なんにでも変身出来るヒーロー志望ですが何か 怪!   作:輝く羊モドキ

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緑谷出久に死柄木弔がいるように。
オールマイトにオール・フォー・ワンがいるように。
主人公にも宿敵となる存在がいるようです。



主人公の宿敵登場的な第五話

「これ以上この地に狐狸共をのさばらせておく訳にはいかぬ」

「そうだ」

「然り」

「奴らを駆逐するのだ」

「……」

 

 ここは、日本のとある県の地下。巨大な地下帝国の会合所。そこに、明らかに人ならざる者達が大勢顔を突き合わせていた。

 ザワザワと、議長の居ない会議が無意味に進行していく。

 

「あの禿狸と女狐が手を組んでから何一つうまく行っておらん!」

「西だけでなく東にまで勢力を伸ばしおる」

「おとなしく片田舎に籠って居れば良かったものを」

「彼奴等さえ居なければ我等が天下を取っていた」

「……」

 

 ザワザワ。各々が好き放題に語り出すその様は正に無駄話としか表現が出来ない。

 

「今月に入って我らが傘下が既に5人やられおったわ」

「ワシらの所の若いモンは既に半数が奴等の手に……」

「そも、かの騒乱から先詠のとも連絡が取れん。ヤツはわえ等の期待の星じゃったがな」

「……」

 

 そんな中、不気味に沈黙を貫き続けている者が一()

 座布団に胡坐をかきながら分厚い書物を広げ読み進めているその姿は、まるで大きな汚い毛玉とでも言えるような姿だった。

 周囲の人ならざる者と比べ、一回りも二回りも大きいその姿は薄暗い会合所の中でも目立つ筈の存在だが、背景と同化するように気配を殺している。否、それがその者にとって当たり前だった。

 

「そう言えば聞いたかのぅ?浄土様のご容体が芳しくないらしい……」

「ふん、わえ等よりも無駄に長生きしてるくたばり損ないめ。とっとと死ねば良い物を」

「ほほ、浄土様が斃れれば、次の覇権は必然的にワシら『経立会』が握る事になるのう。今の内に地盤を固めておくに越したことは無いわいの」

「フン、他の奴等が首級を挙げない事でも祈るのかぃ?」

「馬鹿々々しい、ワシらでもまるで歯が立たん相手にヤツらが束になっても敵うもんか!」

「ひょっひょっ、束になる前にぬしが散らしておいて、よく言うわぃ」

「……」

 

 音もなく書物を読み進めるが、聞こえてくる不快な会話に遂に限界を迎えたのか読む手を止める。

 

「とにかく一刻も早く狐狸共を駆逐するのじゃ!」

「なら駆逐できる案を早く出しんじゃ」

「浄土様も近いうちに斃れる。なら我等が覇権を握ってからでようやろぉ」

「ひょひょ、それまでにやつ等が我等を滅ぼしに来なければええのう?」

「それよりも狐狸共が更に力を付け始めておる。例のアヤツは余りに手ごわいぞ?」

「はん!所詮今だガキの分際よ!このワシに掛かればすぐに殺してやるというのに!若いモンはどいつもこいつも役立たずよのう!」

 

 バタンッ!と力強く書物を閉じる音が響く。

 その音で、漸く会合所に集まる者達が其処に座っている者に気が付いた。

 

「やっかましいんじゃジジババ共がぁぁあああ!」

 

 聞いた者の全身の毛をぶわりと逆立てるほどに大きな声が耳を貫く。

 

「何だ何だよ何ですかァ!?老害共が揃いも揃ってブツブツザワザワダラダラベラベラ無駄話してェ!僕は此処で『経立会』の未来について話し合うって聞いてるんですがァ!?実際どうだァ!?テメエ等の老い先短いクソッ垂れのプライド守る為に毎日毎日こんなくっだらねえ話し合い繰り返してんのかァ!?」

「なんじゃ貴様はッ!このワシを誰だと思っておるんじゃ!」

「ゴミみてえなプライドを守る為に同胞何十匹も見捨てたクズ共のトップだと思ってますがァ!口だけは達者の実力皆無で智将ぶってる無能な頭だと思ってますがァ!?」

「き、き、貴様ッ!殺せ!この無礼者をぶち殺せ!!」

 

 偉そうにふんぞり返って指示を飛ばす。だが、帰ってきたのは断末魔の声だった。

 

