星狩りと魔王【本編完結】   作:熊0803

99 / 354
いや、すみません。ほんとすみません。受験のこととか学校のテストとかサバフェスとか、いろいろ忙しくて一ヶ月近く経ってますた。

ハジメ「うす、ハジメだ。前回はバカがおかんに慰められたな」

シュウジ「えー、そんなにバカかなぁ」(首から「私はバカです」のプラカードを下げて正座中)

ユエ「ん。ほんとアホ。見捨てるならとっくに見捨てててる」

シア「ですですっ!というかいい機会なんで一発殴ります」

シュウジ「ちょっシアさん暴力反対!最近ハジメに似てきたよね君ィ!」

シア「そ、そんなこと言ったってうやむやにしないですぅ!」

雫「はい、押さえてるからやっちゃって」

シュウジ「なん……だと………!?」

エボルト「裏切られてやんのwww」

ルイネ「全く、騒がしいな」

リベル「なー」

ティオ「今回は勇者?たちの話じゃ。それじゃあせーの、」


「「「「「「「「さてさてどうなる再会編!」」」」」」」」


ティオ「……一回これやってみたかったのじゃ」


嫉妬と企み

 

 

 

「くそっ! くそっ! 何なんだよ! ふざけやがって!」

 

 

 

 

 

 深夜、宿場町ホルアドの町外れにある公園。

 

 その一面に植えられている木々の一本に拳を叩きつけながら、檜山大介は誰に聞けせでもなく悪態をついていた。

 

 その眼に浮かぶのは憎しみ、怒り、動揺、はたまた焦燥か。一つとして明るいものはなく、また正常なものもない。

 

「なんで、あいつらが、生きてんだ!」

 

 

 

 檜山がこのような状態になっている理由の根底には、全く見当違いな恨みがある。

 

 

 

 雫がシュウジに説教をしている時、檜山は街の入り口でハジメについていくという美空と香織を止めるクラスメイトの中にいた。

 

 香織に仄暗い恋情を抱いている檜山は当然激しく止めたが、その時ハジメに言われたのだ。「火属性魔法の腕は上がったか?」と。

 

 それは、檜山の最大の秘密であった。それを見透かされた上、自分見とってお前たちに微塵も価値はないと断言された。

 

 死んでいると思い込んでいた、散々見下していた相手にそんなことを言われ香織を連れてかれ。

 

 その事実に檜山は、屈辱感でいっぱいなのである。

 

『おー、荒れてんなぁ。そんなに悔しかったか?』

「っ!?」

 

 突如、頭上から声。

 

 バッと見上げれば、そこにはぷらぷらと足を揺らす赤い怪人──ブラッドスタークがだらしない体制で木の幹に座っていた。

 

 いつも通りの神出鬼没なスタークにうろたえる檜山の耳に、サクサクと草を踏み近づく足音が背中のむこうから聞こえる。

 

「まあ、無理もないんじゃない?愛しい愛しい香織姫が目の前で他の男に攫われたんだからさ?」

 

 嘲りを多分に含んだ声に振り返れば、そこにいたのは案の定もう一人の協力者。今日の密会の相手の一人である。

 

 

 あるいは、その黒いローブに刻まれた紋章の組織……()()()()()()()()、とも言うことができるだろうか。

 

 

 何はともあれ、その人物であるとわかると一瞬ホッとした表情を浮かべ、次いで拳を握り締めながら獣のごとき唸り声を上げる。

 

「黙れ! くそっ! こんな……こんなはずじゃなかったんだ! 何で、あいつらが生きてんだよ! 何のためにあんなことしたと思って……」

『ハッハッハ、随分とご乱心のようだ。簡単に感情が乱れるのは人間の滑稽なところだな』

「いやいや、一人で錯乱してないで私たちと会話して欲しいのだけど? 密会中のところを見られたら言い訳が大変だからね」

 

 木からむしりとった木の葉をいじるスタークと、さも困っていますと言うように肩を竦める黒ローブの人物。

 

 どこまでもバカにしたようなその態度に、檜山は先ほど以上に威嚇するような低い声を歯の間から漏らして睨め付ける。

 

「……もう、お前らに従う理由なんてないぞ……俺の香織はもう……」

 

 まるで逃げ道を塞ぐように前後に立つ二人に、檜山は傍らの木に拳を打ち付けながら苦々しい表情で言う。

 

