なんにでも変身出来るヒーロー志望ですが何か 怪!   作:輝く羊モドキ

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坊やだからさ。

そして先に謝っておく。ホークス、お許しください!


入学
オリ主ってクッソ優秀なのに推薦貰えないのはなんでですか!?


 

 駆ける。

 私は学校の中を駆ける。

 途中で教師が立ちはだかるがそんなものはお構いなしだ。ただ、これ以上ない理不尽に対して私は憤りをぶつける先を探しているだけだ。

 きっかけはとある親友の一言だった。その一言は心がバチカン市国並に広い私の心を激昂させるに十分な一言だった。

 親友の制止を物理的に振り切り、廊下にたむろする有象無象をすり抜け、立ちふさがる教師は無理矢理に押し通った。そうして、たどり着いたのは私にとって第二の教室と言っても過言ではない部屋だった。

 そこに、目的の人物が居る。私の勘がそう告げていた。ならば、言葉は要らない。最後に立ちふさがる扉をブチ破った!

 

 

「先生!私が雄英の推薦を受けられないってどういう事ですかッ!」

「うん。てめぇのやって来た事を振り返れバカ一号」

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 私にとって第二の教室であるこの場所は、別名指導室とも呼ばれる場所だ。健全な中学生なら誰しもがお世話になった場所である。

 

「健全な中学生は此処に来ることは一度もねえよ殺生石君」

「じゃあ健全じゃねえんだろ!」

「暴論」

 

 私の知識には、学校の外れにある誰も来ない鍵のかかった指導室はKENZENな中学生なら誰しもがお世話(意味深)になったはずだ。そこが母校かどうか、現実か二次元かはともかく。

 

「言い方」

 

 そんな事はどうでも良い、重要な事じゃない。今ここで問題にするべきは学校一の天才である私が、雄英の推薦枠が二枠もある贅沢な学校において何故推薦から外されるという暴挙、愚行についてだろう。

 

「お前を推薦する方が暴挙だダラズ。逆に、なにを根拠に推薦貰えると思ってんだ」

「え、全国模試満点一位、成績優秀スポーツ万能学校内外問わず誰もがご存じスーパー中学生ばけたろにゃんとは私のことゾ?」

 

 キメ顔ダブルピース。

 

「それらすら霞む程内申点地の底這ってるって自覚あんのかお前」

「なんだぁ?ヨツンヴァインになれってかぁ?」

「そういうとこだぞマジ自覚しろ。雄英一般通ってもすぐ除籍されんぞお前」

這い這い(はいはい)

「お前返事じゃねえだろそれ」

 

 流石ダクソ先生。指導室の中では大変いきいきとしてらっしゃる。これには指導室マイスターの私も鼻高々である。

 

「誰の所為で指導室のヌシとまで言われるようになったと思ってんだ……」

「……ダクソ先生が嫌がる私を何度も何度も指導室に連れ込む所為?」

「言い方。俺だって好きでこんなとこに来ねえわ」

「つ、つまりそれは教室の中で衆人環視の下でシたいって事ですか……?」

「言い方ぁ!説教!説教をな!」

「まぁーまぁー、そこまでにしなさい。この超美少女ばけたろにゃんの顔を立てると思って」

「お前が生徒じゃなければ逮捕覚悟でボコボコにしてるぞ」

 

 深い、深ーいため息を吐くダクソ先生。この三年間で完全に最適化されてしまった動作で指導室に置いてあるコーヒーメーカーを起動させる。

 

「……俺はな、なんというか教師に成りたての頃はもっとキラキラとした輝かしいモンだと思ってたよ……」

申隙N(申し訳ないが隙あらば自分語りはNG)

「お前もっと年上を敬え……」

 

 私の嫌いな事に年寄りの身にならない自分語りが第7位くらいにランクインしてるのだ。年寄りならもっと若人導いて、どうぞ。

 

