「次は私からだよ」
その一言共に母さんは武骨な大剣を取り出した。
”それ”はよく見ると細部全てが蛇で出来ていた。悍ましい程の蛇の群れが大剣を覆い尽くしている。その蛇は動き続けては、這いずり回り脈動している。
しかし俺は気持ち悪いとは思う事はない……何故か安心するのだ。
「夜刀? それはやり過ぎじゃないかしら?」
「ゆかりもさっきの少し本気入ってた……ならそれにこたえるのが礼儀……蛇符『
母さんの大剣に纏わりついている蛇の一部が黒く染まる。その中から、瘴気のようなものが溢れ出す。
その瘴気は周りの草木を枯らし腐らせていく。その瘴気に当たった物が全てが呪いを帯びて変質する。その瘴気は紫様の元へと向かい。覆いだした。
十秒ほどで紫様はその中から抜け出す事が出来たが……口から夥しい程の血を吐き出し腕が一部腐敗を始めている。
夜刀神とは、この世の厄災と祟りを言霊を使い操る蛇神だ。その姿を見ると一族全てを滅ぼすとまで言われている。今の技はその祟りを好きに込める事が出来るもので……今は内臓を破壊する祟りと腐敗の祟りを込めたのだろう。普通だったら、もう死んでいる筈だが……これは、流石紫様という事だろう。
「貴方私を殺すつもりかしら?」
「何いってるの? この程度で死んだら貴方は紫じゃないよ? 私と骸鬼と張り合える数少ない妖……もっと遊ぼうよ?」
「本当に貴方戦いになると変わるわよね? 戦闘狂なのは変わってないらしいのね……私も寝ててばかりじゃ、やっぱり体が鈍るわ、この程度の呪いにも抵抗できないなんて……目が覚めたわ。続けましょう?」
「うん! 鬼纏『夜刀転身』」
大剣に纏わり付く蛇たちが母さんを包んでいく。母さんの体に蛇の鱗が現れ始めその角はより鋭利に鋭く刀のように尾が生え始めた。それだけではない背中から蛇の頭が二つ生えたのだ。
何だこの姿……始めて見る。そもそも今更だけど、母さんが戦う姿を見るのも今回が初めてだ。これが本気なのか? 明らかに気配が変わった。
「……その姿、懐かしいわね。でも本気は出さないみたいね……何故かしら?」
「久しぶりだからね。それに疲れるから。じゃあ行くね?『火』『水』」
母さんがそう言った。右側にある蛇の顔も口を開く。母さんが火と言い蛇が水と言った。その言葉に合わせるように母さんの両腕が変わる。左は水に右は炎に。
「『混ざり合え』」
母さんが両腕を合わせると小さい球が出来た。それは本当に小さくて風にでも吹かれたら一瞬で消えそうなのに。異常な気配を放っていた。俺の鬼の血が騒ぐ、あれは妖怪が受けてはいけないと。あれは今の俺では、直撃でもしたら滅される。
「『二行混合水火転球』」
そして、それ放たれる。結界を削りながら紫様の元に接近する。しかし紫様はそれを冷静に見てから一言。
「『五行の境界』
母さんが放った球はその解けの一言でただの水と炎になり掻き消けされた。
「むぅ、せっかく混ぜたのにー。紫、新しい技?」
「前これを喰らった時は体半分消滅させられたからね、この技の対策くらいつくっておくわよ……予想どうり使ってくれて助かったわ」
「ならもう一発?」
「それはやめてくれないかしら? これ結構疲れるから」
「えーケチ」
「ケチじゃない」
「ねぇ紫」
「なに夜刀?」
「お腹すいた。紫もご飯食べる? 作るよ?」
「…………はぁいいわよ私も疲れたし」
「なに食べるー?」
「うどんでお願いするわ」
二人は急に勝負を止めて、屋敷の中に入って行った……俺を放置して……え? 放置なの? まず何で紫様は勝負始めたの? ちょっとよくわからない。
俺が空中に放置されていると。真下に父さんが歩いてきた。
「空亡? 何してるんだ? それになんか懐かしい気配を感じるんだが……紫か?」
「父さん降ろしてくれない? そろそろ地面を歩きたい」
「ちょっと待ってろ……てい」
頭上に骨が現れて俺は下に叩き下ろされた。もっと別の方法は無かったのだろうか? 凄い地味にだが痛い。
「とういか空亡は何でここに居るんだ? 萃香達と出かけていたはずだろ?」
「萃香に吹き飛ばされてな」
「……また煽ったのか、空亡は萃香で遊んで楽しいのか?」
「楽しいぞ父さん」
「……強く生きてくれよ我が息子」
どういう事だろうか? なぜ今そんなことを言うんだろう?
「空亡? 何でここに居るのかなぁ? 一日ずっと探してたんだけど!?」
「あぁ萃香一日ぶりだな……何してたんだ?」
「言ったよね空亡、耳ないの? それとも頭が空っぽなの? まぁいいや。この匂いは夜刀のうどん? それに免じて許してあげる」
許されてた。なんかよくわからない間に許された。それより絢が勇儀姐さんに担がれているの凄く可愛いだけど。
「空亡あれいい跳びっぷりだったな! それと萃香はめっちゃお前の事を探していたぞ? こういってるけど……」
「ちょっと勇儀! それは言わない約束でしょ!」
「はははは悪い悪い、許せって」
「絶対許さない。あとで裏山行くよ」
「おっいいぞ! 殴り合おうぜ萃香」
どういうことだってばよ……。
「しょらなきー吾としょうぶだー?」
茨木は寝言でそう言っている。可愛い。
「削り氷を所望する……なの」
「静水久はずっと、どこにいたんだよ?」
「友達の家……なの」
「マイペース過ぎないか?」
「どういう意味……なの?」
そうか英語じゃ伝わらないのか……。
「何でもない。今から作るか削り氷、屋敷に入るぞ」
「了解なの」
次回から文字数戻します。3000~4000ぐらいに