なんにでも変身出来るヒーロー志望ですが何か 怪!   作:輝く羊モドキ

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このお話は、稚作『なんにでも変身できるヒーロー志望ですが何か』の改稿版となります。ご了承ください。


黎明
主人公の初期設定的な第一話


 世界は光に満ちていた。

 未来は希望に満ちていた。

 自分は、なんにでもなれる可能性を秘めていた。

 

 

 あの時まで、そう思っていたんだ。

 

 

 

 

 昔話をしよう。『僕等』の昔話だ。

 『僕』はヒーローになりたかった。でも、なれなかった。そもそも、なれるような器じゃなかったんだ。だって、『僕』は友達を見捨てたんだから。そうだろう?

 ヒーローってのは弱きを助けて、悪を挫く。だけど、『僕』は弱きを見捨てて悪に従ってしまった。

 そんな自分を『僕』は嫌いだった。そんなんでも『僕』はまだヒーローに憧れていたんだ。

 テレビや、マンガの中だけのヒーロー。誰かの為に立ち上がれるヒーローに。

 

 そうして、気が付いたら『僕』は『俺』になっていた。

 

 『俺』の世界は暗い闇で満たされていた。

 未来は不安でどうしようもなかった。

 自分は、いくら頑張っても所詮ただの人にしかなれなかった。

 それで諦めて、流されて、漂って。何かを成し遂げようといった努力をしない『俺』になった。

 過去を見ようともせず、いずれ来る未来に向き合おうともせず。

 現在からも逃げるようにヒーローに憧れ続けた。

 ただ、憧れて見ているだけだった。

 

 そうして、気が付いたら『俺』は『私』になっていた。

 

 『私』にとって、この世界は既知の物だった。既に知っていた。それだけで幼少の頃では大きなアドバンテージだった。

 それがある意味、『私』の運命を決めたのだろう。

 未来はぬるま湯のようだった。例え隣で阿鼻叫喚の地獄が繰り広げられようとも。

 幼少の頃に如何に優れてようと、『私』は結局は凡人でしかなかった。

 右に倣えが道理。列から外れず、ただ背景の如く目立たない存在であれ。

 上に倣えが真理。そこに善も悪も無い。正しさなんて物は何処かに忘れてきた。

 それで、日常を常としてただ、寿命を浪費するままに生きてきた。

 

 『私』は、本当にこうなりたかったのか?

 『俺』は、こんな結果で本当に良かったと思うのか?

 『僕』は、こうなると知っていたら何をした?

 

 

 『僕等』は、何故ヒーローに憧れた?

 

 

 『僕』は友達の為に戦うことが出来なかった。立ち向かおうともしなかった。

 『俺』はそんな自分を変えようと努力をしなかった。自分から変わる勇気が足りなかった。

 『私』は自分を変える事が出来たが、その方法が間違えていた。間違いに気が付いた時に、すぐにでも間違いを正すべきだった。

 

 ……だから、『僕等』はヒーローに憧れ、そしてヒーローになれなかった。

 だけど『キミ』は違う。『僕等』と同じでも、『キミ』は友達の為に戦うことが出来る。自分で変わる事が出来る。間違いに気が付いたら、すぐに正せる勇気を持っている。

 

 世界は光に満ちている。同じだけ、闇にも満ちている。

 未来は希望に満ちている。希望以上に障害は沢山ある。

 自分は、なんにでもなれる可能性を秘めている。なろうとする努力を怠らなければね。

 きっと『キミ』は良いヒーローになれるよ。

 

 ずっと努力を続けている『キミ』に、プレゼントがあるんだ。是非、受け取ってほしい。

 

 『僕等』はこうして応援することしか出来ないけれど、『キミ』の努力が実る事を願っているよ。

 『キミ』の人生に。『キミ』の未来に。『キミ』の運命に。

 せめてもの祝福あれ。

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 ……ぐごぁっ。……ぅぁ~。あ~?なんか、変な夢見た……ような……。ぁぅ~……・

 

 

 ……スヤァ

 

「いや起きろよクソあにぇき」

 

 ゴスッ。

 と身体から出していい音ではない大きさの殴打音が部屋に響く。

 殴られたその勢いのまま、ベッドから殴り落とされた。今度はそこそこの衝撃が全身に駆け巡る。

 ビターン!