「お前さぁ……これで指導室に来るの何回目だと思ってんだ?」

「えぇ~?……年に一回だと仮定して3回目ですかね?」

「……」

「……」

「年に一回って仮定が正しかったら確かに3回目だ。だが仮定が間違えていたら結論も間違えているのは理解できるな?」

「はぁ」

「そしてここのノートにお前がここで指導を受けた回数が乗っている。改めて聞くが……何回だと思う?」

「HAHAHA!そりゃあ私が中学校に入学して何回授業を受けたかと聞いてるのと同じ事だぜ!」

「ちったぁ常識で考えてくれよ……。何処の世界に校庭に行く回数より多く指導室に来る奴が居るんだ」

「鏡見ろよ」

「お前の事じゃバカモン!」

 

「……で、だ。ここからはマジな話だ。正直言って、今のお前に進学をオススメすることは無いぞ。お前ん家がもっと普通な感じの家庭だったらまだ何とかしようもあるんだが……三者面談すら無理ってなんだよ」

「それについては本当に申し訳ないと思っている。こればっかりは家の事情としか」

「……はぁ~ぁ。マジでこれならヤクザんとこのお子さん相手の方がどうにかしようがあるっつーの。まぁ、悪い事じゃあねえんだけどなぁ。ほれ、コーヒー」

「いただきまーす」

 

 学校の七不思議の一つ。指導室に隠された白い粉の正体は私専用と言っても過言ではないコーヒー用シュガーである。前、手が滑って床にブチまけてしまったのだが、それを完全に除去しきれなかったのか次指導室に来た生徒に白い粉が見つかってしまった。結構お高いシュガーなのでめっちゃキメ細かい砂糖を見たその生徒が、例のトぶ薬と勘違いして大騒動になってしまったのだ。『僕は悪くない。』こればっかりは僕は悪くない。

 まあ、どうでもいい事だ。

 

「……お前宛てにサイドキック受け入れ申し込みが学校まで来てる事は知ってるな?」

「モロチン」

「モチロンな。……先生調べたぞ。特例も特例だが、仮免も取ってないうちにヒーローの御膝下でサイドキック活動する事も無いことは無いらしい。まあ仮免が無いから当然ヒーロー活動なんてまともな事は出来ないけどな。それでも仮免試験に向けて実践的な勉強が出来るだろう。大抵のヒーロー科が二年生の時に仮免試験を受けさせるようだが、正直殺生石なら今から仮免試験受けても合格するだろうとは思ってるよ。ま、勿論遊戯と安藤の奴もだがな」

「それほどでもない。ジュースを奢ってやろう」

「謙虚。それほどまでにお前達は他より何十歩も先を行ってる。別格と言ってもいいくらいだ。これは俺の個人的な考えなんだが……お前も、遊戯も安藤も、さっさと社会に出て活躍するべきだと思ってる」

「……」

「まあ強制はしない、お前等の人生だからな。遊戯にゃもう話したが、それでも雄英に行くそうだ。現場でしか学べないこともある様に、学校だから学べることもあるってよ。立派なモンだよ本当に。あれだけ優秀だっつーのにストイックだよな。ああいうのがオールマイトの様なトップヒーローに成れるんだろう。だからこそ、先に言っておく。殺生石、お前はヒーローが天職だ。むしろそれ以外まともな就職先は無いと断言する。そんなお前が中卒で社会に出るのはちょっと……とか、キャリアを気にしてるんだったら無駄でしかないぞ。ヒーローは実力社会だ。学歴も無いよりあった方が良いが、お前の場合そんなモン唯のアクセサリー以下だ。実力有るんだから、ヒーロー活動だけで大活躍し続けられるだろ。改めて聞くが……それでも、雄英に行きたいか?」

「……私は」

 

「私は、それでも雄英に行きたい!勿論早くプロヒーローになれるに越したことは無いけど、私にはもっと学ぶべきことがあるってそう思うから!」

「……そうか。若いのによくそう腰を落ち着けられるな。わかったよ、ならとっとと進学してプロヒーローになってこい。雄英がお前のヒーローアカデミアだ」

「うん!だから雄英の推薦頂戴!」

「やらんわバカ!」

 

