シュウジ「オスオス、シュウジだ。最近作者がダクソ3にハマってるせいで異空間の中にソウル武器が増えてきたぜ。で、前回はなんか色々と謎だったな」
エボルト「神のみぞ知るならぬ、俺のみぞ知るところだぜ。それよか、あのクソ兄貴とやって大丈夫なのかお前の弟子。なんか変な過去も受けてるしよ」
シュウジ「ん?まー平気でしょ。少なくとも絶対完全に死にはしないし」
エボルト「ま、そこはおいおいだな。で、今回は数話ぶりの俺たちサイドだ。まあ俺セリフないけど。それじゃあせーの、」
二人「「さてさてどうなる再会編!」」
「ヒャッハー!」
とある街道、太陽を背に右には草原、左にはライセン大峡谷という対局の景色の中、俺の運転する魔力駆動四輪は走っていた。
そしてその横では、某世紀末のモヒカンさながらに奇声をあげながらシアが魔力駆動二輪で爆走している。
草原から峡谷側まで、行ったり来たりしながらドリフトしたり回転したり。もうやりたい放題で走り回っていた。
「……ご機嫌だな、あいつ」
「むぅ……少しやってみたいかも」
「ちょっと……楽しそう?」
「やるなよ?」
ワクワクした表情のユエとウサギに釘を刺しつつ、シアを呆れた目で見る。
なんでも魔力駆動二輪の爽快さが好きならしく、車での移動はいささか不満だったらしい。で、実際に貸したらあの有様だ。
ぶっちゃけ開発者の俺よりドライビングテクニックがあるため、ちょっと教えたらその道のプロかというレベルの乗りこなしを見せた。
ちなみに調子に乗りすぎてぶつかるなよと言ったら、未来視を使うとか抜かしやがったので一発拳骨入れて説教した。
「そぅれ、二人ともせーので!」
「「にゃっはー!」」
そのすぐそばではシュウジとリベル、そしてわが娘?であるミュウが諸手を挙げて可愛らしく叫んでいる。
「ブルルルルッ!」
三人が乗ってるのは、機械仕掛けの金色の闘牛。〝コルキスの闘牛〟という大層な名前のそいつは、シュウジの召喚した神造兵器だ。
魔力駆動四輪より大きなそいつの上で、チャイルドシートに乗った幼女二人は満面の笑みでいる。それをシュウジが楽しそうに見ていた。
「……楽しそうだなぁ」
「……ハジメ、シュウジにジェラシー?」
「まあ、ちょっと」
事の発端は、シアを見たミュウがあれをやりたいと言い始めたことにある。
当然ダメだと言い聞かせたが、やりたいやりたいとひたすら駄々をこねた。ユエたちも諌めたのだがあまり効果はなかった。
さてどうするか、なんなら俺が後で乗せてやるかと頭を悩ませていたところ、見かねたシュウジがあれを召喚してくれたのだ。
そして今に至る。見ての通り二人とも大満足であり、対応としては完璧だろう。さすがは前世で育児経験があるだけのことはある。
別にシュウジが知る限りの防護魔法を使っているので、怪我をする心配はない。ならなぜ嫉妬しているかというと……
「……俺のは泣かれたのに、なんであれが平気なんだ」
「「「「いや、当然(じゃろ、だろう)」」」」
女性陣全員に突っ込まれた。あまつさえ変態にまで真顔で言われた。いいと思うんだけどな、魚くん一号(マグロに手足とハンドル付き)
「パパー!」
「ハジメおじちゃーん!」
タバコ(シュウジ印の完全無害)をふかして黄昏ていると、ミュウたちが手を振ってきた。なので微笑んで手を振り返す。
「ハジメ、もうパパ呼びは慣れた?」
「そうだな、どっちかっていうと諦めたって言った方がいいか」
当初はあの手この手で矯正しようとしたのだが、あえなく失敗。リベルの叔父ちゃん呼びで慣れてたのもあって割と早く割り切った。
いやだって、「……め、なの?」とか涙目&上目遣いで言われたら何も言えねえだろ。しかもリベルも「おじちゃん、お願い!」とか言うんだぜ?
