シュウジ「オスオス、シュウジだ。前回は雫たちを助けるために出発したぜ。いやーハラワタが煮え繰り返るな!」
ハジメ「こいつ、笑顔なのに目がマジ中のマジだ…」
エボルト「前に愛情メーターって作ったんだけど、こいつ十個壊したからな」
ユエ「なにそれ詳しく」ズイッ
シア「同じく!」
エボルト「はいはい後でな。で、今回はまた雫たちの側だな。それじゃあせーの、」
五人「「「「「さてさてどうなる再会編!」」」」」
「必ずなんとかする! 信じてくれ!」
「もう、お前の言葉なんか信じられるかよ!」
「なっ……」
薄暗い空間の中、怒号とあっけにとられたような声が響き渡る。
隠し部屋は今、異様な雰囲気に包まれていた。ほんの少し前までの沈鬱な空気ともまた異なっている。
その発生源は、向かい合う近藤君たちと光輝。険しい顔で睨みつける近藤君とその後ろにいる斎藤君に、光輝がたじろいでいた。
「……こんな時に、どうしてこうなったのかしら」
事の発端は、ある程度調子を取り戻した鈴がいつも通り空気を明るくしようとしたことから始まった。
鈴が必死に何かを話そうとしていると、我慢の限界に来ていたのだろう。近藤君が爆発して食ってかかったのだ。
当然のごとく龍太郎がキレて、それを光輝が宥めようとしたところに今度はそちらに飛び火。光輝が負けなければ、と言い始めた。
奇しくもそれは正しかった。〝勇者〟である光輝が魔人族に勝てずに背を向けた。その事実が不信感を植え付けたのだ。
次は負けない、と反論した光輝だが今更信じられないと叫ぶ近藤君に逆に気圧されている。
そして私は、もし手を出されたらたまらないので鈴の側にいつつ、この光景を見てどうしたものかと悩んでいるのが現状だ。
「他のメンバーもちょっと疑わしそうになってるし、困ったわね……」
「ど、どうしよう……」
自分が変なことをしなければと思っているのだろう、鈴は青い顔をしていた。落ち着かせるために肩を撫でる。
「何が勇者だ! 諦めて逃げやがって!」
「じゃあテメェはあの状況をなんとかできたのか!? アァ!?」
「うるせえ! お前は黙って谷口のお守りでもしてろ!」
「んだと!? やんのかコラァ!」
悩んでいる間にも、どんどん口論はヒートアップしていた。側から見れば、もはやヤクザ同士の喧嘩にしか見えない。
香織たち治癒師コンビ……カップル? ……も精神沈静化の魔法をかけようとしてるけど、怒号が大きすぎてうまく集中できないみたい。
気づけば先に止めに入ろうとした野村君たちも巻き込まれて、どんどん険悪なムードになっている。不味いわよね、これ。
「構えろ近藤! 一発殴ってやらァ!」
「上等だ! 前から一回ぶちのめしたかったんだよ! いっつも暑苦しく騒ぎやがって!」
そうこうしているうちに、いよいよ二人とも武器を出し始めた。どうやら、ここら辺が限界らしい。
「仕方がないわね……こうなったら全員に一発入れて落ち着かせるしか……」
鞘に閉まったままの刀を持ち、立ち上がる。全員脳天に軽く入れたら、多少は落ち着くでしょう。
「グルルルルル……」
『っ!?』
そんな私の気を削ぐように、壁の向こうからあのキメラの唸り声が聞こえてきた。
それまでの騒々しさは何処へやら、全員ピタリと彫像のように動きを止める。顔が強張り、キメラの足音にじっと耳をすませた。
ザリッ……ザリッ……
壁を引っ掻く音が、いやに大きく聞こえる。柄を握る手に冷や汗が伝い、誰かがゴクリと唾を飲んだ。
匂いや足跡などの痕跡は、野村君が消してくれたはずだ。しかしもしかしたら……そんな思考が頭をよぎった。
その考えは同じなのか、男子たちは指一本も動かず青い顔で耐え、女子たちは嗚咽を漏らさないよう、涙目で口を押さえる。
はたして五分か、十分か……あるいはそれ以上か。皆が皆極限の中、やがて諦めたように足音が去っていった。
「っはぁ……!」
大きく息を吐いて、地面に座り込んだ。まるで全力で走った後みたいに、心臓がばくばくと高鳴っている。
「危なかったわね……貴方たち、あと少しで見つかってたわよ? 状況を考えて、大人しくしてて」
「あ、ああ……」
「すまねえ……つい、カッとなって……」
龍太郎が拳を、近藤君が槍を下ろす。それに他のメンバーはほっと安堵の息を吐いた。とりあえず、止まったか。
本当に、ギリギリだった。もし誰か一人でも泣こうものなら、今頃全員血の海に沈んでいたかもしれない。
「首の皮一枚、ってとこね……」
「また、怒ってくれた……えへへ」
「こーら、何言ってんの」
「あうっ」
こんな状況なのにアホなことを言ってる鈴にデコピンをかます。まったく、いつからこんな恋愛脳になったんだか。
フゥウゥウウウ…………