 

「それに『ハヤすぎる男』って言われるの不名誉じゃん!」

「お前ホークスに謝れ!全力で謝れ!」

 

 ホークスはそうろゲフンゲフン

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 そんな訳で私は一人、寂しく雄英高校ヒーロー科の門戸を叩き壊しに来たのだ。我が友人も、我が親友も、推薦で先に合格を貰いやがった。ちくせうちくせう。

 雄英のヒーロー科は毎年倍率300を超えるらしい。まあ、記念受験も含めてるからね仕方ないね……?

 近年のヴィラン増加の煽りを受けてか、今年から定員が増えた。とある芸能人がヴィランのお陰でヒーローが増えるとかブログに書きこんで大炎上した。何だお前エンデヴァーかよ。

 まあ、それでも一般入試の定員は38人。推薦入試入れても44人しか合格しないからさして変わりはないかなぁ。うーんまさしく受験戦争。隣にいる奴は戦友じゃなく倒すべき敵。勝ち抜いた者だけが戦友となれるのだ。サツバツ!

 そんな狭き門をなんとしてでも潜り抜けねばならぬ。

 

 

 うん、まあ私の目の前にある雄英高校入口のゲートは明らかに20人くらいがラジオ体操しながらでも通行できるほどに広いんだけどね!雄英の門は広くて狭いのだ!

 

 寂しい……。

 

 あーちくしょーめー……何であいつら先に合格するんじゃぁ……。しゃみしぃ……。

 

 

「おっおっおぉおおおお」

 

 

 ニャハァ、何だいきなりアラーム音か!?叫び声か!貴様何奴!?モジャ髪貴様か!

 

 ん、モジャ髪?はてさて、な~んかあの男の子どっかで見たような気もしないでもないが。うーむモヤモヤっとボール。

 こういう時は顔を見るに限る。音もなくスススと近づいて顔を覗き込む。

 

「グッドモーニングチューユー!」

「うわああああ変なお面着けた人!!!」

 

 至極真っ当な意見であり私からは訂正の言葉は無いが傷つくぜ……。

 無礼であるとは分かってはいるがジロジロと顔を凝視する。目、無いけど!

 

「え、えっと。僕に何の用……ですか……?」

「まあ待て。今君を観察中だから」

「は、はぁ……」

「……『ひょっとして凄い変な人に目を付けられたんじゃ』と思って無いだろうね?」

「へぁ!?な、なんで!?」

「顔にべっとり書いてあるぜ。あ、思い出した。キミ出久君やな!」

「え、どうして僕の名前を?」

「……覚えてない?」

「うん、ご、ゴメン」

「そっかー。私の事を覚えてないなんて悲しいなぁ……」

「ご、ゴメンね!」

「いや、良いんだ。時の流れはかくも残酷であるということを再認識しただけさ……」

「本当にゴメン……。そんな特徴的なお面を付けた子だったら絶対忘れないと思うんだけど……」

「いいんだよ出久君、僕は本当に気にしてないんだ。だってキミと出会った時この仮面着けてないし」

「僕の罪悪感を返して!」

「HAHAHA!しょうがないしょうがない!なんていったって私は世界一同窓会で『お前変わったなー』って言われるからね!同窓会参加したことないけど!」

「えっ、えっ?」

「しょうがないにゃぁ……。あ、そうだ。これで思い出してくれるかな」

 

「『いずく!オールマイトごっこしようぜ!私町におりてきたクマな!』

「……えっ、もしかして……化太郎くん……?」

 

 ああ懐かしき過去。オールマイトごっこなんて何時振りだったか……。そう、あの時は……なんと言うか、毎日がこう……輝いてたよね。(ボキャ貧)

 

 

 

 

『みてみてバケタロウくん!オールマイトへんしんセット!おかあさんにかってもらったんだ!』

『……フフン。そんな物無くても私はオールマイトに成りきれるけどな!だけどせっかくかってもらったんなら使わなきゃもったいないよねぇ。よぉっし!今日もオールマイトごっこするぞ!私町に降りてきたクマな!』

『……まえからおもってたけどなんでクマなの…?』

 

 

 

 

 昔の友達に偶然会えるとかテンション爆上がりィ!