「ギャアアアア!!」

「な、何ぃ!?」

「ああ、失礼。主に牙を向けようとした者の()()()牙を抜いてしまいました。次は上手くやるので、どうぞお気になさらず」

「あ”、あ”がぁ……が、が……」

「『実力主義』が理念ならテメェがかかって来いよなァ?あーあーァ、上が腐ってんのは知ってたが、まさかここまで腐り落ちてるとは思わなかったぜェ……」

「き、貴様……何者じゃ……!」

「ああァ?はっ、テメェ等の腐った脳味噌にゃぁ金と権力とプライド以外覚えてられるモンが無いらしいな。まあいィ、僕は優しいからよォ。そのクソの詰まった脳味噌抉じ開けて良く聞けよォ?」

 

 先程まで誰にも認識されていなかった筈の存在が、いまや誰もが目を放せぬほどに存在感を放っていた。自身の気配に、殺気と狂気を乗せて辺りに放つ。

 

「僕は『旧鼠 公星(きゅうそ こうせい)』。テメェ等が使いつぶそうとした若手の希望(ホープ)にして、腐ったカス共に絶望(ディスピア)を与える英雄(ヒーロー)だァ。冥土の土産に覚えておきなァ!」

 

「貴様、どこまでの舐め腐りおってぇ……!」

「腐ってんのはテメェの根性だろォ?まあいいやァ、『経立会』の膿を捨てて僕が新しい会長に就いてやるよ。精々テメェは無様に騒いでなァ?」

「貴様、貴様貴様ぁ!!この経立会が今の今まで続いてきたのは誰のおかげだと思ってるんじゃ!!」

「うるせえんだよ騒ぐだけの老害がァ!誰のおかげで続いてきただァ?テメェ等が食いつぶしていく未来の為に命を掛けていった同胞のお陰だろうがァ!テメェ等ザコ共が何時までも昔は昔はなんて言ってるから狐狸共にいいようにやられてここまで衰退したんじゃねえのかァ!?」

「っぎ、貴様ぁ!!ワシがこの手でブッ殺してやる!『針万本地獄』!!」

 

 一番の上座に座っていた()()()()()が身体を膨らませ、その身の針を太く、長く、そして数え切れない程に増やしていった。その両手足が地面に付かないどころか、人一人分の大きさを余裕で超えるほどに肥大化し、転がっていく。

 

「木材すら容易く貫くワシの針で串刺しになれぃ!」

「主」

「引っ込んでろォ」

 

 自転車程度の速度で転がってくるソレは、事実公星にとって回避は余裕なモノだった。だが、一切回避するつもりは無かった。ただそこに悠然と立っていた。

 

「その余裕を抱えたまま死ねぇ!!」

 

 その針は、木を貫けるほどに硬かったのだろう。その身は、人を轢き潰せるほどに重かったのだろう。

 だがしかし、その針は公星の皮膚を貫くことは無かった。その重量は公星を轢き潰す事は叶わなかった。

 

「っくはァ」

 

 哂う。嗤う。歪な顔で嘲笑う。

 

「ざんねェんだったなクソジジイ。僕の毛皮は鉄より硬ェんだ。その程度でイキがれたのは昔の奴等が全員ザコだったからなァ?時代遅れのカスがいつまでものさばってんじゃねえよォ」

 

 ただ片腕を伸ばし、醜く膨れ上がったハリネズミの顔を掴むだけで攻撃を受け止めた公星は最後の慈悲をみせる。

 

「このまま握りつぶすのは簡単だァ。だが、テメェが今まで切り捨てた同胞に謝罪をするのなら握りつぶすのは考えてやるよォ」

「(なんだ、なんだなんだなんなんだコイツ!?このワシを、経立会の会長たるワシを何だと思っておるんじゃ!?誰がこの『浄土』において最勢力を誇る経立会を育てたと思っておるんじゃ!?)」

「どォした?謝罪一つも言えねえ程にビビったかァ?それとも同胞にすら下げる頭は無いとその下らねえプライドが言ってんのかァ?」

「(コイツっ……言いたいように言いおって!殺す!コイツは絶対殺す!だが、今はコイツの隙を伺わねば……!)」

「そうかァ、下げる頭はねェか。なら……」

「ま、待て!ワシは……くっ、ワシが間違っておった……。お前達若いモンを大事にするべきじゃった……。(屈辱じゃっ!だが今は耐え忍ぶ時……)」

「……そうか、そうかそうかァ」

 

 そう言って、ハリネズミの頭から手を放す公星。

 