 

「いたぁい!寝起きドッキリなんて頼んでないんですけども?!」

「中学の初日から早々に二度寝ブチかまそうとしたクソあにぇきに対する手段としてはかなりおとなしい方だと自分でも思うけどな」

「ううっ、愛しのブラズァァが寝込みを襲う最低男になるなんて……お姉ちゃん育て方間違えたかしら」

「口を閉じろ無性生物。いびきうるさいんだよ雌雄同体。とっとと起きろ両性具無」

「なんでそんなアタイの性別に対してめちゃ言ってくるの?」

「どうでもいいだろ」

 

 寝惚けた頭も話しているうちにゆっくりと回転を始めた。二度寝の魔力から辛うじて逃れられた私は腕を伸ばし、ベッドからまだ温もりが残っている布団を引っ張りくるまった。

 

 オフトゥンの中、あたたかいナリィ……

 

「朝飯だってんだよカタツムリクソ野郎。とっとと起きて着替えやがれ」

 

 そう言って容赦無く寝ている私に対してかかと落としを放つ弟君。君は実に無慈悲だな……。

 

「前から思ってたんだけど、最近おねーちゃんへの扱いかなり酷くない?なんなの?思春期なの?」

「お前が最近やたらと姉アピールしてくるからじゃねえの」

 

 かかと落とし再び。ア艦コレわちきが起きるまで繰り返されるヤツや。

 いつまでも床ペロ状態はマズいのでいい加減起き上がる。

 

「なんじゃい、弟ちゃんはおねーちゃんじゃなくておにーちゃんが良かったのかよ」

「どっちでもいいけど、家でも外でもどっちかに固定しろってんだ単細胞」

「つまり弟ちゃんはホモ……と」

「な訳ねーだろボケ!」

 

 ひゅー!恐ろしく早い手刀。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

 なお避けられなかった模様。

 

「手刀じゃなく貫手って言うんだよアホ。次はその喉だぞ」

 

 ほんま弟ちゃん暴力系男子に育っちゃって……アタイ悲しい……。

 

「母ちゃんにメシ要らないって言ってくるわ」

「御待ちなすって!そんなご無体な事をなされば空腹で死んでしまいます!」

 

「弟ちゃん!ちょっと!」

 

 

「マジで行きやがったあの野郎!待て!待てやゴラァ!!」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「ひゅぅ、危ない危ない。マジでメシ抜きになるとこだったぜ……」

「家の中でチーターに化けるんじゃねえよ馬鹿野郎」

「お前がなー!母ちゃんになー!飯抜きだとなー!ユルサーン!!」

「食卓で喧嘩する子はー……」

「「ヒェッ」」

 

 私の名前は殺生石(せっしょうせき) 化太郎(ばけたろう)。何処にでも居るようなヒーロー志望だ。

 何処にでも居るようなヒーロー志望だが、ちょっと普通じゃない人でもある。何が普通じゃないのかというと、まず家族が普通じゃない。

 

「ほらー貴方達、食べ終わったのなら皆の分の朝食分けるのを手伝いなさいな」

「ん」「あい、マム」

 

 我が殺生石家の普通じゃないポイントその一。数えるのが億劫になるほど家族が多い。

 まあ家族が多いと言っても、人型は5人しか居ないのだけど。

 では何が多いのか?ペットが多いのか?

 

 答えは否だ。

 

「おら。お前等整列しろー」

 

 目の前の光景を一言で表すとしたらそう。

 

『狐狸戦争』

 

 視界を埋め尽くすほどの狐、狐、狐。そして狸、狸、狸。なんてケモケモしいのか。

 それらが大広間いっぱいにずらりと並んでいるのだから凄い迫力である。これら全部が殺生石家の家族なのだ。

 

 やっぱりペットじゃないかって?だから違うって言ってるだろう。

 この狐狸共は、全て遠からず私と血が繋がっているのだ。

 

 

 血が繋がっているのだ。冗談ではない。二つの意味で。

 

 

 我が殺生石家の普通じゃないポイントその二。先祖が狐と狸。

 これはもう説明するまでも無くヤバイ。

 

「こらこら、全員分あるからしっかり並べ。順番守らんとしばくぞ。」

 

 動物虐待発言をしている我が弟、殺生石 統狸(とうり)。個性がそのまま『化け狸』である。

 世間的にはタヌキっぽいことが出来るのとちょっとした変化の術が出来ると見せかけているが、実際にはタヌキが人化の術で人の世界に紛れ込んでいるのだ。

 