 

「と言う訳で出久君!オールマイトごっこしようぜ!」

「今から試験だよ!?」

「あ、そうだったわ」

「素で!?」

 

 テンションマシマシなまま試験会場へ向かう。姿は変わっても、昔とあまり変わっていない出久君まじぷりちー。

 

 姿……姿。うん、お前それでもヒーロー科志望かよ!?もっともっと筋肉付けてホラ!そんな筋肉とも呼べないキンニキじゃガチ個性じゃない限り活躍も何もねえぞ!

 

 あ、あれ?出久君って無個性だったはずでは……?

 このままでは気になって気になって夜しか眠れないので聞きに行きたいが、無情にも筆記試験が始まってしまう。私の明日はどっちだ!?

 

「(なんか隣のヤツうるせえな)」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!』

「YOKOSOーー!!」

((((((え、何こいつうるさっ!)))))

 

 周りのヘイトが高まるのを感じる。何やお前等黙りこくって緊張しとるんか!もっとほらちゃんとリア充するんだよ!

 

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 色々あって模擬市街地演習!超広いっ!凄いな雄英、流石トップと呼ばれるだけあるわこれ。

 ま~ぁ~?ウチの敷地の方が断然凄いんですけどぉ~??(対抗心)

 

「あ!さっきのうるさい人!可愛いお面だねー!」

 

 誰だおま……なんだお前!?お前肌……お前、肌お前肌!目!お前目お前!

 

「ピンクは<<ピー>>ッ!!」

「えっ、何て?」

「何でもないわ!それよりこの仮面の可愛さが分かるなんて貴方……デキるわねッ!私、殺生石化太郎よ!よろしく可愛いツノの人!」

「私芦戸三奈!試験がんばろーねー!ねえねえ殺生石!なんか男みたいな名前だね!」

「それはこんなナリだけど女じゃないからよッ!男でもないけどね!」

「……ん?どういう事?」

『ハイスタートー!』

「じゃそういう事でお先に!お互い合格すると良いわね!」

「えっ?えっ!?ちょっと!?」

 

 芦戸ちゃんにゃ悪いがこれは試験。時に隣のヤツを蹴り落としてでも勝利を掴むんだよぉ!

 ほんとに蹴落とすとアンチヒーロー行為で失格かもだが。

 

 閑話休題(どーでもいいねー!)

 

 スタート地点に固まってる組から離脱するべく、私は跳ぶ。速く、疾く!変身するは最速の天狗!

 

「Ah-Yah-Yah!!」

 

 私は風っ!誰よりも先んじて、誰よりも仮想敵をブッ倒し!誰よりも目立つっ!

 音すら置き去りにして市街地の中心部に陣取った。さあ、此処が私の独擅場だ。楽しい楽しい孤独なお遊戯会にご招待!

 さあ、誰よりも早く、速く。開戦の号砲をあげよう。

 

「目標発見!ブッコロス!」

 

 なんかいかにも三下って感じのが来た。丁度いい、再変身。その後、指先から小さな小さなマッチ棒程度の火種を出し、三下ロボに当てる。

 その、直後。

 

 轟炎と共に三下ロボは灼け落ちた。

 

「今のはメラゾーマではない、メラだ」

 

 なーんつって。そもそも魔法ですら無い。でもかっこつけたいやん、男の子(推定)だもん。

 さあお立会い。今の轟炎に釣られてワラワラと三下ロボが現れる。お前等さっきの超高速フラグ回収見てねえのかよ。まあ下手に逃げられるよりましですわな。さぁて、なんかいっぱい来ちゃったし……アレやるか。

 

「メ」 人差し指に火がともる。

「ラ」 中指に火がともる。

「ゾ」 薬指に火がともる。

「ー」 小指に火がともる。

「マ」 親指に火がともる。

 

 例のアレやんぞお前等ァ!