流石に、小さい子供の懇願をバッサリするほど人間は捨ててない。羞恥心で言えばお兄ちゃん呼びよりかはまだマシだ。
「秘技、ジョ◯ョ立ち!」
「なんの、リベル、ミュウちゃん、こっちも対抗だ!」
「おーけー!」
「シュウジおじさん、早く早く!」
「さあ見るがいい、必殺ケルベロス!」
「ぶはっ!ちょっそれ反則です!」
直接操作がいらないのをいいことに変なポーズ対決をしてるミュウたちを見つつ、俺は次の街ーーホルアドへ向けて、アクセルを踏み込むのだった。
●◯●
「さて、ホルアドである」
「誰に言ってんだ」
仁王立ちかつドヤ顔で言うシュウジの後頭部をはたきながら、俺も約五ヶ月ぶりになる街並みを眺めた。
離れて久しいホルアドは、もはや朧げな記憶と全く変わっていなかった。全くと言っていいほど良い思いではないが、どこか感慨深くなる。
「パパ、どうしたの?」
「ん、いや……ちょっと懐かしくてな」
「うれしい?」
「いや、それはどうだろうな」
頭の上から聞こえるミュウの声に応える。別段、嬉しくはない。あの支部長の頼みごとがなきゃ寄りもしなかっただろう。
さっさとギルドに行って用事を済ませて、人数が増えたのに比例して消費された物資を調達するかと思っていると、不意に両手を引かれた。
左右を見れば右にはユエが、左にはウサギが。どちらも俺を心配するような目つきで見つめている。
「……大丈夫?辛くない?」
「もしそうなら、私たちに言って。ハジメが辛そうなのは、見たくないから」
「お前ら……」
二人の言葉に、どこか寂れた心に温もりが宿る。
そうだ。確かにあの日、俺は奈落の底に落ちた。そしていろんなものを失って、壊れて……新しい俺に生まれ変わった。
けど、その代わりに手に入れたものもある。それはもう一つの家族のようなもので、今の俺にとって最も大切なもの。
「……いや、辛くはない。ただ思い出してただけだ。ありがとな」
「んにゅ……」
「……それなら、いいけど」
二人の頭を撫でれば、ちょっと複雑そうながらもふにゃりとした表情になった。ああ、こっちの方がいい。
「パパ、ミュウも!」
「はいはい」
ペシペシと頬を叩く小さなお姫様の頭をついでに撫でる。
すると、スリスリと後頭部に頬を擦り付ける感触と「えへへ」という嬉しそうな声が聞こえた。少し可愛いと思ってしまう。
なんだ、本当に今更何かを思う必要なんてないじゃねえか。あれはもう過去のことで、今ここにあることの方が大事だろう。
「ふむ……ご主人様は、やり直したいとは思わんのか?」
「どういう意味だ変態?」
「おふっ……こ、公衆の面前で変態と断言……これはこれで、でゅふふ」
きめぇ。
綺麗所を大勢連れてるためか、周りにできていた人だかりもドン引きといった様子で一歩後ずさる。
今更だが、ここはメインストリートの入り口だ。迷宮があるため非常に人が多く、入った瞬間から注目を浴びていた。
「で、なんだ?」
「いやその、何も辛いことばかりではなかったのだろう?一人や二人、大切な誰かがいたのではないか?」
「それは……」
随分と突っ込んだ質問をする変態だ。だがその真剣な眼差しには興味本位ではなく、こちらを理解しようという考えが見て取れる。
なんだかんだ言ってこいつをふんじばってどっかに置いてかないのは、こういう所があるからだ。
相手を理解し、歩み寄ろうとする。それは俺にはいささか欠如しているもので、だからこそ本気で追い出そうとは思わない。
そんなこいつには、真摯に答えよう。それがこいつの歩み寄りに対する俺の譲歩だ。
「まあ、考えたことがないと言えば嘘になるが……実際にやり直したいとは思わんな」
「ほう、なぜじゃ?」
「単純にたらればなんて思い返しても無駄だし、それに……こいつらにも出会えないしな」
言いながらユエとウサギの頭に手を置く。二人はくすぐったそうな、しかし嬉しそうな顔をしてくれた。
「………」
「ん、どうしたマスター」
「?パパ、どうしたの?」
「……いや、ちょいとな」
俺の言葉を聞いたた途端何やらブツブツと延々言ってるシアの呟きを聞き流していると、ふとそんな声が聞こえてきた。
そちらを見てみれば、シュウジが柄にもなく黄昏た顔と遠い目でどこかを見ていた。あの方角は……あの時泊まっていた宿の方か?