 檜山がファウストに入り、彼らに協力していたのは、香織を自分だけのものに出来ると聞いたからだ。

 

 件の香織が美空とともに行ってしまった以上、もう恐ろしい怪物と、不気味なその人物の使いっ走りをする義務はない。

 

 そもそもの話、殺そうとした本人が確信しているのだ。香織本人に言う可能せだってあるのに、今更……

 

『いいや、まだ手はあるぜ』

 

 ──そんな檜山に対して、スタークはぶっきらぼうかつ、冷たさを持った声でそう投げかけた。

 

 顔を上げる檜山。この怪物は今、まだ手はあると言ったのか。これまで全ての思惑を思うがままに進め、ファウストを強大にしてきた男は。

 

「ほ、本当か!?一体なんだよ、その手ってのは!?」

『なぁに、簡単な話さ……っと』

 

 木の葉を指の間ですりつぶし、幹から飛び降りたスタークはゆっくりと檜山に歩み寄る。

 

 思わず恐怖に顔を引きつらせる檜山の眼前まで歩み寄り、スタークはそっと片方の腕を手のひらを上にあげて顔の前に持ち上げた。

 

()()()()()()()()()()()()()。そうすりゃハジメたちはともかく、白崎や美空は必ず食いつく』

「……っ!?」

 

 まるで手のひらの中で踊る人形を弄ぶように指を動かし言うスタークに、檜山は息をつまらせる。

 

 同時に、その手があったかとも思った。確かに、クラスメイトたちはこの怪物の手中、やろうと思えばいつでもできる。

 

「あーあ、言われちゃった。せっかく考えてきたのに」

『おお、お前も同じこと考えてたのか。俺たち気があうようだな』

「やめてくれよ、気持ちが悪い」

 

 その人物は公園のベンチに浅く腰掛け、スタークにひらひらと拒絶の手を振ってから三日月のような笑みを浮かべ、檜山を見る。

 

「自分の気持ちを優先して仲間から離れたとしても……果たして彼女は友人や幼馴染達を放って置けるかな? 」

「お前……」

『そう、簡単なことだ。それともなんだ?それができないほどお前にとって白崎香織は執着する相手じゃないか?』

「それは……」

 

 そんなわけがない。香織を手に入れるためならなんだってやると、最初に決めたのだから。たとえ、この怪物たちのいいなりになっても。

 

 しかし同時に、計画のためならばクラスメイトたちを使()()ことにためらいのないスタークたちに今更より一層の恐怖を覚える。

 

(恐ろしいやつらだ……だが、俺ももう後戻りは出来ない……()()香織を取り戻すためには、やるしかないんだ。そうだ。迷う必要はない。これは香織のためなんだ。俺は間違っていない)

 

 檜山は自分の思考が、支離滅裂に破綻していることに気がついていない。当たり前だ、檜山大介というのは、そういう男なのだから。

 

 都合の悪いことは全て誰かのせい、自分のすることは全部香織のため。そう自分を正当化してきた、醜悪きわまる人間だ。

 

「それにしても君、いいのかい?大事な北野は生きていたわけだけど」

 

 檜山がぐるぐると腐った思考で考えている間に、不意にその人物が答えを待っていたスタークに問いかける。

 

『ああ、それが?それとこれとは別問題だ。あいつを奪ったことには変わりない。だから俺はこの世界を破壊する。あいつの意思に関係なく、な』

「ふーん、そう……まあ、ファウストの首魁である君に降りられても、こっちが困るから好都合だけど」

 

 

 

(それに、色々と好き勝手言ってくれた北野には一度苦しんでもらわないと、ね)

 

 

 

『せいぜい、最後まで持ちつ持たれつといこうじゃねえか』

「ふふ、ふふふふふふふ」

『クククククク』

 

 仄暗い、狂った哄笑をこぼす二人。そうしているうちに、檜山の答えが出る。

 

「……わかった。今まで通り、協力する。だが……」

「ああ、わかってるよ。僕たちはそれぞれの欲しいものを手に入れる。ギブアンドテイク、いい言葉だよね? これからが正念場なんだ。王都でも、宜しく頼むよ?」

『良かった、これでまた一丸となったな。さあ、俺たちの野望のため頑張ろうじゃねえか』

 