 

五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)(メラ)!」

 

 五つの火の弾丸がそれぞれ別のロボに直撃。そして焼失した。うーんこの。

 

「この非効率感、大好き!」

 

 萌えるッ!

 

 今のは燃えると萌えるをかけた高尚な、あ、説明要らない?はい。

 と言う訳で、燃やすのはなんか効率的ではない気がしてきた。そもそも、こんな入試用のロボなんて耐久性カスだろうしもっと手早くバラバラにしましょ。

 

 と い う わ け で 。

 

「ハデ死刑!バラバラフェスティバル!!」

 

 爆散したかの勢いで自分の身体の各パーツが飛ぶ。当然そのままならポンコツとは言え機械の身体を壊すに足りない。

 なら強化すればいいだろ!

 

「バラバラプロセッサー!」

 

 各パーツがまた刃の様に鋭く、硬く変化する。こ……こんなん強キャラやん……。(戦慄)

 スパパーン!と気味良くロボの関節を断ち切っていき、そして誰も居なくなった(大げさ)

 んっん~!エェクセレンツ!素晴らしい!実に悪魔的な光景ではないか!

 

 わしヒーロー志望やぞ!?

 

 あんまりにもあんまりな惨状を見て反省しつつ、残りの仮想敵をおびき寄せるために爆音鳴り響かせながら移動を開始した。

 

「YEAHHHHHHH!!どぉしたどぉしたヴィラン共ォォ!!ビビッて腰抜かしてるヒマあったら俺の声を聞いてビビッて感じなぁぁ!!」

 

 爆音……うん、爆音。多分騒音じゃない。きっと騒音じゃない。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「凄いですねー彼、彼女?どういうアレかは分からなかったですけど、一瞬で市街地中心にワープしたかのような機動力、仮想敵を即座に燃やし尽くした文字通りの火力、一対多に瞬時に切り替えられる判断力に対応力、そして仮想敵のAIを読み取る洞察力。どれをとってもプロ並み、いや、プロ以上ですね」

「それだけじゃなく、最初の交戦でロボの耐久度の低さを完全に見破った。必要最小限の力で最大限の効果を発揮してやがる。まだ中学生だろ?どういう鍛え方してんだありゃ?」

「校長、もしかしなくてもあの子が例の天才ヒーローの卵では?」

「なんだそりゃ?」

「知らないの?中学生にしてヴィランをバンバン捕まえてるっていう期待の新星よ?まあ仮免持ってないから個性の不正使用でもあるんだけど……」

「そのどれもが状況的に正当防衛なんでしょう?」

「それならあの場慣れした戦い方も……いや、それだけじゃ説明つかない強さだぞ?」

「アレは明らかに日常的に戦闘訓練をしてる動き方だね。しかも生半可なモノじゃない、正に命懸けとでも言えるような厳しいモノだろうね」

「他の子と比べて遥かに格上じゃないか……」

「でも、雄英に来たのならどんな子でも生徒さ!彼がこれからも正しい道を歩めるように教えるのも僕たちの仕事さ!それに彼だけじゃなく他の子も見ないとね!さあ、圧倒的な脅威を前にどう立ち回るかな?」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 割とヤバイ状況に追い込まれた。そう……飽きた!

 そもそもたった三種類しか居ない仮想敵な上、どれも私にとって等しくザコである。弱点を突いて、お終い。つまらなすぎワロタ。まだ10分経ってないってのに何この苦行。暇やヒマ、ヒマヒマ!

 余りにも暇すぎて綺麗に解体した仮想敵を再度組み立てる暴挙に走る。自分でも解かってるわ、暴挙だって。

 でも大丈夫!なんてったって片手間に涌き出る仮想敵を倒してってるから!