「クソあにぇき。サボってんじゃねえよ蹴るぞ」

 

 そう言って平手打ちしてくる我が弟。口より先に手が出ちゃう系男子。

 

「既に殴られてるんですがそれは」

「更に蹴るって言ってんだよ。とっととやれ」

 

 お前マジでちょっとは私に敬意はらいやがれください。

 

「貴方の教育が悪かったからじゃないですかね」

「あ、さとりん。おはよう」

「はい、おはようございます。化太郎さん。統狸さん」

 

 突然現れた謎の美少女の正体。それは私のマブダチであり、殺生石家に居候をしている。名前は先詠(さきよみ) さとり。

 

「私は貴方とは血の繋がらないただの他人で同居人程度にしか思っていないのですが」

「そりゃないぜさとりん」

 

 ひどい。こんなにも愛しているのに。 

 

「ふざけた言動と、ふざけた思考を何とかすれば好感度も上がるかもしれないですがね。まあ、貴方には期待するだけ無駄ですか」

「もうやめて、アタイのライフはもうゼロよ!」

「そういう所だって言ってるんですよ」

 

 ちなみに家庭内ヒエラルキーのトップ2である。居候の癖に私より偉いのだ。不思議。

 個性は(多分)読心。その個性を用いて多くの喋らぬ狐狸共と意思疎通をし、手なずけている。

 

「サボんなって言ってんだろ不定形動物ぁ!」ゴベキッ!

「バベルッ!!」

「ローリングソバットとは、統理さんはまた器用になりましたね」

 

 最近統理の体術レベルが爆上がりしてってるんですが。この前は筋肉バスター喰らったし、こいつ本当にタヌキかよ。

 

「喧嘩はだめよー?」

 

 この間延びした声が特徴のお方は我が母である。そしてワガママである。うまいこと言った。

 名前は殺生石 瑞久女(みずくめ)。ふっさふさの尻尾が九本ある美女であり、家庭内ヒエラルキー堂々の一位である。母の言葉に従わぬ者は誰であれ、家の某所にあるなんだかよくわからない部屋に連れていかれるのだ。怖い。

 だが私は、そんなマザーのテイルでシエスタするのが日課であった。

 

 すると、突如部屋の襖がカラリと開けられる。そこから、大きな身体をした男がのしのしと歩き、食卓の席に着いた。

 

「……おはよう」

「おはようお父さんー。朝ご飯出来てるわよー」

 

 我が家最後の人型のマイファザーである。名前は二ツ岩(ふたついわ) 団九郎(だんくろう)。もっふり尻尾と寡黙な所がチャームポイントさ。

 昔はなんでも、一つの国を一人で納めていたとか何とか。まるで意味が解らんぞ。

 

 一匹のタヌキがするすると父さんに近づき、口に咥えた新聞を差し出した。父さんは無言で受け取り、そのまま新聞を開いた。

 家庭内のヒエラルキーの頂点は母さんだが、家庭外、この辺り一帯の全動物達のヒエラルキーの頂点は父さんだ。そして家庭内ヒエラルキーでも番外に位置している。

 基本的に父さんは無口で語らないが、何かしら家庭内での揉め事が起きると偶に父さんが口を出す。父さんの決定は絶対であり、母さんも従う。

 

 どんな時に口を出すかというと、この前の私の小学校卒業記念の旅行に何処に行くかで家族で揉めに揉めた。私の卒業旅行なのだから私が行きたい所に行くべきだと主張したが受け入れられず。東京デステニーランドか不死Qハイランドかで大口論になった。

 因みに母君とさとりんがデステニーランドで私と統理が不死Qハイランドだ。

 (一緒に行かないのに)狐と狸全体を巻き込んだ口論にうんざりしたのか、父さんが覇気を携え一言で争いを治めた。

 

「行き先はジェーワールド東京」

 

 きんとうんわたあめおいしかったれす^p^

 

 何の話だっけ。

 

 ああ、そうこうしているうちに時間が迫ってきてしまった。そろそろ出ないと流石に学校に遅れてしまう。

 

「さあ諸君!学校に行く準備をしたまえ!時間は止まってはくれない「五月蠅いメタモル野郎」モスロンッ!」

 

 ▼ 統理の平手打ち! 家庭内暴力が加速した!

 

「あにぇきももう中学生になるんだからいい加減性格と行動に落ち着きを持てよ」

 

 言ってそれが出来れば苦労しないんじゃぁ!