「(馬鹿がッ!ワシの切り札がこの針だけだと思ったか!)」

「つまりあいつ等はただテメェの自尊心を守る為だけに散っていったって……言ってんだなァ?」

「は」

 

 刹那。頭部を()()()()ハリネズミは何が起きたのかも理解出来ないままに息絶えた。

 

「握りつぶすのは止めてやる。代わりに無様にィ、無惨にィ……殺してやるよォ」

 

 バリッ。

 バリッ。

 既に息絶えた死体の針を剥ぐ様に食い千切ってはそこらに散らす。

 

「ハッ!老害にしちゃぁキレイな死に様だなァ!そのまま派手な葬式にしてやるよォ、感謝しやがれ!」

 

 ブチッ。

 ブチッ。

 その四肢を捥ぐように引き裂き、そのはらわたを千切るように引きずり出す。そこに死者に対する尊厳など一切考えられてなかった。食べるために死体を解体する訳でも無い。弔うために死体を解体する訳でも無い。猫が鳥の死体を引きずり回し、振り回し、飽きて捨て置くように。ただの気まぐれで引き起こされた凄惨な場面を唯々見ていることしか出来なかった経立会の重鎮達は正気を保っていられなかった

 

「馬鹿な、こんな、有り得ぬ。有り得ぬ。有り得ぬ」

「ひ、ヒヒ、ひひひひひ」

 

 そんな中、唯一正気を保っていられた()()()()()()は公星にすり寄っていった。

 

「お、おお!お主こそが次の浄土様に相応しい!お主ほどの実力があればこの地を真の意味で統一することも出来るじゃろう!どうじゃ?この婆がお主のさぽーとに付けば正に鬼にかなぽギャ」

「あ?テメェ等老害は残らずぶち殺し確定だァ。膿は残らず絞り出さなきゃだよなァ?」

「おっしゃる通りで御座います」

「なら残りは任せたぞォ?」

「御意に」

 

 ほんの僅かな間。ただそれだけでこの場にいた生命の殆どは死に絶えた。あえて惨たらしく、あえて残酷に。死体を穢し、辱め、虐げた。その空間は悪意と害意によって満たされたのだ。

 

「おィ」

「はっ」

 

 公星がただ一言声を出せば、一匹のリスがまるで元から其処に居たかのように跪いていた。

 

「経立会及び他の組の幹部共に伝えなァ。『今より、旧鼠 公星が経立会会長に就任する。従うなら生きる事を許す。だが従う気が無いのなら、この僕が直々に殺しに行く』となァ!」

「御意に」

「っくははァ!ああ、これで漸く経立会を手中に収めた。そして間もなくこの浄土全域を支配できるだろォ……。あァ、後は浄土様がとっとと死ぬのを待つのと……邪魔な狐狸共を殲滅するだけだァ。あァ、長かったなァ!もうじき、もうじきだァ……!くは、折角だァ。狐狸共の『期待のホープ』ってヤツの顔でも拝みにいって来るかァ?今週号のジャンプを読んだ後でなァ!!」

 

 くは、ははは、はははははァ!!

 

 

 ゲホッゲホッ

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 私 で す 。

 さて、早いもので中学校に入学してからもうじき3年になるぜ。つまり私は3年生ってわけだぜ。

 思えばあれからすったもんださすさすちゅっちゅあったけんど、大きく変わった事と言えば志望校はやっぱり雄英高校だよなってところかな。変わってないと言えば変わってないのかも。

 あ、それとヒーロー志望友達が増えました。やったね。今まで友達少なかったからね。片手で数えられるほどってマジ卍。

 

 泣いてないし。

 

 そう、私の新しい友達のお話。ヒーローを目指してるフレンズなんだね!

 まあ、多くは語らないけどのっぺりぼでーがチャーミーパイセンでヤバみ。

 そんな友人と融剛と私の3人で放課後よくトレーニングをしている。ついでに勉強もよく教えて貰っている。むしろ最近は勉強がメインストーリー感ある。メインストーリーだけじゃなくサブクエストが充実してるRPGは名作ってそれマジ卍。

 

 仕方ないんじゃ!雄英って滅茶苦茶倍率高いんじゃ!体鍛えるだけじゃなく頭も鍛えなきゃいかんのじゃ!卍の書き順だって出るかもじゃんって何だよ!?出るか!いや、出るか?出、出る?あれ、出って漢字こんな字だったっけ?出出出出出出出出炎出出出出缶出出川出出出山出出出出出

 

 そんな事よりおうどん食べたい。ソバよりウドン派。キノコよりタケノコ。イカよりタコってそれ。

 な、何の話だぁ!?