 他の受験生からすればそっちに本気出せって言いたいんだろう。だがなぁ、もう100ポイントは稼いでんねんで?流石にええやろ……。

 てな感じで、はい完成。私の力作『キメラテック・オーバー・ヴィラン』。攻守が素材の数×800ポイント有りそう。

 さあ動け、動けってんだよポンコツが!

 『キメラテック・オーバー・ヴィラン』が起動し、さあその雄姿を見せる時!と思った瞬間。

 

 地面が裂け、その穴の中に『キメラテック・オーバー・ヴィラン』が落ちていった。

 

 『キメラテック・オーバー・ヴィラン』が落ちていく、その瞬間はまるでスローモーションのよう。落ちる挙動に合わせるようにゆっくりと顔に当たる部位を此方に向け、真顔で地面に飲まれていくその様はまるで一つの喜劇のよう。

 そして、入れ替わる様に地面から出てきたのはこれまた巨大なロボだった。デカァァァァァいッ説明必要!!

 な、何だ!?何が起こったというのだ!?私の……私の『キメラテック・オーバー・ヴィラン』は!?

 巨大なロボが腕を振り回し辺りの建造物を破壊するが、私は一切気にならなかった。私の、私の『キメラテック・オーバー・ヴィラン』は何処に……。

 

 見つけた。

 ああ、見つけてしまった。

 巨大ロボの動作に巻き込まれたのか、ただでさえまともな脳味噌をしていれば造り出そうともしない様な造形であったというのに(自覚あり)、もはやスクラップ同然に……。

 

「あ、あぁ……。あぁぁ……」

 

 『スクラップ・ヴィラン』に変わってしまった我が子(極端)に駆け寄る。もうその目は光を映し出すことは無い。だが、最後の、最期の力を振り絞って首をもたげ、此方に視線を寄越す。もはや喋る事は叶わず、せめて最後の思いを伝えるかのように。

 

 ボクを作ってくれてありがとう……サヨナラ……。

 

 ガシャンと音を立てて、ソレはもう二度と動かなくなってしまった。

(全力で感情をこめて)

「ンNO......ンNOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

 

 

 

 

 

 はい、茶番終了。流石にあのデカブツの登場は予想外だったけども。

 

「ってか何だあれ色々ぶっ壊しすぎィ!!?」

 

 見境なく……って訳ではなさそうだが、とにかく手に届く場所をメタメタに壊していた。ヴィランでもそうそう見ねえヤベー奴じゃん。

 あんな巨大で、かつ相応の重量があるモノが受験生を攻撃したら大抵の場合即死するので有り得ないとは思うが、一応早めに鎮圧する事にした。巨体は巨体だが、私のように物理法則ガン無視してる訳では無く相応に遅いのでどうとでもなるだろう。

 脚から崩すかと駆け寄ってみれば、何処かで見たことあるピンク肌の発育暴力勢がロボから逃げる訳でも無く、かといってロボに立ち向かうでもなく。ロボの進行方向に対して左側に駆けている。なーんか気になったので俊足でピンク肌に寄る。

 ピンク肌が瓦礫の前にしゃがみ込むと同タイミングくらいで到着。

 

「なーにしてんの?」

「ひょぉわ!?えっ!?誰!?」

「あ、どうも。可愛い仮面の殺生石です。どうぞ良しなに」

「えっ!?あ、でもそのお面……あっ、ともかく!手ぇ貸して!」

「どったの?てんてー」

「ココに透明な子が倒れてるの!助けないと!」

「嘘!?マジですか!」

 

 すると、この場には二人しかいないのに、確かに三人目の声が聞こえた。

 

「だ、大丈、夫……!ちょっと足挟んだだけだから……!」

「それ絶対だいじょばないヤツの台詞だべ?」

「あは、は。言えてる……」

「ちょ!?言ってる場合!?早く助けないとあの巨大ロボに潰されちゃう!」

「私のことはいいから……行って……!」

「な、そんな事出来る訳無いでしょ!?すぐに助けるから!殺生石!そっちの瓦礫持って!」

「いやぁ、無理。この透明な子を救出して、私達二人も一緒に逃げる?そんな時間ないでしょ」

 