そんな私たちに冷や水を浴びせかけるように、深い息遣いが壁の向こうから聞こえてきた。
弛緩しかけた空気が、再び凍る。もしかしてもう戻ってきたのか。いや、それにしては聞いたことのない声のような……
全員がそんな顔をする中、断続的に何者かの声は心を恐怖で侵した。壁一枚を隔ててなお感じ取れるほどの、凄まじい圧を感じる。
「し、雫っち……」
「しっ」
鈴の口を塞いで、龍太郎に目配せする。龍太郎はわずかに頷き、ドライバーを無音で取り出した。
フゥウゥウウウ……フゥウゥウウウ……
永遠にも思える時間の中、ひたすらに絶望が通り過ぎるのを待つ。
その願いが功を奏したのか、しばらくしていた重々しい足音がだんだん遠ざかっていった。私たちは再びほっとして──
カラン、カラン。
「ぁ…………」
音が、した。
まるでブリキのおもちゃのように鈍い動作で、全員がそちらを振り返る。すると、女子の一人がナイフを取り落としていた。
気が緩んだんだろう、やってしまったというその顔は真っ白であり、今にも気絶せんばかり。
そしてそれは……おそらく私たちも全員だ。
「オオォオオオォオォオオオオ!!!!!」
そんな私たちを正気に戻したのは、激しい衝撃とともに隠し壁を粉砕した巨大な赤熱した剣だった。
「うわぁっ!?」
「きゃぁっ!」
吹き飛んだ瓦礫の直線上にいた近藤君と吉野さんが、悲鳴をあげて体勢を崩す。その隙を狙うように、空気の揺らめきが砂塵の中から現れた。
「戦闘体勢!」
光輝が聖剣を抜いて声を張り上げる。即座に全員が反応し、前衛組は前へ、後衛はその背後に陣取る形に移動を始めた。
しかしそれを待ってくれるキメラではない。空気の揺らめきは動けない近藤君たちに殺気を向けるのがわかった。
「ルゥガァァアア!」
「オルァ!」
尻餅をついた二人に襲いかかったキメラを、一番近くにいた龍太郎が殴る。キメラは怯み、その隙に私も接近して斬りつけた。
「ガァッ!?」
「オラッ!」
「グゥ……!」
「シィッ!」
「ガァア!?」
龍太郎の鋼のごとき拳の嵐が一切の動きを止め、その間に私が最速、最適の斬撃で四肢を切り飛ばす。
さすがにネビュラガスで強化された私たち二人には不利だったのか、眉間を貫くまでにそう時間はかからなかった。
「っしゃあ!」
「龍太郎、後ろ!」
「オォォオ!」
キメラを仕留めて一瞬動きを止めた龍太郎を、後ろから筋骨隆々のブルタールモドキが組み敷こうとする。
「かかるか!」
「オゴッ!?」
「来るなら黙って来いや!」
裏拳で顎を打ち抜き、蹴りで壁にブルタールモドキを叩きつける。流石、私が心配するまでもなかったわね。
けど、それは悪手でもあった。龍太郎がブルタールモドキに気を取られた一瞬で、触手を生やした黒猫たちが部屋に侵入してきたのだ。
黒猫たちは入るやいなや、即座に触手を射出してくる。まるで壁のような大量のそれにあわや貫かれるかと身構えて……
「──〝聞け、我は王なり。王が前に敵はなく、敵が前には絶対の城壁を。《
ガァンッ!!!!!
しかしそれは、突如現れた黄金の光の壁によって防がれた。
圧倒的質量を平然と受け止める光の壁に、思わず息を飲む。いったい誰がこのような結界を張ったのか。
そう思って振り返ると……そこには汗を流して両手を掲げる、石動さんの姿があった。傍では絶えず香織が治癒魔法をかけている。
「みんな、はやく、やって……! あんまり長くは、もたない……っ!」
「っ、各自戦闘体勢! 黒猫を一匹でも多く倒すんだ!」
『了解!』
石動さんの姿に影響されたのか、気合の入った返しとともに皆が戦い始めた。絶えず雄叫びをあげ、自分を鼓舞して武器を振るい黒猫を倒す。
石動さんの魔法は圧倒的であり、どれだけ黒猫が攻撃してもビクともしなかった。代わりにこちらの攻撃は届くという都合の良い仕様だ。
「くふっ……」
「美空!」
「いいから!」
「っ……!」
……どうやら、ノーリスクってわけではなさそうね。
「光輝! お前は外へ行け! 今度こそ魔人族を倒して来い!」
「っ……わかった!」
黒猫を斬り伏せていると、〝限界突破〟の魔力をまとった光輝が横を通り抜けて、部屋の外に走っていった。
龍太郎を見る。するとあちらも見ていて、無言で頷いてきた。ここは自分に任せて、私も行けということだろう。
「……死ぬんじゃないわよ!」
「ったりめぇだ! 変身!」
《ロボットイィイングリスゥ! ブゥゥラァッ!》
グリスに変身した龍太郎は、私に背を向けるとツインブレイカーを手に黒猫の群れに飛びかかっていった。
それを見送り、目の前にいた黒猫を斬って光輝の後を追いかける。最初に壁を壊したあの剣。あれがどうしても気にかかった。
■■■■■■■■■■■ッ!!!