 

 うえぇん。勉強嫌いぃ。僕たちは勉強が出来ないぃ。

 そう、新しい友達はその個性的に一度覚えた物は忘れそうもない。正に頭の出来が違うって奴だ。親友は親友で知識を頭に融合するとか訳わかんない事……え、やってない?まぁじでぇ~?

 

 ぽいぽい(閑話休題)

 

 私は生まれつき謎の記憶を持っている癖に、残念ながらこの記憶が勉強において全く生かせないにゃん!詐欺じゃん!かなーしーみのー。

 そう、悲しみの余り最近見かけたMt.レディ(私服ヴァージョン)に変身しながら雄英の過去問とにらめっこしながらアイス片手にペロペロペロリーヌしながら帰路についていた。

 

 すると、

 

「キャァアアアア!!」

 

 女性の絶叫!?

 この声は、まさかのさとりん!?あの、大人顔負けの毒舌砲をブッパしてくるさとりんが悲鳴をあげるなんて!?

 新鮮!

 

 じゃねえよ馬鹿野郎!何かあったんだよホラすぐ向かうからなさとりん!

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「その汚い手を離しなさいっ!汚らわしいっ!」

「汚らわしいはねェだろォさとりちゃんよォ。かれこれ5年ぶりの再会になるっつーのにまァ嫌われたもんだぜェ」

「離せッ!貴方が私にした仕打ちを忘れたとは言わさないわよ!」

「んァ?さァて、何のことを言ってるのか……心当たりがあり過ぎて分からねェなァ!」

「ッ……下衆めっ!貴方みたいなヤツは死んでしまえばいいわ!」

「おォ怖い怖い。今まで誰がお前を()()()()()やったってんだっけェ?」

「監禁した、の間違いでしょう!」

「あァ?面白ィコト言うじゃねえか。なんだったっけかなァ~?そう、『悪魔の子』」

「っ!?」

「『妖怪』『バケモノ』『三つ目の怪物』」

「止めなさい!やめて!」

「そうそう、他にも『心食いの魔物』とか呼ばれてたよなァ?」

「やめて!嫌っ!やめて……」

「っくはははァ!人間ってのは身勝手な生き物だよなァ!同じ種族の子供相手にまあ好き勝手言えるもんだァ!思ってる事を読まれることがそんなにも疎ましいことかよォ!」

「嫌……いやぁ……」

「石を投げられ、斬りつけられ、生まれたことが罪とまで言われるなんてよォ!実の親からも散々に暴力を振るわれて捨てられたテメェを拾ったのは何処の誰だったかなァ?」

「っ……」

「っくははァ、テメェの立場が漸く解かったよォだなァ?だがそれなのに現実はどォだァ?今まで守ってやった恩義を忘れ、僕等の財貨を盗んで逃げた代償は高くつくぞォ?」

「ぅ……っ……」

「泣いたって許さねェよォ。くはっ、そォだなァ……。あァ、イイ事思いついた。テメェのその身体で払って貰う事にしよォか!」

「ぅ……?」

「なんだァ?まさか本気で解らねェ程にガキかテメェ。なら僕の心を読んでみろォ」

「……」

 

「……!!?嫌、いやぁ!!離しなさいっ!離せぇっ!!」

「くははァ!僕にゃそんなシュミはねェがよォ!旺盛な子分共にゃ丁度イイだろォ!テメェの穴っぽこ貸すだけでメシと寝床は保証してやるよォ!服はしらねえがなァ!!」

「離せっ!この外道っ!いやぁっ!!」

「くははァ!狐狸共のホープとやらを探してたが、思わぬ成果だ!タナボタってヤツかァ!?僕の日頃の行いって奴だなァ!!」

「いやぁ……たすけて……化太郎……」

 

 

 

その薄汚い手を離せよ

「あン?」

 

 

DETROIT…

S  M  A  S  H  !!!

 

「ガァェ!!?」

 

「もう、大丈夫だ。さとりん」

「あ、ああ……っ!」

 

 

私が来た!

