「おっと危ない、先程より圧倒的に早いねぇ」
「うるさい……早く殺されろ」
「いやだそれじゃ楽しめないだろう?」
「どうでもいい。いいから死ね」
「怖いな怒るんじゃないぞ」
星熊は余裕そうな態度で狒々に接しているが、内心は穏やかではなかった。狒々の攻撃は全て威力が桁違いな物になっている。一発でも掠ればその部分は断ち切られ、簡単に消し飛ぶだろう。
実際に星熊は開幕直後、狒々の一撃を受け左腕が使い物にならないというレベルではないほどに破壊されている。肉を勿論、骨は砕かれ190度腕が曲がっている。
通常、星熊の戦闘方は捨て身の
星熊は理解している。
狒々は本気で自分を殺すつもりだ。
もちろん星熊は何度も自分を殺しに来た相手と戦った事はある。しかしほとんどは人間で星熊の命を脅かすことはなかった……だが狒々は違う。
人間の何倍もの力を持つ妖怪。それも最上位に位置する程の妖怪である。
筋力
速度
耐久
敏捷
これらすべてが人間とは比べ物にならない。星熊は甘い考えは捨てた。この勝負は楽しむものではない、ただ勝つために効率よく動くことを決める。
そして狒々が仕掛けた。
「これで死ね」
星熊から跳躍して距離を取る。腕に持つ戦斧を縮めそこに妖力を流し込むと戦斧が黒く染まる。形が徐々に変形していき、斧の刃が開き口の様な物に。そして龍を模した様な形になった。装飾として尾が伸び狒々の腕に纏わりつく。狒々の黒い腕を覆い尽くし斧に生える尾は籠手となった。
「喰らいつくせ、暴龍の戦斧」
そしてそれを……狒々は解放した。戦斧は一気に巨大化して口が開く。その攻撃は邪魔な物を全て喰らいながら星熊に迫る。
「なっ、まず――――」
星熊はそれに反応する事が出来なかった。鮮血が舞う。痛たたましい咀嚼音が戦斧から鳴り響き、星熊を喰った戦斧は夥しい量の赤い液体を口から流している。
狒々は戦斧の形をを戻して血を拭う。死んだと確信した狒々は一言漏らした。
「久しぶりの餌だったな」
武器をしまおうとする狒々の元に絢が歩いてきた。
「なぁ狒々」
「なんだ絢」
絢は狒々に向かって笑みを浮かべながらこれから起こることを思い浮かべて、狒々に一言謝った。
「悪いが……勇儀はあの程度では死ななんぞ?」
「何だと?」
「あははははは!楽しいぞ!楽しいぞ!ここまで私を負傷させた奴は久しぶりだ!夜刀
と雅ぐらいだぞ?ここまでやったのは!誇れよ猿妖怪!」
そう言いながら笑う星熊の姿は、腹が抉られ、左腕は食いちぎられていて、すでに死んでいていいほどの傷なのにその場に立っている。星熊が生きている事に唖然として狒々は動けなくなっている中で星熊は続ける。
「これを使うのは三度目だ。頼むから死なないでくれ」
星熊は狒々を褒めてそして忠告した。死ぬなよと……ただ一筋の願いを込めて。
瞬間星熊の気配が一瞬消えたと思うと……爆発したかと思うほどに妖力と気配が膨れ上がる。
そして星熊は動き出した。
一歩目、星熊は大地を蹴った。それと同時に大地が割れ大気が揺れる。狒々はまだ動けない星熊の妖気に圧倒されているからだ。
二歩目、さらに大地を踏み込み狒々の前に現れて拳を構えた。狒々は咄嗟に態勢を立て直しその攻撃を防ごうとする。
三歩目、溜めていた力を全て開放して、踏み込むと同時に拳を狒々に叩きこむ。防御すら貫通して腹に直撃して肉を貫き骨を砕いた。
狒々が受けたのはただの一発の打撃の筈なのに、感じたのは数百発にも感じられるほどの衝撃。それに当然耐え切れる事が出来ずに悲痛な声を上げて狒々は飛んで行く。
「グッ―――――ガァッ」
そのまま狒々は骸鬼の屋敷まで飛ばされ壁を突き破る。壁を破る度に狒々の傷は増えていき血を流し続ける。もはや悲鳴すら出ずにただ塵の様に飛ばされる。狒々はそのまま、十部屋程突き破りとある少年が寝ている部屋に突き刺さった
◇◇◇
「あれ、夜なのか?」
俺は何で寝てるんだろうか?あぁ絢と話していたら眠くなったんだった。うんぐっすり眠れた。それにしてもさっきから外がうるさいな。よく眠れたんだけどまだ寝てたい。さいきんあんまり眠れなかったから。
あれ?なんか色んな所から妖力感じるんだけど、何が起こっているんだろうな?
何かを突き破る音がどんどん近づいて来る……うーん嫌な予感がする……この部屋から逃げた方が良いかもしれない……うん出よ―――
その時、部屋に高速で何かが飛んできて、俺の真横に突き刺さった。
「ファッ!何!?何が飛んできたんだ!?ちょっまて怖い!?」
俺が恐る恐る横を見ると……そこには、全く見たことがない長身の女性が瀕死の状態で刺さっていた。
考えるより先に俺は女性に駆け寄り声を掛ける。
「おい大丈夫か!?」
大丈夫じゃないとは分かっているだが、まずは意識があるか確認したかった。初めて見た筈なのに何故か無性に心配だった。この人を助けないとそんな考えが頭を過る。
「二……代……目?」
その声はいつも聞いている声より高かったが誰かが分かった。こいつは狒々だ。でもなぜ女に?そんな考えは捨てよう今は狒々を助けないと……どうする?どうすれば助けられる?
「なんで……起きて……いるんですか?」
「そんな事はいい!何でそんなことになっている―――」
「猿妖怪生きてるかー?」
全く聞いたことがない声が俺の耳に響く。
俺はその声が聞こえた方を見ると見知らぬ女性が片腕を血に染めこちらに向かっていた。まさか……こいつが狒々をここまでやったのか?
「おおー結構飛んだみたいだが生きてるなほんと凄いよ……ところでお前は誰だ?」
「なぁお前」
「なんだ殺気がこもってるけどどうして怒っているんだ?」
「お前がやったのか?」
そう言う俺の声は自分でも怖いくらいに低かった。今まで一回もだしたことない声それほどまでに俺は怒っていた狒々を俺の師匠をここまで瀕死に追いやったこいつにただひたすらに殺意を覚える。
「私だがそれがどうした?」
「うんうん……分かったお前がやったんだな、うん死ね」
俺は骨を使って武器を造りだしたそして初めて覚えた殺気と妖力をそれに込めて一言。
「首飛ばしの
首を落とす呪いの斬撃を相手に向かって放った。
がちぎれ空亡君参上!
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