「……っ!?」
部屋の外まであと一歩というところで、聞き覚えのある咆哮がした。まさか、と嫌な予感が頭の隅をよぎる。
そしてその予感は、八角形の部屋の中に入った瞬間的中した。
「くっ……!」
「どうした? 来ないのかい?」
部屋の中は魔物で満たされており、その奥にはあの魔人族の女が、回復のできる白鳩の魔物を肩に乗せて佇んでいる。
みたところ、あのキルバスという化け物はいない。とりあえず生存の確率がゼロでないことにホッとする。
「フゥウゥ……」
代わりに、その傍には……3m近い巨躯の巨人がいた。
爛れた皮膚の上から壊れかけた鎧と擦り切れたマントを纏い、四本の腕に一本ずつ剣を携えている。先ほど壁を壊した剣だ。
「あれは……御堂さんの?」
忘れもしない。龍太郎が来るギリギリまで待っていた私は、御堂さんがあの巨人を召喚するのを見ていた。
それがなぜ、魔人族の女と一緒に?
「光輝!」
「雫!? 何してるんだ! はやく戻れ!」
「いつ〝限界突破〟が切れるかもわからないのに、一人にはできないでしょ。それに……あれも気になるしね」
巨人に警戒を払いながら、魔人族の女を睨む。魔人族の女は余裕といった様子で不敵に笑った。
「へえ、あんたも来たのかい」
「このおバカを一人で放っておかないからね。それで…………御堂さんをいったいどうしたの?」
魔人族の女は、私の質問に答えなかった。
代わりに、黒猫の一匹に何かを渡してこちらまで持って来させる。私の前まで来た黒猫は、咥えていたものを放った。
「……御堂……さん」
崩れ落ちそうになりながら、呆然と呟く。それは、御堂さんの生首だった。
口や額から血を流し、虚無の表情、光のない瞳。それでもなお、どこか美しいと感じてしまうのは彼女の気品ゆえか。
「まったく、面倒な相手だったよ。キルバス様がこいつを乗っ取ってくれなきゃ、死んでたのはこっちだったかもね」
「くっ、卑劣な……!」
魔人族の女と光輝の言葉を聞き流して、頭をそっと拾い上げる。
その途端腕にかかる重さが、冷たい血の感触が、彼女の死を私により明確に実感させた。
脳裏に、まだ地球にいた頃に話した思い出から、この世界にきてからのことまで、走馬灯のように御堂さんとの思い出がよぎる。
〝あ、八重樫さん。うん、これ面白いんだよ。読んでみない? 〟
静かなところで本を読むのが好きだった。聞き上手で、女子の皆で遊びに行くとき私たちの話を聞いて楽しそうに微笑んでいた。
〝常に優雅たれ。私の決して変わることのないポリシーですわ〟
この世界にきて豹変して、堂々かつ優雅だった。でも変わらず静かなところが好きで、紅茶を飲むのを楽しんでいた。
〝ふふ、可愛いですわね……〟
猫が好きで、たまに一緒に猫喫茶に行った。前世のシューの思い出を懐かしそうに、でもとても大切そうに話していた。
全て、かけがえのない記憶だ。大事な友達との、大事な記憶。
「……? なんだい、心折れちまったのかい? 強いかと思ったが、あっけないね。でもそれなら、早めに終わらせてあげるよ」
黒く塗り潰されていく意思に動かないでいると、魔人族の女が何かを言った。
光輝が隣で何か叫んでいるが、聞こえない。少しずつ近寄ってくる魔物たちのことも、どうでもいい。
「……さ……い」
「……雫?」
私は、ただ──
「──ー絶対に、許さない」
斬ッ!!!
自然と手が動き、斬撃波で魔物たちを切り刻む。一拍遅れて魔物たちがバラバラになり、返り血が頬に飛んできた。
「なっ……!?」
魔人族の女の驚く声が聞こえる。魔物たちの向こう側にいるだろう奴を睨みつけ、私は立ち上がった。
全身を、黒い感情が駆け巡っている。こらえきれない激情を刀を強く握り締めることで押さえて、前を見据えた。
ベルトを外して、御堂さんの首を背中にくくりつける。離さないように、魔物たちに踏み潰されないように、きつく。
「し、雫……?」
「構えなさい、光輝」
何かに怯えている光輝に目も合わせず言い、私は刀の切っ先を魔物たちに向ける。
これから私は皆を生還させるために。何より御堂さんの仇を取るために。
「あの女を……ぶった斬りにいくわよ!」
そして、冷たい怒りとともに駆け出した。
FGO×ダークソウル3の二次創作始めました、よろしくお願いします!
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