 

 

「お、遅いんですよ馬鹿!」

「それについてはマジゴメン!怪我は無いかいさとりん!?」

「だ、大丈夫です……」

 

 本気で殴り飛ばしたヴィランが震えながらも立ち上がる。なんて頑丈な体してやがるんだ、偽物とは言えオールマイトパゥワーで殴っても立ち上がるとか人間じゃねえな。

 改めてヴィランを見る。人の身体ほどもある大きな毛玉だ。

 

 目を軽くこすってみる。

 そうして改めてヴィランを見れば、それは人の身体ほどもある大きな毛玉だった。

 

「ぐっ……ゲホッ。ぉ、オールマイト……だとォ……?」

「私はオールマイトではない。オールマイトの姿をした通りすがりの仮面ライダーゲフンゲフン、仮面(マスク・ド)ヒーロー(志望)だ!」

「……」

 

 なんか私の横から感じる視線が絶対零度を下回るほどに冷たい。

 

「あァ?……そのフザケた仮面……そうか、テメェが狐狸共の期待のホープ、殺生石化太郎ってヤツかァ!」

「はっ!お前みたいなカピバラにも知られてるなんてアタイったらちょーゆーめーじんね!」

「カピバラじゃねェ、ハムスターだァ!!」

 

 お前のような小汚いハムスターが居るか。

 

「……化太郎、気を付けて。アイツは経立会で最も残虐と知られているネズミです」

「……そっか、さとりん!」

「な、なんでしょう?」

 

「『経立会』ってなんだ!?」

「そこからですか!?」

 

「て、テメェ……どこまでも僕をコケにしやがってェ……!!」

「うっせ!アタイはここんとこの齧歯類ラッシュに疲弊してんのよ!いつまで来る気よ!」

「……『経立会』というのは貴方が倒した齧歯類ヴィラン達を擁していたヴィラン組織です」

「そういう事か!つまり私が経立会の構成員をボコボコにしてたせいでそこのトップがお礼参りに来たって訳か。ヤクザみたいな奴等だな!」

「まあそうなんですが……貴方妙な所で察しの良さを発揮しないでください。馬鹿の癖に」

「酷いや」

「僕を無視してお喋りしてんじゃねェよォ!!」

 

 毛玉ハムスターが飛び掛かってくる。は、速いっ!

 

「テメェ等仲良く血祭りにしてや「昇竜拳ッ!!」パガァッ!!?」

 

 スマンな、甘えた滞空許さないマンこと私は小足見て昇竜余裕でした。

 そしてまだ終わらない。重力に引かれるままに落ちてくる毛玉にさらなる追撃。

 DX仕様の絶空!

 DX仕様の絶空!

 

「動き方が気持ち悪い!?」

 

 それな。でも思ってても口に出さないのが良い女なんやで(号泣)。

 ヴィランの落下地点に先んじて到着。降ってくるのを待つ。

 

「ぷ、が、アアアアアアア!!!」

 

 昇竜を顔面に直撃ったのにまだ意識が残ってるなんてマジで頑丈すぎやしませんか。しかも的確にこちらを視認して、その爪を振るってくるつもりかい。本当に大した奴だよ。

 まあ、いい。さっきので気絶してたら興ざめもいいとこ。少なくともさとりんを泣かした分はぶん殴らないと気が済まないのだから。

 こうみえて、結構キてるんですよ私。

 

「最初は、グー」

 

 流石にあそこまではボっきれては無いけど。ありったけの怒りとオーラを込めて。

 

「じゃん、けん……」

「しィィィねェェェェ!!」

 

 爪が僅かに頬を切り裂く。だから何だってんだ。この一撃はさっきのオールマイトの拳より痛いぞ?

 

 

「 グ ー !! 」

 

 

 拳を振り抜いた。汚いハムスターは再び空の旅へと飛んで行った。……だが、イマイチ。手ごたえ的にまだ普通に意識ある感じだった。

 

 

 あ、いけね。アイツ普通に殴り飛ばしちゃった。確保しないとマズいやん。

 さとりんに警察を呼んでもらうように頼みながらヤツが飛んで行った方向に駆け出した。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 はぁ、やれやれ。最近受験勉強が捗り過ぎてやる事が無い。今日は家で訓練をやる日でも無いし、帰宅したらもう完全にやる事が無い。やる事がない状況に不安を覚えるなんて、俺はいつからワーカホリックになったんだ?

 ……帰ったら軽く筋トレでもするか?とは言え毎日のルーティーンを崩すのはなぁ。

 と、そう思いながら帰り道を歩いていると、誰かの声が聞こえてきた。しかもどんどん近づいてくる……空から?

 

ぁぁああああああああああ!!