「……正妻殿のことが気がかりか?」
「おろ、わかっちゃうかー。さすがルイネ、ポイント百!」
「ぽいんとひゃく!」
「リベル、よく言えました!賢い子にはアイスキャンデーをあげよう」
「やたっ!パパ大好き!」
何処か貼り付けたようにリベルに微笑みかけるシュウジに、ルイネがふっと笑う。きっと俺も同じ顔だろう。
あいつがどれだけ八重樫さんを大切にしていたかは、幼馴染の俺が一番知ってる。全員寝静まった後、一人外で写真を眺めてるのも。
〝理解されなくてもいい、ただ今この幸せを守れれば。あいつに出会うまで、ずっとそう思って生きてきた〟……いつかあいつから聞いた言葉だ。
八重樫さんは、そんなあいつに理解してほしいと思わせた人だ。そういう意味では、俺が数少ない尊敬する人物でもある。
「……ようやく、会えるんだな」
そんなシュウジの小さな、とても小さなつぶやきを頭の奥にしまいつつ、俺はホルアドのギルドに向けて足を踏み出した。
●◯●
道中の煩わしい嫉妬やら殺意やらの視線を無視しつつ進んで十分。俺たちはホルアドのギルドにたどり着いた。
幸い、ギルドはメインストリートをまっすぐ進んだ所だった。数多くの冒険者の集まる迷宮都市だからか、わかりやすいところで助かる。
「さあ、深淵を覗く覚悟はいいか」
「お前なんかいつにも増してテンションおかしくないか?」
某深淵狩りのコスプレ……もはやコスプレと言っていいクオリティかはさておいて……に身を包んだシュウジに突っ込む。
八重樫さんがすぐ近くにいるせいか、なんかここ数日色々とおかしい。昨日はあれだ、某深みの聖者の格好してた。ミュウが泣いたから撃った。
ちなみに魔力駆動四輪に地球につなげたテレビがあり、暇な時に二人で闇の魂やってたりする。なんで繋がってんのかは謎だ。
前にこれ応用してあっちの世界に行けんじゃねえの?と聞いたら俺の魂全耗したらギリいけると言われたので速攻で諦めた。
「ま、おふざけはここまでにしといて……いざご開帳」
いつもの紫衣装に着替えたシュウジが、扉を押し開ける。
ギィ、と軋んだ音を立てて露わになったギルドは……なんというか、あまり綺麗ではなかった。
所々壊れた場所はやや雑に補修され、床や壁にはシミがついている。何気に綺麗好きの美空が見たらふざけるなし!とか言いそうだ。
構造自体は他と変わりなく、一つ違うのは食事処から酒の匂いが漂っていることだ。どうやらここでは酒を出しているらしい。
一階と二階のある食事処は、上は下と比べてそれなりに強い気配が集まっている。そういう決まりでもあるんだろう。
「「「……………」」」
で、まあ案の定というか。ここまでの道中の男ども同様に嫉妬と殺意を多分に含んだ視線をひしひしと感じる。
だが、どうしてかそこまで強くはなかった。むしろそういう視線は全体を見て少なく、代わりに懐かしげな視線が多い。
「諸君。我が同胞にして、危機と酒を愛する諸君」
どういうことだ?と首を捻っていると、いきなりシュウジがかしこまった口調で冒険者たちに語りかけた。
「汝らに問おうーー頭ナデナデは好きか」
『!?』
子供組を覗く全員が絶句した。こいつ、いきなり何を言い出してんだ?
