響き渡るのは三色の恋音   作:しゅ〜

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おひさです。



#3 丸山彩

今日の店は一段と混んでいた。

というのも・・・

 

「いらっしゃいませ~!」

 

今日のレジはアイドルバンド「Pastel*Palettes」のボーカルを務めている丸山彩(まるやま あや)が担当しているからだ。

ファンが発見し、SNSでその情報が拡散され結果的に店にはファンが押し寄せる。

そう、それは暇な時間が来ないということ。

いつもならば昼のピークが終わるとある程度暇なんだが今日に至ってはその暇が無い。

そのため厨房で

店としては嬉しいものの一個人としては休みたいところ。

 

「・・・彩。どうしてくれんだ・・・」

「へっ!?」

「とりあえず休憩入っていいよ。2時間くらい。」

「へ!?2時間!?」

「冗談。休憩入って良いのは本当だけど」

「は、は~い」

 

そういって響は半強制的に彩を休憩に入れる。

そうすれば少しはこの騒動も収まるだろう。

 

「佐藤さ~ん、彩の代わりレジ入って貰っていい?」

「了解で~す」

 

一応うちはレジ・接客は女性スタッフに任せることになっているため男はレジに立てない。

代わりにパートの女性に入って貰う。

それでも店内には彩のファンが残ったままだ。

 

「どうすんだこれ…。」

 

 

 

 

■ ■ ■

 

 

「休憩終わりました~!」

「じゃあ俺休憩入るわ…」

「は~い!…って、目が死んでるけど…どうしたんですか?」

「誰のせいだろうなぁ?彩~?」

「わかりませんね~あはは…」

 

結局、大量のファンがいなくなったのは彩が休憩に入ってから小一時間かかったのたが、その時のファンといったらやれ「彩ちゃん出せ」だの「戻ってくるまで居る」だのと口にしていた。

 

「にしても彩も大変だな、あんなんじゃコンビニすらまともに行けないだろ」

「で、出かける時は変装くらいしますよ!…少しは」

「少しってなんだよ、まぁいいや。なんかあったら伝えに来いよ」

「は〜い!」

 

彩はルンルンな気分でレジに向かう。その姿を確認してから響もスタッフルームに向かう。

そしてスタッフルームに入ると椅子に座ってテーブルに顔を伏せた。そして他のスタッフに

 

「休憩時間終わる頃に起こしてください」

 

と言い残して目を閉じた。

 

 

〜15分後〜

 

「響くーん、持ち帰り用の袋無くなりそうだから発注を…って、寝てる?」

 

彩がスタッフルームに入ると寝ている響の姿があった。

彩は休憩の間、響が彩の変わりに色々仕事をこなしていたのを知っていた。だからこそ多少の罪悪感もある。

 

「起こすのは悪いかなぁ…それにしても、響くんの寝顔意外と可愛いなぁ…あっ、そうだ!」

 

彩は思いついたかのように携帯を取り出して寝ている響が背景画像になるよう自撮りをした。

その写真を慣れた手つきで携帯のホーム画面に設定する。

 

「しばらくこれでいこうっと♪」

 

彩は満足げな顔をしてスタッフルームを後にした。

 

彩が出て行った数分後、響も目を覚ました。

眠い眼を無理矢理開けて表の仕事へ向かう。

扉を開けるとすぐ近くに彩がいた。

 

「あ、響君!おはよう!随分気持ちよさそうに眠ってたね」

「おはよ…どっかの誰かさんのファンが押し寄せたせいだろうな、多分」

「それは本当ごめん…。」

「冗談だ。結果的に店が儲かったんだ、店長たちは喜んでるだろ」

 

多少は気にしているだろう彩に気を遣わせないように響は言葉を濁す。

そして残りの仕事時間を過ごした。

 

 

■ ■ ■

 

 

時刻は21時。

彩は勤務時間を終え店の外で響を待っていた。

というのも響が「女子高生を夜中一人なんて危ない」というお節介でシフトが重なる日は勿論、響が休みの時もたまに家まで送って貰ったりしているからだった。

それは彩だけでなく同じ高校生アルバイトのひまりや花音も一緒だった。

 

そして彩にとってその時間はとても楽しく、有意義な時間だった。

 

「おう、お待たせ。そんじゃー行こうか」

「うん!」

 

そして二人は帰路につく。

いつも帰り道は雑談していて沈黙が来ない。

 

「今日はどっか寄ってくか?」

「んー、今日は大丈夫かな。明日もバンド練習あるし!」

「そりゃあ早く帰らんといかんな。にしてもさ、アイドル業優先なんだから無理にバイトしなくていいんじゃないか?」

「そうなんだけどねー、まだ業界になれてないっていうか…。まずは自分を変えたいから思い切って!って」

 

彩の言うことは本当だが実は彩がバイトをやめないもうひとつの理由がある。

それは無論、響のことだ。

バイトをやめても響とは学校が同じで会うことはできるが、所詮学校。会う時間は決められている。

だからこそアルバイトである。学校外でも会うことができるのは花音やひまりとは別の時間を作れるという優越感があるからだ。

結果的に花音も自分と同じ立ち位置にいることになるわけだが彩は不思議と「負けている」と思う事なんて無かった。

 

「うぅ〜…にしても今日はホントにごめんね…あんなことになるとは思ってなくて…」

「だからそれは大丈夫だって。今日は普通の休日より何倍も儲かってるからね。それに彩、笑顔で楽しそうだったじゃんか。そういう意味では変われてると思うけどな」

「そう言われると…えへへ、ありがとう〜!」

 

彩は目尻にほんの少し涙を溜めてそう言った。

 

「にしても仕事中に私ばっかり見てるのはどうかと思いますよ?いくらアイドルだからって〜」

「褒めたらすぐこれだ…」

 

イタズラっぽく笑う彩に肩を落とす響。

そんなやり取りをしてると彩の家の近くに着いた。

 

「よし、そんじゃ。また来週な」

「うんっ!土日はしっかり休んでねっ!」

「お、おう…。まぁいいや、おやすみ」

「は〜い!」

 

別れると響は自宅に向かって再び歩き出す。

その姿を見えなくなるまで見届けた彩は家に入りながら

 

(やっぱり仕事中に少しでも私の事見てくれてたんだ…)

 

なんて事を考えていた。

そのまま家に入ると母が出迎えてくれた。

 

「ただいま〜 」

「おかえり、彩。…あら?顔真っ赤だけどどうしたの?」

「へっ!?な、何でもないよ〜!」

 

そんなやり取りをするが彩の心の中には響がいた。




ありがとうございました。
何かあれば指摘等お願いします。
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