 

 親方―。空から毛玉がー。

 

 って言ってる場合じゃねえ!?あのまま地面に激突でもしようもんなら大怪我ですまねえぞ!?

 落下地点を予測。縮地で落下軌道に沿うように跳び、抱きかかえる。

 成功。そのまま地面に無事に着地し、毛玉を一旦地面に横たえる。

 毛玉の様子をよくよく観察してみる。同年代の女子程度の大きさで、恐らく(と言うかほぼ間違いなく)獣型の個性だろう。毛玉を軽く掻き分け、顔を覗いてみる。鼻から血が吹き出ている以外は普通(異形型にしては)の顔だった。

 

「おい、大丈夫か!?」

「っうぐゥ……」

 

 意識はあるようだが、目を回しているようだ。鼻から血が出てる事から、恐らく何らかの理由で顔面を強く打ったのだろうか。鼻以外にも出血個所が無いか確認するために、カバンの中の救急キット(常に持ち歩いてる)を取り出した。

 

「ゥァ……っ、だ、誰だッ!?離せェ!!」

「うぉ、落ち着け。今から応急処置するから」

 

 モサモサの毛玉さんはかなり興奮しているようだ。無理もない。なんせ(何でかは分からないが)空をぶっ飛んでたのだ。そりゃぁ混乱もする。

 とはいえこのまま放置も出来ない。このまま暴れられたら治療も何も無いからな。

 

「ほーらどうどう、落ち着いて、落ち着いて」

「うァ」

 

 後ろからするりと、相手の両眼を手で覆う。動物タイプの異形型個性はこうすることで落ち着きやすいらしい。本能だろうか?

 

「……」

 

 どうやら本当に落ち着いたようだ。よしよし、父さんが言っていた救急術は正しかったらしい。そのまま抗菌ティッシュで顔周りに付いてる血を拭う。

 うん、鼻以外からの出血は無さそうだ。

 

「っは!な、なにしてやがるゥ!?」

「な、なにって止血してんだよ。ほら、頭強く打ったんなら安静にしておかないとだめだぞ」

「あゥ」

 

 再度目を抑え、落ち着ける。救急車を呼ぼうと携帯を取り出す。

 

「な、なんなんだよテメェ……。なんで僕に優しくするんだァ!?何が目当てだァ!!」

「は?見返りなんて求めねえよ。助けたいから助けただけだ」

「嘘つけェ!何処にこんな見た目がボサボサのドブネズミモドキを何の見返りも求めずに助ける野郎が居るんだよォ!」

 

 自分で自分の事をドブネズミって言うのか………。こんなに捻くれるほどに気にしてるんだな、自分の見た目を。

 

「なあに、俺の知り合いには生物なのかよって見た目の奴が二人居るからな。見た目がどうとか全然拘らないんだ」

「だ、だからって理由も無くこんな奴を助けるのかァ!?有り得ねえだろうがァ!!」

 

 助けたいから助けた……じゃ、納得しないタイプの人間かぁ……。うーん、こういう時どうすればいいんだ?救急車が来るまで落ち着いて待ってくれないと困るんだが……。

 ……こう言う言葉をあんまり使いたくないが、まあ落ち着いてくれる事を祈るか……。

 

「じゃあよ、可愛い女の子に良いところを見せたくなるのが男の性だから。ってのは理由にならないか?」

「……は?……あァ?何言って……………はェ!?あ?え?お、女ァ!??誰がァ!?何がァ!?!?可愛いィ??!!!」

 

 ……掛ける言葉を間違えたかもしれん。なんか凄い混乱している。まあいきなりこんなキザったらしい言葉を言われたらこうなるのも無理ない……か?

 

「か、かっかかかか可愛いとか目が腐ってんじゃねえのテメェ!こんなネズミ女なんかに何言ってんだボケがァ!」

「さっきも言ったが見た目がどうとかは拘らないんだ。でも可愛いと思ってるぜ」

「はッ、アッ、ゥ……。っっ~~~!!」

 

 絶句、の一言に尽きるな……。うん、これよく考えたらアレだ。※ただしイケメンに限るってやつだ。イケメンに産んでくれてありがとう両親。

 長い毛で隠れているがきっと顔は茹蛸の様に赤くなっている事は想像に難くない。何故なら唯一見える地肌要素の丸い耳が真っ赤に染まっているからだ。

 

「(何だ何だよ何ですかァ!?いきなり僕の事をか、可愛いなんて言いやがってェ……。そんな事言う奴なんて今まで……)」

「ところでもう大丈夫なのか?顔はさっき確認したが、他に痛むところは無いか?」

「っ、近づくんじゃねェ!」

 

 腕を我武者羅に振り回して暴れる。おいおい頭打ったんなら暴れるな!

