「天殺」
その声と共に放たれたのは、戦斧による斬撃。何とか剣で防いだが……その攻撃を受けた剣には罅が入り、天をそのまま落としたような衝撃が俺を直接襲う。そんな衝撃に耐えきれず俺は地面に足が沈んでしまった。
重い……潰れ……る。
あ、駄目だ。威力あり過ぎ。
俺はそのまま地面に叩きつけられた。
くそ痛い、たんこぶ出来た。でもたんこぶで済むなんてこの体は丈夫すぎるんだけど、下の地面なんか割れているし。
「狒々、手加減してくれ」
「でも二代目?手加減しましたよ」
「これでか!?」
「はい、いつもの半分以下に抑えときました」
妖怪っておかしい、俺も妖怪だけどさ、俺はこんな規格外じゃないって。俺は父さんの百鬼夜行を見て気付いたんだ。俺、弱くないかって?父さんの百鬼のメンバーの誰にも勝てないし。
特に雅さんとか朧とか狒々に土蜘蛛がやばい。そして後から知ったんだが雅さんは人間の間で茨木童子と呼ばれているらしい。原作では絢はその名を絢が継いだんだなーという変な納得をしたこともあった。
その4人の中でさ、朧が更におかしいんだ。
なんなのあいつ強すぎない? 気配と認識を操るってマジでなんなんだよ……いくら切ってもそこにはいないし、見つけてもそれは自分の気配を固めたものだし、それになんか増えるし。下手したら最恐だよな。それによく俺を揶揄って来るし。朧は本当に苦手だ。
「二代目、そろそろ再開しますよ」
「了解した。でけど狒々もうちょっと、すこしだけ抑えてくれ、さっきからほぼ一撃で地面に叩きつけられてなんかいろいろ限界だ」
「でもこのままじゃ強くなれませんよ。もっと修行しないと」
「分かっているんだが……こうもワンパンされると……な」
「なら技でも鍛えますか?」
「そうする……てか頼む」
「了解しましたよ。では二代目、打ってきてください」
狒々はそう言ってから武器を置いた。狒々には修行を手伝ってもらうようになり半年が過ぎた。やる事と言えば、狒々にボコボコにされ技を打ち込む、そのぐらいだ。
半年間も頑張ったが、毎日のように地面に叩きつけられている気がするんだよな。模擬戦しても数発しか当たられないし、せっかく当たったその攻撃もほぼ傷になれないし。
でも、そこで諦める俺ではない。
父さんの百鬼を継ぐために俺は強くなると決めたからな。
父さんに百鬼を継ぐかと聞かれた日から俺の夢は決まったのだ。だけどまだ父さんに言っては無いんだがな、。この夢を教えたのは絢と狒々だけだ。だって恥ずかしいから。
「狒々、いくぞ。蝿声!」
俺の修行の成果であり、唯一神咒神威神楽で再現できる技でもある蝿声を狒々に打ち込んだ。蝿声は今の皆に隠れてずっと練習してる技の一つで、毎日、何百発も使っている。今では本家とは威力が全く違うが、この蝿声はもう俺の技と言えるかもしれない。
「前より早いですね二代目。でもまだですよ、これじゃあ足りません」
狒々は一言だけ俺を褒めたかと思うと、蝿声を腕一本で止めた。
あぁーまた止められた。前より何倍も練度を上げて山真っ二つに出来たのに、それを腕一本で止めるって何?なんのなの?
「威力は前より上がってますね。また夜隠れて修行でもしたのですか?」
「何で知ってるんだよ」
「そりゃ腐っても俺、二代目の師匠的なやつですのでそのぐらいわかります」
「師匠ってすごいな」
「そうです二代目、今日はここまですね。俺も疲れました」
狒々も疲れることあるんだな……意外だ。
勝手な俺のイメージだけどさ、狒々はよくいるやる気はあまり出さないけどほんとは最強クラスの力を持つ強キャラだと思っている。今だって俺が使える最大の技を使ったんだぜ?
本当に俺はここに居るとなんかさ、どんどん自信が無くなるんだよな。ここまで簡単に防がれると……。
「狒々が疲れるなんて病気か?」
「俺も生きてますし、疲れる事はありますよ」
「それもそうだな」
疲れない生き物なんていない、多分これ名言。なんか、かっこいいし。俺の迷言帳でも作ろうか?
「それでは二代目俺ちょっと水浴びしてきます」
「分かった狒々、また後でな」
俺はそのまま狒々と別れて屋敷に戻った。明日こそ狒々に一泡吹かせやる。父さんの百鬼を継ぐには狒々は絶対に倒さなきゃいけないし。
今日も限界まで妖力を使って増やしていこうか、これが俺の修行法で最も安定しているから。そし今日の夕食何だろうな?母さんの料理は全て美味しいし修行の後の楽しみになっている。
あれ?一瞬だけだが朧の気配を感じた。……気のせいか。すぐに消えたし。
◇◇◇
儂は空亡が居なくなった時を見計らい姿を狒々の前に現した。今から話すことは空亡に聞かれない方が良いからな。
急に現れた儂に狒々は特に驚く様子はなくていつもの調子で話しかけてくる。
「朧か何の用だ?」
「決まっておろう?お主の事を話しに来たのじゃ」
「俺の事か?朧が二代目のこと以外で話しかけるのは珍しいですね」
「……お主、空亡の事になると口調変わるよな」
そう儂はジト目で睨むと、狒々は少しだけ顔を逸らして面を深くかぶってしまった。
「気のせいだ……それより話とはなんだ?」
「気付いているだろう?変化を解け」
「ばれてるか……仕方ない」
狒々はそう言い、自分にかけている変化の術を解いた。そして儂の目に映ったのは、酷く傷だらけで二つに分かれている一本の腕だった。
血が周りを染めて、ぴちゃりぴちゃりと垂れていく。
その様子はこっちまで痛みを感じる錯覚まで起こしてしまう。
いたそうじゃのう。
「狒々、空亡にかっこつけたい気持ちはわかるのじゃが。空亡の攻撃は避けろよ。それ一週間は治らんと思うぞ」
「うるさい。しょうがないだろう朧。二代目の力はあの歳に似合わないものになっている。変に自信を付けたら困るからな。俺が騙さないといけない。そうすれば今よりもっと二代目は強くなるだろう」
「だからってこの方法か?よくわからんのう。素直に言えばよいだろう?空亡の喜ぶ顔が見れて最高じゃぞ。あやつは感情が出やすいからな……そして儂が見たいから伝えろ、狒々」
「それはお前の欲だろう。俺が二代目の修行を任せれている。お前は口を出すな」
「ぶーつまらんのう。まぁ傷の認識を変えておくぞ狒々これなら傷の痛みは誤魔化せるだろう」
狒々も空亡の事を思ってやってるのなら、少しぐらい手助けでもしてやるかのう。見返りは求めるが。
「感謝する……今度好きな酒でもおごろう」
「まじか!?言ったな!忘れんぞ!」
やったのじゃ、酒ゲット。ふふふ儂に酒を奢るというのは自殺行為だと教えてやるぞ。楽しみにしておれ!
それと夕食か……儂の分もあるよな?なくてもこっそり空亡の分でもいただくとするか。あとは寝床に潜り込もう。楽しみじゃなー。
本日三度目なんとか間に合った。
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