 まあ、これが実際の災害現場ならって話だけどね。流石に試験だってのに人死にが出たら雄英閉校待ったなしだし、何かしらの安全策が練られてない筈が無い。そう、例えばあの巨大ロボは人の近くに寄ってくるけど、ある一定の距離以上は近づいて来ず、その場で威嚇行動を取るとかな。

 無論そんな説明をしてる暇は無いわけで。

 

「っ!じゃあいいよ!私一人だけでもこの子を助ける!」

「な、駄目!アナタだけでも逃げてよ!」

「ココにっ!助けられる命があるのに逃げられる訳無いでしょうがぁ!!ふんぎぎぎぎぃ~!!」

 

 瓦礫が自分の腕に食い込むことすら厭わず、自身の安全すら投げ打って目の前の名前も知らない誰かを助けようとする。きっとそれは正しくない事だ。何故なら、出来もしない事に時間をかけるなど愚の骨頂。努力次第とか、根性論だとか、そういう話じゃない。自分では絶対に助けられないのに、それでも有り得ない可能性に掛けて奮起する。思考停止といえよう。

 

 だが、それがヒーロー。英雄の行為其の物なのだ。

 

「超カッコいいじゃん」

「なんだって!?いいからあんたはドコにでも行きなさいよバカっ!」

「酷いなぁ芦戸三奈ちゃん。おバカちゃんな芦戸三奈ちゃんに、その透明な子と、貴方と、ついでに私自身を救うたった一つの賢い方法を教えてあげるってのに」

「本当にそんな方法があるならやってみてよ!」

「イイヨー!」

 

 さぁ、お立会い。

 くるりと向きなおすは、あのデカブツロボ。デカイは脅威だが、アレのAI的にコチラを積極的に攻撃しようとしてないのか周りのビルを攻撃している。まあ、当然その余波がこっちに来てる訳だけど。

 

「たった一つの最も賢い方法。それは、あのデカブツをぶっ飛ばす。以上!」

「は、ハアア!?出来る訳無いでしょ!?」

「出来るさ、芦戸三奈ちゃん。無理、不可能、ありえない。そんな言葉を言われても、ヒーローだけは弱音を吐いちゃいけない。あらゆる困難を、あらゆる可能性の向こう側を、笑って乗り越えろ」

 

 変身するは、神。空に浮かぶ島を支配し、月を支配し、天を支配した雷の権化。大自然の一部を人の形に押し固めた、圧倒的な”天災”にして統一された()()

 

「ヤハハハハ!!神を前にして頭が高いぞ鉄クズ!」

 

 ジャッジメント。

 

神の裁き(エル・トール)!!」

 

 天から極光が地面に向けて撃ち出される。視界を、景色を、全てを眩い光で染め尽くし、後には何も残らない。

 

「我が、神也(かみなり)

 

 芦戸三奈ちゃんと名も知らない透明っ子の視界が戻ってきた辺りで私はノーマルスタンダート(いつもの)状態に戻る。めっちゃお腹ペコちゃんなんですけど。

 

「え、えっ!?何が起きたの!?」

「んっんー。まあ私自身よく人に『無理』とか言っちゃうんだけどね。現にさっきも言っちゃったし。さて、脅威もなくなった事だしその子救けよ?」

「……えっ!?あ、そうだね!」

 

『 終 了 ~ !!! 』

 

「おー、丁度終わったか。ま、いいか。ちょい待っちに、このスキマにこうして……ほいほい。芦戸三奈ちゃん。瓦礫持ちあげるからこの子引っ張り出してー」

「う、うん……。もうちょっと待ってね、すぐ助けるから!」

「ありがと……」

「どういたしまして。さあってと……いよいっしょっ、ハイ引っ張って!」

「わかった!」

 