 彼女の両腕を掴み優しく組み伏せる。

 お、お……意外と力強いな……。人体の構造的に容易く外れないように拘束しなおす。かなり密着してしまうが、暴れられるよりましだ……。

 

「ァ、はゥ……。(近いッ!近すぎるゥ!?あっ、これ……強い、オスの匂い……やばィ……)」

「ほら、今救急車呼ぶからもう少しこのまま落ち着いてくれよ」

「っは!?っ!っ~!(待てよっ!こんな、密着した体勢で……組み伏せられて……こんな、濃い、強いオスの匂いさせて……こんな、こんなの……)」

 

 ……なんだ?急に静かになったぞ?多少力を入れてるとはいえ、痛くはならないように気を付けてるんだが……まさか、呼吸困難になった!?待て待て待て、少なくとも気道は確保されて……。

 あ、なんか鼻ひくひくさせてますね。

 

 嘘っ!?まさか俺臭い!?確かに今日体育あったけど!?俺が臭すぎて呼吸困難になっちゃったか!?ゴメンて!確かに獣人型は鼻が人より利くと聞くけど!?そこまでですか!?

 

「実質セックスじゃねえかァ!!!」

「ファ!?」

 

 俺の匂いがキツイのかと思ってちょっと離れようとしたら、その隙を狙ったのか簡単に拘束を解いて……ちょ!?

 

「あ、あのー。なんで俺は逆に組み伏せられてるのでせう?」

「く、ひ、ヒ。ん、すゥ……は、ァ♥オス、雄の匂ィ……イィ……あァ……これェ……欲しィ、欲しィ欲しィ」

「おい、ちょ、痛い……」

「あァ~……この匂いを嗅いでるとォ……僕もメスだったんだァって思いだせるよなァ……♥」

「ッ!!」

 

 彼女と目が合った。この目はヤバイ。この目は、化太郎が全力を出す時の目。

 

 捕食者の目。

 

「っら”ぁ!」

「ん”ォ!?」

 

 組み伏せられていた僅かなスキマで、膝蹴りを行う。男で言えば金的に入る所に入ったがはたして。

 一瞬、拘束が緩む。瞬時に地面と融合し、脱出した。

 少し離れた場所に出て、彼女を再度観察する。

 

「ふ、ふゥ~♥んふゥ~♥」

 

 うずくまっているが、なんか様子がおかしい。……なんかテラテラ光ってる?

 ふと、膝蹴りした方の膝を確認してみる。濡れ……っ!?

 その現象が意味する事を理解した瞬間、本能で()()から跳ぶように離れた。

 

「ふ、きィひひ……♥ハジメテって痛ィんだなァ……♥あァ……これ完全にセックスだよなァ♥イチモツを捻じ込まれたみたいでついイっちゃったァ♥」

 

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!まるで蛇に睨まれた蛙。ワニの口の中の調教師。ヤンデレ妹に愛され過ぎて夜も眠れないお兄ちゃん。

 まるでそんな状況。凄く俗っぽくいうと、マジ卍!

 

「くはァ♥見ろよォ、見てくれよォ。僕のココ、こんなにドロドロになっちまったァ♥」

 

 少年誌的にアウトォォォォォォォ!!!

 誰か助けてェェェェェ!!

 

 

 

「おーい融剛~!こっちになんか毛むくじゃらのネズミみたいなヴィランが飛……んで居るゥゥゥゥゥ!!!?」

「化太郎!?」

 

 助けてくれ化太郎!何か俺このままじゃ色々テイクアウトされる未来しか見えない!!

 

「融剛!アイツ、なんか経立会っていうヴィラン組織のトップらしい!しかもめちゃ頑丈だ!」

「なんて素晴らしい情報なんだろうか、5分前の俺に教えておいてほしかった事を除けば値千金の情報だぜ」

「えぇ……」

 

「くはァ♥ゆうごうゥ……ゆうごうクンかァ♥イイねイイねェ。イイ名前だねェ……♥」

 

「……え、なにあの放送コードに引っかかりそうなヴィラン。夢の国っていうか泡の国出身みてーなヴィジュアルしてんな」

「お前のその語彙力どこから来るんだマジで」

 