 大仰に手を振り上げるスタークに黒フードの人物はくすくすと笑い、檜山は汚泥のような濁った目で醜く笑う。

 

 

 

 それから今後の方針を少し話し合い、黒フードは街の闇の中へ、スタークは木々の向こうの暗闇に、そして檜山は一人その場に残るのであった。

 

 

 

 ●◯●

 

 

 ところ変わって、街の中。

 

「………………」

 

 数多くある水路の上の小さなアーチを描く橋の上で、その少年──我らが勇者(爆笑)、天之河光輝は水面を見つめる。

 

 月光が反射して写り出す整った光輝の顔には、檜山とはまた異なる、しかしどこかに通った色が映り出していた。

 

(……俺は)

 

 光輝の脳裏には、ずっと昼間のことがぐるぐると思い浮かんでいた。あの時シュウジの頬を伝った、細い一筋の涙が。

 

 シュウジの言葉は、案外光輝の心に深く突き刺さっていた。光輝の()()を否定し、そして自分自身を嘆いた、その言葉が。

 

 それはまるで錨のように心の奥に根を下ろし、光輝に初めて「自分の行動について考える」という行為をさせていた。

 

(俺は、あんな強い悲しみを見たことなんてない)

 

 あの瞬間、光輝が何も言えなかったのは自分を否定されたからだけではない。到底人が浮かべられない、深い悲しみを感じたからだ。

 

 これまで様々な人間を見てきた()が、光輝の記憶の中であんな人間は見たことがなかった。そしてそれは、当然と言える。

 

 だって光輝は、大抵なんでもできた。自分が()()()と思えば、その強引さと無駄な高性能でどうにかできた。

 

 結果として周りいるのはその高スペックに惹かれた人間と、時折諌める雫たちだけ。悠久の時を苦しみ続けた人間などいようはずもない。

 

「わからない、あいつが」

 

 だから、そう。光輝は否定された怒り以上に、シュウジが言っていた通り、理解ができないのだ。その悲しみが、その信念が。

 

 今までだったらなんとかできたものが、唐突に無力になって何もできなくなる。人はそれを、壁にぶち当たるという。

 

 もどかしくて、苦しくて、苛立つ。そんな光輝に話しかけるものは、誰もいない。

 

 龍太郎は過剰なほど鈴のことを心配して宿で看病しており、こんな時頼りになる雫と──そして香織は、シュウジたちについていった。

 

「っ……」

 

 後から聞いたその事実に、さらに表情は歪む。そしてシュウジのこととは別の黒い感情が湧き上がってきて──

 

 

 

 

 

「──あら、良い表情だこと。実にお似合いですわ」

 

 

 

 

 

 ふと、美しい声が聞こえた。

 

 深く、艶やかなその声に光輝は顔を上げ、声のした路地の間に広がる闇を見据える。

 

 コツ、コツとヒールを鳴らして闇の中から現れたのは──絶世の美女。この世のものとは思えない、完成された女。

 

 その美貌にグッと息を詰まらせ、しかしすぐにシュウジの知り合いであると思い出してそのクラスメイトから目をそらす。

 

「……何の用だ、御堂」

「あら、つれない。せっかく一番似合う表情を褒めて差し上げたのに」

 

 小馬鹿にしたようにくすくす笑う女……ネルファに、光輝はいつものイケメンwスマイルは何処へやら恨めしげな目を向ける。

 

 そこには彼女が復活した際、危うく男の象徴を貫かれそうになったことへの恨みも少々混じっていた。もげればよかったものを(小声)

 

「わざわざ俺を笑いにきたのか?」

「ええ。私、貴方のような見栄えの良いものがそういう顔をするのが大好きですもの」

 

 若干恍惚の入った顔で言うネルファにドンびく光輝。どうやらさしもの勇者(笑)も彼女はアレらしい。

 

「自分が信じてきたものを切り捨てられ、悩みに沈むその表情。ああ、切り取って飾っておきたいわ」

「……やっぱりお前も、北野の仲間なんだな」

「……自分が被害者のような口ぶりですが、悪いのは紛れもなくあなたでしてよ?全く人を自分の都合の良い悪者に仕立て上げるのがお好きなこと」

「なっ、ちがっ、俺は……」

 

 違う、とは言えなかった。

 

 最初にしつこく迫ったのは光輝であるし、そうしなければシュウジは激昂することもなかっただろう。

 

