見知らぬ部屋。そこに何故か俺は縄に縛られている状態でいた。うん全く訳が分からないな。どういう事なんだ?周りにあるのは酒瓶、酒瓶、酒瓶。酒瓶しかねぇ。
酒臭い。凄いくさい、ていうか吐き気が……おぇ。
「よし起きたな空亡。酒臭いのは我慢してくれ」
「我慢できるレベルじゃないんだが」
「仕方ないのう。……臭いの認識を変えた。これでいいはずじゃ」
凄い。さっきまで臭かったはずの酒の匂いが一瞬で消えた。朧の能力ってどこまで応用が利くんだよ、便利すぎるだろ。夜刀神の言霊はイメージを強くしないといけないから意外と不便なんだよ。俺がよく使う水槍はたった一つの言葉に敵を追うイメージと増えるイメージを同時にしなけれないけない。
俺の能力である夜刀神の言霊の仕組みは、まずは何を起きしたいかをイメージ、次に言葉に妖力を込み、最後に言葉を発する。そしてその言葉のとおりの現象が起きるという物だ。ちゃんと何が起こるか想像しなければ発動すらしない。
そして改めて朧を見てみると、朧の姿がいつもと違っていた。髪を後ろで束ねてポニーテールに。いつも若干着崩している着物はちゃんと着ていて、巻いているサラシを付けずにいるせいで、抑えられている胸が強調されている。
「……………やばい」
やばい俺の性癖にドストライクなんだけど。え?なにこれ?朧ってこんな綺麗だったの?いやいやいやいや、ありえないって。あの朧だよ?基本屋敷で酒飲んで一日中ごろごろしてる駄目妖怪だよ?俺が知るかぎり父さんたちの次に強いけどさ。これ誰なの偽物?うちの朧がこんなに綺麗なはずはない。
「さてさて朧先生の勉強会はじめるぞ、しっかりついて来るのじゃ空亡。ん、どうしたのじゃ?」
「……よし待つんだ朧、まずその恰好は何だ。そして此処は何処だ」
何とか平常心を保つんだ空亡。俺なら出来るぞ空亡。頑張るんだ空亡。
よし自己暗示完了。これで大丈夫。朧は基本酒臭いんだいつものを思いだすん――――――
何時もの朧を思い出そうとしていた俺の目の前に、朧に顔があり今にもくっつきそうだった。そのまま朧は俺の角を触らないようにしながら角が生えていない部分を触っていた。
「ふむ、熱は無いようじゃな。昨日の言霊に妖力を込め過ぎたせいじゃないかと思ったんじゃが何ともないみたいで安心したぞ」
「え?いや、は?朧さん何やってるディスカ!?」
「なにをそんなに驚ているのじゃ?儂はただボーッとしていたお主に熱があるか確かめたんだが……何か悪かったか?」
「いや悪いとかじゃなくてですね顔が近いというかなんというか……離れてくれませんか?」
「お主いつもと口調が違うぞ?……ほう、そうかそうか。そういうことか可愛い奴じゃ」
朧は最初は分っていなかったようだが何かに気付いたようだ。ていうか女に可愛いと言われて喜ぶ男はいない。そして何に気付いたんですかね俺は知りたくないよ。
「ふふふ、空亡お主、儂に照れているのかこの姿か?」
「いやまっさかー。そ、そんなわけないぞ。ははははは、おかしなこと言う朧だな。そそ、それより何で俺はここに居るんだ?」
よし!俺は完璧に話を逸らせた。あまりの完璧さに俺も寒気を覚えるぜ。ふっやっぱり天才だな。動揺してか何なのか、俺は凄い変なキャラになっている気がする。それは気のせいではないだろう。うん、これだけは断言できる。どんなテンションであってもな。
「お主流石に動揺しすぎじゃ。少しキモイのう……しかしそれほど儂の姿が好みという事か。手間をかけたかいがあったぞ、お主の意外な一面も見れたのでな。さてと、ふざけるのはこれぐらいにして本題に入るとするかのう。今日はお主に妖怪の事を説明するぞ」
「了解した」
ここまで連れてきてそんなことを説明するのかでも妖怪から妖怪の事を聞ける機会なんて滅多にないと思うしここは聞いておこう。
「妖怪は他になんて呼ばれているか知っておるか?」