 

 

 ……本当にね。

 

 私の普通じゃないポイント。不定形。

 言葉通りに一定の姿形を持たない。持てない。

 

 改めて自己紹介をしようか。私は殺生石(せっしょうせき) 化太郎(ばけたろう)。個性は変質。

 私と、私の身に着けている物を私がイメージできる様々なものに姿を替えることが出来る個性だ。

 そこには恐らくだが制限というものが無いのだろう。生物、無生物、空想上の存在あるいは、無。其処にイメージが出来てしまったら、姿を変えてしまうのだ。

 自身の身体が気体になるイメージをもったら、肉体の無いガス生命体に。

 自身の身体が不明の金属になるイメージを持ったら、謎合金で出来たSFの人型ロボットに。

 自身の身体が目の前の人になるイメージを持ったら、目の前の人に。

 常に変質し続けてしまう。自身の個性が常に暴走してしまっているのだ。其処に自分の意志は無い。

 私は、生まれた時から自分の顔を持たなかったらしい。

 人間の、最も個性的な部分の欠落。

 ましてや、この誰のモノかも分からない知識、記憶、経験はなんだ?私は誰だ?私は私なのか?

 私で。

 私とは。

 私の。

 私は。

 

 

 

 

 

 どうでもいいやぁ……。

 

 と、まあそんな感じで私はいつも性格不安定なのだ。

 小学校の成績通知表でも『もっと落ち着きを持ちましょう。』とか書かれる位に落ち着きを持たない。三つ子の魂百までっていうし、許して。

 

 さあ、そんなこんなで、朝起きてからもう変質するのが10回目を迎えた。小学生の頃は100回とかが普通だからこれはもう成長といっても過言ではないんじゃなかろうかいやしかし五十歩百歩ともいうし結局10回も100回も変わんないんじゃないかなでも実際変質回数は減っているんだから順調に成長していってるねコレは高校に上がる位になったら一日2,3回くらいまでに抑えられるのではないかなそう考えたらテンション上がってきた流石に友達もっと欲しいしね親友と呼び合うような間柄なら居るんだけどやっぱりもっと友達が多いほうがいいかなでも一人親友が居るんだから贅沢もいっていられないかブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ

 

 

 ……おっと、また無意識に変質してしまった。そういえばあの緑のモジャ髪君元気かな。

 というか気が付いたら弟もさとりんも居ない。二人とも小学校に行ってしまわれたのね。

 時計を確認。時間さん、無事死亡。なんてふざけてる場合じゃねえし。このままでは入学式初日に遅刻をしてしまい遅刻マンのレッテルを貼られてしまう。

 

 折角なら遅刻ウーマンの方が良い。

 

 違う、そうじゃない。私は着の身着のまま、学校指定のカバンすら持たずに家を飛び出した。

 

「いってきまーす!!」

 

 制服も、カバンも。学校に着いてから作ればいいや。こういう時にこの個性は便利だよなぁと思いながら鳥に変質し、飛び立った。個性の不正使用?ばれなきゃ犯罪やないんやで?それに私の個性、どっちかってーと異形型ともいえなくもないかもしれないし、ノーカンノーカン。

 

 何故か頭に違和感を覚える。まあいいやと無視した。学校までの道をひとっ跳びぞ。

 

 

 

「……なあ」

「あらー。どうしたのお父さん?」

「……化太郎、あんなお面着けてたか?」

「ついにオシャレに目覚めたのかしらねー?」

 

 

 ギリギリ時間内に到着。遅刻マン、遅刻ウーマン等のレッテルは貼られなかった。

 

 が、代わりにマスクマンの称号を頂いた。解せぬ。

 

 





ちなみに化太郎の両親とも普通の人(というか動物)ではないので顔の無い化太郎を産んでも
「まあこういうこともあるか」
と気にしなかった。器広し。


BAKETARO
SESSYOSEKI

○個性

 変質

全身及び身に着けている物をあらゆる物に変えることが出来るぞ!
但しイメージだけで変わってしまい未だ制御が出来ていないから非常に不安定だ!
しかし個性の制御が出来ればまさに何でも有りだぞ!


殺生石’s顔-生まれつき無い。
殺生石’s全身-生まれつき無性。変身してないときは胸部装甲も槍も穴も無い。
殺生石’s服-体とともに変質するから基本的に安物かボロ布。
殺生石’s仮面-夢の住人?からの貰い物。何故か個性の影響を受けない。
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