うむうむ、マリスの話はちゃんとハジメの心に届いていたようだ。
そういうことなら、とイルワさんは顔は普通だけど嬉々とした目で俺たちを裏世界への牽制に使うことにした。
『実質意味ない()』
それ(ry
その他諸々相談した後……いよいよ話はミュウちゃんのことになった。
「それで、どうする?私たちで預かってエリセンまで届けるか、あるいは君達が連れて行くかだが……」
「それについてはもう決めてる」
「みゅ?」
リベルに髪をいじられてたミュウちゃんは、自分のことだと察したのかハジメの方を見る。ちょっぴり不安そうな顔だ。
「あー、なんだ。お前のことはちゃんと、ママのところに送り届けるからな」
「……! うん!」
「え、ミュウちゃん一緒に来るの!やたっ!」
はにかむミュウちゃんと、喜んではしゃぐリベル。うん、どっちもキュートだね。
「で、だ。その呼び方だが……お兄ちゃんじゃなくて別のにしないか?」
「……? なんで?」
「いや、気恥ずかしいっつーかなんというか。できれば変えて欲しいんだが」
わかる、わかるぞハジメ。元オタクとしては、お兄ちゃん呼びは異世界のテンプレでなんだかくすぐったいんだな。お父さんわかってるぞ(違う)
ハジメに言われたミュウちゃんは、「んー……」と考え込む。その頬をプニプニ突いてるリベルマジで可愛い(親バカ)。
「……じゃあ、パパ!」
「………は?」
「ブッハ!」
数分の思考の末、出た答えはそれだった。あんまりにも予想外すぎる答えに思わず吹き出してしまう。
「いや、なんでだよ。普通にハジメとかでいいだろ」
「パパ」
「おい、頼むからそれはやめてくれ。俺はまだ17歳だ」
「やっ、パパがいいの!」
「ぷ、くく……!」
「おいこら、笑ってんじゃねえ」
いや、無理無理。リベルにおじさん呼びされてる上に他の小さい子にはお父さんって、これはもう笑うしかない。
俺が腹を抱えているうちにハジメはあの手この手でなんとか撤回させようとしたが、結局ミュウちゃんの頑固さが勝ってお父さんになった。
というわけで、今回のフューレンでは厄介な依頼ではなく、可愛らしいお仲間が一人加わることになったのだった。
「ハジメ君、ファイト」
「あんたもな……主に胃痛とか」
「それじゃあそれじゃあ、私はお姉ちゃんね!」
「……リベルおねえちゃん?」
「きゃー!ミュウちゃーん!」
「わわっ」
とりあえずお姉ちゃん呼びさせるリベルが可愛かったです。
『最後まで親バカか』
今SAOアリシゼーションの二次創作やってます、読んでいただけると嬉しいです。
感想をお願いします。