「
昔、妖怪にはまっていろいろ調べていた時に、本とかにそう書いてあったし多分あってるはずだ。俺、自分の名前は思い出せないけど他の事は何故か鮮明に覚えてるよな。不思議だ。
「そうじゃ、よく知ってるのう空亡。そして知ってるか?妖怪には人間の意識から生まれた物と自然から生まれた者の二種類が存在するのじゃ。前者は人間に近い姿の者が多く、後者は異形の姿の者が多い」
「自然に生まれた者に異形が多いのは人間には想像できぬからだ。空亡質問だ。もしも龍を何も情報を与えられず名だけで想像してみろと言われたら答えられるか?」
それは無理だな。あんな牙があり爪がある空飛ぶ妖怪なんて名前だけじゃ想像できない。
「無理だな、朧」
「そうじゃろう?こういう簡単に想像できない姿をしたものが基本的に自然から生まれるのじゃ」
「そうなのか朧、なら人間が作った妖怪はどういう者達なんだ?」
「人間が作った妖怪の代表的な者を上げるとしたら、ろくろ首や唐傘お化け、一反木綿。これらは、人間のそういう者が居るかもしれないという考えから生まれた者なのじゃ。例えばろくろ首などは、首が伸びる人間に近い生き物がいるかもしれないそれが襲って来る。そういう考えから最初のろくろ首が生まれ、その姿を見たものがさらに噂を広めて数を増やす。そういう仕組みで妖怪は人間から作られ増えていったのじゃ」
「そうだったのか」
今まで妖怪は全て人間の想像から生まれた者だと思っていたが。全く違ったんだな、凄い勉強になった。妖怪がそういう物としたのなら、朧というかぬらりひょんは前者の人間が作った妖怪だろうな。確認してみるか。
「ぬらりひょんは前者であってるか朧?」
「よくわかったな空亡。正解した空亡には褒美として一つ教えて野郎。ぬらりひょんは
初めて生まれた時から一人しか存在していないのじゃ」
「…………?」
えっと……どういう事?
「察しが悪いのう空亡。説明すると、儂こそが最初に生まれたぬらりひょんなのじゃ」
駄目ぬらりひょんの朧さんは、ただ一人しか存在しない妖怪だった件について。てことはかなり年取ってい―――――
「年齢を聞いたら殺すぞ……空亡」
俺はもうその事を考えないようにしてから、朧に気になる妖怪の事を聞き続けた。かなり有意義に時間を過ごして今日一日が終わったんだが、この部屋は何処なんだろう?こんな場所は屋敷にはなかったし、見たことがない。疑問を残したまま部屋を出ると横は俺の部屋だった。
いや、おかしくない?いつもは横の部屋には何もなかったはずだよな?あんなに酒なんて置いてないし何より何年も過ごしたような跡も感じられた。俺はよくわからなかったので朧に聞いてみた。すると返ってきた答えは。
「この部屋か?この部屋は日当たりが良く居心地が良かったのでな、気に入ってしまい、骸鬼たちにばれないように認識を偽りずっと暮らしていたのじゃ。言うなよ空亡約束じゃぞ?」
「うんわかった約束だ。でも朧?なんかそれだけが理由じゃない気がするんだが……気のせいだよな?」
「そんなことはないぞ。ただあの部屋に居るとな毎晩お主が寝た後すぐ迎えて、寝顔を無る事が……できる……のじゃ……」
朧は何故か自分から白状していき、どんどん声が小さくなっていった。朧は馬鹿なのだろうか?
言い終わった朧の顔は真っ青になっていて、そんな朧を見る俺は冷え切って目をしていただろう。ともかく朧になぜこんなことをしたのか聞こうか、楽しみだな。
その二日後、朧は何故か庭に埋まった姿で発見されたが、俺は何もしていない。
俺なりの妖怪の考えどうでしたか?
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南宮 那月さん。やうゆうさん。誤字報告ありがとうございました。本当にいつもありがとうございます。