「重ねて問おうーー膝枕は好きか」
『!!?』
「あーんは?耳掃除は?ハグは?お弁当は?背中ぽんぽんは?どうだ諸君?」
どんどん重ねられていく意味不明な言葉に混乱する俺たち。対極に、どこか異様な熱気を纏っていく冒険者たち。
まさにカオスと言っていい空気の中、シュウジはどんどん演説?を続ける。両手を後ろに組み、堂々とした後ろ姿は実に楽しそうだ。
「どうだ諸君、同じものに恋い焦がれる諸君。汝らはこれまで述べたものに心動かされるだろうか。脳が震え、甘美に酔いしれるだろうか」
「おおっ!」
シュウジの言葉に、誰かが声を上げて立ち上がった。そいつを皮切りに、ジョッキをテーブルに叩きつけて次々と冒険者たちが立っていく。
それはシュウジが同じ質問を繰り返すたびに三人になり、五人になり、二十人になりーーそしてほとんどの男が揃いも揃って起立する。
いよいよもって頭の中のはてなマークが溢れ出そうになろうかという瞬間ーーシュウジが新たな言葉を放った。
「私は言おうーーこれまで述べた全てが好きであると!」
「「「おおっ!」」」
「全ての男が追い求め!そして手に入れることに躍起になるそれを、私は心の底から好きであると叫ぼう!」
「「「「「おおおっ!」」」」」
「さあ諸君、叫びたまえよ諸君!拳を振り上げ、ともに叫ぼうではないかーー」
シン、とそれまで騒いでいた冒険者が静まり返る。シュウジは一拍おいて、顔を上げて冒険者たちの顔を見渡して。
「我々はーー
「「「………っ!」」」
息を飲む冒険者たちに、シュウジは大仰な仕草で両手を広げて。
「諸君ーー私は帰ってきた」
『おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』
自信たっぷりにそう言い放った途端ーー全員が雄叫びをあげた。とっさに耳をふさいでシャットアウトする。
その叫びはまるで共鳴するように響き渡り、ビリビリとギルドの壁を、床を震わせた。まるで声の大雨のようだ。
声は絶えることなく、男たちは狂ったように同意の雄叫びをあげる。化学兵器もかくやという大合唱に顔をしかめる。
「ほいほいみんな、今のうちね」
もうワケワカメとか思っていると、
叫ぶ男たちの間をくぐり抜け、カウンターの前まで来た。そこでシュウジが男たちにサムズアップした途端声が止み、あちらもサムズアップする。
それが終わると、まるで波が引くように男たちはテーブルに戻って元の喧騒を取り戻した。まるでさっきまでのが幻のようだ。
「いやー楽しかった」
「いやいや、俺たちは訳がわからなかったんだが……」
「まっ、母性は全てを解決するということさ。おかげで変に絡まれなかったろ?」
「かけらも理解できないが助かったのは確かだな……」
あのままだと、ミュウとかが怯える可能性があった。その場合全力で〝威圧〟するつもりだったのだが……
奇しくも、あの馬鹿騒ぎのお陰でことなきを得たといったところか。とりあえず自慢げに胸を張ってるアホにはボディーを入れておこう。
「おっふ、痛いよハジメさん」
「ったく、ああいうことするなら先に言えよ」
「いやー驚く顔が見たくて」
「パパ、すごかったねー」
「いいやリベル、あのパパはダメだ。真似してはいけないぞ」
「そうなの?ママ」
「ああそうだ」
「お前もだぞ、ミュウ」
「んー、わかったの」
子供達に言い聞かせつつ、カウンターに向き直る。そこに座る同世代くらいの少女は苦笑気味だ。
「おっす、久しぶりマリーちゃん」
「はい、お久しぶりです北野さん。それで、本日はどのようなご用件で?」
「すまない、支部長はいるか?フューレンの支部長から手紙を預かってる。本人に直接渡せと言われてるんだが……」
「フューレンのイルワ支部長、ですか?はい、お預かりします」
俺とシュウジがプレートを差し出せば、丁寧な手つきで受け取る受付嬢。そうして色を見て……驚くことなく苦笑いを浮かべた。
「やっぱりすごいですね、北野さん。いつか〝金〟になると思ってました」
「レコードホルダーの面目躍如っとこだねん。ま、まだ仮免みたいなもんだけど」
「ご謙遜なさらずとも……あ、あなたもすごいですね。さすがは北野さんのお連れさんです」
「ん、まあな」
「では、確認を取ってくるので少々お待ちください」
一礼するとカウンターの奥に消える受付嬢。面倒な反応をされなかったことにホッとする。
もう色々とやらかしてる以上あまり身分を隠しても意味がないとは思ってるけど、なるべく面倒なことは避けたい。あの受付嬢でよかった。
「というか、俺がついでみたいなのかちょっと気にくわないんだが」
「まっ、そこは俺の方が馴染みだからだろ。あ、マリーちゃんの好きなスイーツ知りたい?」
「どうでもいいわ」
そんなくだらんことを話し合ってると、ズダダダダ!という音がカウンターの奥の方から聞こえてきた。
今度はなんだと顔を上げると、カウンター横の通路から黒い塊が飛び出してくる。そしてズシャッ!とこけた。
が、それを気にすることなく黒い塊は立ち上がる。そうすると誰かを探すようにキョロキョロとし始めた。
そいつには、見覚えがあった。全身を包む黒装束に幸薄そうな顔、なによりその希薄な存在感。
そいつは……
「………遠藤?」
はい、次回からシュウジがブッチします(ネタバレ)
感想くれると嬉しいゾ!