 ずざささっ、と無事(?)透明な子を救出出来た。うーん全身透明で怪我してるかどうかまるで判別つかにゃい。

 

「えーと、大丈夫?どっか怪我とか、痛むとことか無い?」

「う、うん。ちょっと足ひねっちゃったくらいかな?他に痛い所は無いよ」

「そっか、良かったぁ」

 

 あまり大きな怪我が無いのは良い事だ。試験も終了したし、お腹もすいたし。私は省エネモードに切り替え地面にごろ寝する事に決めた。

 

「ちょ、ちょっと?大丈夫!?」

「大丈夫やで芦戸三奈ちゃん」

「そ、そっか。……あの……さ」

「ん~?」

 

「ゴメン!さっきあんなこと言って……本当に、ゴメンなさい」

「イイヨー!」

「軽いっ!?いや、もっとこう……無いの!?」

「ねえよ(真顔)」

 

 ごろんと寝返りをうち、芦戸三奈ちゃんの方向に顔を向ける。寝ながらでごめんね?

 

「むしろ私としては芦戸三奈ちゃんにお礼を言いたい位だよ。ありがとうね」

「ぅえ!?なんで!?」

「だってきっと、芦戸三奈ちゃんが透明な子に駆け寄ってなかったら私、きっと透明な子に一切気が付かなかった。気が付かないままあのデカブツ攻撃して、気が付かないまま攻撃に巻き込んでたかもしれない」

「いや、だってそれは、アレは、咄嗟に動いたって言うか……そう言うアレだし……」

「どういうアレだかわかんないけど……。とにかく、もしかしたらあのデカブツ倒しても、透明な子に大けがを負わせてたかもしれない。もしかしたら、一切気が付かないうちに死なせちゃってたかもしれない」

「大げさだよ!?だって、そんな私大したことしてないよ!?」

「大げさじゃない、大げさじゃないんだよ。私の個性の事は、私がよく知ってる。この個性で、簡単に誰かを傷つける事も、簡単に殺すことも出来るんだって知ってる。だから」

 

 立ち上がり、芦戸三奈ちゃんの手を掴み、仮面越しに芦戸三奈ちゃんの黒い目を見つめる。

 その目は、まるで闇夜に浮かぶ月の様に輝いていた。

 

「私に、人殺しさせないでくれてありがとう」

 

「ぅ、あ……だって、私なにも……」

「ちぇい」

「痛いっ!?いきなり何すんの!」

 

 なんか急に痛がってきょろきょろとあちこちに目を配る芦戸三奈ちゃん。どした。

 

「ええっと、芦戸三奈ちゃん?だっけ?こういう時、お礼を言われた時は?」

「え、う……。……ん。どういたしまして」

 

 ヤバイ。このテレ顔超かわいい。これが女子力か……。

 私のはどう頑張っても女死力だからな……。これが天然モノと模造品の違いですわよ。

 

「んっん”!改めて、助けてくれてありがとう二人とも!私、葉隠透!」

「殺生石化太郎でごぜぇます」

「……芦戸三奈!三奈って呼んでね!」

「透でいいよ三奈ちゃん!」

「殺生石様とお呼び!」

「……フフッ、なにそれー!」

 

 

 なんとなく、なんとなくだが……この二人と雄英でまた会える。そういう気がした。これは巫女じゃなく、私の勘だけどね。

 

 





芦戸三奈ちゃんはカワイイってのが書きたかった。
無論私が書かずとも読者の皆様方には遥か昔から知られている事実ではあるのですがね。
ほんすき

ハヤすぎる男は誰もが考えたハズ。考えたであろう?そうであろう?
早漏(ソロ)モンってネタ誰が初出しだか忘れたけど大好き。
一人(ソロ)モンも好き。

ワイトもそう思います



一撃であんな巨大ロボをぶち壊すキャラ考えるのにクッソ時間掛かったゾ……。

神の裁き(エル・トール)
誰もが知ってる漫画の敵キャラの技。初見の絶望感はんぱナス。

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