 いつもなら雫に言われてちょっとだけ考えるそのことが、幾分か沈んだ心境のおかげでするりと出てきてうつむく。

 

 それに怪訝な顔をするのは、当然ネルファだ。てっきりまたズレた反論をしてくるものとばかり思っていたのに。

 

(……私が思っているより、あの御方の言葉が耳に入ったのかしら?いいえ、それができないのなら紛れもない愚種ですけれど)

 

 顎に指を添え、誰かに魔法でもかけられたかと思案するネルファをちらりと盗み見る光輝。

 

「何か聞きたいことがあって?」

 

 当然、見逃されるはずもなくネルファはそう問いかける。光輝は慌ててごまかそうとして、しかし意味はないと気づいた。

 

 ゆえにまた、うつむいて水面を見つめる。凝り固まった頭の中ではぐるぐると様々なことが思い浮かんでは消えていた。

 

 なぜそのような変貌をしたのか、あの力はなんなのか、と次々と質問を考えて。けれどどの質問も陳腐に思えた。

 

 やがて、ある一つの問いが頭に残る。

 

「……なあ、御堂」

「なんでして?気分が良いから、今宵は一つだけ愚種の質問に答えてあげますわ」

 

 感謝なさい、と言わんばかりに月光の中で微笑むネルファにまた口元を引きつらせて、一旦咳払いをするとまっすぐ見上げた。

 

 そこに宿る強い色に、ネルファは柳眉をひそめる。初めて、真剣に取り合うに値すると一瞬だけ思った。

 

「お前にとって、あいつはなんなんだ?」

 

 要領を得ない質問。普段の彼女ならば、明確な質問もできないほど愚か極まるのかと、嘲笑とともに一蹴する所だ。

 

 だが……万が一、億が一の偶然なる確率で。彼女は今最高に機嫌が良く、また話の内容が敬愛する師のことと理解しわずかに笑う。

 

 故に、ほんの気まぐれで。彼女は本心からの考えを、光輝の質問への返答とした。

 

「あの御方は私にとって救い主であり、同時に絶対なる方ですわ」

「なぜ、そう思うんだ……?」

 

 質問を終わらせず、さらに問いかける光輝。その目には、シュウジを理解したいという感情が浮かんでいる。

 

 ネルファは今度こそ、驚愕して密かに息を飲んだ。よもやここまで聞いてくるとは思っていなかったのだ。

 

(人間は、理解できない人間を自分の価値観で枠に当てはめ、拒絶する生物。この男は特にそれが酷いはず。なのになぜ……)

 

「どうして、それを知りたいんですの?別にわかる必要などないと御方はおっしゃっていました」

「……ああ、そうかもな。俺はあいつのことがこれっぽっちもわからないし、多分絶対にわからない」

 

 でも、と光輝は拳を握る。

 

()()()()()()()()()()()

 

 依然として、シュウジは無惨に必要のない人殺しを行なった悪人という認識は強く光輝の中にある。

 

 だが。あんな目を、涙を見れば。さしもの頑固と傲慢という言葉を煮詰めて圧縮して高密度にして煮まくった光輝でも違うと思った。

 

 だから天之河光輝は欲する。北野シュウジがどのような男なのか、その情報を。その思いをまっすぐ瞳にのせる。

 

 それを受けたネルファは──

 

「………………あなた誰ですの?愚種の皮を被った別人でなくて?」

「酷いなおい!?」

 

 鳥肌が立つと言わんばかりに顔を青ざめさせ、腕をこすって後ずさるネルファ。彼女の心境は珍生物を初めて見たときに近かった。

 

 なにせ彼女の知る光輝は頑固で中途半端な力を振りかざして威張る子供そのもの。なのに今の光輝は物分りが良すぎて誰こいつ状態である。

 

 しばらく疑わしい目で見ていたが、光輝の目が変わらないことを理解すると、はぁと深いため息を吐く。

 

 そうすると、トンと軽く飛んで水面に着地した。てっきり落ちると思っていた光輝は半端に手を伸ばして固まる。

 

 おかしな姿勢にクスリと笑い、ネルファは月光の中で踊るように手を広げて。

 

 

 

「あなたに特別に教えて差し上げましょう。一人の救われぬ、異端なる少女の話を」

 

 

 

 そして彼女は、語り出した。




次回はネルファのことについてです。
感想、カモン!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。