 必殺技の命名といいお前ほんと語彙力の宝石箱やぁ……。

 いかん、化太郎が来てから一気に気が緩んでしまってる。

 ヤツは漸く化太郎が視界に入ったのか、興奮が収まってきたみたいだ。明らかにヤバイオーラが下がっていく。

 

「……ハァ。折角の逢引なのに邪魔するなんてェ、マナーがなってねえなァ?」

「ア”ア”ン?彼女いない歴イコール年齢の融剛が逢引なんて出来る訳ねえだろうがバーカ!」

「お前後でシメる」

 

 お前人をモテないみたいな言い方しやがって……。

 

「はははァ、流石に2対1は不利かァ。ここは一時撤退してやるよォ!次会う時はテメェの最期だぜェ殺生石ィ。それと次会った時はネットネトの子作りしようなゆうごうクン♥」

「融剛お前いつのまにそんなプレイボーイになったの!?」

「馬鹿野郎ちげえよ!誤解だ!」

「五回!?五回もヤったの!!?この恥知らず!ヤリチン!」

「お前マジで黙ってろ!」

 

 

 

「……ハっ!?あいつが居ない!」

「アホなお前がアホな事言ってるうちに逃げたんだよアホ!」

「アホアホ言い過ぎなんじゃぁい!泣くぞ!泣きますよ!しまいには泣き喚きますよ!」

「止めろ!」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 下水道の奥、隠された通路の更に奥。某所に存在する地下帝国へと続く道がそこにあった。その道を隠す様に存在している部屋に、一匹と一人が座っていた。

 

「っくはァ……ゆうごうクゥン……♥」

「……主、えらく上機嫌ですね」

「ん?あァ、居たのかァ。くは、出先でなァ、滅茶苦茶良いオスを見つけたんだよォ」

「……はぁ、それで?」

「捕まえ損ねたが、まァいい。機会はこれから幾らでもあるからなァ……。次会う時にゃ、向こうから寄ってくる程に良いメスになってないとなァ♥」

「……はぁ。主、貴方は確か狐狸共の期待のホープとやらに会いに行ったのでは?」

「んァ?あァ……あの仮面野郎は殺す。あァそうだ。先詠のヤツが狐狸共ンとこに居たなァ」

「っ!?それは本当ですか!?」

「あァ?テメェ僕の言う事を疑ってるのかァ?」

「い、いえ。そういう訳では……。し、しかし何故連れてこなかったのですか?」

「……その狐狸共のホープに邪魔されたんだよォ。んな事はどうでも良い、それよりゆうごうクンの事を調べ上げろォ」

「どうでもよくないです!先詠はあの『導師』を見つけるための重要な手掛かりで……ッ!」

 

「僕がどうでもいいと言ったんだ。お前は()()僕に楯突くのか?」

 

「……ぁ、はっ!出過ぎたマネをお許しください!」

「……次はねェ。その腐った脳味噌に刻み付けろォ」

「御意にっ!」

「フン、殺生石化太郎は殺す。先詠は犯す。ゆうごうクンは婿にする。何時だってやる事は単純だァ」

「おっしゃる通りに御座います」

「くははァ。まずはこの『浄土』を支配する。その後に狐狸共をブッ殺して、『導師』探しはその後でいいだろォ?くはははァ!この国の王となるその時に、盛大な結婚式を挙げよォか!それまでに何匹子供産めるかなァ!あァ勿論ゆうごうクンが望むなら何匹でも産んであげるからなァ♥くはァ……♥アッチの方も強ければいィなァ♥」

 

 

 

 

「失礼、少々お話をよろしいですか?」

 

 

 

 悪意と悪意が交差する時、物語は漸く始まりを迎える。

 

 




この話に入って時間軸はようやく原作1巻目。そして序章が終わりを迎えました。

ハムスター会長の事男と思ったろ。残念、僕っ娘だ。ハハッ。

融剛君、実はたちの悪いタイプのジゴロかもしれない。


YUGO
YUGI

○個性

 融合

様々な物と自身を融合することが出来るぞ!
自分以外の物と物同士を融合するのは意外と苦手だ!
自分と他の人を融合することで戦闘力が倍算される!かもしれないぞ!


遊戯's顔-イケメンだが性格は悪そう。

遊戯's髪-つむじを中心に毛先まで同じ方向に渦巻いている。

遊戯'sカバン-常に救急キット、非常食、常備薬、小型ろ過装置が入ってる。

遊戯's全身-手先、足先に近ければ近い程融合にかかる時間が短い。
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